湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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☆オネゲル:交響的黙劇「勝利のオラース」(1920-21)

2016年11月28日 | フランス
○アンセルメ指揮NBC交響楽団(DA:CD-R)1948/12/18live

オネゲル自身が代表作に挙げた大規模な管弦楽作品で、楽器用法や構成、概ねの響きにオネゲルらしさが横溢している(だから何かアメリカ往年のスペクタクル映画音楽に聴こえる部分もある)とはいえ、他作品とは隔絶した独特の晦渋さがあり、高音打楽器等によるしんとした音響を織り交ぜつつ並ならぬ分厚い音響を弦楽器により不協和的にうねらせ、そこに(よくとったやり方だが)凶悪な響きを持つブラスを重ねていくさまは異様で、シェーンベルクの削ぎ落とされたルナティックなピエロと、肥大化したグレの歌が混ざり合ったような奇妙な現代感を抱かせる。音の多さはけして無秩序ゆえではないがアイヴズを想起せざるを得ないところもある。よく筋書きを知ってから聴くべき曲なのかもしれない。12音全部が鳴るなど諸所に機知を織り込んださまは確かにマンネリズムの否定できない完成期オネゲルにおいては魅力的に聴こえる。友人ミヨーの破天荒時代にあった音楽ともまた違い、「ちゃんとしよう」という意識があるから、分析好きは楽しめる曲かもしれない。

初演者アンセルメは音こそ透明感を保っているものの力感を前面に押し出し、総じてドイツ的だ。NBC弦楽セクションの持つ力が(アイヴズの「答えのない質問」におけるコラールのように)和声的に移ろう音符の重みを際立たせ、中欧的表現を演出している。アンセルメがこういう圧倒的な音楽をもやれたとはスイス人にもわからなかったろうなあ(謎)。ザッヒャー盤等紹介した覚えがあるのだが検索すると出ない。録音最悪。差し引いて○。

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