大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

ライトノベル・魔法少女マヂカ・115『みんなでアルバイト・2』

2019-12-24 14:29:44 | 小説

魔法少女マヂカ・115  

 
『みんなでアルバイト・2』語り手:マヂカ 

 

 

 安倍先生の手紙は先生の友だちからのもので、アルバイトをしてくれる女生徒を紹介してほしいというものだ。

 立場上、教師がバイトの斡旋じみたことをやるのは憚られるので、返事を出しかねているうちに忘れてしまったのだ。

 

「仕方ない……あんたたち、お願いできる!?」

 

 ちょうど、別口の『にっぽりせんい街』のバイトがキャンセルになったノンコたちもあぶれていたので、渡りに船と乗っかて来た。

 それでも要求されている人数に届かないので、千駄木女学院のブリンダにも声をかけた。

 

 総勢七人で秋葉原の駅に降り立った。

 行先はラジオ会館をちょっと行った先にある……「なんて読むの?」 もらった地図を手にノンコが質問。

「つまごめ電気店だな」

 青い目にブロンドのブリンダが黒髪日本少女のノンコに教えてやっている。漢字では『妻籠電気店』と書く。

「ちょっとやらしくない? 『妻』って字に手籠めの『籠』だよ……デヘヘ、なんかNTR系の怪しさしない?」

「なに、NTRって?」

 ノンコの連想に、清美が素朴な質問。

「『寝取られ』の短縮形ってか、イニシャル?」

「ねとられ?」

「『妻籠』ってのは、中山道にあった宿場町で、そこから出てきた苗字よ。余計な想像すんな」

 ポコ

「アイテ! 友里がぶったあ!」

「電気店なら、販売とか倉庫の整理とかだね」

 サムがまっとうな予想をする。

「あ、あそこだ!」

 表通りから、ちょっと入ったところで古くからの電気部品の小規模店が並ぶ中に『妻籠電気店』があった。

 間口二間程度の店舗、いくらアキバとは言え、七人もバイトを使うかなあ……なにかの間違い……ちょっと心配になってきた。

 

「「「「「「「すみませーーーん」」」」」」」

 

 声を揃えて店の奥に声をかける。

 らっしゃいませ~

 電子部品やら電気部品やジャンク品がうず高く積まれた奥から声がして、丸眼鏡のオジサンが、器用に商品の山を迂回して現れた。

「あのう、日暮里高校の安倍先生の紹介で来ましたバイトの者なんですが……」

「ああ、それなら裏……いや、こっちから回ってもらおうか。足許に気を付けて付いて来て……」

「は、はい。行くよ」

 わたしが先頭になって、コードやケーブルやジャンク品が陳列というか散乱している店内を奥に進んでいく。

 バックヤードを過ぎるとドアがあって、オジサンが開けると意外な近さにもう一枚のドア。

 どうやら背中合わせ建物があって、そこへの連絡通路になっているようだ……

 

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となりの宇宙人・8『バカタレ宇宙人め!』

2019-12-24 06:18:45 | 小説4
となりの宇宙人・8
『バカタレ宇宙人め!』           

 
 
 鈴木聖也は、あたし(渡辺愛華)のとなりの家に住んでいる幼馴染(?)の亡命宇宙人。
 秋のある日、駅で暴漢に襲われ、学校では食堂の工事現場の鉄骨に潰されそうになるけど、聖也が時間を止めて救けてくれた。
 犯人は、なんと、これまた幼馴染(?)の吉永紗耶香。紗耶香も宇宙人で、聖也を抹殺するために、あたしを殺そうとした。
 あたしは聖也の命の素になる宇宙エネルギーを、聖也に合うように変換できるから。
 そのために殺されそうになり、救けられもしたんだって……でも、それだけ?


 一時間も早く目が覚めた。

 二度寝してもいいんだけど、お祖母ちゃんみたいに眼が冴えて、そのまま起きてしまった。
「なんで、こんなに早起きなの?」
 朝ごはん食べてると、起き抜けで、スッピンのお母さんに驚かれた。
「へッヘー」
 得意げにブイサイン。不可抗力の早起きだけど、なんだか気持ちいい。
 でも、この気持ちよさは、時計代わりにお母さんが点けたテレビで吹っ飛んだ。
「エ、十月二十二日……」
 かろうじて!?のダブルマークは飲み込んだ。

 あたしの昨日はどこに行ったんだ……。

 マチュピチュ遺跡に行ってグッタリ、聖也がくれた『疲れを6時間先延ばしにしてくれるドリンク』を飲んで夕方になって爆睡……そのまま、丸二日寝てしまったんだ。
「バカタレ宇宙人め!」
 聖也は、帝都国際高校なので、あたしより三十分早く家を出る。早起きしたので、文句を言ってやるのにはちょうどいい。
「ん……早く出すぎたかな?」
 駅まで行っても聖也の姿がなかった。

 早く着いた教室で、今日のテストの数学をにわか勉強。ま、得意科目なので、なんとかなりそう。

 二十分ほどでにわか勉強を終えると、クラスメートがボチボチやってくる。「おはよう」「オッス」を四人分言ったところで驚いた。
 なんと聖也が教室に入ってきた。それも帝都国際じゃなくて、わが仁科高校の制服を着て!
――聖也、ちょっと話――
 口の形だけで言って、屋上に続く階段の踊り場へ。
「いったい、なんなのよ? 日付は二日先になってるし、あんたはそんな格好だし?」
「愛華が二日寝てたのは、予想以上に疲れていたから。一昨日も謝ったけど、ほんとゴメン。で、この格好は、昨日から仁科高校の愛華のクラスに代わったから」
「どうして仁科に?」
「愛華を護るためって言ったら、気障かな」
「自分のエネルギー変換器を護るためでしょ」
「そういう言い方は夢がないな」
「夢はマチュピチュでたくさん。宇宙人としての都合もあるんだろうけど、あたしの日常をかき回すのはよしてね」
「大丈夫、今日からは全てが正常だよ。さ、鐘が鳴る、教室にもどろう」
「あたしが先、あんたは遅れて入って。教室では無関係で通してよね」
 時間差で教室に戻ったので、クラスのみんなに気取られることは無かった、無かったんだけど……。
 なんと配られたテストは、昨日の現代社会だった!?

「愛華、昨日のテスト受けてなかっただろう。欠試になるの気の毒だから、テストの時間だけ昨日にもどした」
「そういうことは言っといてよね!」
「言わなかったっけ?」
「聞いてない!」
「でも、テストはできただろう?」
「ん、ま、それは……もう帰る。付いてこないでよね」

 なにか言いたげな聖也をシカトして学校を出た。

 校門を出て違和感。昼前のはずなのにお日様が低い。振り返って校門脇の時計を見ると八時半?
「おはよう、愛華」
 なんと、聖也が駅の方から歩いてきた。
「え、聖也、あんた学校に……」
「あ、それ、昨日のオレだ」
「え……」
「今から十月二十二日が始まる。これで、テストは休まずにすむだろ」
「そんな、いま試験終わったばかりだよ」
「喜んでもらえると思ったんだけどな……じゃ、今日は無かったことにしようか?」
「あ、それも困る!」
「愛華はむつかしいなあ。ま、とにかくテストは受けようか」

 かくして、あたしは一日で二日分のテストを受けることになった。
 宇宙人がとなりに住んでいるというのは、なんともややこしい。

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Regenerate(再生)・20≪最初の決戦≫

2019-12-24 06:10:13 | 小説・2
Regenerate(再生)・20
≪最初の決戦≫
       


 スカイツリーの頂上に仕掛けたセンサーが三つのパルスを捉えた。

「三機も幸子アンドロイドがいるず……」
 三つのドットの一つが赤く光っている。行動開始のスタンバイに入った証拠だ。
 ドロシーはモニターの感度を上げた。オレンジ色のドットが108見えてきた。
「これが敵のアタッカーね……」
「モニタリングすべ」
 幸子アンドロイドを含め、109体のアンドロイドのプロフが一瞬に現れた。老若男女さまざまで、中には5歳ほどの外見をしたアンドロイドもいた。
「どうやら新宿で混乱を起こすつもりのようだな……」
 教授が呟いた。
「見かけに騙されっでねえぞ。あだしがアナライズしで情報送っで、敵のパルスだけ頼りにやっつけんだぞ」
「分かった……」
 詩織は、アズキアイスの最後を一齧りにして、バーまで噛み砕いた。

 ベラスコとの決戦が始まった。

 ドロシーは、新宿センタービルの屋上に陣取り、新宿駅の西側にバラツイテいるベラスコのアンドロイドのパルスを受信して詩織に送った。
 詩織は大胆にも、幸子の姿で幸子アンドロイドの横に立って歩いた。姿かたちだけでなくパルスまで幸子アンドロイドといっしょにしてある。

 ベラスコのアンドロイドたちに混乱が生じた。急にリーダーが二人になったのだから無理もない。

 詩織は、動きを幸子アンドロイドに同調させた。同じように驚き、同じように回避行動をとった。二人の距離は手を伸ばせば届く距離で、同じ動きなのでベラスコのアンドロイド達の混乱は増すばかりだ。二人の幸子の情報を解析するが、彼らには、その違いが分からない。だが表面は普通の通行人であった。スマホをいじったり笑っていたり、ぐずる子供と母親であったり、マックでオーダーを考えていたりする。二人の違いが分かるのは、優れたアナライザーであるドロシーだけだ。

――チャンスだ、みんな混乱して解析で手一杯だ。パルス攻撃だす!――

 詩織は、溜めこんだエネルギーをすべてパルス攻撃波に変換。半径500メートルのアンドロイドに浴びせた……これで全てのアンドロイドが倒せるはずだった。

 しかし、この攻撃で倒せたのは、わずか十数体に過ぎなかった。
――どうなってんの、ほとんど効かないわよ!――
――ち、ディフェンサーを張ってるず。このドロシーに分からないようにやるなんて敵ながらあっぱれ!――
 パルス攻撃をしかけたために、敵は詩織を認識した。100体に近いアンドロイドが一斉に攻撃を加ええてきた。武器はパルスソード、目には見えない。空を切る時にわずかに空間が歪むのでそれと分かる。並の人間には空手の真似事ほどにしか見えない。女子高生が、オヤジが、ぐずっていた子供が、母親が、アベックが、諸々の姿をしたアンドロイド達が詩織を目がけてかかってくる。
 詩織は幸子に擬態しているので戦闘力はマックスである。寄ってくるアンドロイドを次々に倒した。しかし数が多い。そして巻き添えになった通行人がパルスソードで次々に首を跳ばされ、腕を切られ、体を両断されていく。この犠牲は、なんとしても避けなくてはならない。
――ドロシー、あんたも降りてきて手伝いなさいよ!――
――だめだじゃ、あだしが降りたらアナライズでぎなぐなってしまうすけ!――

 新宿の西側は地獄絵図のようになった。アンドロイドは外郭は生体組織なので、切れば人間と同じように血しぶきや肉片が飛ぶ。巻き添えになる人間も多く、パニックは筆舌に尽くせない。
 詩織は、オッサンのナリをしたアンドロイドの外郭組織とパルスを、自分と同じ幸子のそれにした。そのアンドロイドは、他のアンドロイドたちによって、ミンチのようにされた。

 アンドロイドたちに平静が戻ってきた。しかし、破壊されたのが偽と分かるのはすぐだ。詩織はアンドロイドに擬態して、幸子アンドロイドのすぐ横に寄った。そして0・2秒幸子の姿に戻ると、幸子アンドロイドの首をねじ切り、PCの入った首を破砕した。

「とりあえず、一体は始末しました」
 教授に報告すると、教授は渋い顔でうなづいた。厳しい決戦の、ほんの序盤戦だった……。
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乃木坂学院高校演劇部物語・75『同窓会館』

2019-12-24 05:59:51 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・75   
『同窓会館』  


 
 その日のうちに同窓会館に行くことにした。

 里沙がチカラコブを作った。
 なんせ、ほとんど開かずの間。掃除や整理の見積もりをしておきたいという里沙らしい想いからだ。

 下校時間を過ぎそうなので、そのまま帰れるように部室にカバンを取りにいった。
「……自衛隊の体験入隊って、なんなのよ?」
 里沙が、ドアを開けながら背中で聞いた。
「あ、あれは……夏鈴がさ、エヘヘと笑って頭掻いちゃったりなんかするからさ……」
「あんなに誉められたら、ああするしかないでしょ」
 夏鈴がフクレた。
「そうよ、それにマリ先生のことだって、まどか驚かなかったじゃないよ」
「それはね……」

 ……ありのまま全部話した。

 祝福と非難が二人分返ってきた。それも全身クスグリの刑で……すんでの所で笑い死ぬところだった(汗)。

 部室の電気を消してドアを閉めようとした。
――あの部屋は止したほうがいいぜ。
 マッカーサーの机が、そう言った……ような気がした。
「え……」
「どうかした?」
「早くしないと、暗くなっちゃうわよ」
 里沙がせっついて、今、わたしたちは「室話談」とドアに書かれた部屋の前にいる。ちなみに、部屋の看板は戦前に書かれたものなので右から読む。

 ギー……と、歳月を感じさせる音がしてドアが開いた。

 カビくさい臭いがした。
 入って右側にスイッチがあると技能員のおじさんに聞いていたので、ペンライトで探してみた。
 年代物のスイッチは直ぐに見つかった。
 スイッチを捻った(文字通りヒネルんだ)電気は……点かなかった。何度かガチャガチャやってみた。
 廊下の明かりだけでは部屋の奥までは見通せない。
 その見通せない奥から、だれかが、じっと見つめているような気がする。
 これが理事長先生が言ってた、不思議だろうか……?
 三人で身を寄せあった。
 ――しかたないなあ。
 そんな感じで、二三度点滅して、明かりが点いた。
 しかし、点いたのは半分足らずで、部屋はセピア色に沈んで薄暗い。
 部屋の調度はピアノの場所だけが一覧表の通りで、他の椅子などはまったく違った置き方になっていた。
 さすがの技能員のおじさんも、この部屋ばかりは敬遠していた様子。
 椅子にかかった布を取りのけると、薄暗さの中でも分かるくらいのホコリがたつ。
「まずは、切れてる電球替えてもらって、大掃除……三日はかかりそうね」
 里沙が、だいたいの見通しをたてた。
「じゃ、もう帰ろうよ。なんだかゾクゾクしてきちゃったよ」
 夏鈴の声が震えている。
「風邪なんかひかないでよね。体調管理も役者の仕事だぞ」
 里沙が舞監らしく注意する。
「電球は生きてるのも含めて全部替えたほうがいいみたい。白熱電球なんか直ぐに切れちゃうよ」
「そうだね、全部で三十二個……やってくれるかなあ……ま、そんときゃ、そんとき」
「だよね」
「暖房は……スチーム。二十世紀通り越して、十九世紀だね。ヒーター四つは要るね」
 と、確認して帰ることにした。
 スイッチを切ろうとして、シャンデリアが二つあることに気がついた。
 どうしてかというと、その時になって、初めてシャンデリアの明かりが点いたから。
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