大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・連載戯曲 ダウンロード(改訂版⑥)

2019-06-12 06:27:43 | 戯曲
連載戯曲 
ダウンロード(改訂版⑥) 



※ 無料上演の場合上演料は頂きませんが上演許可はとるようにしてください  最終回に連絡先を記します
  
 マシンから、仕事のメモをとり、ドアを開けて飛び出して撮影現場に着く。

ノラ: お早うございます。
 オードリーをやらせていただきます、松田幸子と申します。
 ええ、アンドロイドです。
 オードリーのパーソナリテイーはダウンロードしてませんので、そっくりというわけにはいきませんが……
 え、そのほうが……はい、ありがとうございます……
 これが台本(ぱらぱらとめくる)わかりました。
 ハハハ、ロボットですもの理解は早いです。相手役の方は……
 ああ、CGのハメコミ……いっそ、わたしのもモーションキャプチャーにしたら……
 ああ、アナログの新鮮さで勝負。それにわたしのイメージが……
 苦悩を内にひめた無邪気さが。ハハハ、ありがとうございます。おほめいただいて。
 ……いきなり本番!? リハーサルなし?……ドライもカメリハも。……その方が新鮮……
 はい。でも、だめなら撮り直してくださいね(いきなり、後ろからアイスクリームをさしだされ、驚く)
 わ……アイスクリーム!(無対象) ありがとうございます。差し入れですか?……え、小道具。ほんとシリコンゴムだ…… 
 ああ、スペイン広場のシーンですね……はい、本番。


 BGM入る。ノラは、階段の手すりを示す柱に腰掛けて、アイスクリームを舐める。後ろから階段を下りてきたグレゴリー・ペックが声をかける

 あら!……また、お会いしましたわね……
 え、ええ、今日は、もう学校お休みしようと……抜けだしてきちゃったから。
 だって、こんなに空は青いし、雲は白いし……とってもすてきな朝でしょ。
 あなたにはわからないでしょうけど、自分の思うように、いろんなことがしたいの。
 だれにも束縛されないで。アイスクリーム舐めたり、カフェに座ったり、ウィンドショッピングしたり、雨の中を歩いてみたり。
 ……親が心配?……一日だけのことだから。それに、父も母も忙しくしているから……気が付きませんわ。
 親の仕事?……んー……一種の広報係です。父も母も……その……人を接待したり、あいさつしたり。
 ……愛情は……ええ、もっていてくれていると思います……でも、とても古風で、厳格な家庭だから……
 あなたは……もう、お仕事の時間……
 え、あなたも時間が空いていらっしゃるの!? ほんとうに!?
 ええ、ぜひ!……ああ、ちょっと待って……(アイスクリームのコーンのヘタを、ゴミ箱の投げ入れる)やったー! ストライク!
 ……OK?
 ちょっとメーク直しますね。
 次は祈りの壁、続いて真実の口……
 はい、本番……(長い壁を見あげつつ歩く)……これが……祈りの壁。
 お花がいっぱい……そう……空襲で火に追われて、ここまで 逃げた母子が、神様に祈り続けて命がたすかった……
 それが、この壁の下。
 ここね……それで聖地のようになって、お祈りする人が絶えない……いいお話しね……(なにごとか祈る)……内緒です。
 ……ここは……古いお堂のよう(鉄の柵を開ける音)……かびのにおい……「真実の口」?
 ……嘘つきが、この口に手を入れると食いちぎられる?……え、わたし?
 ……大丈夫、わたし嘘つきじゃないから……(一二度ためらって手を差し入れるが、すぐにもどす)
 エへ、エヘヘ……次は、あなたの番よ……そう、嘘つきじゃないんでしょ、あなも……
 グレゴリー・ペックの動きをドキドキしながら見守る。突然手を噛まれるグレゴリー・ペックの悲鳴! オードリーは悲鳴をあげ、渾身の力で彼の腕を引き抜く

 キャー! 手、手が……え!?(上着の袖からニョッキリ手が 出てくる)袖の中に手を隠していたのね。
 バカバカバカ……本気で心配したじゃないの!……OK?
 ……んー……でしょうね。ここはやっぱり相手役がいないと。モーションキャプチャーでも……そう、明日撮り直します? 
 はい、わたしはかまいません。同じ時間にここで……はい、おつかれさまでした。

 くるりと振り返り、ギョッと驚く。 
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高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・060『婿殿を助けて日本を導いて!』

2019-06-12 06:15:21 | ノベル2

時空戦艦カワチ・060   

『婿殿を助けて日本を導いて!』

 

 

 時空戦艦副長楠千早と名乗って直ぐに消えてしまった。

 

――じくうせんかんふくちょう……?――

 

 ふくちょう……副長のことだろう。

 むかしは無かった言葉だけども、ペリーの来航以来幕府の軍制は変わって、奉行ではなく総裁などと言うし、組頭ではなく隊長という。隊長の次の者を副長と呼称する……奈何は「おまえが男であればなあ」というくらいに頭の回転がよくて勉強もできる。

 その奈何でも「じくうせんかん」というのは分からない。

 幕末のこの時期「時空」という言葉も無ければ概念もない。

「せんかん」は千貫……千貫……銭(ぜに)が千貫の意味だろうか?

 

 その後、何度か手鏡に千早という女が現れた。

 ただ、ほんの一瞬と言ってもいい時間なので実の有る話が出来ない。

 女の姓が『楠』だということが分かった。

 楠千早……調べて分かった。楠正成の伝説上の娘の千早姫に違いない。

 楠正成は江戸期を通じて武士の鑑のような存在で、先般十五代将軍に就任した慶喜公などは水戸の出身でもあり楠正成を称揚している。

 これは、不思議な手鏡を通して千早姫が自分を導いてくださるのだろうと感激した。

「忠臣楠正成公の姫君なのですね!?」

 一瞬戸惑ったような顔になったが「そうです、これから言うことを……」

 なにか自分に伝えようとして切れてしまう。

 今まさに前島来輔との縁談が持ち上がり、奈何自身の人生が大きく変わろうとしている。調べてみると前島来輔という人物は予想していたとおり先祖代々からの幕臣ではなく、越後の百姓の息子である。世話役の勝安房守も三代前は越後の百姓だ。きっと、その縁からの話であろう。

 勝安房守様は幕府に海軍をお創りになっただけではなく、慶喜公直近であり、これからの幕府と日本を視野に置いて活躍されている。その勝様のご推挙、前島来輔様もひとかどの人物であろうと胸を高鳴らせた。

 

「前島来輔様に嫁ぐことになりました」

 

 その夜も、その一言だけを伝えると手鏡の面は漆黒に戻ってしまった。一瞬千早姫が目を見張ったような気がした。

 神さまのような千早姫が目を見張るんだ、前島来輔というお方はひとかどの人物には違いないと確信した。

――婿殿は日本を救う人物です! 婿殿を助けて日本を導いて! それが貴女の使命……――

 そこで切れてしまい、その後は長く通じることが無かった。

 

 その七日後、前島来輔に嫁いで奈何の奮闘が始まった。

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高校ライトノベル・時かける少女BETA・26《大和と信濃と・11》

2019-06-12 06:07:07 | 時かける少女
時かける少女BETA・26
《大和と信濃と・11》               


 今回の釈放に応じた捕虜は2000名だった。

 残り500の捕虜たちは油と交換されることを拒絶した。軍人らしいと言えばそうだが、そういう者は一握りで、大半の者は仲間や上官の意志に流されたものだった。

 捕虜たちの出発は、3月20日横浜の埠頭からだった。今回の乗船は前回油を積んできたアメリカの二隻のタンカーである。
「日本には、もう余分な船は残っていない。交換を迅速に済ますためにも、この二隻のタンカーを使わざるを得なかった。見送りに500人の残留する仲間にも来てもらった。30分の猶予を与える。残留したい者は船から降り給え。また、見送りの諸君で気の変わった者も乗船してもらっても構わない。この10日余りで、携帯電話でいろんな話をいろんな相手にしてもらったと思う。上官や仲間の気持ちはどうでもいい。一人のアメリカ市民として判断したまえ。4月の初旬には君たちの大部隊が沖縄に上陸する。我々は全力で阻止する。釈放される諸君は二度と戦場には出られない。国際法だからね、お互いに最低限の約束は守ろう。帰国する諸君はアメリカで声をあげてもらいたい。原子爆弾は使うなと。じゃあ、30分のシンキングタイムだ」

 見送りの捕虜たちに動揺が走った。結果、新たに300の捕虜が見送る側から見送られる側に変わった。

 護衛には、前回同様に大和と信濃が付いた。前回と違って、信濃には30機あまりの紫電改が積まれていた。いずれも、あの真っ黒い紫電改である。その紫電改が、なぜか250キロの爆弾を積んで発進した。
「何のつもりだ……!?」
 捕虜たちに動揺が走った。釈放を餌にして味方の攻撃に出たのかと思ったのだ。

 紫電改は3機ずつの編隊になり、なんと大和を急降下爆撃し始めた。
「な、なんだこれは!?」
 紫電改の10組の編隊は、全機正確に30発の爆弾を大和に命中させたが、爆煙が風に吹き飛ばされると、大和は何事もなかったように無傷で航行していた。
 そして、9機の紫電改が空中に「バカげた戦争を終わらせよう」と英語で空中に文字を描いた。
 空中の文字が消えかかったころ、米軍の船団がやってきた。今回は護衛に新鋭の戦艦ノースカロライナを伴っていたが、さっきの紫電改の爆撃に耐えた大和にくらべると、どこか見劣りがした。
「じゃ、ウェンライト。今度は戦争が終わってから会おう」
「ああ、ただしアメリカが勝った上でな」
「勝負は五分五分で幕を下ろす」
「原爆もカミカゼもない、勝負でな」

 日米の中佐が、そう言葉を交わした一週間後、アメリカ軍は沖縄本島に上陸を開始しようとしていた。そして、上陸前の艦砲射撃を加えようとした直前、米軍司令官サイモン・バックナー、レイモンド・スプルーアンスに電文が届いた。

――ただちに攻撃作戦を中止し、艦隊を戻せ。5分後に威嚇攻撃をかける――

 発信者は、伊藤整一中将であった。そして、きっちり5分後に、空母エンタープライズが爆沈した……。
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高校ライトノベル・『はるか 真田山学院高校演劇部物語・33』

2019-06-12 05:59:25 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
はるか 真田山学院高校演劇部物語・33 

『第四章 二転三転・4』

 回遊しながら、慶沢園のあれこれを説明してくれる。

 ネットで検索した通りなんだろうけど、ここまでさりげなくやると、もう芸の域。
「舟着き石のむこうが、舟形石、海を見立てた……」
 見立てたところで子ども達の一群が駆けてきた。
「キャハハ」
「おっと……」
 先輩が一瞬遅れ、よけそこなって転んでしまった。
「ごめんなさいね」
 かなたで謝りながら、子供たちを追いかける保育士らしきオネエサンの姿。
 先輩のカバンの口が開いて、中味がぶちまけられている。
 こんなシュチエーション、前にもあったなあ……そう思いながら中味を集める。
 ふと、運転免許証が目に入った……!?
 ふんだくるようにしてソレをカバンにしまう先輩。
「行こうか」
 怒ったように、さっさと歩き出した。

 行き着いた先に四阿(あずまや)があった。
 教室二つ分ほどの広さで、先客は、オバチャンのグループが一組、池を向いた窓ぎわに席を占めていた。
 わたしたちは、反対側の窓辺に席をとった。

「免許証見た……?」
「え、あ……ううん」
「見たんだ……」
 わたしのウソはすぐにバレてしまう。
「ゲンチャリじゃなっかた……ですよね」
「堂々たる、普通免許。去年の夏休みにとった。オレって四月生まれだから」
「生年月日……見えてしまいました」
「車は、横浜のばあちゃんとこに置いてある。たまに戻ったときに乗ってる。腕が鈍るからな。車は移動の手段。で、その手段は、さらに大きな人生の目標の手段でしかない」
「じゃあ」
「世界が変わったら、次は自分がどう変わるかだ。そう思わない?」
「う、うん……」

 庭の木々が、何かの前触れのように、サワっとそよいだ。

「どこから話そうか……」
「え?」
「オレって人間、説明がちょっとむつかしい……とりあえず年齢からな」
「なにか、病気でも……?」
「だったら説明は早いんだけど。オレ高校は二校目なんだ。最初の高校は半年で辞めちまった」
「イジメですか……?」
「オレ、軽音に入ってたんだ。そこで目立ち過ぎちゃってサ」
「うちの軽音には入ってませんよね?」
「うちの軽音は、ただの仲良しグル-プ。まあ、どこの学校も似たり寄ったりだけどな。オレ、こんなこと勉強してんだ」
 手帳になにやら書き出した。

「S○X」
 差し出されたページにはそう書いてあった。
「さあ、SとXの間には何が入るでしょう」
 一瞬、口縄坂のことが頭をよぎり、赤くなる。
「バカ、アルファベットの一番目」
「一番目って、A……SAX……サックス?」
「アルトサックス。目標はナベサダ」
「阿部サダヲ!?」
 ハンパなミーハー少女は、似て非なる者を連想しかけた。運良く先輩は、多感な少女の驚きと受け止めてくれたようだ。
「伯父さんがボストンで日本料理屋やってんだ。元はNOZOMIプロってとこでプロデューサーやってたんだけどね。趣味が高じて、料理屋。そこで働いて、バークリー音楽大学に入れたらなあって……本気で考えてんだぜ」
 よくは分からないけど、なんだかすごいことを考えていることだけは分かった。
「この免許も、向こうへ行って仕事するためなんだ」
「え、日本の免許証でいけるの?」
「んなわけないだろ。最初は国際免許。でも、それだと一年で切れてしまうから、むこうで、免許取り直す」
「すごいんだ……」
「ほら、あそこに竜の頭の形した石があるだろ」
「え、どこ?」
「ほら、あそこ」
 頭をねじ曲げられた。
「あ、ほんとだ。フフ、受け口の竜だ」
「あれ、竜頭石っていうんだ。で、その奥が竜尾石。その間のサツキの群れが胴体になってる。雲を飲み込んで空に舞い上がろうとしてるみたいだろう」
「なるほど……」
「案外だれも気がつかないんだ。オレのお気に入り」
 これもネット検索……?

「オレは、ああいう人目につかない竜でいたい」
「竜……(ちょっとキザ)」
「なんてね……」

「やあ、オニイチャン、今日はアベックか?」
 オバチャン集団の一人が、陽気に声をかけてきた。
「あ、どうも。こんにちは……」
「あんた、若い人のジャマしたらあかんがな」
 もう一人のオバチャンがたしなめる。いっせいに全員のオバチャンがこちらにニヤニヤとごあいさつ。
「……行こうか」
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