連載戯曲 すみれの花さくころ
(宝塚に入りたい物語)・4
※ 無料上演の場合上演料は頂きませんが上演許可はとるようにしてください
最終回に連絡先を記します
かおる: 教育勅語!
兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信ジ(けいていゆうにふうふあいわしほうゆうあいしんじ)って!
すみれ: なに、そのおまじない?
かおる: おまじない? 友達同士信じ合いなさいってことよ。友達って、信じ合ってこその友達でしょ!?
すみれ: それとこれは別よ! 自分のことは自分で責任もたなきゃ!
かおる: すみれちゃん、あんたって、そんな子だったの……。
すみれ: そんなもとくなもないよ。頼みもしないのに昼日中から幽霊なんか出てきちゃって、いったいあなったって何様のつもりよ!
かおる: 何様のつもりって、あんた……!
すみれ: なんだってのよ!
かおる: なんだってねって、人が真剣に……!
すみれ: 勝手に真剣になられてもね!
かおる: ……ね、そこの公園にでも行こう。通行人の人達が変な目で見てるよ。
すみれ: 独り言言ってる変な子だと思われてる……アハ、アハハ(あいそ笑い)
かおる: やめなさいよ、余計変な子だと思われるよ。
すみれ: う、うん、行こう……。
舞台を移動し、近くの公園に行く。
かおる: すみれちゃん、自分のことは自分で決める人なんだよね……。
すみれ: そうだよ。見かけによらず、ガンコなの、あたしって!
かおる: そうだよね、あたしもそうだったから(モジモジしてる)
すみれ: おトイレだったら、あっちにあるよ。
かおる: 幽霊はお便所なんかいかないの!
すみれ: 何が言いたいのよ!?
かおる: すみれちゃん、宝塚って知ってる?
すみれ: うん、ベルバラとかやってる歌劇団?
かおる: 興味ある!?
すみれ: うん、お母さんとかは……若い頃はなんとかっていう宝塚の女優さんのおっかけとかしてたらしいけどね。
かおる: そうだろうね。すみれって名前も宝塚にちなんでるんじゃない?
すみれ: うん、かな?
かおる: すみれちゃんは?
すみれ: ……分かんないよ。
かおる: あたし、宝塚に入りたかったんだ。
すみれ: かおるちゃんが?
かおる: うん、何十年も昔のことだけどね。
すみれ: 試験おっこっちゃったの?
かおる: 試験の十日前に死んじゃったの。
すみれ: え!?
かおる: 戦時中だから募集停止だったけど、毎年その日。戦争が終わったら受けようって、準備してたの。
すみれの花の咲くころ……ちょうど今じぶん。
すみれ: なんで、なんで死んじゃったの?
かおる: え……まあ、それでさ。宝塚うける気ない!?(おもいきり顔を近づける)
すみれ: かおるちゃん……。
かおる: もし、少しでもその気があったら、あたしがすみれちゃんに憑依(のりうつって)ってさ、
試験にも合格させて、宝塚のスターにしてあげる!
憑依っていっても、すみれちゃんは、ちゃんとすみれちゃんなんだよ。
ただ、試験とか、ここ一番という時に助けてあげるの!
すみれ: それって……。
かおる: そんなばい菌みるような目で見ないでよ。
すみれ: ごめん……。
かおる: ほら、電動自転車ってあるでしょ。自転車だから自分で漕ぐんだけど。
坂道とか、苦しい道になったら、モーターが働いて助けてくれるやつ。アシスト機能っていうのかな……あれに近い!
あくまですみれちゃんの人生だから、すみれちゃんが、その気になってペダルを漕いでくれなきゃ、
このかおるモーターも力のふるいようがないんだけどね。
すみれ: うん……。
かおる: ……これって霊波動が合ってないとできないんだよ。
あたしとすみれちゃんて、RHマイナスの霊波動……百万人に一人くらいしかいないの……。
すみれ: うん……でも、急な話だから。
かおる: あたしは、ずっとずっとずっとずーっと思っていたんだけどね。
すみれ: あたしには急なの!
かおる: ごもっとも……あたしの勝手な思い入れだから、断ってくれてもいいのよ。
自転車が乗る人を選んじゃいけないものね。しょんぼり。
(宝塚に入りたい物語)・4
※ 無料上演の場合上演料は頂きませんが上演許可はとるようにしてください
最終回に連絡先を記します
かおる: 教育勅語!
兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信ジ(けいていゆうにふうふあいわしほうゆうあいしんじ)って!
すみれ: なに、そのおまじない?
かおる: おまじない? 友達同士信じ合いなさいってことよ。友達って、信じ合ってこその友達でしょ!?
すみれ: それとこれは別よ! 自分のことは自分で責任もたなきゃ!
かおる: すみれちゃん、あんたって、そんな子だったの……。
すみれ: そんなもとくなもないよ。頼みもしないのに昼日中から幽霊なんか出てきちゃって、いったいあなったって何様のつもりよ!
かおる: 何様のつもりって、あんた……!
すみれ: なんだってのよ!
かおる: なんだってねって、人が真剣に……!
すみれ: 勝手に真剣になられてもね!
かおる: ……ね、そこの公園にでも行こう。通行人の人達が変な目で見てるよ。
すみれ: 独り言言ってる変な子だと思われてる……アハ、アハハ(あいそ笑い)
かおる: やめなさいよ、余計変な子だと思われるよ。
すみれ: う、うん、行こう……。
舞台を移動し、近くの公園に行く。
かおる: すみれちゃん、自分のことは自分で決める人なんだよね……。
すみれ: そうだよ。見かけによらず、ガンコなの、あたしって!
かおる: そうだよね、あたしもそうだったから(モジモジしてる)
すみれ: おトイレだったら、あっちにあるよ。
かおる: 幽霊はお便所なんかいかないの!
すみれ: 何が言いたいのよ!?
かおる: すみれちゃん、宝塚って知ってる?
すみれ: うん、ベルバラとかやってる歌劇団?
かおる: 興味ある!?
すみれ: うん、お母さんとかは……若い頃はなんとかっていう宝塚の女優さんのおっかけとかしてたらしいけどね。
かおる: そうだろうね。すみれって名前も宝塚にちなんでるんじゃない?
すみれ: うん、かな?
かおる: すみれちゃんは?
すみれ: ……分かんないよ。
かおる: あたし、宝塚に入りたかったんだ。
すみれ: かおるちゃんが?
かおる: うん、何十年も昔のことだけどね。
すみれ: 試験おっこっちゃったの?
かおる: 試験の十日前に死んじゃったの。
すみれ: え!?
かおる: 戦時中だから募集停止だったけど、毎年その日。戦争が終わったら受けようって、準備してたの。
すみれの花の咲くころ……ちょうど今じぶん。
すみれ: なんで、なんで死んじゃったの?
かおる: え……まあ、それでさ。宝塚うける気ない!?(おもいきり顔を近づける)
すみれ: かおるちゃん……。
かおる: もし、少しでもその気があったら、あたしがすみれちゃんに憑依(のりうつって)ってさ、
試験にも合格させて、宝塚のスターにしてあげる!
憑依っていっても、すみれちゃんは、ちゃんとすみれちゃんなんだよ。
ただ、試験とか、ここ一番という時に助けてあげるの!
すみれ: それって……。
かおる: そんなばい菌みるような目で見ないでよ。
すみれ: ごめん……。
かおる: ほら、電動自転車ってあるでしょ。自転車だから自分で漕ぐんだけど。
坂道とか、苦しい道になったら、モーターが働いて助けてくれるやつ。アシスト機能っていうのかな……あれに近い!
あくまですみれちゃんの人生だから、すみれちゃんが、その気になってペダルを漕いでくれなきゃ、
このかおるモーターも力のふるいようがないんだけどね。
すみれ: うん……。
かおる: ……これって霊波動が合ってないとできないんだよ。
あたしとすみれちゃんて、RHマイナスの霊波動……百万人に一人くらいしかいないの……。
すみれ: うん……でも、急な話だから。
かおる: あたしは、ずっとずっとずっとずーっと思っていたんだけどね。
すみれ: あたしには急なの!
かおる: ごもっとも……あたしの勝手な思い入れだから、断ってくれてもいいのよ。
自転車が乗る人を選んじゃいけないものね。しょんぼり。