6話からなる短編連作。ベッドタイムをテーマにして、吉田智久さんがフィリピンの演劇人と共同で作った作品。様々な社会問題を織り込んだいろいろなタイプの作品があり、それぞれに楽しめる。テンポのいいオープニングの「ドゥルセの胸に1000の詩を」。この芝居の、ナイフで刺すという行為の繰り返しなんてとても新鮮で面白い。
ただ、最初は字幕に慣れなくて、ストーリーが上手く入ってこなくて困った。字幕を追ってい . . . 本文を読む
ハリウッド大作『ブラザーズグリム』と併行して撮られた『ローズ・イン・タイドランド』はとても小さな作品だが、傷心のテリー・ギリアムが自分ひとりの趣味の世界に引き籠って作った、とてもチャーミングで残酷な寓話だ。
幻の大作『ドンキホーテ』の顛末はドキュメンタリー映画『ロスト・イン・ラマンチャ』の中で、ほんの少し垣間見ることが出来るが、あの痛手から7年。ようやく立ち直りもう一度作家活動を再開した彼の . . . 本文を読む
こんなにもくだらない映画を見たのは何年ぶりのことだろうか。仕事が忙しく、時間もなくなり、最近ではだんだんこういう映画は最初から敬遠してしまう傾向にある。昔はホクテンザとか今は亡き梅田キネマ(ヘラルドのゴミ映画コレクション)とかで、散々こんな映画を2本立で見ていた。ほんとに暇だったんだなぁ。
今ではタダでもこんなのは見ない、はずだったのに、見てしまったよ。もちろんタダで。もう、笑うしかない。
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鶴橋康夫のドラマに魅せられてから、既に20年くらいが経つ。浅丘ルリ子とのコンビで作られた数々の秀作。2時間の単発TVドラマというスタイルの中で、ここまで作家主義を貫く作品を、TVの世界で作り続けてこれたのはなぜなのか。不思議だ。
そんな彼がついに劇場用映画を手がける。題材なんて何でもいい。ただ、彼が映画を撮ること、それだけで大事件なのである。渡辺淳一のベストセラーの映画化なんていうパッケージ . . . 本文を読む
昔懐かしのジュニア小説の作品世界を、今に再現したようなお話で、この幼くも純粋な世界にどっぷり浸かって、彼ら2人に寄り添うようにして、この芝居を見れたなら幸せなのではないか。
あうん堂の杉山晴佳さんは、今回は職人に徹し作家としての顔は一切見せず黒子になりきりこの芝居を作る。とても賢明な判断である。原作のイメージを損なわないことをまず大切にして、丁寧にそれを舞台として置き直していく。演劇としての . . . 本文を読む
小原さんは、作品のバランスを欠くことも厭わない。ギリギリまで、この作品の中にありとあらゆる情報を放り込んでいく。混沌の中でその先に見えてくる光を提示できたらいいと思う。
但し、在日朝鮮人の姉弟を中心に捉え、彼らがこの国で生きていくことの不安と恐怖をしっかり見据える作業は怠らない。ここだけは絶対外さない。
そして、彼らを囲むこの町の人たち(日本人)という図式のなかでドラマを作る。この国で生 . . . 本文を読む
映画としては、これはかなりきついと言わざる得ない。きっと、つまらないというブーイングの嵐が聞こえてくる。僕にしてもこれを手放しで褒める気にはならない。ただ『blue』の安藤尋が次なるステップとして自分に課した宿題はかなり過酷なものだと想像がつく。これは単なる一人よがりの映画ではない。
人と人の関係を突き詰めて行ったなら自分と相手だけになってしまい、それをとことんストーリー性を排除して見せてい . . . 本文を読む
《血湧き肉踊る》《手に汗握る》なんて、そういう惹句がとてもよく似合う映画がやって来た。たった1人で10万の敵を迎え撃つアンディ・ラウ。それだけでぜひ見たい、と思うはず。
こういうタイプの戦争映画は最近あまりなかったがこれに続き『蒼き狼』も公開されちょっとしたブームが到来か?
モブシーンが山盛りあり、見ごたえのある大作になっている。だが、墨家の非戦、兼愛という考え方が、映画自体をスリリング . . . 本文を読む
かなり楽しみにしていた。漱石の『夢十夜』をベテランから若手まで11人の監督の手でどんなふうに料理されているのだろうかと、出来上がりをずっと待っていた。なのに、あまりと言えばあまりのくだらなさ。情けない。こんな映画をどうして作ったのか。けっこうお金もかかっているのだが。
自由きままにするってこんなにも愚かなものを作ることになるのか、と思うと悲しくなってきた。見た目だけの派手さを追ったくだらない . . . 本文を読む
見終わった時、こんなに面白かったのに、なぜか少し不満が残った。それが何なのかは、すぐに分かる。映画はここで終わったわけではないのだ。ここからが、本当の始まりだったことに気付いた時、一刻も早くこの続きが見たいと思った。それが不満の正体だ。こんな気分はほんとに久し振りのことである。
「おいら、まだ女なんかにならない」と百鬼丸(妻夫木聡)に向けて告白するどろろ(柴崎コウ)の姿を見た時、ちょっと涙ぐ . . . 本文を読む
小原さんは『シークレット・ライフ』で村上春樹の文体で芝居を作り、小原版『ねじまき鳥クロニクル』を3部作として仕立てた。さらに『大丈夫な教室』では大教大附属池田小児童殺傷事件を扱ってホラースタイルで、人間の内面に迫り、新境地を開いた。昨年は、JR福知山線脱線事故を題材に『鉄橋の上のエチュード』を作り、今回、満を持して挑むのは北朝鮮による拉致、核実験問題を中心に据えて、憲法第9条に迫る壮大な物語であ . . . 本文を読む
事件を向こう岸の出来事として新聞で眺める。自分とは関係ないことだ。だが、現実の、この僕らが生きている世界で事件は起きている。主人公である作家は事件をハサミで切り取りコラージュさせて、自分の小説に散りばめてみせる。
自らの欲望を抑えることで、事件のない世界で生きる僕たち普通の人たち。そんな人たちが、ある日、気付くと知らない場所に連れてこられて、その閉ざされた空間に閉じ込められる。この芝居の8人 . . . 本文を読む
とてもバカバカしい映画だ。でも、それが楽しい。単なるバカ騒ぎではなく、時代がバカ騒ぎしてたバブルの頃に入り込んで、そんなバカを辞めさせるために奮闘するのだが、そのためにまた大騒ぎする、というちょっと手の込んだ趣向の映画なのである。要するに映画全体が壮大なバカ騒ぎなのである。
80年代後半、一見風俗の表層を軽く撫でたように見せて、正統派の青春映画を作り、若い世代の心をがっしり摑んだ . . . 本文を読む
相変わらず実験演劇のようなことをしている。様々なスタイルにトライしてみようとする姿勢は興味深い。その結果なんて、別にどうでもいいみたいだ。今は、若いんだから、やりたい事を思いっきりやって悔いのないようにしよう、とでも思っているみたいで、そんな<やんちゃ>なところは嫌いではない。これに内容が加味されたなら凄い芝居になる日が、そのうちやってくる。と信じている。
今回は、まるで掛け合い漫才のような . . . 本文を読む
先日見た『まぶしい一日』は韓国サイドから描いた日本と韓国を描いた映画だったが今度は、日本サイドからのアプローチである。花堂純次監督はとても誠実に描いていて好感が持てる。事件自体の意味を大きくメッセージとして捕らえるのではなく、そこに到るまでの彼の気持ちを丁寧に追っているから事故が映画全体から浮いてしまうこともない。事故がなかったなら、それでも、それなりに映画として成立するように作られてある。日韓 . . . 本文を読む