大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・098『早朝呼び出し』

2019-11-11 16:09:27 | 小説

魔法少女マヂカ・098  

 
『早朝呼び出し』語り手:マヂカ 

 

 

 8時に職員室に来て

 

 緊急の知らせを受けたのは、7時50分。

 角を曲がったら、公園の角で待っている友里が視界に入るというところだ。

―― ごめん、急ぎの用事で、もう学校に着いてるの。ほんとごめんね ――

 友里にラインのメッセを送って緊急のテレポ。

 テレポはめったに使わない。どこで誰が見ているか分からない、人が居なくても監視カメラとか車載カメラとかね。でも、緊急なんだから仕方ない。

 友里も不審に思うだろう。何十分も前なら『急ぎの用事』で納得するだろうけど、『もう学校に着いている』はひどいと思うよね。もっと早く知らせろよと思うだろう。

 でも、仕方がない。あとで時間のつじつまが合うようにしておかないと。それにしても、なんだろう? ㋪ラインで送って来るということは特務の用事に違いない。

 A定食奢るくらいですんだらいいんだけど。

「失礼します」

 職員室のドアを開けたのは7時52分。

 階段横の倉庫(学校のテレポポイント)からなら、こんなものになる。

「B組の渡辺さんだね、安倍先生なら、応接室に来てくれって」

 電話をとりながらパソコンをチェックして、書類二枚に目を通している教頭先生が教えてくれる。どこの世界も中間管理職というのは大変だ。

「ありがとうございます」

 感謝に若干のシンパシーを足してお礼を言う。

 応接室へは三十秒ももかからない。

 でも、廊下から見える中庭を初秋の空ごと愛でる。

 M資金を巡って、もう二月以上も戦ってきたが、全て亜空間で起こっていることだ。

 リアルの世界では三日しかたっていない。

 そう思うと、リアルの風景が愛おしく思えて来たりする。もう少し秋めいてきたら、調理研のみんなとお弁当こさえて、お出かけしたいものよね……と、思ってみたりする。

 応接室のドアの前に立ったのは八時ちょうどになった。

「失礼します、B組の渡辺です」

『どうぞ』

 あれ、この声は?

 引っかかりながらもドアを開ける。

 ブルネットと言うんだろうか、栗色セミロングの女の子が新品らしい制服を着て座っていた。

「あ、えと……」

「安倍先生は、野暮用作って席を外してもらってる。わたし、交換留学生のサマンサ・レーガンです。よろしく渡辺真智香さん…………いえ、魔法少女のマヂカさん」

 !!

 脊髄反射で風切丸を実体化させて構えてしまった!

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真夏ダイアリー・68『省吾との再会』

2019-11-11 06:25:54 | 真夏ダイアリー
真夏ダイアリー・68 
『省吾との再会』    


「ノックはしたんですが、お気づきになられないようなので、失礼しました」
 来栖大使がメガネをずらして、わたしを見た。
 
「君、悪いが席を外してくれたまえ。野村大使と話があるんだ」
「男同士の飲み会だったら、ご遠慮しますが、外務省からの機密訓電だったら同席します」
「君……?」
「東郷さんから、この件については彼女を同席させるように……ほら、これだよ」
 野村大使は、わたしに関する書類を来栖さんに見せた。
「しかし、こんな若い女性を……それに君はポーランドの血が……」
「四分の一。来栖さんの息子さんは、ハーフだけど陸軍の将校でいらっしゃる。一つ教えていただけませんか。外交官の資質って、どんなことですか?」
「明るく誠実な嘘つき」
「明るさ以外は自信ないなあ。三つを一まとめにしたら、なんになりますか?」
「インスピレーション……かな、来栖さん」
「よかった、経験だって言われなくて。わたしは外交官じゃないけど、今度の日米交渉には、くれぐれも役に立つように言われてるんです、東郷外務大臣から」
「と、言うわけさ。来栖さん」
 
 ここまでは前回と同じだった。ジョ-ジとの出会いもそのままだったので違和感はない。しかし、そこからは、新しい展開だった。

「君の言った通りだ、入ってきたまえ高野君」
「失礼します」
 入ってきたのは、四十過ぎの気のよさそうなおじさんだった。少し顔色が悪い。
「高野君の言ったとおりの女性だ。度胸もいいし、機転も利く。あとは、君のようなスキルがあるかどうかだが」
「それは、大丈夫です。日本で十分鍛えておきましたから」
 なんのことだろう、この高野という人物についての情報はインストールされていない……。
「じゃ、さっそく仕事にかかろう」
「真夏君は、いま来たところだ。荷物の整理ぐらい……」
「間もなく訓電が入ってきます、時間がありません。この数時間が勝負です。それが終わったら、祝勝会をやりましょう。大使のおごりで」
「どっちの大使かね、ここにはわたしと、特命大使の来栖君の二人がいるんだがね」
「ポーカーでもやって決めておいてください。なんなら両大使お二人でという、わたし達には嬉しい選択肢もありますがね」
「ハハ、さすが山本さんの甥だ」
 野村大使が笑った。
「かなわんな、高野君にかかっちゃ」
 来栖大使も眉を八の字にした。かなりの信頼を得ているようだ。それにしても、省吾は……。

「分からないか、ボクが省吾だよ」
 通信室に入るなり、高野が言った。
「え……!?」
「もう高校生には、見えないけどね」
「ほんとに、省吾なの……!?」
「ああ、根性で、踏みとどまってるけど、もう二時間ほどが限界だった。ぼくの実年齢は八十に近いんだ」
「高校生にもみえないけど、八十のオジイチャンにも見えないわ」
「加齢は、内蔵に集中させてある。外見は四十前さ。ここでの設定は山本五十六の甥ということにしてある。リベラルな二人の大使の信用を勝ち得るのには最適な設定だ」
「ほんとに……ほんとに省吾なの……?」
「ちょっと残念な姿だけどね」
 真夏の胸に熱いものがこみ上げてきた。
「で……わたしは何を?」
「それはインストールされているだろう。側にいてくれるだけでいい」
「やっぱり……」
「そう、このタイムリープは、かなりの無茶をやっている。真夏が、ぼくのタイムリープのジェネレーターなんだ」
 限界を超えたタイムリ-プをすると急速に歳をとり、やがては死に至る。それを防ぐために必要なのが、ジェネレーターという者の存在。適合者は数千万人に一人。省吾のタイムリープの限界2013年に絞れば、何十億人に一人の割でしかない。頭では理解しているが、心では少し違った感情があった。それを察したのか省吾は、優しくハグしてくれた。
「ただの適合者というだけで、無理ばかりさせて……ごめん。この歴史を変えたら解放してあげられるから、もう少し……」

――解放なんかされなくていい、オジサンになっていてもいい。省吾の側にいられるなら。役に立つなら――

 わたしの心は、省吾への気持ちで溢れそうになった。その時、省吾の体が、一瞬ピクリとした。
「真夏、ヒットした!」
 一瞬、想いを悟られたかと思ったが、省吾は、レトロな無線機に見せかけたCPに飛びついた……。
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乃木坂学院高校演劇部物語・32『下町のシキタリ』

2019-11-11 06:16:50 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・32   

『下町のシキタリ』 

 
 昼には平熱になって、半天をはおって茶の間に降りた。

 おじいちゃん、お父さん、柳井のオイチャンといっしょにお昼ご飯を食べた。

 三人とも、わたしの回復を喜んでくれて気の早い床上げ祝いということになり、赤飯に鯛の尾頭付きがドデンと載った。
 缶とワンカップだけど、ビールとお酒も並んでる。わたしはお粥と揚げ出し豆腐ぐらいしか口に入らない。まあ、なんでも祝い事にして一杯やろうという魂胆ととれないこともないけども、これも下町のシキタリ、愛情表現。ありがたくお受けいたしました。
 宴たけなわになったころ、大学を早引けにした兄貴と、彼女の香里さん。エプロンを外したお母さん。伍代さん……はるかちゃんのお父さんと奥さんも加わった。
「商売物でなんだけど、販促兼ねてもらってくれる」
 奥さんは蒼地に白の紙ヒコーキを散らしたシュシュを下さった。
 香里さんはバイト先でもらったっていうネールカラーを、柳井のオイチャンは面白がって、チョチョイと真鍮板で三センチくらいの紙ヒコーキを作り、安全ピンを溶接してブロ-チにしてくれた。
「あ、わたしも欲しいなあ」
 ということで、そのブローチはもう三つ作られ、伍代さんの奥さん、香里さん、そしてはるかちゃん用になった。
 後日、このブローチは伍代さんとこで商品化され、柳井のオイチャンに原作料が支払われ、オイチャンはご機嫌になっちゃったりした。
 この日もらった物で学校にしていけるものは一つも無かったけど、やっとわたしの床上げ祝いらしくなって、わたしもご機嫌!

「え、はるかの番号知らないの!?」

 宴もお開き近く、わたしとはるかちゃんのこと(ガキンチョのころスカートひらりやったこと)が話題になり、伍代のおじさんが驚いた。
「いや、ヒデちゃん(伍代のおじさん)とこの家のことだしよ……」
 お父さんは頭を掻いた。
「水くせえなあ、はるかとまどかちゃんは幼なじみなんだしよ。家の問題がケリついてんのはジンちゃんも承知じゃねえか」
 あっさり、はるかちゃんの携帯番号ゲット!


 放課後の時間になるのを待って、はるかちゃんに電話することにした。

 その前に、電話とメールのチェック。

 電話の着信履歴は無かった。クラブや、クラスの何人かからお見舞いのメールはてんこ盛り。みんな言葉を工夫したり、デコメに凝ったり、見ているだけで楽しいものが多かった。
 中には『火事お見舞い』を『家事お見舞い』とやらかしているものや、『草葉の陰から、御回復祈ってます』なんて、恐ろしく、でも笑えるものまであった(これが、なぜ恐ろしく笑えるか分かんないひとは辞書ひいてください)
『草葉の陰』は、夏鈴からのものだった。ラノベで覚えた言葉を使ったんだろうけど、事前に、言葉の意味くらい調べろよな……。
 里沙からは『早く元気になってね』と、見出し。
――以下は、添付書類、パソコンに送付。
 と、まるで事務連絡。

 で、パソコンを開いてみた……。

 なんと、わたしが休んでいた間の授業のノートが全部送られていた。で、これから毎日送ってくれるとのこと。持つべきものは親友だと、しみじみ思いました。
 笑ったり、泣けたり、しみじみしたりして、メールのチェックは終わり。
 え、だれか抜けてるだろうって……それはナイショ。あとの展開を、お楽しみに!

『お見舞い、ありがとうございます』をタイトルにして二百字ほどのメールを一斉送信した。
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ファルコンZ:8『H系ガイノイド ミナホ』

2019-11-11 06:07:53 | 小説6
ファルコンZ:8 
『H系ガイノイド ミナホ』          

 
 
 
 H系ガイノイド(女性型アンドロイド)のミナホがニコニコと見つめている。
 
 二つの意味で気持ちが悪い。
 第一は、ミナコ自身とそっくりであるということ。
 第二は、H系ガイノイドなので、今の今まで船長とHしてたということ。
 そして、その気持ち悪さが、どうでもよくなるような予感というか不安。
 
――あたしは、これからどうなんの!?――
 
「ミナコの不安に答えておくわ。ミナコとあたしがそっくりなのはたまたま、ほんとよ。でも、微妙なとこで違う。例えバストのサイズはミナコの方が3センチ小さい」
「ど、どうして、そんなこと?」
「ポチとシンクロしてるときに計測したから」
 モナコは、ポチがホンダの中で、自分のルーズブラウスの中に潜り込んできたことを思い出した。
「そんなの息を吐いたら、3センチぐらい、すぐに変わるわよ」
「バストサイズって、トップとアンダーの差で決まるのよ。呼吸は関係ないわ」
「あ、そう……」
「怒らせたら、ごめんね。完全にソックリじゃないってことを分かって欲しくて。ほら、これを見て。わたしとミナコの肌を拡大したもの」
 
 ミナホは、モニターに拡大された皮膚を映し出した。
 
「このザラザラしたほうが、ミナコ。スベスベなのが、わたし。ね、違うでしょ?」
「それって、フォローになってないんだけど」
「あたしが、替わるわ。ミナホはナビお願い」
 コスモスが、休憩用のソファーを示した。
「ミナコの肌は、標準よりスベスベよ。ミナホは、ただ自分との違いを言いたかっただけなの。それから、ミナホはミナコが考えてるようなガイノイドじゃないわ。ある特別な人の心を載せるために特別に作られたものなの。それでも不十分なんで、船長が火星でパーツを集めて、やっと起動するようにしたのよ。それが出来上がったのが、ついさっき。ミナホが本来だれなのか、ここにいる誰も知らないわ」
 え、そんな……
 
「ほんとよ、ミナホ自信も知らない。ただ船長は引き受けたの。ミナホを無事に送り届けることを」
「どこへ?」
「それも分からない。決まったところまで行かないと依頼者から教えてもらえないらしいの。まあ、この船は、そういう危ない仕事をやるために存在してるんだけどね」
「船長でしょ、引き受けてくるのは?」
「カタチの上ではね、もう少ししたらミナコにも分かるわ。それから、この船は光速の何十倍ものスピードで飛ぶから、時間を超えてしまう。だから仕事を終えて帰ってきたら、地球時間では、2369年3月。バイトを引き受けた明くる日に戻れるわ。それから……」
「船長、0・1パーセク先に船籍不明の船団、アクティブ光子を出しています。二分ほどで掴まります」
「海賊やな。各員戦闘配置!」
「え、なに!?」
「ミナコ、上部の銃座に行って!」
「あんなの撃てないわよ!」
「銃座に収まればだれでもできる。問題は負ける気にならないこと」
「AKBのホログラムを、あそこまで使いこなしたんや。楽勝やで」
 船長は、あたしを抱き上げると、上部の銃座に放り込んだ。そのとき左の胸とお尻をもろに掴まれた。油断のならない船長だ。
 銃座につくと、すぐ目の前に、敵のドットがバカみたいに現れた。恐怖心から、やっつけなければという気持ちになる。すると……敵のドットはロストしていく。
「これって、やっつけたことに……」
「なってる。そのままイテまえ!」
 
 ミナコの初めての戦闘が始まった……。
 
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スーパソコン バグ・4

2019-11-11 05:57:42 | ライトノベルベスト
スーパソコン バグ・4  
治療に専念しろ       


 
 麻衣子は、商店街の福引きでパソコンを当てて大喜び。そこにゲリラ豪雨と共にやってきた雷が直撃。一時は死んだかと思われたが、奇跡的にケガ一つ無し。ダメとは思ったパソコンが喋り始めた。不可抗力で、パソコンに「バグ」という名前を付けてしまう。そして生き甲斐のソフトボールができなくなった。

 麻衣子は、ショックのあまりしばらく口がきけなくなってしまった……。

「麻衣子、しばらく部活休んで、治療に専念しろ」
 憧れのコーチである吉岡さんに、そう言われてしまったのだ。

 麻衣子の、ソフトの腕は、潜水艦(ナミの下)であった。それも高性能の原子力潜水艦。三年ぐらい一度もナミの上に姿を現さなくても潜っていられる……うまいことを言うもんだ。

 そのナミの下でも頑張れたのは、卒業生でもあり、野球部のエースでもあった吉岡コーチの存在があったればこそであった。雷に撃たれたときも、学校に連絡が来るや、担任よりも、顧問よりも、一番に駆けつけてくれたのも吉岡コーチだった。

「無事で良かった!」

 吉岡コーチの声は、神さまの声であった。
 
 その神さまが「しばらく部活休んで、治療に専念しろ」と言うのである。
「オレも、高二の時に肩を痛めて、二か月ほど野球が出来なくなったことがある。そういうときは普段できなかったことをやればいい。オレは、しばらく家の仕事を手伝って、家族の絆とチームプレーのなんたるかを学んだぞ」
 こんなスポコンマンガみたいな台詞を、他の人間が言ったら、そのキザさというか自己陶酔に呆れるか笑うかだが、吉岡コーチならばこそ真剣に聞けたし、ショックも大きかった。

「元気出しなよ。未来永劫会えなくなるってわけでもないんだし」
 
 家に帰るなり、バグは、顔色、表情、姿勢、ため息などから、麻衣子の心の中を読み取ってしまった。
「ありきたりに慰めないでよ、ありきたりのショックじゃないんだから」
「着替える前に、カーテンちゃんと閉めよう。斜め向かいのオッサンが見てるよ」
 麻衣子は、あやうくキャミを脱ぐとこだった。
「もう、変態オヤジ!」
 カーテンをピッチリ閉めると、下着まで着替えてTシャツと短パンになって、ベッドにひっくり返った。
「シャワーぐらい浴びてきたら」
「……そんな元気ないもん」
 壁際に寝返りうって、ブツブツ言った。

「元気出せ、峯岸麻衣子!」

「え……!?」
 吉岡コーチの声がしたのだ。
「こんな言葉でいいんなら、いつでも声かけてやるぞ」
「もう、マユユの顔で、吉岡コーチの声なんか出さないでよね!」
 モニターのマユユは、笑顔を崩して、ゆっくりとため息をついた。ため息はマユユだった。
「そう、その顔には、ため息が相応しいの……ってか、あんた、動画になってんじゃん!」
「え……あ、ほんとだ。気がつかなかった!」
「あんた、進化したのね……」
 バグは、嬉しいのかマユユの姿のまま、モニターの中ではしゃぎまくったり、ヘン顔したりした。
「それは、よした方がいいよ……マユユにヘン顔似合わないし、バク転するときはさ、スパッツ穿かなきゃダメだと思うよ」

「麻衣子、その動画どこからコピーしたんだ、YOU TUBEかニコ動か!?」

 アニキにも見えてしまったのだ!

「え、見えてんの?」
「うん、マユユのバク転なんか、めったに見られないもんな!」
「キャー、恥ずかしい!」
 バグが、両手で顔を隠した。
「わー、ちゃんと反応するんだ。まさか、本物とビデチャやってんじゃないだろうな!?」
「あ、これは……」
「こんにちはお兄さん。わたし期間限定のAKBのアバターなんです。ベータ版で、麻衣子さんにモニターになってもらってるだけで、あ、もう制限時間。じゃ、またね麻衣子!」
 バグは、それで電源を落としてしまった。

 進化するパソコン……てか。

 これも麻衣子の大きな悩みになりそうであった……。




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小悪魔マユの魔法日記・91『黒羽美優の葬儀・1』

2019-11-11 05:45:06 | 小説5
小悪魔マユの魔法日記・91
『黒羽美優の葬儀・1』     



 
 意地悪なくらいの秋晴れ……

 遺族控え室にいたたまれなくなり、黒羽由美子は葬儀場の駐車場に出た。
 
 父の死は覚悟していた。しかし自分より年下の義姉の葬儀をいっしょに出すとは思わなかった。
 兄の黒羽英二も、美優の母親であるローザンヌのマダムも落ち着いていた。しかし、悲しみに耐えているのは痛々しいほどよく分かった。兄の英二にはクセがある。悲しみや怒りを堪えているとき、表情は穏やかなのだが、まばたきが多くなる。人が見て分かるほどではないのだが、兄妹だからよく分かる。針でつつけば破裂しそうなほどに兄は悲しいのだ。
 
 女なら悲しいだけ泣けばいい。しかし、男は、たとえ身内の葬儀でも涙をみせちゃいけない。

 母が亡くなった時。当時、まだ元気だった父が由美子と兄の英二に言った言葉である。
 まだ中学生だった由美子は、人目もかまわずに泣いたが、兄は泣かなかった。ただ、いつもより少しだけまばたきの回数が増えていた。それに気づいたのは、骨揚げの時だった。

――あ、まばたき止めたら、お兄ちゃん泣いちゃうんだ――
 
 妹の直感で、そう思った。

 いま、控え室にいる兄は、その骨揚げの時と同じくらいのまばたきをしている。もう口やかましいお父さんもいないんだから、美優ちゃんのために泣いてやってもいいのに。あんなにお父さんに反抗ばかりしていたくせに、こういうところは、どうして親子似ちゃうんだろ。
 でも、ふと気づくと涙していない自分にも気が付いた。気づくと、間欠的に悲しみが胸にせきあげてくる。ひょっとしたら、自分が最初に崩れてしまうかもしれない。また、崩れない自分も予感され、それはそれで、いたたまれなく、控え室を飛び出した。

「あ……」

 やっぱ、自分もバカ。タバコを吸おうとして、タバコを持ってきたのにライターを忘れた。指にタバコを挟んだまま、どうしようかと思っていると、すっと横から火の点いたライターが差し出された。

「はわわ……」

 ライトノベルの三枚目みたいな声が出てしまった。

 ライターを差し出したのは、三年ぶりに顔を合わせた、アイツだった……。
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