鈴木聖也は、あたし(渡辺愛華)のとなりの家に住んでいる幼馴染(?)の亡命宇宙人。
秋のある日、駅で暴漢に襲われ、学校では食堂の工事現場の鉄骨に潰されそうになるけど、聖也が時間を止めて救けてくれた。
犯人は、なんと、これまた幼馴染(?)の吉永紗耶香。紗耶香も宇宙人で、聖也を抹殺するために、あたしを殺そうとした。
あたしは聖也の命の素になる宇宙エネルギーを、聖也に合うように変換できるから。
そのために殺されそうになり、救けられもしたんだって……でも、それだけ?
おはよう! と、思わず返事をしてしまった。
それほど玄関から出てきた聖也は、明るくて元気だった。
「今日は、何の日か知ってる?」
せめて、昨日の文句を言ってやろうと息を吸ったら、先を越された。
「え……今日から中間テスト」
「もっと夢のあることでさ」
「えと……」
「海外旅行の日さ」
「初めて聞いた、なんで?」
「10月19日で、トウくにイク日」
「なんだ、ダジャレ?」
「でも、ほんとうにそうなんだぜ。行きたいなあ、海外旅行」
「宇宙人なんだから、ヒョイヒョイと行けちゃえばいいじゃん」
「そうはいかないよ。愛華がいっしょじゃなきゃ」
「え……ああ、あたしが傍にいなきゃ、エネルギーの補給もできないんだ」
「そういう身も蓋もないことを言う」
聖也は、つまらなさそうに道端の小石を蹴った。
小石は、数メートル先の信号機のポールに当たり、カーンといい音がし、それがスイッチだったように青に変わった。
一時間目のテストは、ヤマが当たって楽勝だった。
黒板の上の時計を見ると、まだ二十分しかたっていない。秒針を見ているうちに目蓋が重くなった。
目の下百メートルほど先に、不規則な段々畑みたいな遺跡が広がっている。
目を向けると、遺跡の周囲は深い谷……というよりは、遺跡が高い山の上にあって、まるで空中都市。
「おーい、こっち!」
その空中都市で、聖也が呼んでいる。
「うん、すぐに行く……」
あたしは、壮大な景色と澄んだ空気に魅せられて、返事の割には動けなかった。
「……ここ、なんていうとこ!?」
「マチュピチュ遺跡! ペルーにあるインカ帝国の遺跡さ!」
「そうなんだ……すてき……」
犯人は、なんと、これまた幼馴染(?)の吉永紗耶香。紗耶香も宇宙人で、聖也を抹殺するために、あたしを殺そうとした。
あたしは聖也の命の素になる宇宙エネルギーを、聖也に合うように変換できるから。
そのために殺されそうになり、救けられもしたんだって……でも、それだけ?
おはよう! と、思わず返事をしてしまった。
それほど玄関から出てきた聖也は、明るくて元気だった。
「今日は、何の日か知ってる?」
せめて、昨日の文句を言ってやろうと息を吸ったら、先を越された。
「え……今日から中間テスト」
「もっと夢のあることでさ」
「えと……」
「海外旅行の日さ」
「初めて聞いた、なんで?」
「10月19日で、トウくにイク日」
「なんだ、ダジャレ?」
「でも、ほんとうにそうなんだぜ。行きたいなあ、海外旅行」
「宇宙人なんだから、ヒョイヒョイと行けちゃえばいいじゃん」
「そうはいかないよ。愛華がいっしょじゃなきゃ」
「え……ああ、あたしが傍にいなきゃ、エネルギーの補給もできないんだ」
「そういう身も蓋もないことを言う」
聖也は、つまらなさそうに道端の小石を蹴った。
小石は、数メートル先の信号機のポールに当たり、カーンといい音がし、それがスイッチだったように青に変わった。
一時間目のテストは、ヤマが当たって楽勝だった。
黒板の上の時計を見ると、まだ二十分しかたっていない。秒針を見ているうちに目蓋が重くなった。
目の下百メートルほど先に、不規則な段々畑みたいな遺跡が広がっている。
目を向けると、遺跡の周囲は深い谷……というよりは、遺跡が高い山の上にあって、まるで空中都市。
「おーい、こっち!」
その空中都市で、聖也が呼んでいる。
「うん、すぐに行く……」
あたしは、壮大な景色と澄んだ空気に魅せられて、返事の割には動けなかった。
「……ここ、なんていうとこ!?」
「マチュピチュ遺跡! ペルーにあるインカ帝国の遺跡さ!」
「そうなんだ……すてき……」
見上げた空には、コンドルがゆっくりと輪を描いていた。コンドルが三回輪を描くのを見てから遺跡に下って行った。
「気に入ったみたいだね」
「うん、教科書の写真で見ただけだったけど、実際に来てみると、百倍もいいとこだね」
「それはよかった。こっち来てくれる」
「うん」
石組だけになった遺跡の路地をクネクネ曲がっていくと、小学校の校庭ほどの広場に出た。
「あの小高いとこに神殿の跡がる……こっち」
急な石段を上がると、てっぺんは教室くらいの平場になっていて、中央に石のベッドのようなものがある。ベッドの真ん中にはまな板を縦にしたような石が立っている。
「これって?」
「インティワタナ(太陽をつなぐもの)、ちょっとそこに立ってくれる」
「……こう?」
「うん……あ、もうチャイムが鳴る……」
「え、なんて言った?」
「渡辺、テスト終わったぞ、答案をよこせ」
「あ……はい」
答案を先生に渡して振り返ると、みんなに笑われた。
「愛華、ホッペに手の跡!」
「うん、教科書の写真で見ただけだったけど、実際に来てみると、百倍もいいとこだね」
「それはよかった。こっち来てくれる」
「うん」
石組だけになった遺跡の路地をクネクネ曲がっていくと、小学校の校庭ほどの広場に出た。
「あの小高いとこに神殿の跡がる……こっち」
急な石段を上がると、てっぺんは教室くらいの平場になっていて、中央に石のベッドのようなものがある。ベッドの真ん中にはまな板を縦にしたような石が立っている。
「これって?」
「インティワタナ(太陽をつなぐもの)、ちょっとそこに立ってくれる」
「……こう?」
「うん……あ、もうチャイムが鳴る……」
「え、なんて言った?」
「渡辺、テスト終わったぞ、答案をよこせ」
「あ……はい」
答案を先生に渡して振り返ると、みんなに笑われた。
「愛華、ホッペに手の跡!」
ヨッコが注意してくれた。どうやら組んだ手の上にホッペを載せて寝ていたようだ……。