大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・連載戯曲 すみれの花さくころ(宝塚に入りたい物語)・4

2019-06-01 06:22:28 | 戯曲
連載戯曲 すみれの花さくころ
(宝塚に入りたい物語)・4
        


 
※ 無料上演の場合上演料は頂きませんが上演許可はとるようにしてください
 最終回に連絡先を記します

かおる: 教育勅語! 
 兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信ジ(けいていゆうにふうふあいわしほうゆうあいしんじ)って!
すみれ: なに、そのおまじない?
かおる: おまじない? 友達同士信じ合いなさいってことよ。友達って、信じ合ってこその友達でしょ!?
すみれ: それとこれは別よ! 自分のことは自分で責任もたなきゃ!
かおる: すみれちゃん、あんたって、そんな子だったの……。
すみれ: そんなもとくなもないよ。頼みもしないのに昼日中から幽霊なんか出てきちゃって、いったいあなったって何様のつもりよ!
かおる: 何様のつもりって、あんた……!
すみれ: なんだってのよ! 
かおる: なんだってねって、人が真剣に……!
すみれ: 勝手に真剣になられてもね!
かおる: ……ね、そこの公園にでも行こう。通行人の人達が変な目で見てるよ。
すみれ: 独り言言ってる変な子だと思われてる……アハ、アハハ(あいそ笑い)
かおる: やめなさいよ、余計変な子だと思われるよ。
すみれ: う、うん、行こう……。

 舞台を移動し、近くの公園に行く。 

かおる: すみれちゃん、自分のことは自分で決める人なんだよね……。     
すみれ: そうだよ。見かけによらず、ガンコなの、あたしって!
かおる: そうだよね、あたしもそうだったから(モジモジしてる)
すみれ: おトイレだったら、あっちにあるよ。
かおる: 幽霊はお便所なんかいかないの!
すみれ: 何が言いたいのよ!?
かおる: すみれちゃん、宝塚って知ってる?
すみれ: うん、ベルバラとかやってる歌劇団?
かおる: 興味ある!?
すみれ: うん、お母さんとかは……若い頃はなんとかっていう宝塚の女優さんのおっかけとかしてたらしいけどね。
かおる: そうだろうね。すみれって名前も宝塚にちなんでるんじゃない?
すみれ: うん、かな?
かおる: すみれちゃんは?
すみれ: ……分かんないよ。
かおる: あたし、宝塚に入りたかったんだ。
すみれ: かおるちゃんが?
かおる: うん、何十年も昔のことだけどね。  
すみれ: 試験おっこっちゃったの?
かおる: 試験の十日前に死んじゃったの。
すみれ: え!?
かおる: 戦時中だから募集停止だったけど、毎年その日。戦争が終わったら受けようって、準備してたの。
 すみれの花の咲くころ……ちょうど今じぶん。
すみれ: なんで、なんで死んじゃったの?
かおる: え……まあ、それでさ。宝塚うける気ない!?(おもいきり顔を近づける)
すみれ: かおるちゃん……。
かおる: もし、少しでもその気があったら、あたしがすみれちゃんに憑依(のりうつって)ってさ、
 試験にも合格させて、宝塚のスターにしてあげる! 
 憑依っていっても、すみれちゃんは、ちゃんとすみれちゃんなんだよ。
 ただ、試験とか、ここ一番という時に助けてあげるの!
すみれ: それって……。
かおる: そんなばい菌みるような目で見ないでよ。
すみれ: ごめん……。
かおる: ほら、電動自転車ってあるでしょ。自転車だから自分で漕ぐんだけど。
 坂道とか、苦しい道になったら、モーターが働いて助けてくれるやつ。アシスト機能っていうのかな……あれに近い! 
 あくまですみれちゃんの人生だから、すみれちゃんが、その気になってペダルを漕いでくれなきゃ、
 このかおるモーターも力のふるいようがないんだけどね。
すみれ: うん……。
かおる: ……これって霊波動が合ってないとできないんだよ。
 あたしとすみれちゃんて、RHマイナスの霊波動……百万人に一人くらいしかいないの……。
すみれ: うん……でも、急な話だから。
かおる: あたしは、ずっとずっとずっとずーっと思っていたんだけどね。
すみれ: あたしには急なの!
かおる: ごもっとも……あたしの勝手な思い入れだから、断ってくれてもいいのよ。
 自転車が乗る人を選んじゃいけないものね。しょんぼり。
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高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・049『カツオの一本釣りです』

2019-06-01 06:07:08 | ノベル2
高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・049
『カツオの一本釣りです』



 光速の10倍で突っ走るカワチからは誰も出ることが出来ない。

 出たが最後、宇宙か時空の狭間で永遠に彷徨わなければならなくなる。

――バリアーの効いている範囲は無事よ――

 アマテラスが答える。

「どうして分かるんだい?」
――百万のナノマシーンを放流したんだけど、バリアーの外に出たものは瞬時に行方不明になったわ――
「さすがはメインCP、やることはやってるんだね」
――この速度だとプロキシマbに取り込まれるのは五カ月先だけど、牽引ビームは微妙に変化しているわ――
「変化とは?」
――牽引軸はぶれている。あくまで予測だけども、ぶれ方が大きいとプロキシマbに着かないで、プロキシマbのはるか後方に飛ばされるかもしれない。そうなると、どこへ、いつまで光速の10倍で進んでいくか分からないわ――
「もう少しイメージが湧くように話してくれないか」
――文学的に語るのは得意ではないの、千早姫、あとはよろしく――
 そういうとアマテラスはパイロットランプをオレンジにしてスリープしてしまった。

「カツオの一本釣りです」

「なんだって?」
 副長の言葉も訳が分からない。
「我々は釣り竿に掛かったカツオです。腕のいい釣り師なら真っ直ぐ船の生け簀にまっしぐらですが、不慣れな釣り師だと、竿がぶれて船体にブチ当てたりマストに絡めたり、船を飛び越して反対舷の海に持っていかれたりします」
「つまり、プロキシマbの釣り師はかなりのヘタッピだということかい」
「それか、別の意図があってのことか……もう少し引っ張られないと分かりません……」
「なにか思い当たることが?」
「ふと思ったんです、強い牽引力……でもブレまくり……後醍醐の帝に似ています。討幕の狼煙を上げ、日本中の武士を立ち上がらせましたが、帝の為さることは予測が付かず、みんな振り回されてばかりです」
「なるほど……俺たちは、それでも必死に食らいついていく楠正成か……でも、相手が見えない点では余計に厄介か」
「見えるというのは、いっそう厄介なのかもしれません。なまじ見えると通じるのではないかと……いえ、愚痴でした」
「さあ、乗員たちに話しに行こう、俺の腹は決まっているが、みんなの顔を見て語らないと伝わるものも伝わらないからね」

 ドアに手をかけようとすると、向こうからドアが開いた。一瞬だけサイコキネシスの力が付いたと艦長は思った。

「艦長、転送室が異常です! 至急お越しください!」

 緊急事態を告げに来た当直士官は、それだけを言うと電池の残量が少なくなったように影が薄くなり、動きがぎくしゃくしてきた。
「航海……お待ち……お急ぎ……」
 言葉は途切れ、一瞬で静止した。まるでバグだ。
 
 艦長も副長も、それに構うことなく転送室へのラッタルを駆け下りて行った……。
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高校ライトノベル・時かける少女BETA・15《アナスタシア・11》

2019-06-01 06:00:09 | 時かける少女
 時かける少女BETA・15
《アナスタシア・11》                  


 
「我々は、中国のくびきからのがれたいのです」

 バートル・ダルハンはこう切り出した。
 モンゴルは、基本的には数百人を単位とする遊牧民の総称で、国家としてのまとまりは無い。唯一チンギスハンという天才が現れて、一大モンゴル帝国を作ったが、モンゴル人自身の人口の少なさが災いして、中心の元帝国でさえ100年もたなかった。
 その後のモンゴルは、部族ごとに中国に収奪されてきた。遊牧民の宿命で塩とビタミンの供給源である茶は中国に頼らざるを得ず、法外な価格で取引させられ、いつかは民族ごと中国に飲み込まれるという断崖の縁に立ったような危機的な状況であった。

 そこにソヴィエトが出現した。

 かなりのモンゴル人が、ソヴィエトの庇護のもとに独立を果たそうとしていた。事実アリサ=ミナの知識では、モンゴルはソヴィエトに続く二番目に出来た共産国家である。モンゴル人たちは中国のくびきから逃れるために、共産主義を選んだのだ。
 だが、この世界は違う。アナがカラフト・ウラジオストクを中心に新生ロシア帝国を作り始めている。バートルは、これに掛けに来たのである。
「モンゴル東部のナムルグまで、途中一か所の中継基地を設ければ、飛行機で連絡や輸送が可能です。そのルートを作った上で内モンゴルや満州の女真の人たちの協力を得れば、彼らを味方としつつ、ここを突けます!」
 アナは、シベリアの首邑であるイルクーツクを指した。

 なるほど、シベリアを西進して達するより容易であり、モンゴルや満州という友邦も得られる。

「アリサ、ありがとう。あなたの話を聞くまでは、他の人たちと同様にシベリアの西進を考えていたわ」
「いいえ、それを形にして、みんなを奮い立たせたのはアナ、あなたの力よ」
「ありがとう」
「そうだ、皇太子殿下からプレゼントが届いているわ」
 アリサは、宝石箱より少し大きい桐の箱を渡した。
「まあ、見事なヒマワリの文鎮」
 ヒマワリはロシアの国花である。
「ちょうどいい大きさね……よくできていて、美味しそう!」
 アリサは、ロシアでヒマワリは食用であることを思い出した。

 その半年後には、イルクーツクを副都、ウラジオストクを仮の首都として、モンゴル・満州を友邦とする新生ロシア帝国の版図が確定した。実にソヴィエトの1/3がアナのロシア帝国に戻った。

「ちょっと太ったかしら?」

 アナは、事業服のウエストを気にした。
「まあ、新生大ロシアを作るんだから、これくらいの貫録はあってもいいわよ」
 そのとき侍従武官がやってきた。
「陛下、英・仏・米の大使が共同で会見を求めておられます」

 この会見を機に、ソヴィエトに対する西部戦線がひらかれた。

 ソヴィエトは東西に敵を作り、その半年後に内部分裂を起こし、レーニンを筆頭にスターリンなどの若手も暗殺されたり、戦死していった。1919年、新生ロシアは完全にロシア全土を回復した。
 アナは、出来たばかりの国際連盟に出席し、第一次大戦で大敗したドイツへの懲罰的な賠償金を取らないように提案した。
「これからは、ドイツを我々の友邦として遇しましょう。恨みを持って臨めば恨みとなって返ってくるだけです、我がロシアは未だに再建途中ではありますが、戦争により惨禍をこうむったという点では、ドイツ以上のものがあります。しかし、我々は分かち合いたいと思います。僅かではありますがドイツに対して借款の用意があります。むろんドイツには友人として厳しい忠告はしなければなりませんが」
 アナの提案には裏付けがあった。ウラジオを中心に、造船、漁業、海産物加工、林業などの産業の発展が著しく、その多くに欧米や日本の資本が入っていた。欧米各国は従わざるを得なかった。

 アドルフというドイツの退役伍長は、復員後、絵の才能をいかしギムナジウムの美術教師になった。そして、その後共産主義もファシストも出現しないまま、二十世紀は成長し始めた。

 八年後、アナスタシア女帝戴冠十周年の記念式典のさなか、ずっとアナスタシアを「アナ」と親しく呼んで支えてくれたアリサは一通の手紙を残して、忽然と姿を消した。

――立派な大輪のヒマワリの花になってください。アナの友人、アリサ・立花――
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高校ライトノベル・『はるか 真田山学院高校演劇部物語・22』

2019-06-01 05:51:17 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
はるか 真田山学院高校演劇部物語・22



『第三章 はるかは、やなやつ!4』  


 四天王寺の山門前を西に向かって四車線の坂が下っている。

 西に傾き始めたお日様が、晩春の空をホンワカとにじませ、街全体が、パステル画のように縁取りを柔らかくしている。
「これが大阪の原点さ」
「ここが?」
「この山門から、向こうの松屋町通り(マッチャマチドーリ)にかけてを逢う坂と書いて、逢坂。それが大阪の地名の元になった。もっとも昔はこんなに広い道じゃなかったけど」
「そうなんだ。大阪って、名前のわりに坂のない街だと思ってました。だって、昔は土偏の坂だったのに」
 乏しい知識を総動員して背伸びする。
「昔はこのあたりが海岸線で、このあたりから見える夕陽がとてもきれいなんで、ここから北の方を夕陽丘っていうんだ。新興開発の分譲地みたいな名前だけど、ナントカヶ丘って地名じゃ、ここが日本一古いんだ」
 博学ぅ、さすが生徒会長……。
「ここから北にかけて、七つの坂があって、天王寺七坂っていうんだ。ちょっと歩くけどいいか?」
「は、はい」

 それから二人で北に向かい、少し行って愛染坂を下る。

 途中に愛染堂。
 
 かわいい山門をくぐると、境内は意外に広い。
 正面の金堂には愛染明王。「愛」の字がついてるわりには、全身真っ赤。手が六本もあり、憤怒のお顔。正直おっかない。解説通り、愛欲を悟りに昇華させるのにはこれくらいのおっかなさがいるんだろうなあ。
 奥に行くと多宝塔、大阪市で最古の建築物で、秀吉さんが造ったらしい。こんなものが街中に平然とあるとは、大阪もあなどれない。
 金堂の前に戻ると、向かって左に哲学の石。二人で座ってみる……なんだか賢くなったような気がする。
 右に、腰痛封じの石……これは後日お母さんに教えてあげよう。
 クルリと振り返って、吉川先輩が指をさす。
「あれが愛染かつら。桂の木にノウゼンカツラが絡んでいて、恋愛成就のご神木なんだぜ。夏になるとオレンジ色の花がいっぱい咲くんだ」
「へえー、すてき……」
 ちょっとトキメク。
「願掛けしてみようか……」
「え!?」
 おおいにトキメク……同時にとまどった。
 気づくと、周りに三組ほどのカップル。
 オジャマ虫になりそうなので境内を出る。

 さらに坂を下ると右手に大江神社のワッサカした木々が覆いかぶさっている。
 左はS学園。環境いいー……。

 松屋町通りに出て少し北へ、キョロキョロしてると横から声。

「こっち、こっち」
「口縄坂」の画像検索結果 大通りから、東に上る可愛い坂があった。「口縄坂」と石碑が立っている。 
口縄坂は幅二メートルくらい。途中でクニって曲がっていてそれが蛇みたく見える。口縄って、古い大阪弁で蛇のこと……って、今までの分も含めて吉川先輩の説明です。
 淀みなく、過不足なく、七坂とその周辺についてあれこれ解説してくれる吉川先輩。
 なんだかテレビの旅行番組みたい(ヘヘ)

 口縄坂を登り切ったところには『夫婦善哉』で有名な織田作之助の文学碑があった。織田作は、まだ読んだことがない(アセアセ……)
「これ、織田作の文学碑。今年で生誕百年だ」
 サラっと指さす吉川先輩。
 わたしなんかよりずっと読書家なのかなあ……(もう、冷や汗)

 ゆるりとSの字になった二車線の学園坂を下ると、道沿いの石垣の上にOJ学園。
 ここも環境がいい。わが真田山学院高校とは雲泥の差。ま、有名私学らしい。公立じゃ勝負になんないよね。
 部活のさんざめきが、かすかに木霊して降ってくる……なんだか青春ドラマの一コマみたい(……フンイキ~)
 切り通しの石垣の隙間には、早くも紫陽花が、密やかに蕾を付け始めていた。

 ふたたび松屋町通りに出て、少し北上。源聖寺坂を上る……小ぢんまりとしたお寺が続く。
 新幹線で素通りしただけだけど、京都ってこんな感じだろうか。お茶のコマーシャルにこんなシュチエーションがあったっけ……フフフ、黄八丈に桃割れの髪にしたくなってきた(江戸時代の町娘の姿よ♪)

 振り返ると、大阪の街並みに夕陽が美しく落ちていく。
 さすがに、四回も坂の上り下り。うっすらと額に汗、自然に顔が下を向いてしまう。
「少し休もうか」
「うん……」
 と、顔を上げたら……数秒かかった。

 目の前の三階建てが……その種のホテルだってことに。
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