なんとなく市川崑監督の映画が見たくなり、「日本映画専門チャンネル」に入った。今月は市川監督の映画がたくさんオンエアーされている。まだ見たことのない作品も何本かある。それって、虫の知らせだったのか。
一昨日『処刑の部屋』を見た。石原慎太郎原作、川口浩、若尾文子主演の作品だ。昔見たはずだが、とても新鮮だった。モノクロの昔々の映画がどうしてこんなにモダンなのか、なんて言わない。これは 市川崑監督作 . . . 本文を読む
今年77歳になった母親と2人で見に行ってきた。映画の照べえ(この家族は父の提案からみんな「べえ」をつけて名前を呼ぶ。)と、うちの母親がほぼ同学年であることに気付いて、それまで母べえの目線で見ていたのだが、だんだんこの子の目で映画を追い始めることになった。それは原作(野上照代のノンフィクション)も同じだろう。
途中からは照べえ(佐藤未来)の視点から当時の僕の母親の姿(もちろん、僕はその時、生ま . . . 本文を読む
これは一見単純なメルヘンチックなファンタジー映画の装いをしながらも、その実、一筋縄ではいかないとても捻くれた映画である。ほのぼのとした心地よい感動なんて期待したら、がっかりさせられること必至だ。いったいなんなんだ、と腹を立てる人も多いはず。
しかし、それはこの映画が不出来だからではない。また、パッケージングと現実の映画との落差は宣伝のせいではない。これはこの作者が確信犯的にそこを狙っているわ . . . 本文を読む
犬童一心監督の作品はすべてリアルタイムで劇場で見てきたのに、これだけは公開から半年以上も遅れてDVDで見ることになった。なんだか食指がそそられなかったのだ。
同時期公開の松岡錠司監督の『東京タワー オカンとボクと、ときどきオトン』が、あまりに素晴らしすぎて、この手の母子ものはもういいかな、なんて思ったことも事実だろう。しかし、それ以上に、さだまさし原作で、母と娘の和解を描くこの映画の中に、ど . . . 本文を読む
佐々部清監督作品なので、見た。なのにこんなにもユルユルの焦点ぼけまくりの映画が出来るなんて思いもしなかった。これなら『サラリーマン専科3』とでもタイトル変更したほうがいいのではないか。「吉田拓郎」であることの意味がここまでない映画になっているなんて、どうしたものだろうか。これを拓郎へのオマージュなんて言わさない。
70年代のフォーク世代があれから30年経てどうなったのか。あの頃の夢は何だった . . . 本文を読む
この映画を見た時、あまりのことで、唖然とした。だから、その驚きしか書けなかった。あまりの批評で、自分の書いたものを読みその興奮振りに笑えた。そこで、もう少し蛇足覚悟で書いてみよう。
この映画を見て唯一「あっ!」と思った瞬間がある。「結局、やりたいことをやっている時間が幸せなんじゃないかな」なんていう場面だ。ワールドカップスキー(そんな感じのネーミングだったよな)に出場して、若い頃から村の期待 . . . 本文を読む
2時間37分の大作である。リドリー・スコットはいつもの通り細部まで全く手を抜かない。完璧に作られた工芸品のような映画である。68年から75年のベトナム戦争終結の年まで。ハーレムで麻薬を低価格で良心的に(!)販売していた男(デンゼル・ワシントン)の物語である。同時に、正義のために麻薬組織を撲滅するという執念に取り付かれた捜査官(ラッセル・クロウ)の話でもある。マイケル・マンの『ヒート』を思い出させ . . . 本文を読む
北野武監督第13作。このタイトルとあのポスターを見た時から、全く見る気を失くしてしまったのだが、それでも「世界のキタノ」映画なので、一応DVDで見ることにした。(おまけでカンヌ用の短編『素晴らしき休日』も付いていて、なんだかお徳な気もしたので)
それにしてもここまで自分を揶揄するような映画をよくも平気で作れるものだ、と思う。自虐的というのとは、ちょっと違う。そんな卑屈さなんて微塵も感じられな . . . 本文を読む
正直いってちょっと飽きてきた。豊島ミホの小説のワンパターンにである。どれも同じ。それぞれはとても切ない話で、胸に沁みてくるのだが、いくらよく出来ていても、またか、と思ってしまうのも正直なところだ。
大学生活を描いたことは、今までと少し違うけど、男の子を描いた部分はどうしても弱いし、女の子を描いた部分は、今までの高校生を描いた作品とあまり変わらない。6話からなるオムニバスというスタイルもいつも . . . 本文を読む
ロバート・アルトマンがその人生の最期に撮った映画。彼の大好きな音楽もので、群集劇。上映時間はあまり長くはない。こんなにもあっさりした映画を遺して逝ってしまった。なんだか、潔い気もする。ここには、彼を慕った大スターたちが大挙して出演している。でも、当然ながらこれ見よがしのスターたちの競演にはなってない。
3時間を越える大作となった『ショートカッツ』以降アルトマンはもうあれ以上の作品を作る気はな . . . 本文を読む
テイク・ア・チャンス プロジェクトで、ストレート・プレイを見せて貰えるなんて、思いもしなかったから、かなり驚いてしまった。事前になんの知識も入れずに見たので、イヨネスコの『椅子』という戯曲を題材に岩下徹さんがどんなふうにアレンジしてパフォーマンスとして見せてくれるのか、なんて思いながらAIホールに行くと、なんと、きちんとしたセリフ劇で、しかも2時間もの大作。役者は3人で基本的には2人芝居。岩下さ . . . 本文を読む
久しぶりに舞台で大野美伸さんを見ることが出来たのが嬉しい。外輪さんの、というよりもエレベーター企画のミューズである彼女が、エレベーター企画の舞台から離れて久しい。ずっと彼女が帰ってくるのを待っていたから今回何より先にそのことから書くのは当然だろう。彼女のいないエレベーター企画なんて本当のエレベーター企画ではない。
ようやく彼女が戻ってきて、08年エレベーター企画が活動を再開した。今回はなんと . . . 本文を読む
昨年公開された秀作『パンズ・ラビリンス』を思わせる映画だ。これはまさにあの作品の少年版とでもいうべき映画だ。戦争を背景にして、父親の不在を隠し味にしているところまでよく似ている。
スコットランドの風景が主人公の少年の孤独な心情を見事に代弁している。寡黙な映画なのもいい。アメリカ映画はこの手のファンタジーを作らせると安っぽいものにしか作れないのは、ストーリーに寄りかかりすぎることと、安易なSF . . . 本文を読む