■ 紙の金と現物の金 ■
拍手コメント欄に「金(Au)」についての記事が無いのは・・・といういご意見を頂きました。私自身、金がはたして資産保全となるのか疑問に思う所もあり、積極的には書いて着ませんでした。
はっきり言えることは、「金ETF」という「紙の金」はいずれ価値を失います。現物の「金」は流動性が低いので、「金の預かり証書を証券」したもの金ETFですが、どうやら現物金の裏打ち以上の金ETFが市場に出回っている様です。一節にはその量は100倍とも・・・。
これらの大量の金ETFが出回る事で、金の価格は実際よりも低く抑えられて来た可能性があります。
ドルや通貨の信任が揺らぐと金の価格が上昇します。これは通貨価値の毀損に備えて現物で価値を保存しようとするからです。金は古来より通貨として機能してきましたから、現在の信用通貨制度が崩壊しても金の価値は失われないという「信仰」が存在します。
各国の中央銀行や政府が金を備蓄しているのも、ある意味信用通貨の信用確保の一部が、未だに金に依存している事の表れなのかも知れません。
大規模な量的緩和で世界的に通貨の価値が薄れていますが、その反動で本来は金の市場価格は高くなるはずです。実際に1800(ドル/1オンス)まで上昇しました。しかし、その後、金価格は金EFTの売り浴びせによって下落しています。
■ 現物金を買い集める新興国 ■
金EFTによって現物金の価格も低く抑えられているので、新興国は現物金を買い集めています。IMFなども新興国に金を売却しているので、新興国に金を保有させようというインセンティブが働いているのかも知れません。
元々通貨の価値が安定しない新興国では、庶民の間でも「金信仰」は根強く残っています。ですから民間の金需要も高く、政府と民間の両方で現物金の備蓄が進んでいます。
又、金貨の需要もこの所増大しており、世界的には、金価格が抑制されている内に、現物金を確保する動きが強くなっています。
■ 金は投資対象でもある ■
一方で金は投資対照なので、経済や市場の動向で価格が大きく変化します。金EFTによって流動性が飛躍的に高まった事も、金価格の変動を後押ししています。
だから、表面的には「金の価値」は日々変動しており、通貨危機が人々の意識から遠のけば、金価格は下落します。金を持っていても、損をすうる可能性もあるのです。
■ 金は通貨の代替にはならない ■
通貨の価値が疑問が生じると、通貨を金兌換制にして通貨の価値を確保する動きが活発化します。これは金が価値があると言うよりも、金の量が限られているので、通過の発行量をそれによって制限するという意味あいが大きいと思われます。
金の備蓄量は国力と相関関係を持っていますから、国力のある国は通貨を多く発行でき、経済を活性化でき、金備蓄の少ない国は、通貨を少ししか発行出来ません。
戦後、ドルは金兌換通貨でしたが、ニクソンショックによって金兌換を突然停止します。
本来ならば「ドルは紙切れ」になったので、暴落するはずですが、機軸通貨であるドルは貿易決済、特に石油の決済通貨であったので、ドルの需要は高く、結果的にドルは石油兌換紙幣的な存在として生き残ります。
これを「修正ブレトンウッズ体制」などと呼ぶ事もあります。
この時期、多分、意図的に第4次中東戦争が引き起こされ、オイルショックが発生した事で、ドルの需要高まりました。原油価格は数年で10倍程度になりましたが、10倍のドルが必要になったとも言えます。
この様に、現代の世界においては、通貨の価値は「石油やその他の資源が買える」事に裏打ちされています。要は通貨の価値をコモディティーが支えています。
■ IMFのSDRはコモディテーに支えられた通貨バスケット? ■
リーマンショック直後、ドルの信認が短期的に揺らぎました。
この時フランスのトルシエ大統領や中国などぼ新興国が、ドルに変る機軸通過を作ろうと画策します。
IMFはニクソンショックの時に、ドルの崩壊に備えSDR(特別引き出し権)という制度を作っていました。各国の通貨を決まった比率でバスケットに入れ、その信用においてIMFがSDRを発行するという制度でしたが、ドルが価値を保ったので、この制度はあまり活用されていませんでした。
この通貨バスケット制のSDRに新興国通貨も加え、場合によっては金やコモディテーとリンクさせて世界共通通貨化しようというのが当時の試みでした。
しかし、ドルの信認が揺らがなかったので、SDRへの動きは減速して今に至ります。
■ もしドルが崩壊したら ■
しかし、FRB始め日銀やECBも狂った様にマネタリーベースを拡大する現在、通貨の信任には大きな負の圧力が掛かっています。
もし、仮にアメリカがデフォルトしてドルの信任が失われたら、世界のどの国の通貨も信用を失い事になります。「通貨が紙切れに過ぎない」と人々が意識した瞬間、人々は通貨を現物に変えようとします。
これにより高いインフレが発生し、お金の価値はどんどん低下してしまうのです。
この時、現物として尤も人気が高まるのが「金」でしょう。
後はダイヤなども対象となります。
これを見越して、現在世界のお金持ちたちは「金現物」や「ダイヤ」、或いは「絵画」などを買い集めています。市場では商品が不足し、価格が高騰しています。
これは量的緩和の影響が、これらの市場で局地的なインフレを発生させているとも言えます。
■ 金の価値は失われないかも知れないが、市場統制されたり接収される可能性がある ■
私が金に関して「少し怖いな」と思うのは、国家的危機に際して金の市場が統制されたり、あるいは、金が国家に低価格で接収される可能性が否定出来ないからです。
これは、金の価値が高い故に発生する事です。
実際に過去にアメリカでも金は接収された事があるかと記憶しています。
■ 金は結局投資対象 ■
接収などという極端なケースまで考慮すれば、金の価値は「絶対」では無く、やはり投資対象と考えるのが正しいのかも知れません。
IMFのSDRではありませんが、合理的な基軸通貨が出来た場合、通貨の価値を金に依存しなくなるケースも発生します。
その場合は金は宝飾品としての価値と、工業用の価値があるだけの金属になります。この場合は価格は需給によって決まるので、金価格が現在よりも安くなる可能性が高まります。
世の中に絶対などというものが存在しない限り、金の価値も絶対ではありません。しかし、一方で、現物の金はいまだに「信仰」の対象であるので、資産保全の最有力候補である事は疑いの無い事実です。