大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・連載戯曲 すみれの花さくころ(宝塚に入りたい物語)・5

2019-06-02 06:52:53 | 戯曲
連載戯曲 すみれの花さくころ
(宝塚に入りたい物語)・5 


※ 無料上演の場合上演料は頂きませんが上演許可はとるようにしてください  最終回に連絡先を記します
 

すみれ: どうするの……あたしが断ったら?
かおる: その時はその時。また別の人をさがす。ああ、しょんぼり。
すみれ: 見つかる……?(少し同情的になる)
かおる: むつかしいでしょうけど、確率の問題だから……
 (燃えるような目で)でも、いま目の前にいるのはすみれちゃんだからね。
 真剣にお願いする……お願い、あたしに憑依(のりうつ)らせて!
すみれ: うん……。
かおる: あたし、いつも目の前の可能性に全力をつくす人間でいたいの、幽霊だけどね。
 あとでうじうじ後悔しないために……すみれちゃん、どうだろ、やっぱしだめかな……ごめんね、しつこい幽霊で。
すみれ: あたし、この四月で三年生……夏ごろには進路を決めようかなって思って……
 今はまだ心の準備ができていないの。ごめんなさい。
かおる: ううん……でも、友達って思っててもいい? 
すみれ: うん、それくらいなら。でもさっきのキョウイクなんとかっておまじないはやだよ。
かおる: あたしも好きじゃなかった教育勅語なんて。
 式の日なんかに校庭に並ばされて、最敬礼で校長先生が奉読するの聞かなきゃなんないの。
すみれ: サイケイレイ……?
かおる: う、うん、こんなの(やってみせる)
すみれ: ハハハ、こんな感じ?(真似してみる)
かおる: だめだめ、腰から上はまっすぐに、角度は六十度!
すみれ: ……うーん……きっついなあ(我慢できなく、体を起こす)
かおる: だめだよ、そのまんま十分は我慢しなくっちゃ。ほれ(すみれの上半身を倒す)
すみれ: 十分も!?
かおる: 最敬礼!(二人して最敬礼)
 ……朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ、徳ヲ樹ツリコト深厚ナリ。
 我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ、億兆心ヲ一ニシテ世世厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ教育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス。
 爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信ジ恭儉己レヲ持シ博愛衆ニ及ボシ……
(ちんおもうわがこうそこうそうくにをはじむることこうえんに、徳ヲたつるコトしんこうナリ。
 わがしんみんよくちゅうによくこうに、おくちょう心ヲいつニシテよよそのびをなせるハ、
 これわがこくたいのせいかニシテ教育ノえんげんまたじつにここにそんす。
 なんじしんみんふぼにこうにけいていにゆうにふうふあいわし、
 ほうゆうあいしんじきょうけんおのれをじしはくあいしゅうにおよぼし……)
すみれ: ……鼻水が……ズズー(鼻をすする)ああ、やってらんないよ。
かおる: でしょ! ニ三分もすると、あちこちで鼻をすする音がズズー、ズズーって。まるで壊れた水道管。
すみれ: ハハハ……(かおるも、のどかに笑う)
かおる: でもね朋友相信ジって言葉は好きだった。
すみれ: ほーゆー?
かおる: 相信じ。友達同士信じ合いって意味。
すみれ: 英語のFOR YOUかと思った。
かおる: あたしもよ。FOR YOU……君のために愛を信じて! 
すみれ: FOR YOU……君のために愛を信じて。いい言葉だね。
かおる: でしょでしょ!?   
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高校ライトノベル・時かける少女BETA・16《大和と信濃と》

2019-06-02 06:37:52 | 時かける少女
時かける少女BETA・16 
《大和と信濃と》                


 
 
「今度は長かったものね……」

 労わるようなコビナタの声がした。振り返るとアナスタシアそっくりに擬態したコビナタが四阿(あずまや)の中で微笑んでいた。
 気づくと、そこは『紅の豚』のジーナのホテル・アドリアーナのプライベートガーデンそっくりだった。

「アナは、あれからも上手くやっていったわ……どうぞお茶でも召し上がれ」
 そのお茶を入れるしぐさまで、アナといっしょで、ミナは涙ぐんでしまった。
「情がうつっちゃったのね、この任務の辛いところ。そのたびごとに記憶を消してあげてもいいんだけど、ミナ自身としても成長してもらいたいし……その方が記憶をなくすより人間的だと思うの。でも辛かったら言ってね、ミナがやりやすいように条件を整えるから」
「ありがとうございます。その姿は、アナが一番自信に満ちて輝いているときの姿ですね」
「そう、みんなミナがアリサとして励まし元気づけてくれたからよ」
「あ……少しお腹が」
「フフ、分かった?」
「子供が生まれるんですね!?」
「そうよ。お父さんは誰だと思う?」
「ロマノフ家の規定では、一族またはつり合いのとれる欧州の王族ということになっていましたけど……まあ、アナのことだから型破りかもしれませんけど」
「お相手は、アレクサンドル・イワノヴィチ・ロマノフ」
「伝統を守ったんですね」
「それが、この人は皇族の端くれでありながら、共産党員だったのよ」
「え……?」
「皇居前で、アナを狙撃し損ねた若者がいたでしょ」
「え、あの男が!?」
「あれから、彼はアナの崇拝者になっちゃった。刑期10年だったけど、模範囚で8年で出所。そのあとロシアに渡って……いろんな奇跡的な事件や出会いがあって、二人は再開して……こうなっちゃった」
「生まれてくるのは、男の子? 女の子?」
「フフ、それは内緒。また会う機会があるかもしれない……」
「ほんとですか!?」

 そのときポルコ・ロッソの真っ赤な飛行艇が、一本の通信筒を投げて行った。

「おやおや、もう次のお仕事ね……ちょっとこれは……」
「見せてください。任務ならなんでもこなします」
「今度は、オッサンに擬態。事態もバランスの取り方がむつかしいわ」
 そう言って、コビナタは二枚の写真を見せた。

「戦艦大和と、航空母艦信濃ですね……」
 二秒見つめて、ミナは任務を理解した。
「行ってくれる?」
「はい、世界の木をもっと元気にしてやりたいですから」
「そう……じゃ、がんばってね」
 コビナタは、アナの擬態を解いて真顔で言った。


 星空の下、伊豆半島の影が右舷前方に見え始めた19:03分に通信科の遠藤兵曹がブリッジに上がってきた。

「艦長、軍令部から至急電です」
 機密事項に属するので、阿部艦長は自分で黙読した。
「……そんな馬鹿な」
「なんですか、艦長?」
 阿部艦長は電文をそのまま副長に渡した。
「夜間着艦……この無灯火でですか?」
「飛行甲板の乗員を退避させろ。万一に備えて消火班も待機。面舵20(フタジュウ)最大戦速」
 東京湾での離発艦テストは良好だったが、夜間のそれはやったことがない。それも、この無灯火である。

「右舷5時の方向、航空機接近。距離サンゼン双発!」
「双発……!?」
 双発機の空母への離発艦など、聞いたことが無い。一瞬敵のB25であろうかと思った。
「あれは……一式陸攻じゃないか!」
 一式陸攻はバンクすると、失速寸前まで機速を落とし、有るはずのない着艦フックを降ろして、悠々と着艦した。

 一式陸攻の搭乗口は機体の日の丸のところにある。まるで、その日の丸から転げ出るように恰幅のいい中佐が降りてきた。

「軍令部から信濃の護衛指揮を命ぜられた軽井中佐です。横鎮からの出向ですが、よろしくお願いします」
「陸攻での、着艦など聞いたこともない。あれは呉まで載せていくのかい」
「無事にいけばの話ですが、必要とあれば、いつでも発艦できます」
「信濃はボイラーが2/3しか稼働していない。最大で21ノットだ。あのデカブツの発艦に必要な合成風力は無理だぞ」
「あれは並の艦上陸攻じゃありません。無風でも飛べます。さっそく機材を設置したいのですが、よろしいですか?」
「手伝いは?」
「うちで、やります。おーい、みんなかかれ!」
 陸攻から6人の兵が出てきて、ブリッジの前と後ろで、作業をし始めた」
「おい、だれか鏡を貸してくれ!」
 最後に降りてきた操縦士が敬礼して手鏡を渡した。
「海軍は、身だしなみですからね」

 襟元を直すふりをしてミナの軽井中佐は心でため息をついた。

――最悪。よりにもよって、これじゃ、ほんとのポルコロッソだよ――

「班長、右舷後方に敵潜水艦です」

  準備を終えた兵が、まるで子犬を見つけたような気楽さで言った……。
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高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・050『転送室の時空ホール』

2019-06-02 06:25:20 | ノベル2
高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・050
『転送室の時空ホール』




 ゴジラの鼻先に居るように翻弄されている!

 転送室そのものが過呼吸に陥ったように荒い呼吸をしているのだ。
 艦長も副長も身体を持っていかれないように足を踏ん張りながら転送室に近づいた。
 アマテラスは隔壁を閉じ、転送室の呼吸の逆に換気をしているのだが、二人がなんとか歩ける程度にしか効果を発揮できていない。
 
「いったいどうしたんだ!?」

 転送室に転がり込むと、操作卓にしがみついている航海長と機関長に声をかけた。
「ワープの影響だと思われます!」
「外から仕掛けられたワープなんで、制御が困難!」
 中央にあるプラットホーム(転送台)の上は大きな渦のような時空の綻びが出来ていて、そこから激しい緩急を付けて風が吹きすさんでいる。
「時空ホールか……!?」
「おそらく」
 
 転送室は人工的に時空に穴をあけて人や機材を移動させる施設なのだが、プロキシマbのトラクタービームの影響で制御不能になっているのだ。
 秒速でホールは変化し、瞬時に接続時空を替えていくので、CPをアマテラスに切り替えても、気圧や気温や時空圧の調節が追い付かないのだ。

「切断できないのか?」

「試しているけど、効果が無いの」
 なるほど航海長は切除ボタンを連打している。
「主幹を落とすしかないか」
「復旧できなくなる!」
 転送機はカワチ唯一の時空移動手段だ、壊してしまうわけにはいかない。
「艦長、この時空嵐には中心があるようです」
 千早姫副長が冷静に呟いた。
「中心?」
「数秒おきに現れる時空があります……ほら!」
「「「え?」」」
「五秒後にまた現れます……いま!」

「「「あ!?」」」

 それは抜けるような青空を飛ぶ紙飛行機だった。
 
 数秒おきに、ほんの0.01秒ほど現れる。動体視力が相当良くなければ見分けることが出来ない代物だ。
 むろん紙飛行機ごときが時空ホールの原因になることは無い、この映像が見える時空になにか引っかかりがあるのだ。
「ここに引っかかった凧のようにブレているんです」
「それを外せば……」
「おそらく改善されます」
「だれかが行って外しに行く……?」
「それしかないでしょうね」
 千早は簡単に言うが、0.01秒に狙いを定めて時空ホールに飛び込むなんて不可能……

 だれもが、そう思った。

 その時、千早は転送台駆けだした。

「「「副長!」」」

 一瞬、千早と青空の紙飛行機が重なって消えた。

 時空ホールは青空の紙飛行機のままフリーズした。
 
 
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高校ライトノベル・『はるか 真田山学院高校演劇部物語・23』

2019-06-02 06:14:17 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
はるか 真田山学院高校演劇部物語・23


 
『第三章 はるかは、やなやつ!5』


 湯船に鼻の下まで漬かって考えた……念のため、自分ちのお風呂です! 

 吉川先輩も、反応するのに数秒かかった。

 数秒後「アハハハ」と笑って、結局地下鉄の駅前まで笑いながら向かって喫茶店に入った。そんでもって、一時間ほど気まずく喋って帰ってきた。
 問題は、まず、あの数秒間。
 吉川先輩は、わたしの反応を伺っていたように感じたんだけど……考えすぎ……?

 も一つは、喫茶店での話題。
 一時間というのは、二人で面と向かって話した時間としては、今までで一番長かった。
 疲れていたせいか、さっきのドギマギのせいか、お芝居の話も七坂の話も、お互いに「あ、そう……」って感じで滑ってしまう。
 話題はいつしか、学校で共通の話題にできる人の話になった。
 友だち、先生、Y駅近くのタコ焼き屋のおじさん、そして大橋先生のことなど……。
 吉川先輩は、わたしを退屈させないように気を遣って、コミカルに……と思うんだけど、人物評が辛いってか、シニカル。

 乙女先生はHBT「わたしのホンワカビューティーのHBに似てる」と思ったら、ヒステリー・ビックリタヌキ。
 たしかに乙女先生は、怒るとおっかない。
 授業でも、よくお説教をする。こないだも、部活の無断欠席が多いルリちゃんにカミナリを落としていた。同時に部活の管理ができていないとタロくん先輩も叱っていた。こういうところをヒスととるらしい。
 でも、それって、叱って叱られて当然の状況だったと思った。
 ビックリは、お目々パッチリで口元は油断がならないチェシャネコだから。見ようによっては、ソーカナーだけども、吉川先輩はこう言う。
「アハハ、あれは二年前、階段を踏み外して転げ落ちたときのビックリがそのまま顔に貼りついてんだよ」
 あれで、先生は膝のお皿を割ってしまった。ちょうどお母さんの介護が始まった頃だと、タマちゃん先輩に聞いた。吉川先輩も知ってるはずなのに。

 タロくん先輩はHBTジュニア。まあ、見かけはそうだけど……。

 タマちゃん先輩はマタちゃん。「タマちゃん」のデングリガエシかと思ったら、口癖。
「また……」だということと、熱中すると膝が開いてくる……。
 どこ見てんだ……と思いつつ、あのクッタクの無さと、普段の優等生ぶりとのギャップ……短時間ならウィットのある人と思えるのに。
 まあ、今日三時間ほどの印象だから、保留にしておこう。
 
「はるか、何やってんのよ?」

 母上が動かしていた手を止めた。
「役作りよ、役作り」
「ああ、お芝居の中で、ダルマサンガコロンダをやるんだ……」
「あのね」
「じゃなかったら、風呂上がりのドロボウさん?」
「違うよ。美少女アンドロイドよ、美少女!」
「アンドロイド。で、美少女……ガハハハ」
「ゲラゲラ笑うことないでしょ!」
 役作りを中断してスポーツドリンクを取りに行った。
「そう、ゲラゲラ、ゲラよ……あ、お母さんにもちょうだい」
「なによ、忙しい人ね。笑ったと思ったら、もう落ち込み? ソ-ウツだよソーウツ」

 グラスを渡しながら、母上の手許を見るとゲラ刷りの束。
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