重松清の小説の映画化は難しい。お話の面白さで充分満足させられるのだが、それを映像化しても原作以上の面白さを提示できないからだ。しかも、TVなら、まだしも、映画はダメだ。お話があまりに小さすぎて映画館のスクリーンに映す必要性を感じさせない。今回は野球ネタだし、甲子園で野球するシーンがクライマックスにあるから、映画的だと踏んだのだろうが、甘い。お話はマスターズ甲子園を目指すお父さんたちの奮闘記というよ . . . 本文を読む
2巻まで読んだところで、この小説について書こう、と思ったのだが、2冊読み終えても何も書けない。ここに至っても、このお話はまだ、何も始まらないからだ。こんなにも悠々たるタッチでいいのだろうか、と不安になるほどだ。第2巻はサブタイトル通り、彼らが自分たちの能力に「めざめ」るまでのお話だ。だからと言ってまだ話は始まらない。この作品がどこに向かって舵を切ったのか、それすら見えてこないからだ。
大長編を目 . . . 本文を読む
こういう映画が生まれてきたことに感動を禁じ得ない。アメリカ映画なのに、ほぼ全編ポルトガル語である。ブラジルを舞台にした映画だから、そうなる。でも、ここで大事なのは、ここがブラジルだ、ということではない。これは近未来のアメリカであっても構わない。だが、これはSFではない。現実の今、この世界で起きたことだ。起きていることなのだ。
だが、それをリアリズムで描くのではない。ファンタジーすれすれで描こうと . . . 本文を読む
「まるで少女マンガじゃないか、」という感想には意味がない。これは少女マンガなのですから。だから、それってほめ言葉にしたらいい。そうなんです。褒めてます。感心してます。よくぞまぁ、ここまでちゃんと少女マンガの世界を再現したものだ。普通ならバカバカしい、となるところかもしれない。かなり危険なラインで勝負している。監督は『映画 ひみつのアッコちゃん』などの川村泰祐。アッコちゃんの時もそうだったけど、で . . . 本文を読む
このタイトルではこの映画内容を的確に伝えない。映画のタイトルが顔だとしたら、これはあまりのミスマッチだ。もちろん、見終えたとき、なるほど、と納得させられる。「実にいいタイトルだ!」と思う。でも、それではこれから見る人にアピールしないのだから、宣伝としては拙いだろう。難しいところだ。
『最強のふたり』の監督と主演コンビ(エリック・トレダノ&オリビエ・ナカシュ監督と主演のオマール・シー)が再タッグ . . . 本文を読む
実はもう下巻の120ページまで読み進めている。主人公の航平はマカオを離れ、一時の日本に戻ることになる。
沢木さんによる本格長編小説である。前作『血の味』や短編集『あなたがいる場所』とは違う。上下巻900ページに及ぶ大長編なのだが、問題はそこではない。この作品が勝負事を描いていることだ。マカオのカジノで、バカラを極める男の話で、彼がそれまで、写真家を生業にしていたことや、その前にはサーフィンをし . . . 本文を読む
先生が死んだ。交通事故だった。まだ32歳。彼女たちの高校の演劇部顧問だった。芝居の舞台は、通夜の受付場所で、そこで教え子たちが交わす言葉が描かれる。
みんなあの時の演劇部の同期だった。とても楽しかった。だから卒業後、先生も一緒になって劇団を立ち上げた。でも、先生が抜けて解散した。それはある事件が引き金になった。ミステリ仕立てのお芝居になっている。先生の死の原因を突き止めるまでが描かれる。先生の妻 . . . 本文を読む
行定勲監督の新作は上海を舞台にした日中合作映画。キャストとして日本からは三浦春馬ひとりが参加した。先にも書いたが全編上海のみ。基本的にはそこから1歩も出ない。(モーリシャスのシーンもあるが、)主人公は三浦だが登場人物も基本的には4人。(そのうち2人は二役だから役者は3人)もちろん観光映画ではない。
ここで暮らす日本人(もちろん三浦)が主人公だ。彼は老人の時計店で壊れた時計の修理をしている。そして . . . 本文を読む
デビッド・フィンチャー監督の新作である。絶対見逃すわけにはいかない。今回も2時間半の長尺なのに最後まで楽しませてもらえた。だが、そういう風にしか書けないところが今回の作品の特徴だ。全米では『セブン』を凌いでフィンチャー史上最高のヒット作となったらしいが、アメリカ人がいかにも喜びそうな映画になった。彼は確かにヒットメイカーではあるが、同時に自分の作風にこだわりを持つ作家主義の監督だった。それだけに、 . . . 本文を読む
なんと『一瞬の風になれ』の佐藤多佳子がファンタジー小説に挑戦した。しかもこれが大長編になるようなのだ。(今回、2巻まで図書館には入荷したが、すでに、3巻も出たようだし、さらに続々と刊行される予定だ)
1巻は主人公の6人の少年少女の紹介だけで終わるようだ。お話が見事に何もない。もう200ページ読んだのに、キャラクター紹介以上のものは何もない。彼らが住む村の地図が最初に掲載されていたが、そんな地理感 . . . 本文を読む
今年最初の映画は、2013年の台湾映画で、実際のパン屋さんが主人公のこの映画にした。昨年、妻が台湾で買ってきた映画だ。劇場公開時に見たかったけど、その時には台湾にいなかったので見れなかった、らしい。
以前、彼女がこのパン屋さんで買ってきたパンを食べた。確かにおいしかったけど、世界一、ってなぁ、と思う。(それに、ものすごく値段が高かったらしい)そういうのって、主観が入るから、ね。もちろん、パンは焼 . . . 本文を読む
今年最初の小説は大好きな大島真寿美さんの新作。何よりもまずこのタイトルにそそられる。自分の人生は果たして「本当の人生」だったのか、なんて問われて「おおよ」と答えられる幸せな人はなかなかいないだろう。まぁ、普段ならそういうふうに言えても心が弱っているときには、「もっとほかの人生があったのではないか」と誰もが想像するはずだ。
「本当の人生」なんてない。わかっていることだ。「今ある人生」しかないのだ . . . 本文を読む
年末に見た10本の映画のことを書こうと、思っていたけど、何もしない間にお正月休みは終わってしまった。選んで借りてきたから、はずれはない。少し冒険した作品には、確かにちょっと問題ありの映画もあるけど、それは最初から許容範囲内だ。誰が『ザ・タワー』(もちろん、韓国版『タワーリング・インフェルノ』である)なんて映画を傑作だと思うものか。(でも、豪華な顔ぶれで、韓国映画界が総力を結集した超大作である。2時 . . . 本文を読む
本は143冊読んだ。そのうち小説は120冊ほどになる。一応小説ベストテンとしたが、ノンフィクションも含む。
1位 彼が通る不思議なコースを私も(白石一文)
2位 流星ひとつ(沢木耕太郎)
3位 平凡(角田光代)
4位 女のいない男たち(村上春樹)
5位 その青の、その先の(椰月美智子)
6位 舞台(西加奈子)
7位 妻が椎茸だった頃(中島京子)
8位 昼田とハッコウ(山崎ナオコ . . . 本文を読む
映画をDVDで見るのは邪道だが仕方ない。見逃した映画は山のようにあるから、その氷山の一角くらいはフォローしたい。そのためにはDVDしかあるまい。でも、毎日忙しいのだ。それこそ時間がない。
しかも、いつでも見れる、という思いから、なかなか借りてこれない。買った映画なんてさらに、である。まぁ、なんのために買ったのだ、と言われそうだが。ということで、そんなこんなの中で今年は85本を見た。
1位 楽 . . . 本文を読む