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映画・演劇のレビュー

櫻井とりお『虹いろ図書館 半分司書のぼくと友だち』

2024-01-25 08:34:00 | その他
図書館司書を主人公にした小説は結構あるけど、ここまでたくさんの本を散りばめて、図書館業務をしっかり書き込んだ作品はなかなかないだろう。主人公は半分司書の21歳の青年。18歳から3年、図書館で働いている。高校を卒業してすぐここにきている。通信で大学で勉強、司書の資格を取るために頑張っている。内気な彼にはいつも近くにもうひとりの「友だち」がいる。彼は『VIVANT』の堺雅人のもうひとりの人格と同じ。内 . . . 本文を読む
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宇佐美まこと『誰かがジョーカーをひく』

2024-01-23 03:14:00 | その他
もちろん、誰かがジョーカーをひく、だろうけど、誰もが引きたくはない。そんなの当たり前の話だ。さて、今回の宇佐美まことはノンストップのエンタメ逃亡劇。もうすぐリバイバル上映が始まるリドリー・スコットの傑作映画『テルマ&ルイーズ』を彷彿とさせる。(廣木隆一の『彼女』も)そんな女同士のバディムービーのスタイルである。たまたま出会った45歳のさえない主婦と28歳のキャバ嬢。3000万円のバッグを盗 . . . 本文を読む
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泉ゆたか『横浜コインランドリー』

2024-01-22 08:46:00 | その他
悪徳不動産会社で3年働いて、身も心もボロボロになって退職した女性がコインランドリーで働くことで生きる術を見つける。よくあるハートウォーミングである。だけど、なんだかいい気分になる。甘いけど好き。  コインランドリーの思い出話をひとつ。パリのコインランドリーに行って、洗濯にチャレンジしたことがある。モンパルナスで10日間ほど過ごしたときだ。さすがに洗濯物が溜まって、近所のランドリーに行く . . . 本文を読む
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『鳩のごとく蛇のごとく 斜陽』

2024-01-21 11:58:12 | 映画
公開時に見ようかどうかと悩んだ映画だけど、やめてよかった。これでは納得しない。太宰の小説の映画化は難しい。これは今から50年ほど前に増村保造監督が企画した映画の脚本(白坂依志夫と共同)を当時の助監督だった近藤明男監督が執念でようやく映画化した作品。だが描かれるいろんなことがことごとく嘘くさい。きれいごとでしかない。だけど、作り手の想いは確かに伝わる。だからなんともかなり微妙な作品なのである。 も . . . 本文を読む
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劇団ゆうそーど。『この作品には死がたっぷり含まれています。』

2024-01-21 09:14:00 | 演劇
今年初めてのウイングフィールド。そしてこれは『ウイングカップ14』の4本目の作品になる。今回の参加作品は7本。これがちょうど折り返しとなる。ここまでの3本もそれぞれ個性的で面白かったが、今回もまた、普通じゃない。だいたいこのタイトルからしてふつうとは言えまい。総合チラシにある作、演出の片山寛都による文章も面白い。漱石の「月が綺麗ですね」から書き起こして、「月」と「好き」が似ているなんていう話の展開 . . . 本文を読む
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『妖怪シェアハウス 白馬の王子様じゃないん怪』

2024-01-21 04:21:00 | 映画
あまりのつまらなさに驚いた。こんなにもくだらない映画があるのか、と。深夜枠のTVドラマの映画化というよくあるパターンだが、あまりに安易な映画。先行するTVドラマは評判になった作品らしいが、映画は酷い。まるで中身はないし、映画としての仕掛けもない低予算のコメディ。  何故劇場公開したのだろうか。この程度ならTVスペシャルで充分だったはずだ。もしかしたらTVで放送枠を確保出来なかったから、 . . . 本文を読む
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『ゴールデンカムイ』

2024-01-20 19:10:00 | 映画
山﨑賢人主演のアクション大作映画だ。彼はこの3年3作品、『キングダム』で主人公を演じている。3本とも大ヒットして今年の夏にはシリーズ第4作が公開される。絶好調の彼が同じようなアクション大作映画に挑んだのがこの作品だ。普通なら毛色の変わった映画に取り組むほうがいい。なのに彼は茨の道を歩む。リスクばかりが大きくて、失敗が許されないプロジェクトだ。しかもアクションスターのレッテル張りがなされる可能性も高 . . . 本文を読む
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『ブギウギ』

2024-01-20 10:20:00 | 映画
まさかの朝ドラ。たぶん生まれて初めて完全に見た。というか、今見ている。昔まだ子供だった頃には結構見た気もするけど、さすがに高校生くらいからは見てない。大人になってからは言わずもがな。仕事があるから朝からドラマを見てる場合ではない。前回の『らんまん』は、たぶん半分くらい見た。その前の『カムカム』もかなり見た。だけど、今回はほぼ全部見ている。仕事をやめたらいろんなことができる。  定年退職 . . . 本文を読む
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大阪大学中之島芸術センター『ヤスキチ・ムラカミ 遠いレンズを通して』

2024-01-20 09:37:00 | 演劇
昨年末に芝居を見に行くと、何度となく坂口修一さんに会った。たまたま同じ芝居を同じ回で見ることになったのだが、そう言えば最近坂口さんの芝居を見ていないよな、なんて思った。だからたまたまこの芝居をチラシで見て、行こうと思っていた。まず、大阪大学中之島芸術センターによる企画展『ヤスキチ・ムラカミの世界展』を見に行ってきた。写真は好きだから時間がある時、時々見る。サブタイトルに『オーストラリアに生きた写真 . . . 本文を読む
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桂望実『この会社、後継者不在につき』

2024-01-19 08:44:00 | その他
いつもながら面白いアイデアを見つけ柔軟に展開する。軽くて、あっさりしている。そして、彼女のエンタメ小説は楽しくて為になる。今回は僕と同世代の男性が主人公だから、余計に感情を乗せやすい。まぁ、彼は会社の社長だから、万年ヒラ社員だった僕とは立場は違うけど、同じ65歳。(僕は数えで65歳だが)彼は10店舗ほどのケーキ屋を展開する会社の社長。ふたりの息子がいる。どちらかを次期社長に選ぶのだが決め手がない。 . . . 本文を読む
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『バーン・アフター・リーディング』

2024-01-19 04:05:00 | 映画
コーエン兄弟の旧作がNetflixに配信されていた。見ていないみたいなので早速見たのだが、つまらない。豪華キャストが取り揃えられた映画なのだが、話はショボい小品。もちろんわざわざそういう作品として作ったのかも知れない。彼のことだから確信犯だろう。しかし、これでは成功とは言えまい。  それにしてもブラット・ピットが若いし、チャラい。たった15年前の映画なのに。しかも彼はつまらない脇役で簡 . . . 本文を読む
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佐藤まどか『アップサイクル!』

2024-01-18 14:51:40 | その他
夏休みの宿題であるグループ研究。最初は寂れていく町(隣町に大型ショッピングモールが出来たため)の活性化を考えた3人の中学生だったが、彼らはそこからなぜかアップサイクルで起業を目指すことになる。町おこしから起業へのシフトチェンジは少しガッカリだが、まさかの中学生による起業は面白い展開。読んでいて驚きと感心。そんなことが出来るのか、とびっくり。   起業家として成功している大学生の姉のサ . . . 本文を読む
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『リフト Lift』

2024-01-18 10:51:00 | 映画
古くは傑作『交渉人』、最近では『ワイルドスピード アイスブレイク』を監督したF・ゲイリー・グレイの最新作はまるで『ルパン3世』のノリ。軽くて楽しい。美術品泥棒(一味)とインターポールの美人捜査官の対決を描く。しかもふたりは過去にお互いを知らなかった時、一度恋に落ちている。要するにルパンと銭形が恋仲というような設定。なかなかやばいです。   話は軽快でテンポよく進む。106分というコン . . . 本文を読む
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『キックス』

2024-01-17 08:44:00 | 映画
こんな映画も公開されていたのか。知らなかった。今という時代は、作られる映画のあまりの量に見る側が対応し切れないでいるというのが現状だろう。劇場公開作品だけでも膨大なのに、配信作品は無尽蔵。これはそんな中の1本。ジャスティン・ティッピング監督のデビュー作である。だけどとても手堅い。新人とは思えない。ロサンゼルスに住む15歳の黒人少年の話。大人しくて女の子みたいな彼だが、仲良し男子はいる。いつも3人で . . . 本文を読む
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佐佐木陸『回答者は走ってください』

2024-01-17 08:40:00 | その他
何なんだこれは! そのあまりの破天荒さに衝撃を受けたまま怒濤の勢いで読み進める。凄いスピードで振り落とされそうになる。危ない危ない。怒濤の展開はまさかのリセットを繰り返し、マルチバース地獄に落ちていく。何が本当かどうかなんて、どうでもいい。繰り返していく中で正しいものになっていくはずだったが、何が正しいかがわからない。クイズ王になって大金持ちになったり、父さんの夢や彼の成長が描かれるけど、それは普 . . . 本文を読む
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