せやさかい・089
160円でも安い!
それが、たったの80円やった!
えと……焼き芋です。
おとつい、頼子さんがこけそうになりながら教えてくれた新装開店の焼き芋屋さん。
行ってみてビックリ!
焼き芋屋さんは田中米穀店、ほら、うちの檀家の婦人会長・田中米子おばあちゃん。
「米屋はフェードアウトしよ思てねえ」
焼き芋三本を袋に入れながら米子お婆ちゃん。
「もう、米屋で米買う時代やないしねえ。けど、閉めてしもたら寂しいし。そんで、焼き芋屋はじめたん(o^―^o)」
これが、また美味しい!
本堂裏の部室で食べてると、お祖父ちゃんがダミアを抱っこしてやってきた。
「ダミアが、奥で美味しいもん食べてる言うさかいなあ」
「これは、ちょっとハズイ(*ノωノ)」
「すみません、匂いしましたか?」
「…………」
留美ちゃんは、恥ずかしがり屋さんやから、顔を赤くして言葉もない。
「いやいや、ほんまは知っててん。なんちゅうても檀家の婦人部長やしなあ。さっそく、あんたらが買うてきたんが嬉しいから、ちょっとお邪魔しただけ」
「すみません、わたし達だけ食べてて(*´ω`*)」
「いやいや、わたしこそ無粋に覗きに来てしもてからに、どうぞごゆっくり」
「もう、お米屋さんはやられないんですか? 定価で買っても160円のお芋で?」
留美ちゃんが、腰を浮かせかけたお祖父ちゃんに聞く。
「息子さんらもしっかり働いてるし、年金も貰てはるから十分やねんけど、なんかお商売やってんと頼りない言わはってね」
「そうなんですか……」
「わたしも、寺の事は息子と孫で間に合うんやけど、檀家周りしてんと老け込むようでね。いやいや、お客が付くかどうかが心配やったんやけど、あんたらの顔見てたら大丈夫」
お祖父ちゃんはダミアを抱っこしたまま行ってしもた。
「あれ? 留美ちゃんのお芋、ちょっと違うんじゃない?」
「え、あ、そういえば……」
「どれどれ……」
わたしも食べかけのお芋を持って比べてみる。齧りかけの断面が微妙に違う。
「見た感じ、ちゃうねえ」
「わたしのはホクホク。留美ちゃんのは……シットリかな? 頼子さんはネットリ系?」
「食べくらしよう!」
頼子さんの発案で、三人で食べかけを比べっこ。
「「「どれも美味しい!」」」
それで、値段も安いことやし(定価でも160円)、なんちゅうても美味しいから三日連続で焼き芋を食べております。