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アメリカの民主主義は劣っている・・・空気を読めないアメリカ人には劇場型政治が有効

2017-10-11 08:41:00 | 時事/金融危機
 

■ 日本よりも劣化が激しいアメリカの民主主義 ■

日本人の多くがアメリカは「民主主義の先進国」だと妄信しています。しかし、ブッシュJrの時代辺りから、アメリカの民主主義は明らかにポピュリズムに陥っており、その劣化具合は日本よりもヒドイ。

その結果が先の大統領選であり、トランプ大統領の誕生となるのですが、トランプ大統領の存在は反トランプ派にとっては良いガス抜きの材料となっており、彼らは表面的な大統領の言動に噛みつく事で不満を発散しているの過ぎません。

■ 大統領令で民主党政権時代の規制を廃止し続けるトランプ ■

トランプの派手なパフォーマンスにばかり注目が集まりますが、彼はその陰でオバマ政権時代の民主党が制定した数々の規制を、大統領令によって次々と破棄しています。

「温暖化条約」や「オバマケアー」ばかりが注目されますが、彼は金融市場や、海底油田開発や、石炭開発など、様々な規制緩和の大統領令に署名しまくっており、その数は数百と言われています。

■ 議会が機能していないのはアメリカも一緒 ■

アメリカの議会が機能していないのはオバマ政権時代も同様で、共和党が多数を占める議会で様々な法案が廃案になっています。一方で、オバマも大統領令を大量に発布しており、これは事実上、議会の無効化に等しい。

トランプはオバマの大統領令を大統領令で停止しているとも言えるので、既にアメリカにおいて議会は有名無実化しており、民主主義のパフォーマンスの場として国民の幻想を支えるだけの存在とも言えます。


■ 「空気」が支配する日本と、「祭り」で支配するアメリカ ■


良く「日本の民主主義は未成熟だ」と言われますが、日本の為政者は「国家社会主義」を隠れて支持する人が多く、これは官僚も同様だと私は妄想しています。「愚かな国民は良き指導者に飼われるべきだ」というのが、明治維新より続く日本型民主主義の本質でしょう。

但し、日本型民主主義の面白い所は、指導者達が奉仕する存在が「国柄」という何だか分からない「空気」である所です。「誰の為」という事では無く「日本の為」という理念が指導者達の中に確固として存在していると私は妄想しています。

これが感じられないのは小泉元首相と小池百合子氏ぐらいでは無いか?彼らはパフォーマーとしては優れていますが、その言動に理念の様な物、或いは彼らを縛る「空気」をあまり感じません。だから「空気によって結束した組織」を簡単に破壊する事が出来る。小池氏は小泉氏よりは空気を読む能力が高い様ですが、それを「破壊」に利用する傾向が強い。

これは悪口では無く、空気に支配された日本において改革を実現する為の大切な要素だと私は考えます。


一方、アメリカの民主主義は「祭り」によってコントロールされています。支配層は「アメリカを世界システムのコア」と捉えており、そこに「国柄」などという曖昧模糊とした共通幻想などは持ち合わせていません。

一方アメリカ国民は「自由」「正義」「民主主義」を神のごとく崇めていますが、これは指導者に押し付けられた教義である事に無自覚です。そして、アメリカの指導者は国民を導く為に「祭り」を利用しています。

「祭り」とは「民主主義のイベント=選挙戦」であり、アメリカの大統領選挙などはまさに国民の祭典です。アメリカ人と同じオフィスで仕事をしていると、大統領選の期間中はオフィスが落ち着きません。開票日などは仕事そっちのけで、ネットに釘付けになり、どこの州をどっちの党が取ったかで一喜一憂する姿が見られます。

この様にアメリカの民主主義は「祭り」によって支配されていますが、これは政治の本質が「祭りごと」なので何ら不思議な事ではありません。ただ「空気」という共通言語を持たないアメリカ人にとって「祭り」は極めて人工的に味付けされたエンタテーメントであるだけ。


■ ヨーロッパの民主主義は空気を読む ■

長い歴史の中で熟成された「空気」を国民が共有するという点に関してはヨーロッパも日本に近いかも知れません。

ヨーロッパも日本同様に官僚の力が強く、彼らの多くは元貴族の出身が多いと言われています。これは日本の高級官僚が天皇家を支えた一族の出身者が多いと噂される事と似ています。

往々にしてこれらの官僚達は大衆の民主主義に対して抑制的に働きます。行き過ぎた自由を規制し、多くの法律で国民を縛ります。

ヨーロッパの官僚達も、「国民に仕える」のでは無く、何か目に見えない「空気」に仕えている様な感じがします。だから、アメリカ程、政治がピーキーにブレる事無く、継続性を持って社会が徐々に、しかし確実に変化しています。

ただ、日本とヨーロッパの違いは国民の政治参加の意識でしょう。ヨーロッパの人々は空気に支配されながらも、確固とした支持的スタンスを持っています。これは左派も右派も同様で、ネオナチの様な愚昧な極右以外は、きちんと政治的な討論が出来る。


■ 空気を支配しようとする日本のマスコミとその限界 ■


日本人は「空気」を読む事には長けていますが、現在は確固とした政治的信条を持った人達は少ない。私達は個人の利益を最優先にしますが、一方で空気によってそれを微調節して日々を送っています。集団の利益を乱す者に対して日本の社会は厳しいからです。

日本のマスコミは「空気の形成」の為に利用され、選挙結果もこれに左右されますが、実は日本の政治は政権交代が起きても、ある程度の継続性を保っています。

継続性を担保しているのは官僚制度だと思いますが、彼らは時に政治家を利用し、あるいは時に利用されながらも、何だか良く分からない「空気」に仕える事を止めません。

小沢一郎や安倍政権は官僚人事権を握る事で、官僚機構を政治家が統制するシステムを目指しますが、森友加計問題での文科省の様に、官僚達は政治家に面従腹背しながら政治家を利用している節が在ります。

官僚組織はトカゲの尻尾切が出来るので、スキャンダルで消し去っられる政治家よりもシタタカでしぶとい。

■ 民主主義の本質は「衆愚政治」であるが、それを誰が利用するかが問題 ■

昔も今も民主主義の本質は衆愚政治ですが、実はそれを本当は誰が利用しているのかが大きな問題。

例えば、世界中を戦争に巻き込んで私腹を肥やす人物や組織であれば私達は本気でそれに抵抗する必要があります。

一方で、世界的な混乱を避けながら、少数の犠牲によって世界をより良く導こうとする者たちであるならば、それは必ずしも私達の損失にはなりません。


私は陰謀論者ですが、意外に「良い支配者」を妄想しながら世界を眺める事が多い。その方が、悪魔をイメージするよりも心穏やかで居られるので・・・。


だから、衆議院選挙を巡る混乱も、なるべく政治的ポジションを取らずに楽しもうと考えています。ただ、あまりにも見え透いたウソだけは看過できない。国民を「愚か」と為政者が考えた時、民主主義は悲惨な結果を生むと考えるから。

そして、たまには「正義」が行われる所も見てみたい。尤も、「正義」が出てくると大抵は悲惨な結果に終わる事も理解していますが・・・。「正義」を神と崇めるアメリカの民主主義が血と殺戮を生み出す様に。



サウジアラビア国王のロシア訪問・・・ますます複雑化する中東情勢

2017-10-11 06:32:00 | 時事/金融危機
 

■ サウジアラビアがロシア製の地対空ミサイルを購入 ■

サウジアラビアのサルマン国王がロシアを訪問し、地対空ミサイルS-400を始め30億ドルの武器を購入すると報道されています。

以前、サウジアラビアの外相がロシアを訪問した事はありましたが、国王の報恩は初めてです。サウジアラビア国王の日本訪問も派手でしたが、サウジアラビアは国王の居る場所が政府とされるので、国王の外国訪問には政府の要因が同行し、まさに「移動する政府」の大集団となります。

■ 「ペトロダラー」の根幹に関わる重大問題 ■

中東戦争ではアラブの雄としてイスラエルと戦ったサウジアラビアですが、国内に米軍の基地が存在するなど、実は英米の傀儡国家です。昨今はイスラエルとも関係を深め、リビアやシリアの内戦では共にアルカイーダやダーイッシュを支援しています。

サウジアラビアは第四次中東戦争の再にOPEC(石油輸出国機構)の中心国として原油の値上げに大きな役割を果たしました。この結果、世界は2度に渡る石油ショックに見舞われますが、一方で肉ションショックによって信用の低下したドルは、石油決済通貨としてその価値を保つ事に成功します。これを「修正ブレトンウッズ協定」と呼ぶ人達も居ます。

「石油に裏打ちされたドル」には重要な役割があります。アメリカはドル紙幣を世界にバラマイて、石油やその他の商品や資源を輸入しています。アメリカに輸出を行った国は、貿易収支が大幅な黒字となり、手元に大量のドルが溜まります。

ドルの金兌換制度が継続している間は、ドイツや日本などはアメリカ輸出で溜まったドルを金に換えていましたが、ニクソンショックで金兌換制が停止されると、手持ちの余剰の外貨準備は「紙切れ」同様に使わなければ価値の無いものとなってしまいました。これらの余剰のドルを日本やドイツは米国債に換える事で、金利収益を得る様になります。

これは産油国も同様で、値上がりした原油によってドルが余剰に蓄積する様になります。産油国もこれらの世用なドルを米国債で運用しました。この様にアメリカはドルを刷って世界から買い物をしますが、海外の余剰のドルを米国債の販売で米国内に還元させ、財政も拡大するという「基軸通貨国の特権」を謳歌します。

中東諸国は政情も不安定で、隣国との争いも絶えないので、手元に溜まったドルで米国債の他に米国製武器も大量に購入してきました。ニクソンショック以降の「石油に裏打ちされたドル=ペトロダラー」のシステムの中には中東への武器販売が組み込まれているのです。

米国の武器輸出の大のお得意様がサウジアラビアですが、そのサウジアラビアがロシア製の武器を調達する意味は非常に大きい。これは「ペトロダラー」というドルの価値の根幹に触れる問題なのです。

■ サウジアラビアとイスラエルに冷たかったオバマ政権 ■

サウジアラビアのロシアへの接近を間接的に促したのはオバマ政権です。オバマ政権はサウジアラビアとの外交関係を軽視していました。さらにイスラエルのネタニヤフ政権とも距離を取っていたので、つれなくされた同士のイスラエルとサウジアラビアはこの時期に関係が深まります。

さらにサウジアラビアはアメリカの仮想敵国であるロシアに外相を訪問させるなど、今までになく対ロ関係を深めて行き、その結果今回のサルマン国王のロシア訪問とロシア製武器の輸入に繋がっています。

■ トルコもクーデター以降ロシアに接近している ■

トルコも中東の大国の一つですが、NATOに加盟していたり、EUの加盟を目指したりと、米欧寄りの姿勢が目立ちました。シリア内戦でも、エルドアン政権とその情報機関は反政府組織(ダーイッシュ)を支援し、トルコ経由で武器を調達させていました。一方でエルドアン大統領の息子はダーイッシュ達が油断からタンクローリーで運び込む原油を買い上げてそれを売りさばいていました。

この時期、トルコとロシアの関係は非常に悪化しており、アメリカがトルコに配備する迎撃ミサイルにロシアは強い不快感を示していました。

この関係が変化し始めたのはトルコ空軍機がシリア作戦に参加したロシア空軍機を撃墜した事件からで、プーチン大東慮に睨まれたエルドアン大統領の態度が急激に変化します。さらにトルコ国内で起きたクーデター事件以降、トルコは急激にロシアとの関係改善を図り、地対空ミサイルS-400などをロシアから調達する協定を結びます。

■ 中東に残された3つの大国 ■

かつて群雄割拠した中東地域ですが、アメリカによって外部から、或いは内部から政権が崩壊させられ、残された安定した大国は、イラン、サウジアラビア、トルコのみとなりました。(エジプトを入れるかは微妙・・・アフリカですし)この3つの国とイスラエルを含めた力関係が今後の中東情勢に大きな影響を与えます。

イランはサウジアラビアと完全に敵対しています。その原因はサウジアラビアの油田地帯に多く住むシーア派住人をイランが焚きつける可能性がある為で、両国関係の悪化は止める事が出来ません。

サウジアラビアとトルコはシリア内戦でのダーイッシュの支援などで共同歩調を取っていました。これには米英の影がチラつきます。しかし、トルコが急速にロシアに接近し始めた事で、両国の関係も微妙に変化しています。

トルコは国内にクルド人勢力を抱え、この独立運動に手を焼いて来ました。現在、英米はダーイッシュに変わり、クルド人武装集団をシリアやイラクの内戦の先兵に利用し始めており、イラク北部の油田地帯でクルド人が独立を勝ち取ると、トルコ国内のクルド人も刺激を受けます。そこで、トルコのエルドアン大統領は、英米と距離を置き、ますますロシアに接近する姿勢を強めています。

これに張り合うかのごとく、サウジアラビアのサルマン国王がロシアを訪問しS-400を始め大量の武器購入を発表すますが、即座にトルコはロシアからの武器調達に追加条件を提示してサウジを牽制しています。

この様にロシア接近を強める中東の三か国ですが、それぞれの国は反目しあっているので、微妙なバランスの上に均衡状態が作られつつあります。そして、イスラエルはその微妙な均衡の中で安定を確保しています。

■ ドルの存在を脅かすロシア ■


アメリカがシェールオイルを開発した事で、かつての「ペトロダラー」の循環に大きな変化が出ていますが、産油国は原油安を仕掛けてアメリカのシェールオイルを牽制しています。そして、ロシアも巨大な産油国ですから、この原油戦争には無関係では居られません。

リビアのカダフィー政権が倒された背景には、彼が石油決済通貨にアフリカ・ディナールを用いる構想を持っていた為ともいわれており、それでかアメリカは基軸通貨の価値を担保するドルによる石油決済を死守する必要があるのです。

ロシアは中国との間で両国通貨での決済を可能にするなど、ドル基軸体制から抜け出す方向を模索しています。仮想通貨のイーサリアムの導入検討にも積極的です。

■ ロシアを封じ込めていたオバマと、ロシアの関係改善を模索したトランプ ■

オバマ政権はロシアとの関係は良好とは言えませんでした。一方、トランプ大統領は選挙戦ではロシアとの関係改善を主張していました。

ところが、トランプが大統領になるや、ロシアンゲート事件が注目され、選挙戦で彼を支えていた閣僚の多くが辞任するなど、世界のロシアやプーチン贔屓の陰謀論者達を失望させる動きに代わっています。これをして陰謀論者達は「トランプが軍産複合体に屈した」と評し、トランプを擁護しています。

一方、トランプが大統領選挙で善戦し始めた頃より、彼の周りでキシンジャーの影がチラホラと目に付き始めました。国務長官のティラーソンをトランプに推薦したのもキシンジャーだと言われています。

キッシンジャーは大統領選と前後してロシアを訪問するなど、90才を越えた老人とは思えない行動力を見せています。

一方、北朝鮮問題などを巡り、ティラーソンがトランプの事を「間抜け」と言ったとか、言わないとかがニュースを騒がせていますが、Twitterで呟きまくる大統領に、影の大統領が手を焼いているといった所でしょうか。

ここら辺、オバマ政権の初期で影の大統領とも言えるヒラリーがリビア問題などで暗躍する一方で、オバマが平和のイメージを振りまいていた「阿吽の呼吸」とは別の、ギクシャクしたものを感じなくもありません。

ティラーソン国務長官の辞任説も取り沙汰されていますが、トランプ政権の実権を誰が握っているのかを考えれば、これはあり得ない・・・或いは、申し越し種まきしてからヒラリー同様にティラーソンも政権を去るのかも知れません。

「間抜け」とは、与えられた役割を上手くこなせないトランプを叱責した言葉かも知れませんし、或いは政権が一枚岩で無いと見せかけるブラフかも知れません。

何れにしても、トランプを担ぎ挙げてロシアとの関係改善を模索していたかも知れない人達の目論見は崩れつつあり、同時にロシアはドル基軸体制を根幹とするアメリカの覇権の切り崩しを着々と進めています。


まあ、ここら辺は表のプロレスの台本なので面白おかしく観戦するに限りますが、北朝鮮問題も含め、今後世界の枠組みがどう変わっていくのか、私達はソ連崩壊に次ぐアメリカ帝国の崩壊というショックドクトリンの観客となるかも知れません。陰謀論者的にはワクワクする昨今です。