漱石、清張、池波正太郎、久保田万太郎、芥川。今回取り上げられた作家たちだ。主人公の田川美希は出版社の文芸編集部にいる。彼女が作家たちのささやかな謎に挑む連作。お父さんはラストでアドバイスをくれたり、さりげなく答えを教えてくれることも。
この最後にさりげなく登場して来て場をさらい涼しい顔をしている父が素敵だ。市井の古書マニアの元高校教師。隠居して好きをしている。だけど凄い博識で美希の疑 . . . 本文を読む
よくもまぁ、こんな安易なタイトルで映画を作ったものだ。あまりに安っぽい。そして出来上がった映画もまた薄っぺらい映画で、タイトル通り安っぽいからピッタリかもしれないが、なんかそれってエグい。TVの2時間ドラマなら許されるだろうが、これは曲がりなりにも劇場用映画である。いいかげんにして欲しい。よくもまぁこんな映画を作ったものだと呆れる。
監督はあの密かな傑作『アイ・アム・まきもと』の水田 . . . 本文を読む
なんとこれがシリーズ7作目になる。大ヒットシリーズの最新作。昨年劇場公開されたばかりの大作映画をNetflixで見る。大スクリーン用の映画をベッドで寝転がりながらスマホで見る。もちろんそれでも充分楽しめる。びっくりするようなビジュアルが当たり前に展開する。CGはどんな映像も可能にした。だいたいこの映画、人間はあまり登場しない。ロボットたちの話だ。彼らが会話して戦う。一応主人公という事になるふたりの . . . 本文を読む
医療ものではない夏川草介は珍しい。しかもファンタジーである。前作『本を守ろうとする猫の話』の続編で、今回は中2の少女が主人公の児童文学。不思議の世界に自ら迷い込む。大切な本たちを救い出すためである。そんな彼女を守ってくれるのは言葉を話す猫。13歳,中学2年のナナミは喘息持ちで自由に外出が出来ない。学校と図書館、自宅の日々。ある日、図書館から本を無断で持ち出す怪しい男を見つける。
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『キングダム』に続いて『ゴールデンカムイ』さらには今回の『陰陽師』ととどまるところも知らぬ勢いで攻めまくる山崎賢人の最新作は佐藤嗣麻子が監督・脚本を手がけたアクション映画だ。だけど今までの2作とはタッチが違う。静かなアクション・エンタテインメントである。女性監督らしいと言えば、なんだか女性差別と返されそうな時代だが、マッチョな映画ではなく、優しい世界を展開する。内面世界での戦いという意味では『マト . . . 本文を読む
タイトル作は、三浦しをん『舟を編む』の姉妹編のような作品。こちらは漫画と小説のふたりの編集者(編集長)が主人公になる。往復書簡のタッチで交互のメールからエピソードが始まる。作者を守るのが編集者の使命と自負しながらも大切にしていた作家を死なせてしまった過去がある。そのリベンジをふたりでする話。作家は前作『汝、星のごとく』の主人公だった櫂だ。これはあの小説の続編であり、スピンオフである。3話からなる連 . . . 本文を読む
「積み重ねてきた十四年が、突然全部なくなった。僕に関する、キオクがない!」というところから始まる再生の物語。人生をリセットすることなんて出来ないけど、過去の自分を失った彼はもう一度初めからやり直しをする。最低だった、みたいな(記憶がない、からね)それまでの自分を取り戻せないから、そこからスタートして初めての自分を作っていく。中学2年の10月14日に彼は退院する。自転車事故は自殺行為だったみたいで、 . . . 本文を読む
『新感染 ファイナル・エクスプレス』と『寄生獣』の間に撮ったヨン・サンホ監督作品。先日『寄生獣』を見たばかりだったので、この間に彼がどんなものを撮ったのか少し気になって見始めたのだが時間のムダだった。これは23年2月に日本でも劇場公開されているようだが、あまりにダメダメで眩暈がした。
斬新なアクション・ゾンビ映画を期待したのだが、話はたるいし、アクションも退屈。見どころはゼロ。退屈すぎて時計ばか . . . 本文を読む
監督のアレックス・ファン・バーメルダムの第10作記念作品。彼が脚本、音楽も手掛けたワンマン映画。これ見よがしな描写の数々。何が起きているのかなかなかわからないまま話は進む。で、あり得ない映画でした。何がしたいのか、わけワカメ。前半は謎。後半は唖然。これをこんな感じで作る意味がわかりません。意味深な描写には何の意味もなく、ラストで宇宙に放出するキリスト教伝導のアイテムには茫然自失。SF映画だったんで . . . 本文を読む
日本人監督の竹内亮が捉えた中国。10年以上前に作ったTVドキュメンタリー番組でやり残したことをやり遂げるために日本を離れて中国で暮らし映画を作る。そんな人がいたってだけで興味深い。もちろん映画自体も実に面白いし。実はあまり期待してなかっただけにこれは思いもしない拾い物だったのだ。見れてよかった。たった10年で中国は大きく変わった。これはそのことを実感させられる映画である。今回の2020年からの映像 . . . 本文を読む
小学6年生の男女が主人公。子どもの権利って何かを考える児童書。図書館の分類はYA小説になっていたが、主人公たちと同世代にまずは読んでもらいたい。それから少し下の年代にも。だから児童書の棚に欲しい本だ。子どもを巡るさまざまな問題をストレートに描く。そこには酷い大人たちが随所に登場して、子どもたちの前に立ちはだかる。彼らはしっかり立ち向かう。だから爽やかで気持ちいい。
お話はクラスでの問 . . . 本文を読む
『活版印刷三日月堂』シリーズは読んだことはないけど、「言葉の園のお菓子番」シリーズはちゃんと読んでる。それにこれはポプラ社から出ているから読むことにした。あと表紙の写真とタイトル。なんだかお話は重そうだけど、読もう。ほしおさなえの本を読むのは初めてではないけど、シリーズ物ではなく、単発の渾身の力作を読むのは初めてだ。今まで読んだ幾分軽いタッチの作品とはまるで違う。だけど、やはりこれは彼女らしい作品 . . . 本文を読む
昨年のGW公開の大ヒット作品が早くもAmazonプライム・ビデオに登場した。ウチの孫のリンちゃんたちもハマって熱狂していたというから、僕も後学のために見ることにした。
いやぁ泣いた、泣いた。こんなベタなベタベタのドラマを見て泣くなんて恥ずかしいけど、涙腺は緩む。知らぬ間に涙が出てくる。泣かすわ。
確かによく出来ている。ファンの方たちのツボをしっかり押さえた上でイ . . . 本文を読む
『ジョジョ・ラビット』のタイカ・ワイティティ監督がまたやってくれた。はちゃめちゃで感動的な作品である。かなりの問題児が主人公の映画。彼はふてぶてしくてかわいくない。
だけどこんな男の子を主人公にしたバディー映画って、確実にあの傑作『ジョジョ・ラビット』と似ている。今回のふたりもあの作品の少年とヒトラーにつながる。これはそんな映画である。この少年と彼の保護者になるじいさんの話だ。
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後半に入るといきなり転調する。5話目の『ゆがんだ球体の上の小さな楽団』からだ。大昔の楽団の話。ここからさまざまな物語が微妙なバランスでつながり、再び最初の3人の話にいきなり戻ってくるけど、それさえ大きな『78』世界の思い出に思える。すべてが過去のなかに取り込まれていく。ここに流れる時間は過去と現在、もしかしたら未来までもが渾然一体となっている。最初はハイザラとバンシャクの話だったはずなのに、しかも . . . 本文を読む