大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・連載戯曲『あすかのマンダラ池奮戦記④』

2019-06-19 06:44:16 | 戯曲
連載戯曲
『あすかのマンダラ池奮戦記④』







 再び地震、先ほどとは違う方角で何かが崩れる音がする。三人、音の方角に顔をむける

あすか: まただ……
イケスミ: いったいここはどこだ、鬼岩こそはそこにあるけれど、ミズホノサトへは、どこをいけばいいんだ!?
フチスミ: ここがそうよ。ここがわたしたちの土地、オオミカミさまの知ろしめすトヨアシハラミズホノサト。
イケスミ: ここが?
フチスミ: ……この水の底。
イケスミ: 水の底?
フチスミ: ええ、伴部、美原、樋差の三ヶ村も、ミズホノウミも、みんなこの途方もない水の底に沈んでしまった。
イケスミ: ……
あすか: あ……地震で沈んでしまった村ってここなんだ!?
イケスミ: なんだ、それ?
あすか: ニュースとかで、やってたじゃん、ちょこっと東京も揺れちゃったじゃん何ヶ月か前に。
フチスミ: イケスミさん、知らなかったの?
イケスミ: わたしの池には、ほとんど人が来ない。来れば、人の心の中からニュースも読み取ることができるんだけどな。
フチスミ: そんなに人が来ないの?
イケスミ: この程度のネーチャンとか野良犬、時に酔っぱらいくらいだな……
あすか: このテードってのはないでしょ。ちゃんと思い出したじゃん。
イケスミ: ……地名もわからないほどおぼろげにな。
あすか: だって、自分とこに被害のない地震なんて忘れちゃうって、ふつー。
関係ないっしょ、よその地震なんて……言い過ぎた? ごめん、だって、このテードなんてイカスミさん言うんだもん。
イケスミ: イケスミだっつーの。
フチスミ: 山が水を含んだ砂山のようにドーッと崩れてきてね。あっという間にダムのように川をせきとめて……ここまで水位が上がるのに十日もかからなかった。
イケスミ: 弥生の昔からここにいるけど、こんなことは初めて、この三百年の間に……
フチスミ: この七十年ほどよ。
イケスミ: 戦後?
フチスミ: 残っている山を見て……
あすか: ……きれいな杉山。
イケスミ: 木の名前知ってんのか?
あすか: 松と桜と杉しかわかんないけどね。小学校の時なんかに記念植樹とかするでしょ。
フチスミ: わかった?
イケスミ: ……杉山すぎる。
あすか: だめなの杉山じゃ? 
イケスミ: 杉は、根が浅くて、大雨が降ると根っこごと土が崩れてくるんだ。
フチスミ: 昔は、山崩れを防ぐため、山の稜線付近は……
あすか: リョーセン?
イケスミ: あすか、ほんとバカだな。
あすか: アハハ……てっぺんあたりのことかな? 家で言えば、屋根のてっぺん。ドラえもんとミーちゃんがデートするような。
フチスミ: フフ、勘はいいようね。さすが元宮さん。
あすか: テヘヘ、さんづけの苗字で呼ばれると照れるわね……で、稜線いっぱい杉山にすると……崩れやすいの?
フチスミ: だから、昔はわざと深い根を張るクヌギなんかの雑木を残しておいたの。そういう稜線をクヌギ尾って言って、山崩れを防ぐ自然の知恵だったの。
あすか: 昔の人は偉い!
フチスミ: 今の人もバカじゃない。戦中や終戦直後は、国策で杉ばっかりだったけど……こないだまでは、やっていた。少しずつだけど……
イケスミ: でも、人もカネも足らんということか……
フチスミ: そうね……でも、今度のことでは、みんながんばったのよ。この水を抜いて、もとにもどそうって。
イケスミ: あきらめちゃったの?
フチスミ: うん、三日前。この水を抜くために、山崩れでできた自然ダムを破壊すると下流の村や町に迷惑をかける。断腸の思いで廃村と決めたの。
あすか: 団長が一人で決めた!? そんなの許せないよ! いったいどこの団長!? 青年団? 消防団? 少年探偵団?
フチスミ: ハハハ……何ヶ月ぶりかしら、こんなに笑えるの……(あすかを含め三人笑う)
あすか: な、なによ、違うんだったらおせーてよ!
イケスミ: 腸がちぎれるくらいに痛くて辛い決心ということよ。なんなら体験してみる?
あすか: いいよ、自分の腸でつくったソーセージ想像しちゃった。
イケスミ: ごめんね、へんなの連れてきちゃって。
フチスミ: ううん、とってもなごむわ。ここしばらくは、一人でふんばらなきゃと思っていたから。
イケスミ: で、オオミカミさまは? 気を飛ばしても、どこのお旅所にも気配を感じない……もうここには在わさぬのか?
フチスミ: 出雲においでになる。
イケスミ: 出雲!? 今は霜月十一月、それも霜月会(しもつきえ)とうに終り、霜月粥が大師講で湯気をたてておるころぞ。
フチスミ: 今年はまだ神無月が続いておる。だから、今年は霜月も晦日近いと申すにこの暖かさ。
あすか: あ、あのさ、その時代劇みたいな言い回し、あたしちっとも……国語欠点だから。
イケスミ: 国語だけか?
あすか: それは……
フチスミ: ごめんなさい。つい昔のノリになっちゃって。つまりね、オオミカミさまは、年に一度の神さまの会議に、出雲に出張なさってるの。それが十月って決まっていて、出雲以外のところから神さまが居なくなるから十月を神無し月と書いて神無月というの。それが霜月、十一月になってもお戻りにならない。
あすか: 職員会議の延長みたいなもんだね。いや、毎年あるんだ、三月ごろ、あすかみたいなバカを進級させるかどうか、この日ばかりは遅くまで点いてる職員室の明かりに手を合わせているのよ……ってそういう話?
イケスミ: 神無月が十一月まで食い込んだのは初めてだ。よほど重要な話をなさっているのだろう……
あすか: ひょっとして、イカスミさんを落第させる話題だったり……ごめん、冗談の雰囲気じゃないんだよね。
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高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・067『都にするならば江戸こそが!』

2019-06-19 06:14:48 | ノベル2
時空戦艦カワチ・067   
『都にするならば江戸こそが!
 
 
 越後の百姓出身の密には江戸に対する未練がない。
 
 この点は勝海舟も同様で、幕臣でありながら幕府の瓦解に未練も郷愁も無かった。
 新生日本を起こすには幕藩体制ではいかんともしがたい。
 だから、譜代の幕臣から見ると薄情に見えるほど身軽に新政府に手を貸すことができる。
 もっとも勝は三代前が越後の出身、自身は貧乏であるが生まれついての御家人で濃厚に江戸っ子の気質が残っている。
 江戸っ子であるので、新政府の徳川追討で江戸の町を焼け野原にされてはかなわない。だからこそ単身西郷と徳川の間を取り持ち江戸城の無血開城を成し遂げ、なにくれとなく新政府の面倒を見た。そして、多分に江戸っ子的信条で徳川を可哀そうに思い、面倒を見ながらもドップリと浸かることを良しとしなかった。それで新政府が軌道に乗ると、さっさと官を辞し市井のご隠居に戻ってしまうようなところがあり、事実、勝はそのように明治を生きた。
 
 密にはそれが無い。
 
 密は幕府が瓦解する前から西洋の靴を履いている。理由は便利で足を傷つけないからである。この合理性は、同様に靴を履いていた龍馬と同じである。
 密にとって政府とは道具であり、道具であるがゆえに西洋靴同様便利で効率の良いものでなければならない。幕府も江戸も密にとっては古わらじ同様だった。
 だから、大阪を都にすることには大賛成だった。
 仲子は考えた。合理主義の朴念仁に情を持って訴えても翻意させることは不可能だ。それに、新政府の大方が賛成している大阪遷都に賛同しても、単なるその他大勢に過ぎず、密にプラスになることは何もない。
 
「都にするならば江戸こそが望ましいと思います」
 
 褥でオアズケの密に宣言した。
 
「江戸では遠くありませんか?」
 新政府の主軸は薩長であり、新政府の人も物も薩長から往来する。京の都にも近く、街道や海運の中心でもあり、米や為替相場の中心でもある。だれが考えても大阪以外にはないであろう。
「江戸には百万の民がおります。この数は本邦随一であるばかりでなく、世界有数でもあります。しかし、その暮らしは武家社会に依存しておりました」
 江戸の人工は百万であるが、実に半分は武士とその家族で占められている。
「幕府が無くなって武士の人工は急速に減りつつあります。このままでは、江戸は新政府の荷物になるほどに零落いたします。いずれは不満に思う者たちが糾合し平将門のような者が出でて反旗を翻しましょう。また、大阪は元来町人の街、都にせずとも、このまま栄えていくと思います」
「しかし……」
 密は腕を組んだ。江戸の経済や生産力は徳川二百六十年の間に上方に劣らないところまで発展している。仲子が心配するほどのことは無いように思える。
 そう思って顔を上げると、熱弁のあまり仲子の胸元がほぐれ、上気した肌が露出しはじめている。オアズケの密には目の毒である。
 
「さらに、旦那様!」
 
 仲子は、ズイと膝を勧めた……。
 
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高校ライトノベル・時かける少女BETA・33《コスモス坂から・6》

2019-06-19 06:03:33 | 時かける少女
時かける少女BETA・33
《コスモス坂から・6》


 白根と芳子の付き合いは、つましいものだった。

 週に何度か湘南の海岸でスケッチをする。白根は絵については器用な性質で、スケッチも、ほんの10分ほどで仕上げてしまう。ほとんどクロッキー(早描き)と変わらなかったがポイントは押えていて、それをもとに家に帰ってからイーゼルに向かい、油絵に仕上げていく。油絵も量産と言ってよく、キャンバスではなくボードを使っていた。近所の喫茶店や理容店などには重宝がられて定期的に店に掛けてもらったりしていた。

「あたしの絵は、あんな晒しものにしてないでしょうね!?」

 ある日、理容店の窓から見えた白根の絵を見て芳子は念をおした。
「ああいうのは、風景画と生物画だけさ。肖像画は、あんまり描かないし、描いてもたいてい本人にあげてしまう。ほれ」
 目の前に新聞紙でくるんだものを渡された。

「すごい……!」

 6号だけど、ちゃんとしたキャンバスだった。背景に湘南の海と空、自分でも気恥ずかしくなるほどきれいに描かれていた。
「まだ習作。前も言ったけど、よっちゃんの顔はころころ変わる。まだ本当の三村芳子がどれなのか、良く分からない。分かるまで描きつづける」
「ハハ、それじゃずっと描きつづけなきゃ。あたし自身自分のこと、よく分かってないもん」
「じゃ、そうさせてもらうよ。今日は口元だけデッサンさせて、10秒ほどこっち向いてくれればいいから」

 たった10秒だけど、こんな近くで見つめられるのは初めてだ。芳子はドギマギした。

「よっちゃんの口って、緊張すると、滑空してるカモメに似てるな……」
「ほんと?」
 スケッチブックを見ると、自分の口とカモメが並んで描かれていた。確かに似ている。そして驚いたことに、いつ見たのか、芳子のいろんな口の形がスケッチブックに描かれていた。

 二人は稲村ヶ崎の海岸で別れる。白根は七里ヶ浜まで戻り、芳子は稲村ヶ崎の駅まで歩いて電車に乗る。

 本当に、このころの高校生というのはつましかった。数年前に太陽族という無軌道な青春のアリカタが流行り、それが社会的に問題になった反動の時期でもあった。
 三回映画を観に行った。江ノ電沿線では人の目があるので、桜木町まで出て東京の映画館に行った。
『ベンハー』と『チャップリンの独裁者』と『名も無く貧しく美しく』の三本だった。
「チャップリンみたいなレジストの在り方もありなんだな」
「そうね、誰かさんみたいにデモばっかやってるのが能じゃないわ」
「でも、急がなきゃならないこともある。安保は批准されたらおしまいだからな」
「それは……」
「なんだよ?」
「安保反対には反対よ。白根さんにもお兄ちゃんにもデモになんか行ってほしくない。単に安保についての考えからだけじゃなく、身の危険を感じるから。もう怪我人が何人も出てる」
「でもな……よそう。この問題については水と油になりそうだ」
「でも……そうだ、交換日記で討論しよう!」

 芳子の提案で交換日記が始まった。タイトルは『カツオとワカメの兄妹日記』になった。
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高校ライトノベル・『はるか 真田山学院高校演劇部物語・40』

2019-06-19 05:54:51 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
はるか 真田山学院高校演劇部物語・40

『第五章 ピノキオホールまで・1』

「……もう大丈夫ですから」

 そう言うと、タマちゃん先輩は優しく手を放してくれた。
 その温もりを胸に包むようにして下足室を出た。
 タマちゃん先輩が声をかけてくれなかったら手が出ていただろう。
 わたしのホンワカってこの程度……。

 ルリちゃんと口論になり、あやうくケンカ……いや、わたしが一方的に手を出していただだけだろう。
 人をひっぱたいたら、ひっぱたいたほうも傷つくんだ。
 一度だけ、お父さんがお母さん……に、ひっぱたかれるところを見た。
 見てしまった……ひっぱたいたお母さんが泣いているのを。
 シュチュエーションは違うけど、わたしも同じ事をやるところだった。
 タマちゃん先輩は、わたしとルリちゃんのいざこざの一部始終を見ていたはずなのに。
「またにしときぃ……な」
 そして、上げたわたしの手をつかんだときの一瞬の力の強さ。そしてフっと力を抜いたタイミング。
 かなわないと感じた……。

 駅に向かう途中、栄恵ちゃんからメールが入ってきた。

 環状線のS駅の近くに、栄恵ちゃんのお母さんは入院していた。
 だから、待ち合わせはS駅前。


「お呼び出てして、すいません」
 栄恵ちゃんは、体中で恐縮していた。
 近くのコーヒーショップに入った。ホットココアをトレーにのっけて、窓ぎわの席に。
 こういうお店は、お客の回転を早くするために、冷房がきつい。だから暖かい飲み物で、日の差す窓ぎわがいい。東京で身に付いた知恵だが、このお店は三分の一も客席は埋まっていない。マニュアルと現実が合ってない、まるで今のわたし……考えすぎ……栄恵ちゃんが、不思議そうに見ている。
「お母さん、どうなの?」
「ありがとうございます。まだ少し検査は残ってるんですけど、思たほどひどうはないようです。お騒がせしました」
「でもしばらくは入院なんでしょ」
「はい、このごろ家のことで苦労ばっかりしてきたから、ちょっと休ませたげよと思てます……すいません」
「それはいいんだけど、どうしてわたしだったの?」
「ほんまは部長の山田先輩かタマちゃん先輩に言わなあかんのんですけど……学年も近いし、はるか先輩……話しやすいし。あきませんでした?」
「ううん、あかんくないよ。二人にはわたしから話しとく。でも学校で会ったら、一度自分で言っといたほうがいいよ。先生たちにも」
「はい、そうします。ほんまに、こんな個人的な理由で抜けてしもて……」
「ううん、ぜんぜん平気だよ……って、栄恵ちゃんがいなくてもいいってことじゃないけどね。それに『ノラ』がダメになったのは栄恵ちゃんのためばかりじゃないし(ルリちゃんの顔が浮かんで、一瞬ムッとする。だめ、だめ、ホンワカ、ホンワカ)気にしなくていいよ。それに、すぐに代わりの本も見つかったし。あ、これが台本」
「もうできてるんですか。すごいなあ……もうキャストまで決まってる!」
「大橋先生はすごいよ。パソコン開いたら、ダーって作品が並んでて、アレヨアレヨって間に決まっちゃった。乙女先生もすぐに音響係り連れて来ちゃった。山中青葉って三年の人だけど、この人もすごいんだよ。透明人間になれんの!」
「透明人間?」

 それから、しばらく『すみれ』の話と、始まったばかりだけど、密度の高い稽古の話をした。思わぬ長話になった、ココアは窓ぎわで正解。
 栄恵ちゃんも、最初は恐縮ばっかりしていたけど。だんだんノってきてた。
「あたしもできるだけ早く復帰しますね」
「無理しなくっていいよ。そりゃ、戻っては欲しいけど、バイトもきついんでしょ?」
「最初はきつかったけど、慣れたら楽しいこともありますよ。それに稼いだお金、全部家に入れるわけやないし、月一ぐらいやったら、ちょっとしたゼイタクできますよ。お買い物したり、ライブに行ったり。だいいち、スマホ代やら、パケット代気にせんですみますし。そのうちシフト変えてもろて、週三日はクラブ行けるようにします」
「時給いくら……?」
「八百五十円です」
 
 一日四時間……週に四日働くとして……月に五万は稼げる。

 数学は苦手だけども、こういう計算は早い。
 わたしの頭の中で、コロンブスの玉子が立った……。
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