大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・117『みんなでアルバイト・4』

2019-12-31 15:29:01 | 小説

魔法少女マヂカ・117  

『みんなでアルバイト・4』語り手:ノンコ 

 
 
 
 
 二人一組でヘルプに派遣されることになったよ。
 
 ノンコは友里と二人で『ねこのて』に行った。
 
『ねこのて』は、それこそ猫の手も借りたい忙しさ。
 
 十人いるメイドさんは五人ずつの交代制なんだけど、五人だと手が回らなくって、シフトに入ってる間はろくに休憩もとれないありさまで、まさに猫の手も借りたい忙しさ(;^_^A。
 
 お店の名前でも分かると思うんだけど、人間に恩返ししたいネコたちが猫の神さまの力でメイドになってお給仕しているお店なのニャ……あ、ネコ語になってるニャ!
 
 友里は『ゆゆ』で、ノンコは『のの』。
 
 なんか、まんまって感じなんだけど「『ねこのて』の売れっ子のホーリーネームなのよ」って、ねこまんまが言う。
 
 ねこまんまというのは、ネコママが変化したもので、お店のリーダーなのニャ。
 
 フリフリのメイド服にネコミミカチューシャを付け、胸には猫の手の名札を付けるニャ!
 
 猫の巣って名前の部屋は控室とゆーか休憩室。ロッカーが並んでる突き当りに神棚があって、神棚の前でお祓いを受ける。
 
 お祓いはねこまんまさんが、メイドとは思えないうまさでやってくれるニャ。
 
 
 かけまくも畏き猫神さまの御前(おまえ)に、かしこみかしこみ申さく。師走みそかの良き日に『ゆゆ』『のの』のふたり、ねこのて乙女として相務めるにあたり、猫神さまの愛しみをこうむらんとて、ここに額ずき、幣を捧げるものなり~ 願わくば、二人のネコ乙女の罪穢れを掃い、つつがなき務めをば為させたまえ~ あなかしこ~あなかしこ~
 
 バサ! バサ!
 
 わたしと友里の頭の上で特大のハタキみたいなのが振られ、友里と二人で榊ってゆう葉っぱ付きの枝を捧げ、お猪口一杯のお酒を頂いたのニャ。
 
 高校生なのにお酒……ま、お神酒ってことだから、ノープロブレムニャ(^▽^)/
 
 
 お客様が来たら「お帰りなさいませご主人様~」 お帰りになる時は「行ってらっしゃいませご主人様~」 定番のオムライスを出す時には、ケチャップでハートを書くのは普通のネコカフェ、ねこのては『猫の手』を書くニャ。でもって、猫の手の下に「愛してるニャ」とか「ラブニャ」とか書くニャ。
 
 ほんで、テーブルに置いてから「美味しくな~れ、美味しくな~れ、ラブ注入ニャ(^▽^)/」と、定番のお呪いをやったりするニャ。
 
 友里は、最初は蚊の鳴くような声しか出せなかったけど、三十分もしたら、普通にやれるようになったニャ(o^―^o)
 
 ノンコは、学校の勉強とかはからっきしだけど、メイドのお仕事は合ってるニャ!
 
 めっちゃ楽しく一日が過ぎたんだけど、さすがに疲れたニャ。
 
 あと一週間、頑張るニャ!
 
 
 
 
 
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となりの宇宙人・15『その紗耶香はアバター』

2019-12-31 06:42:33 | 小説4
となりの宇宙人・15
『その紗耶香はアバター』          

 鈴木聖也は、あたし(渡辺愛華)のとなりの家に住んでいる幼馴染(?)の亡命宇宙人。
 秋のある日、駅で暴漢に襲われ、学校では食堂の工事現場の鉄骨に潰されそうになるけど、聖也が時間を止めて救けてくれた。
 犯人は、なんと、これまた幼馴染(?)の吉永紗耶香。紗耶香も宇宙人で、聖也を抹殺するために、あたしを殺そうとした。
 あたしは聖也の命の素になる宇宙エネルギーを、聖也に合うように変換できるから。
 そのために殺されそうになり、救けられもしたんだって……でも、それだけ?

 
 人が見たら孤独なやつと思うだろう。
 
 あたしも、聖也も、ヨッコのことも。  
 さっきホームに上がったらヨッコがいた。  
 で、あたしは乗車位置二つ分後ろの方にいく。  
 ヨッコが聖也の傍に行きやすくしてやるためだけど、肝心のヨッコは二つ分前の乗車位置から動かない。
 そのまま電車に乗ったから、三人とも一人ぼっち。
 朝の車内は、友だち同士喋っているか、スマホをいじっているか、文庫を読んでいるのもチラホラ。完全に孤独しているのはあたしたち三人だけ。  
 学校の駅の手前で、いつものように電車が揺れる。慣れっこなんで、みんなサーフィンみたく揺れをいなしている。ひとりヨッコだけがつんのめり前のガラス窓に壁ドン。シートに座っていた女生徒がびっくりして顔を上げる。
――え……うそ!?――
 顔を上げた女生徒は吉永紗耶香……。
 駅に着くと、あたしは聖也の横に並んだ。
 
「なんで紗耶香がいるの? 紗耶香は負けて存在しなくなったはずよ」  
 紗耶香は聖也に敵対する宇宙人で、先週、あたしのことを暴漢に襲わせたり、食堂改築現場の鉄骨で殺そうとしたりした。聖也でなくあたしが狙われたのは、宇宙エネルギーを聖也に合うように変換できるから。直接聖也を襲わないで、あたしを抹殺しようとした。
「オレにも分からない、様子をみなきゃしようがない」
 紗耶香は、駅から学校に着くまで、友だちとごく普通に喋っていた。まるで先週の事件などなかったかのように。
「ちょっと、こっち来て」  
 学校に着くと、下足室にも寄らないで、聖也をうながして食堂の改築現場に行った。
「……昨日と様子が変わってない。やっぱり先週の鉄骨事件はおこっていたんだ」
「じゃ、あの紗耶香はいったいなんなの?」
「サーチしてみる、ちょっとエネルギーを充填したい」
「え……?」
 おとついの夢がよみがえり、あたしは半歩さがってしまった。
「赤くなんなよ、いつもの力じゃ足りないんだ。ちょっと手をつなぐだけだから」
「う、うん……」
 校舎の方からは見えないように手をつないだ。
「……なにか見えた?」
「エネルギー充填中……」
 
 つないだ聖也の手が汗ばんできて、あたしまで緊張してきた。
 
「これは……!」
 手をつないだまま聖也は前のめりになる。
「キャ!」
 あたしは引っ張られ、グルンと半回転して聖也の胸にとびこんでしまった。
 校舎のドアで気配、ヨッコと目が合う、ヨッコは涙をうかべ、くちびるを噛んだかと思うと反対側のドアからグラウンドに駆けていった。
 
「ヨッコ、ちがうんだってば!!」
 
 ヨッコ!

 後ろ姿に呼び止めると、それは全校朝礼の準備をしている放送部の子だった。背格好とヘアスタイルがいっしょだと制服姿はとっさに間違える。
――どこだ……あ、あそこ!――
 ヨッコはグランドに出るとすぐに曲がって、正門の方に向かっていた。
「ヨッコ……」
 ヨッコは登校のピークになった生徒の群に逆らって、学校の外に行こうとしている。
「ちょっとごめん、通して!」
 ほんの数秒の違いで校門の外に出るのは三倍くらいの時間がかかった。
 そして校門の外にヨッコの姿はなかった。たぶん裏通りを縫って駅の方に行ったんだろう……。

 とっても気がかりだけど、紗耶香が突然現れたことを放っておけないので、振り返りながら聖也のところにもどった。
 あの紗耶香がもどってきているのなら、あたしも聖也も命を狙われる。
「愛華……こっち」
 中庭でキョロキョロしていたら、図書館棟の窓から聖也がオイデオイデをしているのに気づいた。
 聖也が指し示した司書室の壁には教室で楽しく喋っている紗耶香の姿が写っていた。
「この紗耶香は残像なんだ」
「残像?」
「紗耶香は消えてしまったけど、設定が強力だったんで、外形だけが残ってしまったみたい」
「外形?」
「アンインストールされていないアバターみたいなもの……見てごらん」
 カーソルが動いて紗耶香の姿がアップになる、さらにアップされると接近し過ぎたCGのように……紗耶香の身体の中はガランドーだった!

「この紗耶香ってCGなの!?」

「みたいなもんさ、紗耶香がやった設定だけが自律的に動いてる。当然みんなの記憶も設定のまま残っているから、ごく自然に紗耶香として受け入れている」
「あたしたちを攻撃してくることはないの?」
「それを心配したんだけど、そういうコマンドは紗耶香の意識が入っていないと発動しないようなんだ。この紗耶香アバターはオレにも愛華にも幼馴染みの同級生、そう接していればいいと思う」
 そう言うと、聖也は手を一振り、壁の画像はモニターごと消えた。同時に定例の全校朝礼のアナウンスがあり、聖也といしょにグラウンドに向かった。

 整列しているとポンと肩を叩かれた。

「……ヨッコ!?」
「ぐるっと回って裏門から入ってきた。あとで話。いいよね?」
 
 笑顔だったけど、目が赤く、頬っぺには涙の痕があった……。

 
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Regenerate(再生)・27≪詩織と沙織と……≫

2019-12-31 06:11:20 | 小説・2
Regenerate(再生)・27
≪詩織と沙織と……≫  



 ひぐらしが涼やかに集く中、比叡山の老杉たちに濾過された木漏れ日は、ほとんど真西から塔頭を照らしていた。

 日没偈(にちもつげ)の読経が遠くから聞こえてきた。詩織の意識は、まだ乱れを残してはいたが、ゆっくりともどった。
「目ぇ覚めたんやね」
 優しげな声が斜めに降ってきた。
「あ……あたし……」
「寝てたらええよ。意識は戻ってきたみたいやけど、まだ落ち着いてないさかい」
 詩織は体に違和感を感じていた。まるで、蛹(さなぎ)が変態することにとまどっているように。
 そっと顔に手をやると、顔の肉がムクムクと変わるのが手のひらに伝わった。
「すみません、鏡を……」
 沙織が、手鏡を顔の上に持ってきてくれた。
「顔が……」

 詩織の顔は、一秒に五回ほどの割で変わっていった。あまり驚きはしなかった。心は、しっかりと詩織に戻っていたから。
「まあ、バグの影響が少し残っていると思えばよろしい」
「バグね……」
「収まるまで、ちょっと話聞いてくれはる?」
「ええ……」
「100ひく100はなんぼかしら?」
「……ゼロ」
「そやね。ほんならX=1 Y=1の点を、このグラフに示してくれはる?」
 沙織は、パッドとタッチペンを詩織に渡した。受け取った詩織の手が逡巡した。
「書けない……」
「どないして?」
「書いた点は面積を持ってしまう。点には面積がないわ」
「そう、点には面積あれへんし、ゼロは目に見える形では表現でけへん。そやけど、頭では理解できる……そやね?」
「うん……」
「仏さんの衆生済度のお気持ちもいっしょ。目ぇには見えへんけど、たしかにあります」
「衆生済度とは……」
「極楽往生……平たく言うたら、人がゼロになること、それを救いととらえること。往生するまで人間はアホなことばっかり。そのアホをアホのまま認めて、来るべき往生を待って、感謝します」
「それって……」
「そう、M機関の基本理念といっしょ。他力本願やろね」
「他力本願……」
「そう、過ちのまま人間を認める。せやけど、できるだけ過ちを犯したり、失敗せんようには見守る……言葉で言えるのは、そこらへんまで」

 詩織の顔は、ようやく詩織の顔に落ち着いた。

「沙織さんは、あたしの前にドロシーといっしょの寮にいたんだよね?」
 身づくろいをしながら、詩織は尋ねた。
「そう、M機関の精神的な支柱を確かなもんにするために、うちは比叡山に出張。まあ、サイボーグとしての機動力やら戦闘能力では、うちは型落ちやさかいね。教授も適材適所、よう心得てはります」
「身づくろいなんか、デジタルでやったら一瞬なんだけど、こうやっていちいち人らしくやると、なんだか新鮮」
 詩織は、カットソーにコットンパンツ、姿かたちは幸子の姿で塔頭をあとにした。ベラスコは詩織姿の詩織を探していた。幸子の姿はアンインストールしてある。詩織が最高の条件でいられるのは詩織の姿だと理論的には思っているから。デジタルな理論では合理的な考え方である。

 詩織は不合理だった。幸子の姿で、人間らしく新幹線でラボに戻る。そして、できるだけ幸子として戦ってやることが、幸子への思いやりであり、M機関の精神性をまもることだと思ったからだ。

 のぞみの車窓から見える西の空は茜色に染まっていた。詩織は、久しぶりに明日の朝日が楽しみに思えた。
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乃木坂学院高校演劇部物語・82『幽霊さんの生き甲斐』

2019-12-31 06:00:48 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・82   
『幽霊さんの生き甲斐』  


 
「なんだい?」

「……潤香先輩のこと助けたの、乃木坂さんじゃないの!?」
 ただの閃きだったけど、図星のようだった。
 乃木坂さんは、花柄のときと同じ反応をした。
「潤香君は君のようにはいかなかった。破れた血管を暫く固定しておくのが関の山。幽霊の応急治療はMRIでも見えない。あとは自然回復するのを待つだけだったんだけどね。立て続けに二回。二回目に切れたのは何故だかわかるかい?」
「……ソデのとこで平台に頭ぶつけたからじゃ……ないの?」
「まどか君、君なんだよ」
「わ、わたし!?」
「あの日、潤香君は出かけようとして、屈んで靴を履こうとして君のことを思い出したんだ。君は、あの芝居の稽古中、ずっと潤香君の真似をやっていただろう?」
「え、ええ……」
 わたしは、あるシーンを思い出した。キャンプに行く前の日に真由が靴を試すシーンがあるの。で、スタイル抜群で体の柔らかい先輩は、とてもカッコヨクやるわけ。
 わたしは何度やっても、オッサンが水虫の手入れしてるようにしかできなくて、このシーンになると、箱馬に腰掛けて、パクろうとして必死。一度など仰向けにひっくり返って道具のパネルを将棋倒しにして、怒られて、笑われて、大恥だった。
「そう、潤香君は靴を履こうとして、それを思い出したんだよ。ゆかしい潤香君は、たとえ本人が居ないとはいえ、その努力を笑ってはいけないと堪えたんだよ。屈み込んだ姿勢で笑いを堪えたものだから、瞬間的に血圧が高くなり、応急処置だった脳の血管が破れてしまった」
「そんな……わたしが原因だなんて……」
「大丈夫だよ。潤香君は間もなく意識も戻って、もとの元気な潤香君に戻る。そうでなきゃ君に言える訳がないじゃないか」
「ほんと、ほんとに潤香先輩は良くなるの!?」
「幽霊は嘘は言わないよ。なあ、みんな」
 乃木坂さんは、椅子たちに呼びかけた。瞬間椅子たちが答えたような気がした。
「僕は、空襲で死んだあの子が自分の姿をとりもどし、そして無事に往くのを、見届けるだけのつもりだった。あの子が自分の姿をとりもどしたのが去年の十一月の半ば過ぎ」
「それって……」
「そう、潤香君が階段から転げ落ちた前の夜。でも、その時は、それだけで済ますつもりだった」
「それがどうして……」
「だって、そのあと立て続けだったろう。潤香君はまた頭打ってしまうし、意識不明になってしまうし。まさか君が代役やるなんて思いもしなかったし。そして例の火事……」
「あれは……」
「幽霊でも、火事を防ぐ力はないよ。垂れた電線をしばらく持ち上げて発火を遅らせるのが精一杯。だから、みんなが倉庫を出たところで力尽きて手を放した……これで、みんなを助けられたと思ったら、どこかの誰かさんが火が出てからウロウロ入ってくるんだもの」
「あ、あのことも……」
「助けてあげたかったんだけど、空襲で死んだもんだから、火が苦手でね……しかし、大久保君は大した子だよ。あの火の中を飛び込んでくるんだもの。並の愛情じゃできないことだよ」
「それは……感謝してます」
「感謝……だけ?」
 意地悪な幽霊さんだ。
「彼も、まだ未熟だ。大切に育んでいきたまえ。それから貴崎さんは辞めちゃうし、演劇部は解散……すると思ったら、起死回生のジャンケン……ポン。そいで君達三人組が、事も有ろうに、ここで稽古を始めちゃった」
「ごめんなさい、無断で」
「いいんだよ。幽霊が言ったら可笑しいけど、僕の生き甲斐になってきた」
「ハハ、幽霊さんの生き甲斐」
「と、いうことで、宜しく頼むよ!」

 そこで、軽いめまい目眩がして、座り込んでしまった。

「まどか、大丈夫?」
「保健室行こうか?」
 里沙と夏鈴が覗きこんできた……そこは、中庭のベンチ。
「あ……もう大丈夫。わたしずっとここで?」
「ずっとも、なにも、急に立ち上がったと思ったら、バタンとベンチに座り込むんだもん」
「あ、もう授業始まっちゃう!」
「なに言ってんのよ、たった今座り込んだとこじゃないよさ」
「何分ぐらい、こうしてたの?」
「ほんの二三秒だよ」
 そうなんだ……妙に納得するまどかでありました。
「元気だったら、明日のことだけどさ……」

 風の吹き込まない中庭は、冬とは思えない暖かさ……かすかに聞こえてきました。
『埴生の宿』の一番。

 のどかなりや 春の空 花はあるじ 鳥は友……🎶

 その友の小鳥のさえずりのようなお喋りの中、それは切れ切れにフェードアウトしていきました。
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