チャララーン~チャーーン。(極妻のテーマ)
座敷で向かい合う、百合と誠。
「百合ねぇさん、うちと手を組むにあたって、とりあえず頭ぁ決めていただかないと。」
「誠さん、あたしゃ、100%やらないって言ってるだろ。日本語分かってんのかい!!」
パーセントは日本語じゃないんじゃ・・・。
まあ、百合ねぇさんは、昔から何を考えているのか分からない所がある。
今も逸らした視線の端で、ちらちらとこちらの出方を伺っている。
「そうはいっても、頭ぁ決めない事には纏まるものも纏まりません。」
「あたしは、築地の店と祭りで手一杯だからね。」
確かに築地の店と祭りを放り出して頭を引き受けるのはマズイ。
特に祭りは稼ぎもデカいだけに、手放すには惜しい。
「噂じゃ、阿部組の番頭のやつも、「頭も決められない組と」バカにしてるらしいですよ。」
「だけどねぇ、うちにはアタマ張れる奴なん居ないよ。知り合いを当たるかね。」
「こんな寄り合い所帯を纏められ人となると・・・」
「オザワの旦那なんてどうだい?」
確かに旦那には今回の件では世話になたし、指南もしてもらった。
だけど、旦那とうちの組には苦い過去のシガラミが有る。
「旦那は以前ほど迫力無いというか・・・うちの組の連中が嫌がりそうですね。」
「そうだね、旦那には裏で力を貸してもらった方がいいねぇ。」
「・・・・大阪の若頭というのは。」
「あいつは腹に一物ありそうで好かないねえ。それに、ああいうチャラいのは嫌いなんだよ。」
大阪の若頭は一時の勢いが無い・・。
最近は「若隠居」なんて噂されているから、もう頭を張るのは無理だろう。
「岐阜の聖さんなんて・・・。」
「聖ちゃんは将来お店の方を任せようと思ってるのさ。今のゴタゴタには巻き込みたくないね。」
チィ!あいつに跡目なんて継がせない。
姉御はいつも岐阜に甘い。付け入られてるのが分からないのか?
「いっその事、阿部組の石さんを引き抜きますか。」
「石さんね・・・確かにいい思いはしてないみたいだけれど。」
「縄張りの守り方に関しちゃ、ねえさんと考え方も似てますし。」
「あたしぁ、どうもあの顔と話し方にイライラするんだよね。」
「そう言わずに、石さんなら人望もありますし、何人かうちに連れて来るかもしれない。」
確かに短気な姉御に石さんは馬が合わない。
会合でもいつもイライラを隠さないからな・・。
「実はそれはやらないって阿部と話し付けてるんだよ。」
「そうですか・・・飼い殺しってやつですか・・。」
なんだよ、裏で話が付いてるって・・・
阿部のタマァ取る話してるんだよ、俺は!!
「まあ、向うは向こうで阿部も大変みたいだけどねぇ。」
「凄腕のスナイパーが雇われたって噂ですか・・・。」
「なあに、見かけ倒しさ。影ではローゼンって呼ばれてるみたいじゃないか。」
ローゼンは最近はめっきり腕が落ちたって噂だ・・・。
俺も一度声を掛けようと思って調べたが、今じゃ過去の伝説に過ぎない。
だいた、奴は漢字読めないって話じゃないか・・・
殺る相手を間違われたら洒落にならない。
「阿部組の若い連中も安倍の寝首を狙ってるって噂ですしね・・。」
「いっその事、阿部がうちの組の頭ってのはどうかねぇ。」
「それじゃあ世間にシメシってもんが・・・・」
おい、もしかして姉御、阿部とデキてるんじゃねえよな・・・。
そうなると、次に狙われるのは俺じゃないか・・・。
腰の拳銃にそっと手をやる誠・・・
一方、百合の手には先程から抜き身の匕首が握られている。
それを襖のすき間かから見つめる視線。
<つづく>
すみません・・・・陰謀論を上回る昨今の出来事で・・・・妄想が大爆発してしまいました。