大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・106『戦いすんで・1』

2019-11-30 13:07:23 | 小説

魔法少女マヂカ・106  

 
『戦いすんで・1』語り手:要海友里 

 

 

 えと……なんだったんだろう?

 

 ポアポアと沈んでいた疑問が浮き上がって来る。

 基地に戻って、北斗の終業作業を終わらせると、調理研のわたしたちは素に戻ってしまった。

 太田道灌さんが双子玉川の竜神討伐を手伝って欲しいと駆けつけてきた時はビックリだったけど、大塚台公園の秘密基地に転送されて、それまで自覚したことのない北斗のクルーの意識と闘志が湧いてきて、VRゲームをやるようなノリと高揚で竜神征伐をやってしまった。

 征伐の大半は、先に駆けつけていたブリンダさんがやっていて、わたしらは、トドメの量子パルス砲をぶっ放しただけ。

 なんだけども、オンラインRPGのギルドメンバーみたく活躍した記憶と高揚感は火照りと共に残っている。

「ま、そういうことだから、これからもよろしくな」

「安倍先生が隊長だったんだあ……(ー_ー)!!」

「ノンコ、変態教師を見るような目でみないでくれる」

「え、あ、いや、そんなつもりは」

「先生は、驚かないんですか?」

「あたしは、司令にリクルートされたときから自覚があるからな」

「先生は、リクルートされたんですか!?」

 清美が目を丸くする。

「あたしは講師とかで掛け持ちばかりやってるでしょ、授業も教えてるし、あんたらの担任のお鉢が回ってきたころに、ここの司令にスカウトされたってわけさ。ま、これで、隠し立てしなくてよくなったから、ま、頑張ってくれ」

『本来の敵はカオスの異世界軍団だが、現在それは休戦状態だ。当面は、うち続く自然災害で覚醒し始めた妖やクリーチャーどもだ』

 ブルーの待機画面だったモニターに来栖司令が現れた。

「司令は来ないんですか?」

『すまん、竜神戦の後始末だ。台風災害が原因で現れたんでな、国交省や関係機関との調整や情報分析などで忙しい、あとは頼むよ安倍隊長』

 それだけ言うと、モニターは、元の待機画面に戻った。

「先生に丸投げしちゃったんだ」

 文句を言ったのは、ノンコ一人だけど、戸惑ったり文句言いたそうなのは、みんなの顔にも現れている。

「司令も大変だな、秘密を守ったままで、ここを維持するのに走り回っておられるんだ。さ、オンとオフの区別が無くなったんだ、ここ一番聞いておきたいことがあったら聞いてくれ」

「ここでの活動は成績に影響するんですか?」

 清美が優等生らしいことを聞く。

 ドンと胸を叩いて安倍先生は答えた。

「もちろんだとも! ここで培った忍耐力や集中力は、学校でも、きっと役に立つだろう!」

「あの……平常点に加算とか?」

「特務師団て教科があればな」

「調査書に書いてもらえるとか、生徒会とかボランティアとか書いてもらえるじゃないですか」

「こんな非合法なこと書けるわけないだろ。そういうことではなく、高校生活を送る上での根性とかに効き目がある!」

「「「……根性ねえ(;^_^」」」

 アハハハ………………

 笑うしかない。

 

 

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乃木坂学院高校演劇部物語・51『 了 』

2019-11-30 07:31:22 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・51   

『 了 』 


 

 案の定、明くる日には電話があった。

 バーコードではなく、校長直々の電話だ。
「先生の責任感と硬い御決意には感服いたしました……」
 以下、延々十分にわたり言語明瞭意味不明の、とても言い訳とは思えない「喜び」のこもった送る言葉を聞かされた。送別会は丁重にお断り、退職に関わる書類などの遣り取りも郵送で済ませてもらえるように、電話を代わった事務長と話しをつけた。

 峰岸クンに電話をした。

 クラブの後始末を頼み、ちょびっと、わたしの裏事情に関わることを聞いたが、とぼけられた。
 代わりに一呼吸おいて、バーコードとの会話を録音していたことを告げられた。
「これを公表させてください。全てが解決します」
「罠だってことは分かっていたの。こうでもしなきゃ、責任もとらせてもらえないもの」
「先生の責任じゃ……」
「小田先輩とのことは濡れ衣。でもね、潤香とまどかを命の危険に晒したことはわたしの落ち度。火事のこともね」
 その後、峰崎クンは一言二言ねばったけれど、わたしの決心が硬いことを知ると、飲み込んでくれた。
 ただ、わたしの退職が決まったその日のうちに、替わりの講師がやってきたことをトドメに言われた時は、一瞬血圧が上がった。さすが峰崎クン、ツボは心得ている。
 しかし、わたしの心の凝りはそれで解れるほど生やさしいものではなかった。

 これでも、まだ、どうしてわたしが易々と罠にかかりにいったか。不思議に思う人がいるかもしれない。それには、こう答えておくわ。
――こうでもしないと、わたしは責任を取ることさえさせてもらえなかったって……なぜ、そうなのか。それは言えません。
 結果的には、命の次に……いいえ、命以上に大切な乃木高演劇部を捨てたか分からないという人がいるかもしれない。
――好きだからこそ捨てたの。乃木高演劇部は私の所有物じゃない。気障な言い方だけど、乃木高演劇部は神の居ます神殿のようなもの。わたしは、それを預かる神官に過ぎない。六年前わたしは山阪先生という神官から、それを預かった。
 もし、乃木高演劇部という神殿に神が居ますなら、たとえ神官が代わろうとも、いつか必ず復活する。貴崎マリという神官がいる間は、前任の山阪先生の時とは全く異なる色に染め上げた。しかし、どんな色に染まろうと、神が居ます限り、それは乃木高演劇部であるはず。

 その神官は、わたしの予想を遙かに超えて早く現れた。神殿を閉じたその時に。

 その後継者を峰岸クンから知らされ、正直わたしは……ズッコケた。
 なんと、その神官……という自覚も無い後継者は、一年生の仲まどかと二人の部員。
 唖然、呆然、わたしが密かに名付け、本人たちもそう自覚してはばからない憚らないタヨリナ三人組……。

 しかし、ズッコケながらも感じていた。この仲まどかという神官は案外ホンモノかもしれない。

 だから、この新生乃木高演劇部に手を貸すべきかという峰岸クンの当然すぎる申し出に、こう答えておいた。
「否(いな)」
 ただ、わたしの中には、まだ迷いがあった。本当の神官は芹沢潤香かもしれない。しかし潤香は意識不明の闇を彷徨っている。とりあえずは見守っているしかない。わたしはすでに神官ではない……それだけははっきりしていたから。
 昨日、理事長から電送写真(普通は写メという)が送られてきた。
「この子たちは、こんなに大きな『幸せの黄色いハンカチ』を掲げて待っております」との電信文(普通メールという)が付いていた。
――この子たちが待っているのは「神」です。この子たちは神官です。そして、わたしは神殿を出てしまった元神官にすぎません――わたしは、そう返事しておいた。
 折り返しご返事が返ってきた。
「了」
 電信文には、この一文字だけが書かれていた。
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ファルコンZ:27『アルルカンのアルターエゴ』

2019-11-30 07:23:41 | 小説6
ファルコンZ 27 
『アルルカンのアルターエゴ』   

 
 
 コクピットに、アルルカンが実体化していた……。
 
「それは、アルルカンのアルターエゴよ!」
「分身……これが?」
「違うよ。これがオリジナルさ。いま船ごと蒸発したのがアルターエゴ(分身)さ。けっこう気に入っていたのにね」
 まるで百歳のお婆さんだった。
「もう、二三体アルターエゴを作っておけば、こんな無様な姿を晒すこともなかったんだけどね。まさか王女様自らお出ましになるとはね」
「わたしは、予備役だけど軍人なの。ベータ星の危機は見過ごさないわ」
「その正義感が命取りだね……この船も、わたしの船のようにしてやる……」
「させるか……」
 
 マーク船長は、ワープスイッチをCPUとのリンク無しに入れた。目的地を入力していないワープは、亜空間に投げ出される。つまり、現実世界ではない宇宙の狭間に。
「どないや、これで、この船を破壊したら、バアサン、元の世界には戻れなくなってまうで」
「もともと戻ろうなんて気はないよ。水銀還元プラントもダウンロードの最中。アルターエゴを作り直すには、あたしの残り時間は少なすぎるからね……ただ、あんたらを生かしておいちゃ気が済まないんでね……」
 
 ビューン バシッ!
 
 耳障りな音がした。
 コスモスが自分のコスモエネルギーを破壊モードに変換。アルルカンにぶつけ、はじき返された音だ。
「残念だったね、コスモス。シールドを張ってあるんでね」
「残念……」
 その言葉を残して、エネルギーを使い果たしたコスモスは棒のように倒れてしまった。
 そして、船がビリビリと振動し始めた。
「この船には意志があるんだね。破壊の思念に抵抗している……」
「そうさ、破壊される前に、あんたの命の灯が消える」
「舐めちゃいけないよ、このアルルカンを……!」
 アルルカンの思念が、さらに強力になり、船は悲鳴に似たきしみ音をたてる。
「くそ……!」
「あと二十秒も持たないだろうね、へへへ……」
 そして、船のきしみが分解寸前に達したとき、いきなりアルルカンの首が飛んだ……!
 首が無しアルルカンがドウと倒れると、その背後には意外な人物がコスモセーバーをはね上げた姿勢で立っていた。
 
「マグダラ……」
 
 そう、それは、女宇宙海賊のマグダラであった……。
 
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永遠女子高生・14・《京橋高校2年渡良瀬野乃・5・ひょっとして・4》

2019-11-30 07:14:44 | 時かける少女
 永遠女子高生・14
《渡良瀬野乃・5・ひょっとして・4》         




 今年の2月の末日は29日だ。

 カレンダーで確認すると、なんだかいいことが有りそうで嬉しくなった(#^.^#)。
「あーあ、春は明日からかーー」
 語尾をカラスみたいに伸ばして妹の菜々。いっしょに玄関に出たら、カラスの菜々にローファーを踏んづけられた。
「ク…………!」
 春の到来を一日伸ばされたことと相まって、2月29日の奇跡の予感は吹っ飛んでしまった😢。

 きのう秀一から思いがけなく電話をもらった。会って話がしたいというので、ずっとドキドキしている。

 特別なことなんか起こりっこない……そう思いながらもときめいてしまう。
 夕べは念入りにお風呂に入って、念入りにシャンプーとリンスをした。下着も無意識に新しいものを用意して――あたしって、なに考えてんだろ――と自己嫌悪。
「あ、そうだ!」
 ベッドに入って思いついた。スニーカーじゃダメだ、ローファーにしなくっちゃ!
 で、夜の夜なか、玄関で大捜索。入学式で履いて以来のローファーは、高い靴収納の一番上の箱の中。二度と履くことなど無いだろうと突っ込んだままなので、取り出すときに棚の上の靴箱を全部落として、家族の顰蹙をかった。

 踏みつぶされたローファーの形を整え、おニューの白ハイソの足を収める。

「行ってきまーす!」の声がひっくり返る。
「今日はおにぎり齧り付かへんのんか?」
 タバコ屋のお婆ちゃんが、あいさつ代わりのツッコミ。
「オホホホ、やだあ、お婆ちゃま」
 東京弁のブリッコに、お婆ちゃんの口がポカンと開く。
 駅に向かって、電車に乗るまで、あちこちのショーウインドウや鏡などに自分の姿を映す。
「うん、イケてる。あたしって、やることやれば、かなり清楚な女子高生なんだ……ただ、髪の毛がなあ……」
 ここんとこ調べた結果、顔の造作からロンゲが似合うと思い込んでいる。
 引っぱっても伸びるわけではないのだが、ついツンツン引っ張ってしまう。
「あ、ああー!」
 引っぱり過ぎて3本ほど毛が抜けてしまう。

 そんなこんなで、欠点ばかりに目がいったまま学校に着く。

「ごめん、今日は用事があるの」
 またしても東京弁をかまして、愛華に気持ち悪がられる。
「どないしたん、ノノッチ……?」
 ジト目の愛華を、わけもなく下足室まで送る。
「気持ち悪いなあ……用事があるんやろ? なんであたしを送るのん?」
「あ、いや、それは……バイバイ!」
「バイバイ」
 校門まで行って、愛華が戻ってくる。
「ノノッチ、なんか分からへんけど、落ち着きや……今日のノノッチは、いつもの5割増しぐらいには可愛らしいから!」
 今度こそ、愛華を見送って回れ右、約束の場所に向かう。

 藤棚の下に秀一がいる……姿を見ただけで赤くなる。手と足がいっしょに出てしまうので、調整のためにスキップする。

 ドテ!

 ……脚が絡んでこけてしまった……。
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小悪魔マユの魔法日記・110『その後のAKR47・4』

2019-11-30 07:06:41 | 小説5
小悪魔マユの魔法日記・110
『その後のAKR47・4』    



――人に話してしまった。もう、このマユのアバターには居られないだろう。

 拓美は思ったが、「これでいいんだ」と言う自分が芽生え始めていることに気づいた……。

 潤は、一時危篤に陥いり、医師たちの懸命な治療のお陰ということになっていたが、拓美との会話で、頭上に迫っていたあの世を回避して、一命を取り留めた。回復も早く、四日目には、ベッドに身を起こしてみんなと話ができるようになった。

――AKR47、仲間を救う命の連携!――

 特に拓美の処置が絶賛され、潤の両親からも感謝され、マスコミからも賞賛を受けた。ただし、アバターの出昼マユとして。

「はい、みんな、こっち向いて!」
「はーい!」
 ベッドの潤を真ん中に、入りきれるだけのメンバーが入って写真が撮られ、カメラが回った。
 十分という時間制限で、マスコミが取材を許されたのだ。
「時間がないので、わたしが決定を言います」
 会長の光ミツルが手を上げた。
「実際の活動は、退院後の復帰からになりますが、潤を加えた新ユニットを結成します」
 病室のみんなから、歓声があがった。
「ユニットの名前は、三つ葉のクローバー」
 黒羽ディレクターが、続けると、みんながズッコケた。あまりに平凡……。

「平凡すぎやしませんか?」

 事務所に場所を移した記者会見で、ベテランの芸能レポーターが声を上げた。
「平凡だからです。ちなみに、他のメンバーは、桜井知井子、矢頭萌。合計三人のユニットです。AKRの中でも、平均的な力の三人です。三つ葉のクロ-バーのように平凡だが、可憐で可能性を秘めています」
「将来、力がついたら、四つ葉のクローバーと改名することを宣言しておきます」
 光ミツル会長と黒羽ディレクターが、簡潔に説明した。
「なお、デビュー曲の作詞は、仁和明宏さんにお願いして、快諾を得ております」
「現在、申し上げられるのは、ここまでです」
「もっと詳しくお願いしますよ!」
 芸能レポーターが食い下がる。
「できたら、説明しますがね。ぼく達も、まだ、ここまでしか決めとらんのです」
「あとは、そこでびっくりしている、知井子と萌に感想聞いてやってください」
 そう二人に振って、光と黒羽は会長室に向かった。

――間もなく列車が通過しますので、白線の後ろにお下がり下さい――

 会長室の白線は特別製で、駅の構内アナウンス、そして列車の通過音やホームの振動まで再現できるようになっている。窓ぎわのスリットからは、列車の通過に見合った風が「バン!」と吹き出した。
「あいかわらず、こんなので遊んでるのね」
 仁和が、風に髪をなぶらせながら背中で言った。
「あんたから電話をもらってタマゲタよ。かれこれ二十年ぶりだもんな」
「そうね、黒羽クンが、まだ駆け出しのADだったもんね」
「とりあえず、仁和さんの言うとおりにやったけど、これでいいんだね?」
「ええ、取り越し苦労かもしれないけど、みんなの役に立てればって、そう思って」
「しかし、いいんですか。仁和さんはオモクロとも専属の契約なさってたんじゃ……」
 黒羽がADに戻ったように、お茶を淹れながら言った。
「ハハ、ミツルクンも、敵に塩を送ってるじゃない。オモクロとか、神楽坂24とか」
「ハハ、敵も適当に強くなってもらわなきゃ、面白くないからな」
「あいかわらずね。でも、わたしのは、もっと真面目。人の魂に関わることだから……」
 そう言って、仁和は、おもむろに香をたき始めた。
「で、本当なのかい、このAKRが……」

 拓美には、そこまでしか聞き取れなかった。仁和のたいた香が結界になって、感じ取ることができなくなっていた。
 しかし、会長室の三人からは悪意めいたものは感じなかった。それどころか、暖かいいたわりの気持ちさえ感じられた。そして、そのいたわりは、入院している潤に向けてのものだけでないことも気づいた……。
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