大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・連載戯曲『梅さん➄』

2019-06-29 06:37:11 | 戯曲
連載戯曲『梅さん➄』        



: 短大行ったのも、働きたくないからでしょ。
 だから運良くお父さん必死のコネで就職きまっても不満タラタラ……
 えーと……予測では(ノートを開く)三年目でルックスだけがアドバンテージ男にはまって子供ができて「できちゃった、どうしよう!?」
 男はどういう答えをすると思う? 百パーセントこう言う「君の好きにしたらいいよ」だよ。
: あたりまえじゃん。生む生まないは女の権利だから、男はそう答えるしかないんだよ。
: で、生んじゃったら、事あるごとに「おまえが生むって決めたんだぞ!」と、男は百パーセント渚に責任転嫁するわ。
 そして、子供捨てられるほど不人情じゃないから……
 わたしは、そのへんに可能性を感じて、元締めと最後まで掛け合ったんだけどね。
 元締めはこう言うの。続けるね……その渚に残された顕微鏡で見なきゃわかんないほどの人情、
 この人情が裏目に出て、子供を殺したり捨てたりすることもなくダラダラ虐待寸前の育児。
 その間に離婚と再婚。あげくの果てにパチンコに入り浸り、車に子供を残して熱中症で死なせてしまう…… 
: それでガス自殺でドッカーン……!?
: そう、まだ六七年先のことだから少し誤差はあるけど、大筋はその通り。
 巻き添えは間違いなし、十人から二十人の巾かなあ……
: そんなことしない、ぜったいしない。だって、今話聞いたもん。肝に銘じて忘れないもん!
: 忘れる、必ず忘れる、ぜったい忘れる。思い出してごらん、今までどれだけ約束を破ったり忘れたりしたか……
: ……
: もう忘れたことさえ忘れたか……
: 約束破ったりしないもん。そりゃちっこいことはあったかもしれないけど、人に迷惑かけるような約束忘れたりしないもん!
: ほう……たとえば五年前、高校受験の前の日、谷掛安子さんと受験会場に行く約束をしたよね?
: え……ヤッチンと?
: あんたたち受験の前日、前祝いとか言って、不安解消するために、公園でチューハイ飲んでできあがちゃってさ。
 そこで渚、あんたは谷掛さん、ヤッチンと約束したんだ。三丁目のポストの前で待ち合わせしようねって……
 ヤッチンは覚えていた……だから時間が過ぎてもギリギリまで待っていた。
 先生に言われたとおりその日スマホは家に置いてきて連絡もとれずに……そしてヤッチンは受験会場に間に合わず不合格。
: そんなの、そんな約束……(;゚Д゚)
: したのよ。で、ヤッチンは、そんな約束を信じた自分が馬鹿だったと、渚には一言も言わなかった。
 いい子だね。それが幸いしてか、公立ではいい友達、いい先生にめぐりあえて、今はもうあれはあれで良かったと思っている
 ……いい友達だったのにねえ。渚はただ行く学校がかわったから離れていった子だとしか思ってないだろ?
: そんなことが……
: そうだよ。
: でも、それはアルコールが入っていたから……
: その梅の盆栽、源七が剪定しとくよって、昨日晩ご飯の時、渚にもちゃんと聞いてるんだ。
: 嘘……(;゚Д゚)
: 友達と喋っていて、いいかげんな返事をしたんだよ。
 源七おもしろくなかったろうね、よかれと思って帰りに渡したら、渚にムッとした顔されて……
: 盆栽なんてささいな……(-_-;)
: その些細なことで、ついさっきまでどんな顔してたの……どれだけの人を傷つけたの……
 駅の南口で、女の人と肩がぶつかったろう「このバカヤロー! どこに目ぇ付けて歩いてんだ!」……
 もう忘れちゃったよね。あの女の人、これからお見合いにいくとこだったんだよ、十三回目の……
: ……
: 最後にもう一つ。今わたし達は何の話をしているんだっけ?
: どれだけあたしが人の話を聞いていないか……
: 違う。
: どれだけあたしが知らず知らずの間に人を傷つけてきたか……
: 違う……それはみんな周りの問題だ。根本はもっと違う話。
: ……?
: 渚には夢がないという話。
: どうして夢がなきゃいけないのよ! 夢のない人間なんてゴマンといるよ、
 トコも、サチコも、うちの親だって夢なんてもってないよ。親父なんて万年平社員じゃないか!
: 言葉って難しいね……わかりやすく夢という言葉を使ったんだけど、金持ちや、スターになることだけが夢じゃない。
 ……覚悟って言った方が良かったかな……金持ちになる覚悟、スターになる覚悟、そして大人になる覚悟。
 親から自立し、自分の力で身の丈にあった生活を送り、子供を産んで育てる覚悟……
 それも立派な夢なんだよ……聞いてる、私の話? ロクに人の話も聞かずに人を傷つけてばかり……
 だから、源七がやったみたいに蕾のうちに剪定されるのよ。他の蕾を生かし、木を守るために……

 この時、もんぺ姿に防空頭巾を首に回覧板を持った五十代と思しきふくがあらわれる 
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高校ライトノベル・高安女子高生物語・10〔なんや、よう分からへん〕

2019-06-29 06:27:59 | 小説・2
高安女子高生物語・10
〔なんや、よう分からへん〕  


 一昨日と昨日はクラブの稽古やった。

 休みの日の二日連続の稽古はきつい。せやけど、来月の一日(ついたち)が本番。やらんとしゃあない。

 二年の美咲先輩を恨む。

 健康上の理由には違いないけど、結果的には盲腸やった。盲腸なんか、三センチほど切って、絆創膏みたいなん貼っておしまい。三日で退院してきて、大晦日は自分の家で紅白見ながらミカンの皮剥いてた。と、お気楽に言わはる。
「あそこの毛ぇ剃ったんですか?」
 と聞いてウサバラシするのがやっと。今さら役替わってもらわれへんし、南風先生も替える気ぃはあれへん。
 まあ、あたしもいっぺん引き受けて台詞まで覚えた芝居やさかいやんのんはええ。

 せやけど、指導に来てるオッサン……ウットウシイ!

 ウットウシイなんか言うたら、バチがあたる。
 小山内カオルいう演劇の偉い先生。うちのお父さんとも付き合いがあるけど、南風先生は、小山内先生の弱みを握ってる(と、あたしは思てる!)ようで、熱心によう指導してくれはる。
「明日香クン、エロキューション(発声と滑舌)が、イマイチ。とくに鼻濁音ができてへん。学校の〔が〕と小学校の〔が〕は違う」
 先生は見本に言うてくれはるけど、違いがよう分からへん。字ぃで書くと学校の〔が〕は、そのまんまやけど、小学校のは〔カ゜〕と書く。国語的には半濁音というらしい。
「まあ、AKBの子ぉらでもできてへんさかいなあ……」
 あたしが、十分たっても理解でけへんさかいに、そない言うて諦めはった。

 問題は、その次。

「明日香クン、君の志穂は、敏夫に対する愛情が感じられへんなあ……」
 あたしは、好きな人には「好き」いう顔がでけへん。言葉にもでけへん。関根先輩に第二ボタンもらうときも、正直言うて、むりやりブッチギッた言う方が正しい。
 関根先輩が、後輩らにモミクチャにされてる隙にブッチギってきた。せやから、関根先輩自身はモミクチャにされてるうちに無くなったもんで、あたしに「やった」つもりはカケラもない。第一回目では見栄はりました。すんません。
 あと半月で、OGH高校演劇部として恥ずかしない作品にせなあかん。

 ああ、プレッシャー!

 S……佐渡君が学校に来た。びっくりした!
 きっと、我が担任毒島先生が手ぇまわしたんやろ。一瞬布施のエベッサンで会うて、鏑矢あげたこと思い出したけど、あれやない。あんな戸惑った……いや、迷惑そうな顔してあげたかて嬉しいはず無い。毒島先生が「最後の可能性に賭けてみよ!」とかなんとか。生徒を切るときの常套手段やいうことは、お父さん見てきたから、よう分かってる(後日談やけど、ほんまはよう分かってへんかった)

「本当に描かせてくれないか?」

 食堂で、食器を載せたトレーを持っていく時に、馬場さんが、思いがけん近くで言うたんで、ビックリして、トレーごとひっくり返してしもた。チャーハンの空の皿やったんで、悲惨なことにはなれへんかったけど。

「は、はい!」

 うかつに返事してしもた。

 なんで、あたしが……なんや、よう分かれへん。
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高校ライトノベル・時かける少女BETA・43≪国変え物語・4・五右衛門見参・2≫

2019-06-29 06:15:39 | 時かける少女
時かける少女BETA・43
≪国変え物語・4・五右衛門見参・2≫ 


 五右衛門は唐突に現れた。

 美奈が湯あみの最中に、湯屋の梁の上に現れた。美奈は、それが湯屋の近くに寄ってきたときから分かっていたが、子狸かなんぞの小動物だと思っていた。
 その小動物が、闇語りで話しかけてきたのだ。
「不思議な女子だ……」
「あら、子狸じゃなかったのね」
「ほう……闇語りが出来るのか?」

 闇語りとは、忍びの者や老たけた盗人が、口も動かさず会話する術である。並の人間ができることではない。

 次の瞬間、それは、道頓そっくりの顔で湯船に浸かっていた。大胆にも裸の美奈の真ん前である。

「……見れば、ますます不思議だ。こんなにいい女なのに、そそられん。道頓の新手の隠し女でないのは本当のようだな」
「五右衛門さんも大胆なことで……それに大した化けよう」
「ハハ、化けすぎて自分の顔を忘れてしもうた」
「あなたの噂は虚実取り混ぜてあるから、正体が分からなかった」
「おれもな。外堀の作事の道頓が、器量よしの女医者を連れていて、これが、医者としても評判がいい。稼業の合間に拝んでおこうと思ってな」
「ただの盗賊でないことは、気配を感じたときから分かったわ。目に子供のような好奇心しか感じられない。そのくせ、目の奥が企みのない凄味であふれている。で、気持ちの根っこに恨みがある。評判通り長嶋の一向一揆の生き残り……」
「敵に回したら、怖そうだな」
「羽柴さまを、信長公の物まねかどうか見定めているのね」
「ああ、信長と同じなら、とことん邪魔をしてやる」

 瞬間、五右衛門の姿が消えた。下女が湯加減を聞きに来たからである。下女が美奈の返事に満足して去っていくと、また現れた。

「天下は羽柴様が取るわ。信長様と同じようかどうかは分からないけど」
「あの禿げネズミに天下が治まるのか?」
「治まりすぎるほどに。それに信長様のような苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)なことはなさらない」
「それはつまらん。オレはただの盗賊に成り果ててしまう」
 五右衛門は、つまらなさそうに湯船の中で放屁した。湯の表面でポカンと大きな泡になって弾けた。不思議なことに柑橘系のいい香りがする。何ともおかしく美優は忍び笑いをした。
「治まり過ぎて、海の外に目が向くのが恐ろしい」
「エウロパやノビスパン(メキシコ)に目が向くのであれば、癪だが悪いことでは無い。オレも海賊には興味がある」
「いえ、なにかとても禍々しい予感がするの」
「……異国との戦(いくさ)か?」
「おそらく……でも、それまでにも、もっと恐ろしげなことも……」
「そうか……あんたとは面白い話ができそうだ。また来るぜ」

 五右衛門は掻き消えるように居なくなった。逃走経路はわかるが、美奈はあえて知ろうとはしなかった。

「美奈はん、なんや今日はええ香りがするなあ」
 久宝寺の堀を渡ったところで、道頓が言った。道頓の目が珍しく好色になった。
「今朝、ゆず風呂にしてみましたの」
「ああ、今年もそないな季節やねんなあ……」

 道頓が、季節の移ろいに思いをいたしている間に、美奈は五右衛門が残していった香りを急いで分解した。
 はるかに八部通り完成した大阪城の甍が、朝日に光った。
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高校ライトノベル・里奈の物語・9『どなたに投票されましたか?』

2019-06-29 06:03:18 | 小説3
里奈の物語・9
『どなたに投票されましたか?』


 
 
 妙子ちゃんの声で目が覚めた。

「あ……帰ってたんだ」
「選挙行くんだけど、ついてくる?」
「え……うん」

 怖気が先に立ったけど、ここは奈良の地元じゃないから付いていくことにした。
 うざったく絡みついてこなければ、人間には興味があるほう。

「忙しいみたいね、新しい会社」
 小さな横断歩道の赤信号で律儀に立ち止まり、聞いてみた。
「うん、良くも悪くも即戦力。里奈ちゃんの相手できないでごめんね」
「ううん、そんなことない! お店に出ててもおもしろいから」
 指が千切れそうなくらいに、広げた手を振った。
「あ、青になった」
 ホタホタと渡って公園を斜めに横断、チラホラと投票所の小学校に向かう人たちといっしょになる。
「年配の人が多いね」
「若い人は、どうしてもねえ……」
「フフ、妙子ちゃんだって若いのに」
「ハハ、もう気分はオバサンやなあ」

 従姉妹同士の気楽さで……というよりは、妙子ちゃんの気楽さで、ずっと喋りっぱなし。気づいたら投票所の中。

「あ、付き添いだから……」
 顔を赤くして、出口に向かう。
 前のオジサンが投票済み証の前を素通り。
「あ、忘れてますよ」
 一枚つかんで渡そうとする。
「おおきに……二枚あるさかい、一枚どうぞ」
「あ、ども……」
 勢いで受け取ってしまう。流れのままにグラウンドに出ると声を掛けられた。
「どなたに投票されましたか?」
 いかにも放送局というオネエサンがマイクを向けている。
「え、ああ、市長は〇さんで、知事は△さんです」
 テレビでよく見かけた○さんと△さんの名前を挙げる。ちなみに二人とも嫌い。嫌いだからこそ名前を憶えてしまった。

 でも、とっさに口に出るのは……やっぱ、ひねくれ者なのかもしれない。

「ハハハ、おもしろいなあ!」
 妙子ちゃんに笑われる。
「でも、有権者に間違える? あたし、そんな年上に見えるのかなあ」
「そら、投票所の出口から出てきて、投票済みの紙切れ持ってたら間違われちゃうって」
「あ、そか……」

 流されやすく、その場しのぎの性格を反省……。
 
 でも、今夜の開放速報は楽しみになった。
 
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高校ライトノベル・『はるか 真田山学院高校演劇部物語・50』

2019-06-29 05:54:49 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
はるか 真田山学院高校演劇部物語・50 

 

『第五章 ピノキオホールまで・11』


 その日を皮切りに、稽古は激しくなっていった。

 しかし、あの日わたしが個人的に受けたような稽古は無かった。立つキッカケ、立ち位置、振り向くタイミングなどが何度も試され、修正を加えられた。

 固有のクセも直された。

 タロくん先輩は肩や目に出る過剰な力み。
 タマちゃん先輩は自然と開いていく膝、トチった時に出る「また……」という口癖。でも直った。これでもう誰かさんに「マタちゃん」などとは呼ばせない。
 わたしは、集中力。集中力が途切れるとぼんやりとした笑顔になってしまう。つまり「ホンワカ顔」を禁止された。
 演技中に集中すべき対象は全て検討のうえ指示された。台詞や道具(無対象が多いのだけど、慣れっこになっていたので苦にはならなかった)役としての過去の記憶。
 なんだかお人形さんになったみたいだけど、言われたとおりにやってればテンションも上がりラクチンだったので誰も文句は言わない。
 二曲の挿入歌も、N音大から届いた楽譜を元に正確な二部合唱になった。
 そして、休憩時間は少し長くなった。
 休憩の間に、先生は演出ノートを整理し、わたしたちは自主的に演技の調整。
 それも終わったら山野先輩のギターで、勝手に唄ってリラックス(これがコンクールでは生きてくる)していた。
 そうやって、厳しくも楽しい稽古が二週間続き、本番三日前のリハーサルをむかえた。

「わあ、大きなホール!」感動と怖じ気が同時にきた。

 タマちゃん先輩と、タロくん先輩は去年も出ていたので平気だった。
 山野先輩もびっくりなんだろうけど、さすがは少林少女。泰然自若。
 わたし一人が「わあー!」「広い!」「すごい!」「ヤバイ!」などを連発。大橋先生はニヤニヤと、乙女先生は少し怖い顔でわたしを見ていた。
 このピノキオホールは兵庫県のA市が持っている演劇専用のホールで、付属の劇団まであるんだ。
 大阪には、これに似たS会館が有ったが、知事の事業仕分けのために取りつぶされていた。
 A市は大阪に近いこともあり、出場校の半分近くが大阪の学校だった。
「みんな持ち込みの道具多いですね、今の学校なんか大道具立てただけで……」
 終わってしまった。
 次ぎの学校は、やたらと照明に凝っていて吊り込みとシュートで持ち時間の半分を使ってしまい、道具も 半分ほどしか飾れなくて、役者は登退のキッカケを確認しただけ。

 いよいよ真田山、わたしたちの番! 舞台監督のタロくん先輩は、誰よりも張り切っていた……わりには仕事がない。

 道具は、三六の平台(劇場が持ってる基本道具で、畳一枚の大きさで、高さが十二センチほどある)を二枚重ねたのが二つっきり。照明も地明かりだけなんで、なんの調整もなし。音響だけは持ち込んだMDの音量調整をやったけど、これも合わせて五分で準備完了。ゆうゆうと一本通せた。
 ただ、タマちゃん先輩の宝塚風の歌になったとき、ミラーボール(あとで名前を知った)が回って、光の雨みたくきらめいたのには驚いた。
 あらかじめ、学校の体育館のフロアーで実寸で二度ほど稽古していた。だから演技的に戸惑うこともなかった。
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