2011年公開の『神様のカルテ』の続編。前作も素晴らしかったが、今回は前作を超える。深川栄洋監督はこの難しい素材を見事に映画化する。医療現場ものは多々あるけど、こういう目線の作品は少ない。患者の側に立ったわけではないのに、ちゃんと患者の痛みが医師のものとして伝わる。医者が高みから患者を診ているのではなく、同じ目線から見ているからだ。そこに共感する。それは「医者としてしゃべっているのではない。人間 . . . 本文を読む
「生きているだけで恥ずかしい」というコピーに心惹かれて読み始めた。というのは、嘘です。西加奈子の新刊だから、もうそれだけで読むし。
それにしてもこのあからさまな『人間失格』へのオマージュ(?)は、すごい。「葉太」なんていう主人公のネーミングと、書き出しだけでみんな、あっ、と思うだろう。自意識過剰の演技男の愛読書はもちろん太宰だと、ご丁寧にもちゃんと出てくる。こういう読者へのやさしい配慮もいい。 . . . 本文を読む
こういうどうでもいいようなアクション映画を見たい気分だったので借りてきた。『テッド』の、というよりも『猿の惑星』のマーク・ウォールバーグ主演のアクション映画ということしか事前の知識はなかった。それなりに派手で楽しい映画だろう、というくらいの期待度で見始めたのだが、アクションという感じではない。それよりも、これはまず運び屋の話で、そこには確かにアクションシーンもある、という感じだ。
麻薬の密輸 . . . 本文を読む
僕にとっての初めての海外は台湾だった。それまでもずっと台湾にあこがれていた。それはこの映画のプロデューサーでもあるホウ・シャオシェン監督の映画を見たからだ。彼の映画には『坊やの人形』で初めて出会った。そして『童年往時』に夢中になった。あんなにも懐かしい風景がなぜ台湾にあるのだろうか、と思った。自分の原風景がそこにはあった。日本人なのに、台湾がなつかしかった。
初めて自分の目で見た台湾は飛行機 . . . 本文を読む
なんと2年振りの2劇本公演ということらしい。2劇は毎年、必ずやってくるから、そんなにもご無沙汰していたなんて思わなかったけど、そうだったのだ。(でも、2劇を忘れていたのではない。断じて。僕に限って忘れるなんてことはない。)前回の『かなこるむ』以来となる。驚きだ。だいたい受付のところで音間哲さんから「お久しぶりです」なんて言われて、「えっ!」と思ったほどである。
前回もそうだったが、今回もまた . . . 本文を読む
大阪アジアン映画祭での世界初上映で、いまおかしんじ監督のこの最新作を見る機会を得た。「世界初上映」ってなんだかドキドキするじゃないか。しかも監督以下、メインキャスト(主演の工藤祥子、伊藤猛)に脚本の佐藤稔さんや、役者だけでなくプロデューサーも兼ねる速水今日子さんも交えた豪華ゲストによる挨拶と終映後にはアフタートーク、Q&Aもあっての大盤振る舞いだ。平日のレイトショーでいささか人は少なかったけど、 . . . 本文を読む
こんなばかばかしいお話を、こんなにも本気で見せられるとは思いもしなかった。ふざけているのではない。大真面目だし、真剣だ。それだけにおかしい。まずはハゲの話であったりする。そのハゲを魅力的なものにするための油が登場して、教授に紹介された男から、その秘密を享受されるために狭いユニットバスに男同士で同時に入ることになったり、一体これはなんなのだ、というような展開を見せる。どんどん話は想像もつかないよう . . . 本文を読む
当日パンフで劇団オニガシラ一座公演の「ごあいさつ」があり、芝居はもちろん劇団オニガシラ一座の公演として始まる。今回のオリゴ党は、岩橋貞典さんのお膳立てするギミックが満載された作品で、一体どこに帰着するのか、最後の最後までわからない。しかも、かなり危うい構成になっており、すべってしまうばかりか、不時着する可能性も多々あった。だから、見ながらかなりドキドキしたのも事実だ。昔の岩橋さんならきっと途中で . . . 本文を読む
THE・ガジラの鐘下辰男の作品を武藤豊博さんの演出で贈る。昨年の『温室の花』も落ち着いたタッチの慎ましい作品で、劇団大阪の演出家として、あれはとても好ましい作品になっていたのではないか、と思ったが、今回は前作以上に武藤さんの想いが前面に出た作品で、興味深く見ることが出来た。2時間20分の大作である。舞台美術は素晴らしい。さすが老舗劇団だ。こういうちゃんと作りこんだ空間で演じられることは若い役者た . . . 本文を読む
まだベルリンに壁があった時代。1980年。あと9年で壁がなくなるなんて、誰もがまだ知らなかった時代の話。ある女医が東ベルリンからその村にやってくる。説明のないまま話が進行していくから、最初は何が何だか分からないままだ。ただ、彼女の行動を見守ることになる。せりふもほとんどない。自転車に乗り、病院と自分の住む部屋を往復する。部屋にはほとんど何もない。生活の形跡すら感じられない。そこはただ、寝るだけの . . . 本文を読む
『ランチのアッコちゃん』で衝撃を受けた柚木麻子のそれまでの作品を読むことにした。というか、たまたま図書館にこの本があっただけ。本屋大賞ノミネート作家特集なんていう企画で、立てかけてあったから手にしただけなのだが。
でも、彼女がおもしろいのは、これで確定的になった。今回も食を巡るお話にもなっていて、それってこの作家の武器なのだな、と思う。でも、それはあくまでも武器であって実力はそれだけではない . . . 本文を読む
震災から3年が経とうとしている。ドキュメンタリーを中心にしてたくさんの映画が作られている。そんな中、本格的なドラマや映画がここにきて登場した。先日見た山田太一によるドラマ(『時は立ちどまらない』)は素晴らしかった。あの設定はかつての山田ドラマの傑作『岸辺のアルバム』を思わせる。山田太一の描く世界はあくまでも家族の物語だ。山田さんにしか描けない作品だった。とてもよかったと思う。だけど、この映画を見 . . . 本文を読む
かなり期待したのだけど、少しがっかりな1作だった。大統領の執事という立場から、黒人問題をどんなふうに描くのか、ということが、この映画の課題だったようだが、「こういう感じで、今まで本当に大変だったけど、こんな歴史があって今の時代があるのだ」的なお勉強のような描き方は好きではない。
主人公の彼が自分に与えられてた立場をどう感じ、そこからどうさまざまな問題と向き合うのか、もっと彼の内面に肉薄して見 . . . 本文を読む
前作を見たから、ついつい2作目にも手を出してしまった。ピーター・ジャクソンだし、膨大な制作費を投じたファンタジー大作だし、なんてね。でも、見る前から分かっていた。面白いはずはない、と。前作のあまりのとろくささにはうんざりさせられた。まるでお話が先に進まないのだ。3時間もかけてこんな程度のお話ですか、と呆れてしまう。もともと、分量的には3時間で描けるような話を3部作9時間の作品にしようとしたからこ . . . 本文を読む
マシュー・マコノヒーがアカデミー賞主演男優賞をこの作品で受賞した。こういう形から入る芝居での受賞はどうだかなぁ、と普通なら思うところだが、今回の彼には悲壮感がない。21キロの減量にもかかわらず、飄々としてこの役を演じているように見えた。だから、これは努力賞ではなく、ちゃんとその芝居ゆえの受賞だ。おめでとう!
ある日突然、エイズだと言われ、しかもあと30日の命だと告知された男の逆襲が描かれる。 . . . 本文を読む