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映画・演劇のレビュー

『12日の殺人』

2024-04-13 08:33:00 | 映画
ドミニク・モル監督によるサスペンス・スリラー。というよりも刑事の日常を描く生活のスケッチ。派手な見せ場は皆無。地味すぎてしんどいくらい。だけど、映画は面白い。前任者の定年退職の夜から始まる。お別れパーティーが密かに行われる。その日から新しく班長になった男が主人公。就任初日に残酷な殺人が起きた。夜中に21歳の女性が灯油をかけられて焼死した。彼らのチームが捜査に当たる。それが12日のこと。映画は冒頭で . . . 本文を読む
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渋谷天外&鈴木健之亮プロデュース『生命のぬくもり』

2024-04-12 21:55:00 | 演劇
劇団往来と渋谷天外のコラボ企画。前半は恋川純の剣戟ショーと天外、恋川、要冷蔵の「にわか」(客からお題をもらってする即興寸劇らしい)3題。10分の休憩を挟んで後半は松竹新喜劇のネタを渋谷天外を中心にして、往来の役者たちと恋川純の劇団の混成チームで贈る。まさか松竹新喜劇を見るなんて思いもしなかった。きっと50年以上見たことがなかったはず。子どもの頃土日の昼にTVで藤山寛美の劇場中継を見ていた記憶はある . . . 本文を読む
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『貴公子』

2024-04-12 13:04:00 | 映画
新しいタイプのアクション映画に挑む『THE WITCH 魔女』シリーズのパク・フンジョン監督最新作。まさかこんなふざけた映画だとは思わなかった。これは凄い。平然とこんな映画を作るパク・フンジョンは半端ではない。もちろん褒めている。ラストのアクションまでずっと一心に同じ調子でめちゃくちゃやってくれる。宣伝では「ラスト20分、予測不可能」と煽っているが、ラストの説明は反対にウザい。それよりもっと華麗に . . . 本文を読む
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『アメリカン・フィクション』

2024-04-12 09:29:55 | 映画
先日発表されたアカデミー賞6部門ノミネートに輝くこの傑作映画は日本では劇場公開されず配信公開。結果的に圧勝した『オッペンハイマー』よりこちらの方が面白い。 これは一応コメディには分類されてはいるが、この映画が描く世界は怖い。この映画が描く黒人差別に対する視線は冷ややかで厳しい。笑えない。無意識の差別。良識ある白人層が善意から理解ある自分アピール。ステレオタイプの認識で自分たちのこと正しいと思って . . . 本文を読む
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『寄生獣 ザ・グレイ』

2024-04-12 05:26:00 | 映画
山崎貴監督による映画化2部作は傑作だったが、今回の韓国版はまる違う作品になっている。同じ原作からこんなにも違う話を紡ぐってそれはそれで凄い。こちらはまずテンポのいいアクション映画だ。Netflixによる配信ドラマで全6話からなる。   主人公を女性に設定して寄生された彼女と相棒になるヤクザな男が、逃亡しながら寄生獣を追い詰めていく。原作から設定と世界観をもらって舞台を韓国に移したオリ . . . 本文を読む
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吉田篤弘『78』

2024-04-11 17:32:00 | その他
この文庫本を今日から読み始めたのは偶然である。誓って意図はない。もう手元に読む本がないし、今日から1年週に3日仕事に行く。そのタイミングで手にして行きの電車の中で読み始めた。吉田篤弘の2005年作品。この文庫は2009年に刊行されている。  だから15年間図書館の棚に置いてあったのだろう。だけど,本はとてもきれいで誰も(たぶん)読んだ形跡がない。懐かしい気分になり、ゆっくり読み出す。1 . . . 本文を読む
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柴崎友香『つかのまのこと』

2024-04-11 05:44:00 | その他
これは映画『寝ても覚めても』の後、東出昌大を主人公にして、柴崎友香が写真家の一橋織江とコラボした作品。俳優によりイメージした小説を写真という表現で具現化した映像と一体化した世界は不思議な空間を提示する。家に宿る幽霊という設定で誰もいない古い家を浮遊する東出昌大を描く小説は彼を撮った写真と相まって、物語の映像化に収まらない不思議な世界を作る。   冒頭の20ページは写真に短い文が添えら . . . 本文を読む
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坂道の階『それは、満月の夜のことでした』

2024-04-09 20:54:00 | 演劇
今年の『階』は「坂道の階」。階は久野那美のプロデュース公演。公演ごとに集まり終了後解散する。今回は七井悠のひとり芝居。40分の中編。   彼はそれまでお家でのんびりしていたのか。夜中にコンビニに行く。もう1本、ビールを買いに行った帰り道。たった1本の500ミリ缶を片手に持ち家に帰る途中。街灯の明かりに誘われて、満月の夜に出会う。そこから始まるファンタジー。それはまるで絵本のようなお芝 . . . 本文を読む
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『ある閉ざされた雪の山荘で』

2024-04-09 11:28:21 | 映画
監督が飯塚健だから少し期待した。でも原作があの東野圭吾だし、評判も悪いし、きっと話に破綻だらけでだめだめかもしれない。(もちろん原作は未読)不安だらけではあるけど、配信だから見ることにした。それにしても早い。この1月に公開されたばかりの映画がもうAmazonから配信がスタートしているのだ。これって昔の劇場公開から2番館上映というパターンよりも早いのではないか。 一応終盤までそれなりには緊張が持続 . . . 本文を読む
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伊藤朱里『名前も呼べない』

2024-04-09 07:46:00 | その他
伊藤朱里のデビュー作。2015年作品。太宰賞を受賞した。25歳の女の2年に亘る不倫を描く。45歳の派遣先の上司。派遣満了で職場を去る。その前に上司とは関係を清算した。彼にはふたり目の子供が出来たらしい。同僚から聞かされた。だが、主人公である恵那の恋人は彼ではない。小説は少しずつ小出しにして事実を見せていく。衝撃は2度ある。まずは親友のメリッサが男だったこと。そして不倫の恋人との間にセックスはないこ . . . 本文を読む
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『ゴッドランド』

2024-04-09 06:05:00 | 映画
アイスランドの気鋭フリーヌル・パルマソンが監督・脚本。2時間23分の長編はあまりにも淡々としたタッチで描かれ寡黙。スクリーンにはアイスランドの過酷で美しい風景が静止画のようにフィックスで長く示される。主人公の牧師が撮る写真のように。19世紀後半、デンマーク統治下のアイスランド。布教の為、辺境の村にやって来て教会を建てる使命を受けた。そのための旅が描かれる。船ではなく、陸路から旅したのはこの島を自分 . . . 本文を読む
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『愛と殺戮のすべて』

2024-04-08 23:26:00 | 映画
『シチズンフォー スノーデンの暴露』は見ていない。これはあの映画で第87回アカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞したローラ・ポイトラス監督が、写真家ナン・ゴールディンの人生とキャリアを描くドキュメンタリー映画である。僕はナンのことを全く知らなかった。だから白紙状態で映画と向き合う事になった。映画はメトロポリタン美術館での過激な抗議活動から始まる。これは彼女の人生を描くドキュメンタリー映画ではあるが . . . 本文を読む
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『インフィニティ・プール』

2024-04-08 20:49:00 | 映画
クロネンバークの新作かと思ったら、確かにクロネンバークだけど、息子の新作だった。ブランドン・クロネンバーグ監督の3作目、最新作。彼の映画を見るのは初めてかもしれない。(『ポゼッサー』は見ていたかも)さて、本作だが、評判がかなり悪いみたいだ。えげつない描写でエロ下品な映画だ、とか、どこかで読んだ気がする。まぁ、僕は他人の意見は気にしないけど。(普段から事前情報は入れないで見る主義だけど、キネ旬の星取 . . . 本文を読む
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『交換ウソ日記』

2024-04-07 22:46:00 | 映画
こういう青春映画はいつの時代にも作られる。高校を舞台にしたこれと同じような恋愛映画は多々ある。その時々のアイドルたちを主人公にして少女マンガを原作にして胸キュンを量産。たわいない映画も山盛りあるが、なかには凄い映画もあるからバカにはできない。  これもまたそんな1本。(たわいない方だが)何の仕掛けもなく、ありきたりのお話。原作は少女マンガではなくジュニア小説みたいだ。イケメン男子に片想 . . . 本文を読む
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伊藤朱里『稽古とプラリネ』

2024-04-07 14:10:00 | その他
図書館でウロウロして立ち止まったのが,彼女の本が並ぶスペースだった。5、6冊並ぶ本がいずれも魅力的に見えて、手に取るとやはり面白そう。とりあえず2冊借りることにした。新しい作家との出会いはドキドキする。と、思ったら彼女の本を以前1冊読んでいた。悪くはないけど、あまりピンとは来なかったなぁ、と思い出す。昨年刊行された最新作『内角とわたし』である。あれはイマイチだった。ひとりの女性の中にいる3つの人格 . . . 本文を読む
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