大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・せやさかい・024『カマイタチ・1』

2019-06-09 14:00:47 | ノベル
せやさかい・024
『カマイタチ・1』  

 

 

 ……それはカマイタチやで。

 

 テイ兄ちゃんが声を潜めて言う。

 檀家周りから帰って来たとこで、当然墨染の衣。オフの時は年相応に軽薄なテイ兄ちゃんやけど、さすがに神妙な坊主の面構えで言われると――そうやったんか!――と納得してしまう。

 実はね……

 学校からの帰り道、ボーっと歩いてたら、目の前に黒い切込みが走った。

 ほら、マンガで刀なんか振り下ろしたら、エフェクトが入るでしょ。刀が振り下ろされた線に沿って、シュッってな感じで。

 それは、音もなく後ろからやってきて、あたしの脇を掠めるようにして急上昇して視界から消えてしもた。

 それだけやったら「あれ?」でしまいやねんけど。

 気ぃついたら制服の脇が五センチほどスパッと切れてた!

 

 キャーーーーーー!

 

 と、悲鳴は出てこーへん。

 早足で家に帰って、ちょうど檀家さんから帰って来たばっかりのテイ兄ちゃんを掴まえたというわけなんよ。

「それで、どこを切られたんや?」

 え、なんで切られたん知ってんねんや? 黒いもんが過ぎったとしか言うてへんのに。

「カマイタチいうのんは、そうやって、知らん間に切り傷させよんねんぞ」

 とっさに、脇を隠した。

「ちょっと、見せてみい」

 意外に強い力で手をどけられて、テイ兄ちゃんの顔色が変わった。

「な、なんや、これは!?」

「!?」

「お、おい、さくら!」

 情けないことに、あたしは気を失った。

 

 気ぃついたらソファーに寝かされてた。タオルケットが掛けられてて、上着は脱がされてた。

 

「大丈夫か?」

 傍には美保伯母ちゃんが居てて、優しく声をかけてくれた。

「か、カマイタチは……」

「カマイタチとちゃうよ。花ちゃん、だれかに制服切られたんや」

「え? え? ええ!?」

「キャミにも肌にも傷が無いから、たぶん、学校で切られたんちゃうやろか。体育の授業とかなかった?」

「六時間目体育やった」

「たぶん、その時に切られたんとちゃうか」

「これは、学校に言うたほうがええで」

 テイ兄ちゃんが、マジな顔で言う。

 

 制服切られるやなんて怖い……なんか人に恨まれるようなことやったんやろか……?

 

「こういうことは、早く動いた方がええで、俺が電話しよか?」

「いや、わたしがやるわ。あんたはさくらちゃんに付いといたって」

 伯母ちゃんはスマホを持って廊下へ、テイ兄ちゃんは向かいのソファーに腰かけた。

 心配したお祖父ちゃんの声も聞こえる。いつのまに帰って来たのかコトハちゃんの声も……なんや、とんでもないことになってきた(;'∀')。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公 安泰中学一年 
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主
  • 酒井 詩        さくらの従姉 聖真理愛女学院高校二年生
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
  • 榊原留美        さくらの同級生
  • 夕陽丘・スミス・頼子  文芸部部長
  • 瀬田と田中       クラスメート
  • 菅井先生        担任
  • 春日先生        学年主任
  • 米屋のお婆ちゃん

 

 

 

 

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高校ライトノベル・連載戯曲 ダウンロード(改訂版③)

2019-06-09 07:46:38 | 戯曲

連載戯曲  ダウンロード(改訂版③)「大橋むつお」の画像検索結果

 

 
ノラ: あのね……病人さんの相手する時は、最低の医療知識ぐらいロードしといてよね。
 サヤカ婆ちゃん、死んでしまったわよ。
 わたし、アイシーユーも、心臓のモニターもわからなかったわよ……
 え? 先方さんは喜んでた!?
 ……そう……あの……ノラって名前、なんとかならない?
 わたしの名前。ノライヌ、ノラネコ、ノラロボット……なんか落ち込んじゃうよ……
 え? いずれはイプセンのノラみたいにたくましく独立してもらいたいから? 
 よく言うよね……ずいぶん健康的に笑ってくれるわね……白い歯してんだ、あなたって……
 ううん、なんでも……ね、どうして、この部屋のこと、ハンガーっていうの?
 なんだか洋服ダンスの中の洋服か、航空母艦の中の飛行機になったみたいで……せめて、ルームとか、ネストとか……聞いてる? 
 次? もう次の仕事……はいはい。
(マシンが、はきだしたプリントを見る)……あのね、わたしの能力は、二十五歳プラスマイナス十歳だって言ったでしょ! 
 なにーーーーーこれ!? 五歳の女の子、それも三つ子!?
 わたし、体ひとつっきゃないのよ!
 ……え……現場には行かない? 
モニターで……でもね……わかったわよ。
 秋園くずは……若手の女優さんね……
 えーーー! 三つ子の隠し子がいたの!?……火星ツアーに出る前に娘たちに会っておきたい……マネージャーの気配り。
 ……でも、この三つ子、日本とドイツとアメリカに里子に出されてるんでしょ。
 わたしの言語サーキット、パンクしちゃいそう……(柱のボタンを押す)
 ね、どうして本物よばないの? モニターに出るんだったら、簡単じゃない……会いたくないって?……三人とも……ふーん……

 柱から衣装を出し、着替える。三人を演じ分けるため、ベースの服は同じ(サヤカの衣装から、リボンをとって、スモックを着ただけ)だが、帽子、めがね、マフラーなどがついている。

ノラ: よいしょっと。これって、三人分のギャラ出るの?……内緒?……働くのはわたしよ。
 もうかったら、キッチンつくってよキッチン……さて、ダウンロード……

 スパーク、振動。上から、モニターの四角い枠がおりてきて(黒子が運んできてもいい)ノラの上半身をおさめる。モーツアルト、カットアウト。最初は黄色の帽子をかぶっている。

ノラ: お母さん、元気? ミミだよ。
 なつかしいね、ちょっとまってね……(くるりとまわって、帽子なし、めがねをかけている)
 ハーイ、マミー。アイム、モモ。
 アーユーファイン?……オー、アイム、ファイン、トゥー。
 アイム、ハッピィー、トゥー、スィー、ユー。
 ジャスト、モメント……(くるりとまわって、めがねなし、マフラーとクマのぬいぐるみつき)
 グーテンターク、ムーテイー。
 イッヒ、ビン、メメ。ダスイスト、マイネン、クマチャン。
 ヤー、ダスイスト、マイネン、オタカラ。クマチャンプッペ。マイネン、オタカラ。
 ヴァルテン、ズィー、ビッテ……(ミミになる)
 うん、こっちのお母さんも優しいよ。でも、ないしょだけど、ちょっと甘やかしすぎ。
 わたし、今も、お母さんの子だと……(モモになる)
 ジャスト、ナウ。アイム、ゴーイング、トウー、ヨウチエン、ウイズ、ソー、メニーフレンズ。
 ……トム……メアリー……シンデイー……キャンディー……ブッシュ……オバマ……トランプ(ミミになる)
 ないしょだけど、お母さんの写真、ロケットにいれてんの。
 ロケットっていうと、お母さん、今日乗るんだよね、火星行きのロケット?……(モモになる)
 アー、ユーゴーイング、トウー、マース? フォー、イベントツアー? オー、エキサイティング!……(メメになる)
 ムーテイー、フェアガイスト、ホイテ?……(ミミになる)
 えー! とうぶん帰ってこないの!? ミミ淋しいよ……(モモになる)
 オー、アイム、ソーロンリー! マミー……ホワット?……
(メメ)エス、イスト、ツアイト!?……ムーテイー、アウフビーダゼーエン……
(モモ)アイ、ラブ、ユー、グッドバイ……
(ミミ)さよなら、さよなら、さよなら……
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高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・057『千早副長の帰還』

2019-06-09 06:35:55 | ノベル2
高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・057
『千早副長の帰還』




 小栗栖雄が生き延びても日本が勝ったわけではない。

 三週間後には東京大空襲があり、沖縄に米軍が押し寄せ、たくさんの特攻が行われ、広島と長崎に原爆が落とされ、八月十五日に日本は無条件降伏する。

 昭和三十三年、岸内閣が倒れると小栗栖雄は四十四歳の若さで内閣総理大臣になった。

 日米の混血で母方の祖父母がイギリス人であったことが西側世界に好感が持たれた。
 血統と秀逸な容姿で人気があったばかりではなく、内政外交共に辣腕を振るい、東京オリンピックの明くる年には憲法改正をやってのけた。
 こちらの世界よりも五年も早くソ連を始めとする共産主義国家の崩壊が始まり、半島も二十世紀末には南北の統一がなされた。
 むろん雄は総理大臣を下りていたが、目立たぬ活動で、その後の極東危機を回避した。
 こちらの世界から見れば、雄の働きは抜群なのだが、日本国内での評価は高くない。
 アメリカにおもねった若造、国を誤った軍人総理などとひどいものだった。
 
 しかし、大阪の上空で核ミサイルが炸裂することは無かった。

「どっちの姿に見えます?」

 カワチの転送室に戻って最初に聞いた。
「大丈夫、本来の副長の姿に戻っていますよ」
 航海長が自分の事のようにホッとして応えた。
「艦長は?」
「男は出て行ってもらってます」
「千早さん、これを」
 田中美花衛生長が紙袋と毛布を渡す。
「え、あ、わたし裸なんだ!?」
 
 身なりを整え、衛生長の健康診断を受けてから艦長室に向かった。

「パラレルワールドに飛ばされていたんだね」
「はい、向こうの歴史を変えてしまったようです」
「こっちの世界よりも上手くいってるようじゃないか」
「ええ、でも、こちらに戻される寸前に嫌なものを見たような気がします。これからが大変なんじゃないかと感じました」
「すべて上手くいく世の中なんて、そうそうあるもんじゃないだろ」
「転送室の異変は収まったようですが」

「それがそうでもないんです」

 砲雷長と機関長のコンビが入って来た。
「ごくろうさん、解析はうまくいったのかい?」
「半ば予測値ですが、まず間違いはないと思います」
「モニターをお借りします」
 慣れた手つきで機関長がモニターを操作すると、プロキシマbからトラクタービームが発せられ牽引されているカワチの3Dモデルが表示された。
「いまのカワチはとてつもなく長い糸で引っ張られる凧のようなものなんです」
 指で広げるジェスチャーをすると、モニターのカワチが拡大された。
「振動しているね」
「はい、バランスの悪い凧のようにブレています。実際は僅かなものなんですが、カワチの質量は20800トンです。この質量でブレが増幅されます」
「本来、このトラクタービームはカワチのようなデカブツを牽引するものではないのかもしれません」
「砲雷長、このモデルではブレているようには見えないんですが?」
「10倍速にしてみましょう」

 モデルのカワチがゆらゆらしはじめた。

「100倍にします……」

 カワチは、細い管の中を引っ張られる木片のようにビームレンジの外郭にドガラドンガラと当たっていく。

「当たった瞬間に転送室がストーム状態になるんだね」
「はい、今は副長が収めて来たところなので静かなものですが、いずれストーム状態に戻ってしまいます」
「ストームの周期は?」
「分かりません、ビームレンジの詳細が分からないので予測がつきません」
「よし、それでも構わん、いまの説明を全乗員に伝えよう。サクラ二曹、手すきの乗員を艦内食堂に集めてくれたまえ」

「了解しました」

 サクラ二曹は艦内放送を掛けるために、艦長デスクのマイクを掴んだ……。
 
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高校ライトノベル・時かける少女BETA・23《大和と信濃と・8》

2019-06-09 06:25:35 | 時かける少女
時かける少女BETA・23
《大和と信濃と・8》              


「日本は、この戦争に勝とうとは思っていない」

 収容所特性のポテトチップを小気味よく食べながら、細井中佐はウェンライト中佐に言った。

「しかし、ここのところの日本軍の精強さはなかなかのもんじゃないか。新規巻き返しを狙っているとオレは思ったが」
「たかが、500機あまりの飛行機を墜としても、アメリカは痛くもかゆくもない。今は攻撃してもほとんど効果がないんで、広島方面の攻撃を控えているだけだ。近々アメリカは関東地方に大規模な爆撃をする。これを見ろよ」
「……これはテニアンか?」
「ああ、硫黄島も取ったし、準備は万端、拡大してみろよ」
 ウェンライトはパッドの画像を拡大した。
「おお、すごい数のB29だ」
「今は200機あまりだが、エプロンの空き具合を見ると、もう100機は増やすだろう」
「カーチスルメイの東京大空襲だな」
「呉に配置している艦艇や戦闘機は超一流だが、数が無い。呉を空にして東京の守備に戻ったら、その隙に呉がやられる」
「悩ましいところだな」
「それに、アメリカはマンハッタン計画の完了寸前だ。これを見ろよ」
 細井中佐はパッドの画面を切り替えた。
「これは、どこの日本の街だね?」
「ネヴァダ砂漠の真ん中だ」
「え……?」
「ハワイの日系人に作らせた。日本家屋と街の一番効率のいい爆撃方法を立案するためにな。アメリカらしいプラグマティズムだ」
「東京は見捨てるのか?」
「それは秘密だ、ただ黙ってやられるわけでもない。それより、いい知らせだ。日本とアメリカで君らの釈放が決まった」
「おお、捕虜交換か!?」
「いいや、油との交換だ」

 これが、細井中佐の狙いだった。

 2000人のアメリカ人捕虜は、携帯電話で自由にアメリカの家族と話させている。捕虜には里心がつき、残された家族は、早期釈放をアメリカ政府や地元の議員に働きかけていた。日本人の捕虜はアメリカにいる。交換となると、早くても二か月はかかる。
 そこで細井中佐は重油やガソリンとの交換を提案した。米軍は最初は渋ったが、ダメ押しのように細井中佐はアメリカの潜水艦二隻を陸攻で撃破、新たに200人の捕虜を確保。ようやく米軍も承諾した。重油20000トン、ガソリン10000トンである。
「チャンスがあったら上の方に言ってくれないか、日本はアメリカに勝つつもりはない。しかし、負けるつもりもない。アメリカが全力でかかってきたら、日本には勝ち目はない。ただし、世界的なパワーバランスではソ連が優位に立つ。それぐらいにはアメリカ軍の肉をえぐることはできるぜ。君のポテチは美味かった、これが食べられなくなるのは寂しいがね」
「この三日で一年分ぐらいのポテチを作っておくよ」

 捕虜と油の交換は相模沖で行われた。交換は船ごと行った。米軍は2隻のタンカー、日本側は4隻の輸送船。乗組員が移り変わるだけで済む。
 米軍が驚いたのは、日本が護衛に艤装工事の終わった大和と信濃を連れてきたことである。アメリカ側の駆逐艦とは大人と赤ん坊ほどの違いがある。大和が礼砲を撃ったときはアメリカ兵は腰を抜かした。一斉射だけだったが、衝撃でブリッジの窓ガラスの半分にヒビが入った。

 細井中佐の計画は、次の段階に入ろうとしていた……。
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高校ライトノベル・『はるか 真田山学院高校演劇部物語・30』

2019-06-09 06:17:57 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
はるか 真田山学院高校演劇部物語・30 




『第四章 二転三転・1』

 秘密は言った瞬間に秘密でなくなる。

 以前読んだ本に、同じ内容のことが書かれていた。
 この格言に気がついたのは、吉川先輩の「おめでとう!」メールから。

 情報はどこから漏れたか?
 タキさんではない。お母さん、まだ知らないもん。
 タキさんは、名前の間に「ヌ」を入れたら分かるように、化かしたり、とぼけたりってとこでは信用していい。
 大橋先生は、あのあと「この感激を物理的にメモしとけ」と、いつもの調子。

 どうやら由香のようだ……。

 吉川先輩のメールが来る前に「オス」って声をかけたら「オ……」とだけ言って目をそらせた。
 吉川先輩のメールが来たときに「あ」と思ったけど決めつけは良くない。昼休みに声をかけた。
「あのね……」

「ごめん!」

 勢いよく頭を下げた(下げすぎて机に頭をぶつけ、ゴ~ンと公立高校独特の安物の机の金属音がした)
「あの後って、明くる日なんやけども。もっかいねねちゃん自身から話を聞こと思て、生徒会室に行ってん! ほんなら誰もおらへんさかいスマホ出して、喜びをかみしめててん。はるかの成功は、あたしの喜び。はるかの嬉しさは、あたしの希望。なんというても文学賞やねんもん、文学賞! あたしは、ほんまにすばらしい友だち持った思て……ほんなら、いつの間にか後ろに吉川先輩が立ってて……アイター……なんであたし頭痛いねんやろ?」
 おかげでクラスのみんなに爆笑とともに知られるハメとなった。
 それも、最終選考に残ったではなく。受賞したと誤解されて……。
――それは誤解です!――
 と、黒板に書くわけにもいかず。声をかけてくれる子に、こそっと説明をする。
 でもわたしをシカトしている東亜美と住野綾の二人は露骨にイヤな顔をしていた。(ちなみに、わたしのホンワカは功を奏し「シカト組」はこの二人に減っていた)
 担任の竹内先生は、一文字眉を「へ」の字にして、
「おめでとう、アメチャン食べる?」
 と、祝福してくださり、誤解を解くと、アメチャンが二つに増えた。


 そういうわけで、わたしは駅前のハンバ-ガー屋さんの二階にいる。
 もう期末テスト前の、部活停止期間なんだけど、タマちゃん先輩が、二人だけの「ノミネート祝賀会」を開いてくれたのだ。
「おめでとう!」
 シェイクで乾杯。
「どうもすみません、まだ受賞したわけでもないのに」
「またぁ、ノミネートされただけでも大したことやんか。ここんとこクラブもドンヨリしてるさかい、久々のグッドニュース。またテスト前のあたしにとっても、ええ励みやさかい!」
 美しいまつげが、これまた「へ」の字になった。
「そう言っていただけると嬉しいです」
「よかったら、また作品読ませてね!」
「エヘヘ、受賞しましたらね」
 まっすぐ見つめるタマちゃん先輩の視線に照れて、おもいきりシェイクをストローで吸い込む。
「クスッ」
「あ、今のわたしって、ヒョットコみたくなってませんでした?」
「ほなら、いまのあたしは、大口開けたトトロやなあ」
 そう言って、タマちゃん先輩は、ハンバーガーにかぶりついた。
「フフ、先輩って、どんなふうにしていてもかわいいですね」
「またぁ、あたしこそ、はるかちゃんのホワっとした明るさが、またうらやましい」
 なるほど、先輩の口癖は「また」である。思わず先輩の膝のあたりに目がいった。
「ん?」
「いえ、なんでも」
 だれかさんが言うほど、膝は開いていなかった。
「あたしね、一人でウジウジ悩んでんねんけど。クラブのことが、また……」
「タマちゃん先輩も……今のクラブ心配なんですか!?」
「え、あんたも!?」

 先輩の膝が全開になった。
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