クアトロ夫婦の新婚時代、アパートに訪ねてきた怪しい親父。僕の父である。額はかなり広い。
『おお、俺もああなるのか』
僕の父は、僕と母を捨ててどこかに消えていた。突然に帰ってきたわけである。新婚の一室を眺め、「本棚の本が背の順と色別にきれいに並べてあるな」という。
『するどいところを見るな、俺の性格を計っているのか』
小学校低学年のころも突然に帰ってきた。戦艦大和のプラモデルを作ってくれた。
中学生になって会ったときは、ミュージック・ペンという万年筆を買って貰った。
何とも身勝手な父は、養老院で寂しく人生の幕を閉じた。
父との思い出は少ない。
それだけに、あのときの戦艦大和や万年筆は宝物だった。
自分が父親になると、戦艦大和と万年筆を思い出す暇も無くなった。自分の子供にはたくさんの思い出を贈りたいと思っていた。
次男のクアトロ・シェフには、クアトロでの日々が贈り物になるのでしょうか。
父の日に思う。
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