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リベラルの皮を被ったオオカミ・・・小池百合子氏はシタタカ?

2017-10-09 04:19:00 | 時事/金融危機
 

■ ベーシックインカムはリベラルな政策か? ■

希望の党が公約に掲げた「ベーシックインカム」。「国民全員に一律にお金を配る政策」という政策なので、一見リベラルな政策の様に感じます。

しかし、ベーシックインカムの本質は、税の徴収と分配の簡素化にあり、これは小さな政府を標ぼうする「新自由主義」的傾向が強い政策です。

1) 法人税や所得税を廃止し、消費税に一本化する
2) 社会保障や年金、生活手当も廃止しベーシックインカムに一本化する
3) 消費税率は今よりも高くなる(例えば40%とか60%)

法人税も所得税も、現在の税制には様々な控除が存在し、そこに恣意性が発生する故に利権も生まれます。同様に補助金や生活保護も、その認定仮定に様々な思惑が働き、利権を生みます。生活保護などは公明党の利権となっています。

この様な税制と再配分の「不明確性」を一切排除してシンプルにする事で、税とその再配分に行政や政治の思惑が介入する事を防ぎ、行政コストを大幅に削減する事を目的にするのが、ベーシックインカムです。

■ 内部保留課は企業の価値 ■

希望の党は消費税増税凍結の財源として企業の内部保留に課税する方針を打ち出しています。

1)内部保留は企業が税金を納めた後の利益から、株主配当をした後の資金

2)内部保留は次の様な目的で保留されている
  ・各種引当金
  ・設備投資の原資
  ・株主への増配の原資
  ・企業買収の為の資金
  ・金融市場などで運用して利益を上げる
  ・自社株買いなどの資金
  ・単なる余剰金

資本主義における株式会社の目的は、事業で利益を上げて出資者である株主に利益を還元する事にあります。内部保留は本来、株主に増配として還元されるべきものですが、企業は様々な目的で資金を必要とするので、ある程度の利益を内部保留として保留します。

内部保留は企業活動の結果積み上がりますが、これは企業価値そのものとも言えます。ただ、現金や預金で無駄に内部保留を積み上げても企業価値は増大しません。

1) 増配によって株価が上昇すれば企業価値が高まる
2) 設備投資によって事業が拡大すれば企業価値が高まる
3) 自社株買いによって配当コストが減少し、株価が上昇すれば企業価値が高まる
4) 企業買収によって事業が拡大すれば企業価値が高まる

本来、内部保留は企業価値を高める為の原資であり、これを現金で無駄に積み上げても企業価値は高まらないので株価が低下し、M&Aの餌食となるのが資本主義のルールです。

■ 内部保留に無理やり課税すると、増配などで資金が国外に流出する ■

安倍政権も国内の企業の内部保留の増加を問題視していました。景気低迷は国民の所得の伸び悩みや低下が原因ですし、非正規雇用の拡大による人件費の削減が内部保留の増加の原因ですから、企業に賃上げ圧力を掛けていました。

しかし、企業側としては景気変動やリーマンショックの様な危機に雇用を維持する為には、ある程度の内部保留を必要とします。日本の企業は正社員を簡単に解雇できないので、内部保留を積み上げる傾向が強く、又、賃上げには消極的です。この様に雇用が固定的な日本の企業は業績悪化時に備えて内部保留を積み上げる傾向が強い。

又、少子高齢化によって消費が縮小する事が予想される中で、設備投資の拡大も限定的です。結果的に内部保留はさらに拡大します。

仮に内部保留に課税される場合(二重課税となるので会計上は問題が有りますが)、企業は税金を払う位なら、株価を高めて企業価値を高める事に内部保留を使うはずです。要は増配か自社株買いを選択する。

設備投資や賃上げに使うべきだと主張する人は多いと思いますが、無駄な設備も、上昇してしまった賃金も固定費として企業経営を圧迫し、景気縮小時に企業の経営を悪化させる要因になります。

この様に、企業を経営者と投資家の視点で見るならば、内部保留に課税されて利益を国に上納する位ならば、そのお金を企業価値の拡大に使うのは当然の選択です。

■ 希望の党の政策は、実は新自由主義的 ■

民主党から合流した議員の多くが気付いていませんが、ベーシックインカムは小さな政府の為の政策ですし、内部保留課税も結果的には自社株買いや増配によって投資家の利益(多くは海外投資家)を拡大する政策となるでよう。

こう考えるとリベラル勢力を自称し、労働組合が支援する民進党は、小池百合子氏に身売りした事で、自分達が目指すリベラルとは正反対の、新自由主義的な政党に加わってしまった事になるのです。

小池代表は統制でも特区など「規制緩和」に積極的ですし、元々が新自由主義的を指向しています。

■ 自民党と希望の党の二大政党制が成立しても、捻じれている ■

「自民党は資本家の味方で労働者の敵」と考えている人も多いのですが、自民党を支える地方組織は農村や漁村が多く、自民党はそれらの豊で無い地域に都市部の税金を分配する機能を果たしています。言うなれば「土着リベラル」の政党が自民党です。

一方、都市部の浮動票を取り込むであろう希望の党は、都市住民の利益をある程度反映さえた政策を打ち出す必要が有ります。都市部の経済成長には規制緩和が必要になります。

こう考えると、自民党がリベラル勢力、希望の党が小さな政府を標ぼうする保守勢力になります。ところが、希望の党のバックにはリベラル勢力としての労働組合が居る・・・。これは非常に複雑な政治構造で、捻じれています。だから上手く機能しません。

小沢氏らを抱え込んだ民主党の迷走の原因もここに在りました。


■ 自民党と希望の党の議員も支持組織もシャッフルされるべき ■

「国民の分かり易い政治」を標ぼうするならば、希望の党は「新自由主義的なカラー」を強く打ち出すべきです。自民党は過去のシガラミがあるので無理でしょうから・・・。

そおして「小さな政府=希望の党」VS「大きな政府=自民党」という対立軸を元に、議員も支持団体もシャッフルされれば非常にシンプルです。


尤、個人よりも空気を優先する日本人は、自己責任の理論を拒みますから、新自由主義的な政策を前面に出すと選挙には勝てません。だから、希望の党は「リベラルの皮」を被り続けるのかも知れません。