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なんでもイヤのネチズン・・・「無責任」の代償

2012-08-30 02:19:00 | 時事/金融危機
 

■ ネットの住人達は、何でも「イヤ」 ■

ネットは「無責任な言論空間」ですが、
それ故に、国民の素直な感情が露になります。

最近のネットには「イヤ」が溢れています。

1)原発はイヤ

2)増税はイヤ


3)福祉削減はイヤ

4)年金削減はイヤ



5)韓国と中国と仲良くするのもイヤ

6)オスプレイはイヤ

8)普天間基地もヘゴノも、本州もイヤ

7)アメリカに従うものイヤ




色分けの理由はお分かりでしょう。

そう、赤と青は相反する内容です。
しかし、本来は立場を違えるはずのこれらの意見を
同じ人が主張しているのが現在のネットの実情です。

要はネットの住人の多くは「何でも反対、何でもイヤ」なのです。

■ 歴史的に官僚国家である日本 ■

結局、国民からは建設的意見は出されませんから、
国会も建設的議論はなされません。

そこで唯一、現実的な判断から国家を運営しているのが官僚達です。

日本の官僚制は、明治以来、あるいは平安時代からの伝統です。

戦国時代に一時、官僚制は勢いを失いますが、
江戸時代には又復活します。

江戸時代は徳川の専制の時代では無く、
徳川幕府は、諸藩の優秀な人材で運営される
巨大官僚社会だったとも言えます。

「お上が決めた事」と言うときの「お上」とは、
「専制君主」を指すのでは無く、「官僚機構」を指すとも言えます。

これは明治にも引き継がれ、
「天皇」は国家権力の象徴ですが、
実際に政治の実権を握っていたのは「内務省」と「軍部」でした。

表向き、「議会制民主主義」の体裁は取っていましたが、
内閣の存在感が薄いのは、今も昔も変わりません。
当時から政権交替は頻繁に起きていますが、
内政や外交に大きなブレが生じないのは
「官僚」と「軍部」による統治が為されていた為です。

■ 官僚政治が無責任なマスコミと無責任な国民を生み出す ■

「お上が決めた事だから」とは、凡そ民主主義の国民の発想ではありません。
民主主義の基本は「自分達が決めた事だから」のはずです。


そもそも、間接的とは言え、今の政府を選んだのは国民です。
ところが、日本人にとっては「首相は内閣は、政治家達が勝手に決めたもの」
という発想が一般的でしょう。

だから、内閣発足直後から支持率は地を這います。

マスコミは政府を批判する方が、国民が喜ぶ事を知っています。
ですから批判的記事をタレ流します。

消費税増税問題にしても、こう書くでしょう。

「日本の財政は将来破綻するから、消費税増税は仕方の無い事だ。
 しかし、財政状態がここまで悪化したのは歴代の政府が無策だったからだ」


要は政府が悪いのだと結論付けます。
尤も、「歴代政府」に対して責任を追及できない事を知った上で書きます。

ところが、政府が無策だろうが、支持率が地を這おうが、
衆参がネジレ状態だろうが、
日本の政治が何も決められなかろうが、
国家の運営は、官僚達によって粛々と進められた行きます。

■ 勝栄二郎が財務事務次官を退任しても変わらない ■

影の首相と噂され、悪名高い勝栄二郎・財務事務次官が退任します。
在任期間は2年とちょっとですから、平均的と言えます。

さて、勝氏が退任して財務省の方針が大きく変わるでしょうか?
多分変わりません。

これが、官僚機構の強みです。

但し、たまに米国の支持を受けた内閣によって、
官僚機構自体がダメージを受ける事があります。

例えば、「通産省」が「経済産業省」となる時に、
業界の指導力を大きく剥奪されました。

「大蔵省」が「金融庁」と「財務省」に解体された事で、
金融機関に対する統制力が大きく後退しました。

これらの官僚機構への攻撃は、
「国民の為」という看板を掲げながらも、
実際にはアメリカの要望によって遂行されたものです。

要は官僚機構は、日本人の敵では無く、アメリカにとって都合が悪いのです。

■ 日本もアメリカも民主主義は機能していない ■

消費税増税は確かに財務省のシナリオでしょう。

民主党単独では、法案が成立しないので、
民自公の三党協力で、法案が可決しました。

国民がこれだけ反対しているのに、
敵対する政党が協力して法案を通すなど
アメリカでは考えられません。

アメリカはリーマンショックの銀行救済の決定時でも
表向きは「政治対決」を演出しています。
母親の葬儀に出席していた議員を飛行機で呼び戻して、
最後の一票を投票させて、金融機関を救済する事を決めました。
これなど、メチャクチャ茶番で、
金融機関救済は共和党と民主党の裏の協議で合意されていたはずで、
さらには、票数を調整して、最後の一票を演出しています。

しかし、アメリカ人は、民主主義に誇りを持っていますから、
この茶番を見て、「民主主義の原則は守られた」として
銀行救済を良しとするのです。

日本とアメリカのどちらも出来レースで茶番ですが、
日本人は「お上が決めた事」と批判しながらも諦め、
アメリカ人は「民主主義の選らんだ結果」として満足します。

本質的には、民主主義が「絵に描いた餅」である事は変わりありませんが・・・。
対立政党が、表にせよ、裏にせよ、結託してしまえば
民主主義はその時点で機能を失います。

■ 低支持率を武器とする日本型政治 ■

最近の日本の政治を見ると、「低支持率」を巧みに利用しています。

ほぼ全ての国民が反対する消費税の増税は、
一党だけで成立させると、その政党は国民の支持を失います。
ですから、主要3党が等しく責任を負う形で、非難を分散化します。

その過程で3党協力の必要性を演出する為に
小沢一郎以下が、民主党の党議に造反したから、
3党協力が必要だったという演出をします。

さらには、「消費税増税に反対した」という勢力を温存し、
次の選挙の芽を上手に残しています。


TPP問題についても、
当初、野田首相が独断専行した様に報道されますが、
野田首相や内閣の支持率が下がれば、
TPPの推進には、大きくブレーキが掛かります。

アメリカが野田首相をけし掛けても、
これ以上が政権維持が難しいと言って、逃げる事が出来ます。

当然、アメリカは次の首相を選ぶ訳ですが、
これも、マスコミと国民に叩かれて、
「決められない首相」になって行きます。

■ 国民不在の政治の反映が、「イヤ」しか言わない国民 ■

結局、国民が何を言おうと、日本は官僚達によって、
まあまあ、どうにか運営されています。

だから、国民はとりあえず「イヤ」とだけ言っていれば良い。
何か、都合が悪い事が起きても、「俺は反対したんだけどね」と逃げられます。

だから、ネットの言論は、「イヤ」で埋め尽くされます。

そうして「肯定的意見」は、
「お前が責任取れるのか」という非難で潰されてゆきます。

■ 高校の生徒会レベルの言論 ■

ネット言論の多くが、かつての高校の生徒会レベルです。

校則反対、制服反対と主張した所で、
実際の学校運営は大人達が粛々と進めて行きます。

生徒会は生徒のガス抜きにはなりますが、
それによって、高校の本質は何も変わりません。

■ 大量の無責任にかき消される、少数の意見 ■

個人のブログでも立派な主張のブログが沢山ある事も事実です。

しかし、今回の竹島問題や尖閣問題では、
多くの良識的なブログも、韓国、中国に対して強硬な意見を展開しています。

それだけ、韓国大統領の天皇発言は、日本人の心を逆撫でした発言です。

一方で政府は、通貨スワップの継続など、現実的な対応をしています。
財務官僚達は、韓国経済が破綻した時のシナリオを綿密に計算して、
経済的負担の少ない方を選択したとも言えます。

韓国が破綻したら、IMFを通じて、日本は莫大な負担をせざるを得ません。

通貨スワップの継続は、「国家間の喧嘩」に対して弱腰とネットは非難します。
だから韓国や中国が付け上がるのだと・・・。

しかし、私は隣国を経済破綻させる事が、国家として正しいとは思いません。

むしろ、日本はアジアの平和と安定を願っていると主張する事の方が、
今は大事な事である様に感じます。

東南アジア諸国は、韓国と違い親日的です。
それらの国家は、韓国の問題点も良く理解しています。
ですから、日本と韓国が子供の喧嘩の様なレベルで争う必要は無いのです。
大人としての喧嘩のやり方があるはずです。

例えば、通貨スワップ継続を表面的には発表しながらも、
裏では、「テメー、これ以上騒ぐと、通貨スワップしてやんないぞ」と脅すとか・・・。
まあ、アメリカが良く使う手ですね。

尤も通貨スワップ継続は、通貨マフィアからの指示だと思います。
通貨の情勢が不安定な時期に、いらぬ騒ぎを起すなという圧力が当然あるはずです。

さらに韓国の格付けを1ランク引き揚げて、後方支援も怠りません。

日韓のイガミ合いも、結局は誰かの掌の上だという何だかトホホな状態であるという事に、
連日、勇ましい事を書きたてるネトウヨの皆さんは、どれだけ気付いているのでしょう?

「イヤ」と言って責任から目を背けている限りは、見えないものが沢山あります。



<追記>

韓国は史上最高の経常黒字を計上し、
それを受けて、格付けが1ランク上がっています。

しかし、経常黒字を押し上げたのは、
国内不況による輸入の減少という、不況型の経常黒字である事に注意が必要です。

ただ、経常黒字が拡大したからという理由で
格付けを引き揚げる、格付け会社って、いったい何なのでしょうね?