「三食出そうかと思ったんですけど、一週間分じゃ二十一食になってしまいますから、ランチに絞りました」
健康優良児が、そのまま大人になって自衛隊に入ったような広報さんが言う。
海鮮丼 肉じゃが 草鞋とんかつ 鶏肉の竜田揚げ フェットチーネパスタのステーキ載せ カツカレー ビーフシチュー
「副菜は似たり寄ったりですので、味噌汁とお新香一食分です。どうぞ、ごゆっくりお召し上がりください。七日分になるので量は半分にしてありますが、今日のメニューのカツカレーはお代わりできますから🎵」
半分といっても、小学校の給食なら一食分の量だ。
「えと、食後にアンケートとか感想言ったりとかあるんですか?」
タダ飯の義務を果たそうと、友里が質問する。
「おしまいにミーティングしようと思ってるけど、特に食事の感想は求めません。そのぶん、食事風景をカメラで撮らせてもらいます。いいかしら」
森さんの説明に「ハーーーイ」と一同返事して食事に掛かった。
「か、蟹がプリプリ」「料亭なみのお出汁ぃぃぃ!」「サックサク! ジューシー!」「ココ壱に勝ってるぅぅぅ!」「うう、味の文化祭ぃいいい!」「作った人婿に欲しいぃぃぃ!」
みな口々に感嘆の声をあげる。ちなみに、最後のは安倍先生。
「なーるほどぉぉぉ……」
モニターを見ながら感心しているのは広報さんとキッチン担当と思われる隊員さん。
「なに感心してるんですか?」
爪楊枝でシーハーしながら先生が聞く。
「いや、箸をつける順序とか、何口で食べるとか、いろいろ面白い」
なるほど、社交辞令の感想なんかより、食べっぷりを戦術的に分析した方が分かると言うことか。担当さんの後ろには上官とおぼしき眼鏡に髭のオジサンがニコニコしている。
「ちなみに、このメニューの中で航空機搭乗員は食べてはいけないものがあるんだけど、分かるかなあ」
「ハイ!」
ノンコが手を挙げる。正直意外だ。
「海鮮丼です!」
「おお、正解、よく分かりましたねえ」
「まんいち、飛行機に乗って食中毒になったらいけないからですぅ!」
「大正解! 搭乗員は生ものは禁止なんだ」
「エヘヘ、小さいころ飛行機に乗ってて食あたりしたことあるからあ」
「そう、なにごとも経験。食後は各種体験イベントを用意してます。ロッカールームへ行ってください」
森さんの宣言でロッカールームに向かい、戦闘服(ほんとは課業服というらしい)に着替える。
障害走路といってサスケの自衛隊版みたいなのをやって、装甲車に乗せてもらったり、パラシュートの降下趣味レーションやら、VRゴーグルを着けてゲームをやったり、終わった時には、あれだけランチを食べたにもかかわらず腹ペコになった。
「まあ、虫やしないですが」
担当さんがコンビニのそれよりも大きいお握りを配ってくれて、みんなペロリと平らげてしまう。
帰りは営門まで担当さんと上官殿が見送ってくれる。
「ありがとうございましたあ」「お世話になりましたあ」「おいしかったでーす」「またきたいで~す」
口々にお礼を言うと、上官殿が眼鏡を外し、髭をむしり取った!
ゲ! 特務師団の来栖一佐!?