大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・連載戯曲 ダウンロード(改訂版②)

2019-06-08 06:59:55 | 戯曲
連載戯曲 
ダウンロード(改訂版②)「大橋むつお」の画像検索結果




 ソケットに指を入れる。スパークと振動。おさまると、ガラッと性格が変わっている。
 ポケットから二十一世紀初頭の携帯電話を取りだしてかける。


ノラ: ……ドモ、うん、あたし……ってゆーか、サヤカ。うん、そそ。八十年前のあんたのお母さん。
 タクマでしょあんた? あたしの息子。うん……今からいくからね。オッケー、待っててね!

 ウォークマンをシャカシャカいわせながら、ハンガーを出る。モーツアルトのBGMカットアウト。
 舞台をルンルンで半周し、現場につく。


ノラ: オッハー! サヤカでーす。よっろっしっく!
 え、声大きい? だって地声だもんあたし、しかたないじゃん。
 え、病院? ここ? おじいちゃんタクマだよね。あたしの息子。
 こっち……嫁さん? ウッス……ヘヘずいぶん若い嫁さんじゃん。
 え……孫の? オバチャン、娘さん。ミナミだよね、むかしBKB47にいた……見る影もないね……よけいなお世話。だよね。
 ま、ヨロシク、エブリバディー!
 こっちね、サヤカ?……ん、アイシーユー。
 ……ってなに? 
 え、気にしなくっていい?
 よっしゃ!(入る)
 ウッス! 元気してる?
 ……んなわけない。ヘヘ、病院だもんね。
 個室でいいけどさ、なんか機械ばっかね……
 どォ……なつかしい?
 昔のサヤカだよ、かわいいだろ。
 え、肌が荒れてる? しかたないよ、昔のサヤカはこうだったんだから。
 ね、このケータイ見てよ。ほら、ここ押すと……
 ヘヘ……サヤカが援交してたオッサンどもの一覧表。
 なっつかしいだろお!?
 こいつこいつ、文科省のチョーエライやつだったんだけど、へんなクセあってさ、割り増しもらってんの。
 ……こいつ、見かけマジメなサラリーマン風なんだけどさ、ナントカって病気うつしたんだよ、あたしに。
 ん……なんかアラーム?
 大丈夫だよね、サヤカ? 
 ね、右のまぶたのキズおぼえてる? ほら、あたしもここに……
 あったりまえだよね、同一人物だもんね。
 ここ、ヨシミとタイマンはったときのキズ。
 あいつのケリがまともに入っちゃて、目のとこにドカッとさ。
 ハハハ、マジきれちゃったよね!
 どうやったかおぼえてないけど……うん、たぶん頭突き……かな?
 ヨシミ、川におっこちゃったんだよね。
 ほっときゃ自分であがってくるとか思って家帰ったら、三日ほどして水死体であがっちゃったんだよね。
 つかまっちゃうかなって、ビビっちゃたけど、けっきょく事故死ってことでェ……
 アハハ、ボケてるよね、あのころのケーサツって。
 ね、聞いてる、サヤカ?
 でもさ、あのおかげで彼氏とりもどしたんだよ。
 ね、コギャルの意地ってか?
 タクマその時できた子だもんね。死んだダンナは自分の子だと思っていたかもしれないけどさ。
 ヘヘ、まさにツナワタリってか!
 ……アラームうるさいね。切っとこうか。
 どう、サヤカ、思い出した?
 ……そう、嬉しいのか……涙流しちゃって。
 横アリでコンサート最前列で見てて気絶しちゃった時みたい!
 コーフンしちゃったよね!
 あたし、嬉しさのあまり、ケーレンして、おしっこちびっちゃって!
 ……サヤカ、聞いてる?
(モニターが、ツーというメリハリのない音をだす)……そう、眠っちゃった?
 ウフフ……サヤカからサヤカへ、おめでとう、百回目のお誕生日!
 バンザーイ!!

「チャンチャン」的音して暗転。モーツアルト、フェードイン。マシンの音、スパークの光して、明るくなる。
 端子に指をいれて振動しているノラ。やがて解除。おわってグッタリへたりこむノラ。
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高校ライトノベル・時かける少女BETA・22《大和と信濃と・7》

2019-06-08 06:45:43 | 時かける少女
時かける少女BETA・22 
《大和と信濃と・7》                   


 
「田能村中尉以下6名、横鎮分遣隊ただいま到着いたしました」

 艤装中の信濃に6機の黒い紫電改が着艦し、阿部艦長と細井中佐に着任報告をした。
 この6人は、細井といっしょに陸攻でやってきた者たちだが、その後横須賀に戻り、紫電改を受領していたのである。ちなみに、この6人は細井に擬態したミナが連れてきたアンドロイドたちであった。今回の任務は微妙な難しさがあるので、サポーターが必要なのである。
「錨泊中の空母に着艦するのにも驚いたが、なんで、この紫電改は黒いのかね?」
「近くに寄って見てください」
 細井に促され、阿部艦長は紫電改の傍に寄ってみた。
「……これは、どうしたことだ。傍によると生成りのジュラルミンのままだ!?」
「こいつは、太陽光を吸収してエンジンや機関砲の動力に使っております。太陽光エネルギーの吸収率は90%になります。つまり光をほとんど反射しませんので、よほど近くに寄らなければ、黒くしか見えません」
 そう言うと、細井中佐は拳銃を取り出し、紫電改の機体を撃った。
「何をするんだね!?」
「ようく撃ったところをごらんください」
 拳銃の弾は機体の一メートル手前で静止していた……と思うと、ノッソリと5センチほど戻されポロリと落ちてしまった。
「光エネルギーを利用した軟性シールドです。大和の三式弾の直撃でも、こいつは墜ちません。爆発の衝撃も吸収されて自分の動力に変換してしまいます」

――電探に感あり。南東から、敵機140機あまり接近しつつあり!――

 ブリッジの防空見張り員がマイクで叫んだ。
「松山の143空が撃ち漏らしたやつだな。中佐、空中退避させんでもいいのか?」
「ちょうどいい、実用試験をやりましょう。田能村、さっそくだが、かかってくれ」
「承知しました」
 6機は陸攻とともに飛び立った。信じられないほどの滑走距離の短さだった。
 電探は、細井中佐の中継機と連動しているので、硫黄島から発進した時点で分かっていた。源田実が隊長を務める343航空隊がまず迎撃したが、紫電改の配備が間に合わず、12機の撃墜に終わっていた。
 横鎮隊の6機は土佐湾の上空で会敵した。

「なんだ、たったの6機か、日本も追い詰められたもんだ」
 編隊長は、6機の紫電改を見くびっていた。

 黒い紫電改の活躍はめざましかった。光エネルギーを攻撃力に変換、見かけは20ミリの発砲と変わりなかったが、実態は光エネルギーなので、弾道は直進する。いわゆる小便弾になることがなく、照準器の中に入ったものに発射ボタンを押せば必中である。呉の上空に達した敵機は48機まで減っていた。敵の指令機はとっくに撤退を指示していたが、6機の紫電改に追いまくられて、前方に出ざるを得なかった。
「くそ、あいつら、どれだけ弾を搭載してるんだ!」
 編隊長は歯ぎしりした。光エネルギーの弾なので、太陽エネルギーがある限り撃ちつづけることができる。敵機は、ようやく20機が逃れ、120機が撃墜され、爆撃機と戦闘機合わせて500人以上が捕虜になった。
 米軍は機数を増やし、戦闘機の割合も増やし、その後二度の攻撃をしかけてきたが、その大半を撃ち落された。

「どうする中佐。もう捕虜の数が2000を超えてしまったぞ。広島の収容所は、どこも一杯だ」

 捕虜たちには携帯電話を渡してある。呉の軍事施設の充実ぶりや、大和や信濃の艤装の進捗も逐次報告されている。米軍としては放置できない状況である。しかし、攻撃に行けば8割は墜とされてしまう。ジレンマであった。
 捕虜たちも、家族と直に電話が出来るので里心はつのる一方で、国に残された家族たちも政府に「日本に早期解放を求める」ように圧力をかけ始めた。

  二月の終わりに、アメリカは捕虜の交換を提案してきた。細井中佐の思惑通りになってきた……。
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高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・056『二月十七日の運命』

2019-06-08 06:37:24 | ノベル2
高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・056 『二月十七日の運命』




 小栗栖雄が隼のプロペラに接触して亡くなるのは二月十七日だ。

 照代の中で千早は思った。

 歴史を変えるのはむつかしい。
 
 できることなら、雄が出撃するとき、基地の滑走路に現れて直接優に注意できればいいんだけど、そういう都合のいいことはできない仕掛けになっているようだ。
 だから、神か悪魔か時空を司る者は千早を妹の照代の中にリープさせたのだろう。

 雄に直接言えばよさそうなものなのだけど、伝えるチャンスが無い。

 河川敷で紙飛行機を飛ばした時がチャンスだった。
 でも、飛ばした紙飛行機が視界没になった興奮でとんでしまった。
 二十一世紀ならスマホで伝えられる。
 戦時中の昭和二十年では、たとえ家族でも面会日でもないのに会いに行くことはできない。電話をかけるのもできないのだ。

 だから、佐伯中尉に出会ったのは運命だと思う。

 機転が利いて友だち思いの佐伯中尉なら、きっと事故の瞬間を回避してくれる。
「小栗栖、急発進する隼のペラ(プロペラ)には気を付けろ」
 出撃の時に、そう一言声をかけてくれるだけでいい。ほんの一瞬気を付けることで、この事故は回避できるはずだ……。

 
 小栗栖うしろだ!

 思った時にはグラマンは軸線にのったまま間合いを詰め始めた。
 必中の距離は30mから50mだ。その原理は日米同じだ。
 80ほどの距離で疾風を掴まえたグラマンは俊足を生かして一気にその間合いを必中のそれに縮めようとしている。
――くそ、うしろのコルセアめ!――
 僚機の危機に気づいた佐伯だが、自分もコルセアに追い回されている。小栗栖に伝える余裕が無い。
 いや、たとえコルセアが付いていなくても、さっき食らった弾で無線機がイカレテいる。伝えるためには小栗栖の前方を射撃して気づかせるしか手は無い。そんなことをすれば、機首が小栗栖の方を向く前にコルセアに撃墜されてしまう。
 2000馬力のエンジンを噴かせてグラマンが一気に詰めていく。

 あと一秒で撃たれる!

 そう観念した時に、小栗栖の疾風はスっと横滑りしたかと思うと、一瞬急降下……の姿勢をとったかと思うと、捻りこみをかけた。
 小栗栖は気づいていたんだ。
 そしてグラマンをハメた。

 米軍のセオリーは日本機と格闘戦をしてはいけないことになっている。

 だから外されたらお終いで、姿勢を建てなおして新たな敵機に食らいつくしかない。
 だが、ここで撃墜と思った瞬間に躱されると、反射的に追いかけてしまう。小栗栖は、その瞬間を待っていたのだ。
 旋回半径の大きいグラマンを、もう一度捻りこみを掛けることによって、その尻に食いついた。
 そして、あっという間に攻守ところを変えて小栗栖が食らいつき、食らいついた瞬間に射撃!
 グラマンはジュラルミンの破片をまき散らして墜ちていった。

 うしろのコルセアはグラマンの撃墜に気を取られ、軸線をずらしてしまうと急上昇で逃げて行った。

「小栗栖、貴様のサーカスで俺も命拾いしたぞ」
 補給に下りて、滑走路に奴の姿を見つけ駆け寄りながら声を掛けた。撃墜した本人よりも佐伯の方が興奮している。
「たまたまだ、たまたま」
 白い歯を見せ、にこやかに謙遜する小栗栖。こういう時の小栗栖はいい笑顔になる。
 変に照れたり不機嫌そうな顔にならないのは、いい意味でアメリカ人の血が入っているからだろう。

 白い歯の向こうで整備兵が手を揚げる。燃料弾薬の補給ができたサインだ。

「じゃ、もうひと働きしてくるわ」
 小さく手を上げ、回れ右して疾風に向かう小栗栖。
「小栗栖!」
 照代の言葉が蘇って、佐伯は小栗栖にタックルした。
「なにす……!」
 滑走路に転んだ二人の上を急発進した隼が駆け抜けていった。

 このことだったんだ……。

 佐伯は、照代の言葉を噛みしめた。

 
 おう

 玄関を出ると雄が立っていた。図体と声の大きさが一致していない。

「ゆ、雄……ちゃんと足あ……」
 こみ上げる涙であとが続かない。
 空襲の明くる朝、雄にとっては出撃したまま明けた朝、基地司令の指示で雄は公用腕章を付けて外出した。
「夕べ、命拾いをした」
「プロペラには当たらなかったんだ……」
「ああ、佐伯がタックルして助けてくれた」
「そうなんだ……」
「テル……どうして?」
 妹が知っていることが不思議だった。
「命拾いしたのに……なんで……」
 目の前の兄は、命拾いが嘘のように元気が無い。
「二度目の出撃準備で、佐伯の奴、疾風のペラに当たって……あいつの家に行った帰りだ……」
「さ、佐伯さんが……」

 運命は身代わりを求めたんだ……照代は雄の胸にへたりこんでしまった。
  
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高校ライトノベル・『はるか 真田山学院高校演劇部物語・29』

2019-06-08 06:27:52 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
はるか 真田山学院高校演劇部物語・29  
 


『第三章 はるかは、やなやつ!7』


 梅雨のようなドンヨリ部活の間、個人的にはいいことがあった。
 
 先月、締め切りギリギリに出した、わたしの初エッセー「オレンジ色の自転車」が最終選考に残ったのだ。
「やりー!」
 思わず、A書房の『ジュニア文芸』を買ってしまった。
 フツーの本はおろか、雑誌だって、たいがい図書館で済ませてしまうわたしには、異例中の異例だ。
 さっそく由香に電話をする。
「はるかの言うてた、手ぇからこぼれてしまいそうなことてこれやったんやね!」
 由香は誤解している。
「東京に残してきたものが一つある」と、いいかげんなデマカセを言ってある。
 でも、このノミネートを素直に喜んでくれる由香の誤解は嬉しかった。
 それに、自分自身、そのタクラミとは別に、自分の乏しい文才が認められたことがストレートに嬉しかった。
「他のひとにはナイショだよ♪」のメッセを付けて、ノミネートのページの写メを送った。
 お母さんにも、と思った……でも、今のお母さんのスランプを思うとはばかられた。だって、あのハシクレはきっとイチャモンつけるもん。
 大橋先生に、と思った。が、わたしは先生のメアドを知らないことに気がついた。

「大橋やったら、ケータイ持っとらへんで」

 ケータイの向こうで、タキさんがそう言った。
「じゃ、どうしてメールのやりとりとか……」
「あいつは、パソコンや。パソコンのアドレスおせたるわ……で、なんかええことでもあったんか?」
 なんで分かるんだ、このオッサン!?
 タキさんに言ったら、お母さんにツーカー。でも、上手い誘導尋問にひっかっかって、言わされてしまった。
 お母さんはお使いに出て、お店にはいないようだ。
「お母さんには、くれぐれもナイショで」
「わかっとる。トモちゃんスランプやさかいな。それにまだノミネートされただけで、一等賞とったわけやないもんな」
「一等賞はいらないんです。二等賞でいいんです、二等賞で」
「オカンに似合わん謙虚さやな」
「わたし、自分の力を知ってますから」
「ガハハハハ……!」
 大爆笑のあと、大橋先生のアドレスが送られてきた。
 なんで大爆笑?
……先生にメールを打ちながら、気がついた。

 わたしって、お母さんのこと認めていない……。

「自分の力を知ってますから」
 ということは、反語として、こんな言葉を含んでいる。
「お母さんは、自分を分かっていない」
 たしかにお母さんはイチャモンつけてくるだろう、母親としては欠点だらけ。でも物書きとしては真剣だ。それ分かってるから、正面から文句言わないし、素直に大阪まで付いてきた。
 なんという上から目線「上から、はるか」それも無意識だから、余計にイヤラシイ。

――ああ、なんてやな子なんだろ、はるかって子は!

「やなやつ、やなやつ、やなやつ……」
 
 駅のホームに立って、わたしは、まだそうつぶやいていた。
 瞬間、梅雨の雲間が切れて、お日様のビーム。
 わたしは、突然スポットライトをあびせられた大根役者が、おずおずと袖に引っ込むように、やってきた電車に乗り込んだ。
 お日様のビームは、わたしを咎めるように電車を追いかけ、広がってきた。
 その広がりの中に、白い紙ヒコーキのように、ジェット機が一つ浮かんでいた……。
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