魔法少女マヂカ・115
安倍先生の手紙は先生の友だちからのもので、アルバイトをしてくれる女生徒を紹介してほしいというものだ。
立場上、教師がバイトの斡旋じみたことをやるのは憚られるので、返事を出しかねているうちに忘れてしまったのだ。
「仕方ない……あんたたち、お願いできる!?」
ちょうど、別口の『にっぽりせんい街』のバイトがキャンセルになったノンコたちもあぶれていたので、渡りに船と乗っかて来た。
それでも要求されている人数に届かないので、千駄木女学院のブリンダにも声をかけた。
総勢七人で秋葉原の駅に降り立った。
行先はラジオ会館をちょっと行った先にある……「なんて読むの?」 もらった地図を手にノンコが質問。
「つまごめ電気店だな」
青い目にブロンドのブリンダが黒髪日本少女のノンコに教えてやっている。漢字では『妻籠電気店』と書く。
「ちょっとやらしくない? 『妻』って字に手籠めの『籠』だよ……デヘヘ、なんかNTR系の怪しさしない?」
「なに、NTRって?」
ノンコの連想に、清美が素朴な質問。
「『寝取られ』の短縮形ってか、イニシャル?」
「ねとられ?」
「『妻籠』ってのは、中山道にあった宿場町で、そこから出てきた苗字よ。余計な想像すんな」
ポコ
「アイテ! 友里がぶったあ!」
「電気店なら、販売とか倉庫の整理とかだね」
サムがまっとうな予想をする。
「あ、あそこだ!」
表通りから、ちょっと入ったところで古くからの電気部品の小規模店が並ぶ中に『妻籠電気店』があった。
間口二間程度の店舗、いくらアキバとは言え、七人もバイトを使うかなあ……なにかの間違い……ちょっと心配になってきた。
「「「「「「「すみませーーーん」」」」」」」
声を揃えて店の奥に声をかける。
らっしゃいませ~
電子部品やら電気部品やジャンク品がうず高く積まれた奥から声がして、丸眼鏡のオジサンが、器用に商品の山を迂回して現れた。
「あのう、日暮里高校の安倍先生の紹介で来ましたバイトの者なんですが……」
「ああ、それなら裏……いや、こっちから回ってもらおうか。足許に気を付けて付いて来て……」
「は、はい。行くよ」
わたしが先頭になって、コードやケーブルやジャンク品が陳列というか散乱している店内を奥に進んでいく。
バックヤードを過ぎるとドアがあって、オジサンが開けると意外な近さにもう一枚のドア。
どうやら背中合わせ建物があって、そこへの連絡通路になっているようだ……