連載戯曲 すみれの花さくころ
(宝塚に入りたい物語)・5
※ 無料上演の場合上演料は頂きませんが上演許可はとるようにしてください 最終回に連絡先を記します
すみれ: どうするの……あたしが断ったら?
かおる: その時はその時。また別の人をさがす。ああ、しょんぼり。
すみれ: 見つかる……?(少し同情的になる)
かおる: むつかしいでしょうけど、確率の問題だから……
(燃えるような目で)でも、いま目の前にいるのはすみれちゃんだからね。
真剣にお願いする……お願い、あたしに憑依(のりうつ)らせて!
すみれ: うん……。
かおる: あたし、いつも目の前の可能性に全力をつくす人間でいたいの、幽霊だけどね。
あとでうじうじ後悔しないために……すみれちゃん、どうだろ、やっぱしだめかな……ごめんね、しつこい幽霊で。
すみれ: あたし、この四月で三年生……夏ごろには進路を決めようかなって思って……
今はまだ心の準備ができていないの。ごめんなさい。
かおる: ううん……でも、友達って思っててもいい?
すみれ: うん、それくらいなら。でもさっきのキョウイクなんとかっておまじないはやだよ。
かおる: あたしも好きじゃなかった教育勅語なんて。
式の日なんかに校庭に並ばされて、最敬礼で校長先生が奉読するの聞かなきゃなんないの。
すみれ: サイケイレイ……?
かおる: う、うん、こんなの(やってみせる)
すみれ: ハハハ、こんな感じ?(真似してみる)
かおる: だめだめ、腰から上はまっすぐに、角度は六十度!
すみれ: ……うーん……きっついなあ(我慢できなく、体を起こす)
かおる: だめだよ、そのまんま十分は我慢しなくっちゃ。ほれ(すみれの上半身を倒す)
すみれ: 十分も!?
かおる: 最敬礼!(二人して最敬礼)
……朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ、徳ヲ樹ツリコト深厚ナリ。
我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ、億兆心ヲ一ニシテ世世厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ教育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス。
爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信ジ恭儉己レヲ持シ博愛衆ニ及ボシ……
(ちんおもうわがこうそこうそうくにをはじむることこうえんに、徳ヲたつるコトしんこうナリ。
わがしんみんよくちゅうによくこうに、おくちょう心ヲいつニシテよよそのびをなせるハ、
これわがこくたいのせいかニシテ教育ノえんげんまたじつにここにそんす。
なんじしんみんふぼにこうにけいていにゆうにふうふあいわし、
ほうゆうあいしんじきょうけんおのれをじしはくあいしゅうにおよぼし……)
すみれ: ……鼻水が……ズズー(鼻をすする)ああ、やってらんないよ。
かおる: でしょ! ニ三分もすると、あちこちで鼻をすする音がズズー、ズズーって。まるで壊れた水道管。
すみれ: ハハハ……(かおるも、のどかに笑う)
かおる: でもね朋友相信ジって言葉は好きだった。
すみれ: ほーゆー?
かおる: 相信じ。友達同士信じ合いって意味。
すみれ: 英語のFOR YOUかと思った。
かおる: あたしもよ。FOR YOU……君のために愛を信じて!
すみれ: FOR YOU……君のために愛を信じて。いい言葉だね。
かおる: でしょでしょ!?
(宝塚に入りたい物語)・5
※ 無料上演の場合上演料は頂きませんが上演許可はとるようにしてください 最終回に連絡先を記します
すみれ: どうするの……あたしが断ったら?
かおる: その時はその時。また別の人をさがす。ああ、しょんぼり。
すみれ: 見つかる……?(少し同情的になる)
かおる: むつかしいでしょうけど、確率の問題だから……
(燃えるような目で)でも、いま目の前にいるのはすみれちゃんだからね。
真剣にお願いする……お願い、あたしに憑依(のりうつ)らせて!
すみれ: うん……。
かおる: あたし、いつも目の前の可能性に全力をつくす人間でいたいの、幽霊だけどね。
あとでうじうじ後悔しないために……すみれちゃん、どうだろ、やっぱしだめかな……ごめんね、しつこい幽霊で。
すみれ: あたし、この四月で三年生……夏ごろには進路を決めようかなって思って……
今はまだ心の準備ができていないの。ごめんなさい。
かおる: ううん……でも、友達って思っててもいい?
すみれ: うん、それくらいなら。でもさっきのキョウイクなんとかっておまじないはやだよ。
かおる: あたしも好きじゃなかった教育勅語なんて。
式の日なんかに校庭に並ばされて、最敬礼で校長先生が奉読するの聞かなきゃなんないの。
すみれ: サイケイレイ……?
かおる: う、うん、こんなの(やってみせる)
すみれ: ハハハ、こんな感じ?(真似してみる)
かおる: だめだめ、腰から上はまっすぐに、角度は六十度!
すみれ: ……うーん……きっついなあ(我慢できなく、体を起こす)
かおる: だめだよ、そのまんま十分は我慢しなくっちゃ。ほれ(すみれの上半身を倒す)
すみれ: 十分も!?
かおる: 最敬礼!(二人して最敬礼)
……朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ、徳ヲ樹ツリコト深厚ナリ。
我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ、億兆心ヲ一ニシテ世世厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ教育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス。
爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信ジ恭儉己レヲ持シ博愛衆ニ及ボシ……
(ちんおもうわがこうそこうそうくにをはじむることこうえんに、徳ヲたつるコトしんこうナリ。
わがしんみんよくちゅうによくこうに、おくちょう心ヲいつニシテよよそのびをなせるハ、
これわがこくたいのせいかニシテ教育ノえんげんまたじつにここにそんす。
なんじしんみんふぼにこうにけいていにゆうにふうふあいわし、
ほうゆうあいしんじきょうけんおのれをじしはくあいしゅうにおよぼし……)
すみれ: ……鼻水が……ズズー(鼻をすする)ああ、やってらんないよ。
かおる: でしょ! ニ三分もすると、あちこちで鼻をすする音がズズー、ズズーって。まるで壊れた水道管。
すみれ: ハハハ……(かおるも、のどかに笑う)
かおる: でもね朋友相信ジって言葉は好きだった。
すみれ: ほーゆー?
かおる: 相信じ。友達同士信じ合いって意味。
すみれ: 英語のFOR YOUかと思った。
かおる: あたしもよ。FOR YOU……君のために愛を信じて!
すみれ: FOR YOU……君のために愛を信じて。いい言葉だね。
かおる: でしょでしょ!?