思ったよりも軽いタッチの作品に仕上がっていて、それが少しものたりない。8㎏の重さに込められた痛みがあと少し胸に迫ってきてくれたなら、これはかなり面白い作品になったはずなのだ。たった8㎏なのか、それとも8㎏もの減量なのか、それってかなりな問題なのではないか。それは考え方次第で、どちらにでも取れてしまうくらいに微妙な重さなのである。10㎏という大台にはわずかに届かないそんな確かな重さをこの芝居が表現し . . . 本文を読む
この春最後の期待作をようやく見た。廣木隆一監督女子高生3部作の完結編である。最近食傷気味の高校生恋愛ものなのだが、彼が撮るのならハズれることはない、と思いつつも、あまりにバカバカしい内容に少し躊躇していた。でも、見てよかった。これは凄い映画だ。
なんと往年の『奥さまは18歳』の上をいく、なんたって『奥さまは16歳』なのである。岡崎友紀もびっくりである。警察官と女子高生が結婚する話ということは誰も . . . 本文を読む
『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』のモルテン・ティルドゥムの監督作品なので期待したけど、あまりに緊張感がない映画でがっかりした。なんか予定調和でまるで驚きはない。
ある特別な事態が生じて、それを受け入れ人生を全うする。こんなにもストーリーに起伏がなく、仕掛けもない映画を作ってどうするんだ、と心配になる。お客さんは来ないよ、これでは。
確かに美 . . . 本文を読む
①『キングコング 髑髏島の巨神』
ラストでゴジラやキングギドラが出てくるんだけど、もともと、これはそういう映画なのだ。髑髏島というより怪獣アイランド。昔の東宝チャンピオン祭りのゴジラ物の世界をリニューアルした異口同音の怪獣バトルなのだ。危険がいっぱいのサバイバル、いろんな怪獣がどんどこ登場。クモンガがなかなか凄かった。でも、なんか暢気。最初から最後までアクションバトルのオンパレード。逃げ惑う人間 . . . 本文を読む
クラスメイトにいじめられる。でも、何もできない。しない。彼は人に心開かない。助けてくれた大人に対しても、感謝しない。だがそれは傲慢なのではない。言葉を知らない、わけでもない。ここでしゃべってもいいだろう、というところでもいつまでも沈黙を守る。何か言えよ、と思うけど、言わない。まわりは優しくそんな彼を受け入れる。不器用なのではない。そこに彼の意志を感じる。
母親との関係。学校での立 . . . 本文を読む
いつもの岡本作品とはかなりタッチが変わって、そこには少し戸惑う。スタイリッシュで才気走る岡本作品に対して、今回の湯浅作品はなんだかぽわーんとしていて、なま暖かくて緩い。でも、この湯浅崇、作、演出(もちろん主演)のテノヒラサイズ最新作はそれでもテノヒラサイズなのだと思える湯浅さんはこの集団のよさを十分に熟知したうえで、自分のスタイルを立ち上げたからだ。
植物状態の娘と、彼女を見守る . . . 本文を読む
前後編4時間40分に及ぶ大作だ。今回はまずその前編。膨大な原作をダイジェストしてみせるのではなく、ポイントを絞り込んだ。原作のほんわりしたファンタジー色は払拭して、リアルなドラマとして立ち上げる。ストーリーには変更はないから、お話は原作に忠実だ。しかし、原作以上にハードな映画になっている。
最初から最後まで将棋のシーンを網羅した。全編が戦いのドラマなのだ。将棋をア . . . 本文を読む
高校の演劇部の卒業公演をウイングフィールドで2日間3ステージ行う。実に大胆で刺激的な試みだ。しかも扱ったのが、マヌエル・プイグのこの作品である。3年生部員4名が中心になった。役者2名、音響、照明各1名。4人による総力戦だ。後輩たちの力を借りて、ではなく、自分たちだけの力で芝居を立ち上げようとする。
演出、主演の柴田純くんを中心にした4人の努力と、それを脚色、助演で . . . 本文を読む
昨年復活した金蘭座の第2作は山本篤先生によるオリジナル新作。金蘭会高校演劇部のOGによる劇団という括りはいらない、とは言えないところがこの集団の面白いところだ。他の小劇場劇団とは一線を画する。純粋に金蘭エンゲキを継承するという事実が何よりも大事なのだ。でも、それはただのOG会ではない。みんなで「今でも懐かしい高校時代を回顧しよう」なんていうのではない。自分たちの表現を極めるというの . . . 本文を読む
中学2年の時、クラスメートを殺した少年。10数年後、彼と再会した同級生だった女性。彼女はもちろんあの事件の現場に居合わせた。「なぜ彼は殺したのか」は、なかなか明らかにされない。今とあの時が交互に描かれていき、運命の瞬間へとカウントダウンしていく。
「守るべき命だ」というラスト1行まで、緊張感が持続する。何があったかはもちろんのことだが、事件を経た後の、その後のそれ . . . 本文を読む
上下2巻1000ページを超える長編であるにもかかわらず、従来の村上春樹作品の大作と較べるとそのスケールはいささか小さい。大作仕様ではなく、どちらかというと小品のスタイルなのだ。そこも作者の意図したところなのだろう。イデアとかメタファーなんていうふざけたネーミングもそうだ。そんなささいな仕掛けを施して、突然理由もなく妻に去られた男の傷心が描かれる。
一人旅に出て心の . . . 本文を読む
よくもまぁこんな困難な作品に挑んだものだ。これは大東市の文化事業の一環として企画された作品で、虚空旅団の高橋恵さんが作、演出した今から450年前の戦国時代の河内におけるキリシタン大名たちの物語。
それを6人の女優たちが演じる。彼らの苦難のドラマをモノローグ、ナレーションを駆使した劇として構成していく。歴史に翻弄される彼らのドラマの断片をつなぎ合わせて数10年に及ぶ . . . 本文を読む