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映画・演劇のレビュー

尼崎ロマンポルノ『鋼鉄スベカラク』

2009-03-08 08:41:59 | 演劇
 作・演出を担当した橋本匡のイメージが全開した大作。今までの実在の事件を題材にした作品から、進化して今回はオリジナルで、世界を作ろうとした。奔放なイメージの飛躍が作品世界を広げた。それをサカイヒロトの美術が見事に支える。乱暴な展開はこの際目を瞑ろう。イメージ優先の芝居作りは一部の反感を買う恐れもあるが、そんなことは気にしない。外野の声には耳を傾けるな。自分のひとりよがりでいいのだ。これはかって石井 . . . 本文を読む
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『ハルフウエイ』

2009-03-08 08:09:39 | 映画
 これは酷い映画だ。これと同じスタイルでこの映画のプロデューサー岩井俊二監督が以前撮った『花とアリス』は傑作だったのに、この映画は表面だけ真似をしてその実、まるで中身のない映画に仕上がっている。これでは映画とも言えない。人気脚本家、北川悦吏子が脚本監督を担当したこの春一番の期待作だったのに。どうしてこんなことになったのか。  誰もいないグランド。放課後の教室。土手の横の小道。自転車で風を切って走 . . . 本文を読む
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『北辰斜めにさすところ』

2009-03-04 20:59:30 | 映画
 神山征一郎監督が60年前の旧制高校の子供たちを描く。そして、60年後である現在、老境に達した彼らが、100周年となる今年、五校と七校(現熊本大と鹿児島大)野球部による伝統の一戦を両校の中間地点である人吉で開催するという話を並行して描く。  今こういう話を映画化できる監督は神山監督しかない。若い作家はこういう企画を受け入れないし、興味も持つまい。昭和10年代を再現することはかなり困難だったろう。 . . . 本文を読む
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『さよなら。いつかわかること』

2009-03-04 20:22:37 | 映画
 『チェンジリング』を見たから、というわけではないが、続いてイーストウッド関連の映画をもう1本見た。この映画の音楽を彼が担当した。自作以外で音楽監督をすることはなかったらしい。題材がいかにもイーストウッドらしい。若い監督(ジェームス・C・ストラウス)の作品を応援する意味でも、彼がこの作品に関わった意味は大きい。  軍人を妻に持った男(ジョン・キューザック)が、イラクでの妻の戦死という事実を幼い子 . . . 本文を読む
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小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』

2009-03-04 18:36:53 | その他
 今年のベスト・ワンである。まだ10ヶ月もあるのに気が早いだなんて言わないで欲しい。1年間本を読むとどれだけの作品に出逢えれるのかなんて、自分が一番良くわかっている。だから言うのだ。たぶん、間違いはない。これは小川洋子の数ある傑作の中でも突出した作品だ。  老人専用マンション・エチュードでの老婆令嬢との再会のところから、もう涙は止まらなかった。優しすぎる。ラストの死まで、ずっと泣いてた。いつもの . . . 本文を読む
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『ペネロピ』

2009-03-02 23:09:11 | 映画
 若いスタッフが力を合わせてこのとても優しくて力強いファンタジー映画を作り上げた。監督は新鋭マーク・バランスキー。主演はクリスティナ・リッチー。思いがけない贈り物だ。  この丁寧に作られた愛の寓話を堪能する。呪いをかけられて豚の鼻で生まれてきた娘は、外部の人たちの目に触れないように屋敷の中に閉じ込められて育った。年頃になった彼女をなんとか幸せにしようと、彼女の両親は彼女を妻に迎えてくれそうな男を . . . 本文を読む
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『ビルと動物園』

2009-03-02 22:38:22 | 映画
 とても寡黙な映画だ。主人公の2人はほとんど喋らない。自分の気持ちを言葉にしない。映画自体も説明になりそうになると、その部分をはしょってしまう。だからわかりにくいシーンもある。そのくせ何でもないシーンはけっこうじっくり見せる。こういうスタイルを敢えて斉藤孝監督は選んだ。  都会で暮す30歳前後のOL女性(坂井真紀)のなんでもない日常をスケッチすることで、彼女の不安と孤独を日常の中に埋もれさせて見 . . . 本文を読む
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彗星マジック『朔』

2009-03-02 21:05:10 | 演劇
 こういう新鮮な出会いが何よりもうれしい。初めての劇団と接して思いがけない刺激を受けた時、あぁ、芝居見ててよかったなぁ、と素直に思えれる。手垢のついたスタイルではなく、かといって特別斬新なものでもない。ある意味ではオーソドックスな語り口を見せるこの芝居のとてつもない優しさに触れた時、芝居という表現の可能性を信じたくなる。  もちろんまだまだ荒削りだし、表現としての拙さは否定しない。しかし、最初か . . . 本文を読む
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オリゴ党『主人公は死んでいる』

2009-03-02 20:35:00 | 演劇
 かなりあやういところで芝居作りをしている。それってもうずっと昔から同じで今に始まったことではない。岩橋さんの良さが十二分に発揮された傑作『カーゴカルト』に続く新作である今回の作品は、彼の良さと悪さが両方でた芝居だ。そういう意味で、彼の現地点での到達点を示すものとも言えそうだ。  彼の弱さは演出力のなさ、である。作品世界を強固のものとする作家としての強い意志が作品に漲ってこない。だから、詰めが甘 . . . 本文を読む
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『1408号室』

2009-03-02 20:15:36 | 映画
 スティーブン・キングの短編の映画化であるこの作品はよくあるホラーなのに、ギリギリのところで下品にはならずまとまった。話自体はありふれている。映画自体もかなり危ないところまで、行っている。もう少し壊れてしまうとつまらない映画に成り下がる。かと言って、もう少し手前で止めていたなら、もの足りない映画になる。エンタメとアートの境界線上であやうくバランスをとっている。  B級ホラー映画はもうごまんとある . . . 本文を読む
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Ugly duckling 『ト②ランク』

2009-03-02 19:46:07 | 演劇
 2本目はオーソドックスな芝居の作り方で見せる。サイレント・カフェという喫茶店。閉店30分前にやってきた女。カフェのオーナーと彼女とのやり取りで見せる2人芝居。吉川貴子さんと山田一幸さんである。『100年トランク』のサンズを主人公にした1篇。  本編では語られなかったバラバラ死体になる前のサンズのお話を凝縮された時間の中でさらりと見せる。ワン・エピソード読みきりとして完結する。とは言え、これだけ . . . 本文を読む
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