ジャジャジャーン!
て、感じで、はるかちゃんのドアップが、モニターに大写しになった!
「ウフフ……」
「アハハ……」
て、感じで、なかなか言葉 にならない。
今日は、パソコンを使ったビデオチャットの開局式!
ビデオチャットは、クリスマスイブの夜に、はるかちゃんと約束した。
だけど、これって、カメラ買ってきて付けたらすぐにできるというものではなかった。
わたしには、訳分かんないダウンロードとかいろいろあって、結局昨日でバイトが終わった兄貴に二時間あまりかけてやってもらった。
で、ウフフとアハハになったわけ。
「あー、あー、こちらJO MADOKA聞こえますかどうぞ」
「こちら、JO HARUKA感度良好です。どうぞ」
「なんだか、そっち賑やかそうじゃないのよ」
はるかちゃんの周りに人の気配……まわりのロケーションも、なんだか違う。
「こっちはね……」
ガサガサと音がして、カメラがロングになった。
なんだか、こぢんまりしたレストランみたい。右側のカウンター席で手を振っているのは、はるかちゃんのお母さんだ。
で、カウンターの中には、チョンマゲにオヒゲの怪しきオッサンがシェフのナリしてニヤついている。
「こっちがね、お母さん!」
「おひさぁ。元気してるまどかちゃん!?」
「はあい、絶好調でーす!」
「ばか、そんなデカイ声出さなくても聞こえてるって」
兄貴が割り込んできた。
「あ、健一君?」
「あ、どうもご無沙汰してます。今ボリュ-ム落としますんで」
「いいわよ、このままで。賑やかなほうがいいわよ」
「そっすか、じゃあ、このまんまで……」
「ちょっと見ないうちにイケメンに磨きがかかったわね」
「どもっす」
兄貴は、ボリュ-ムの出力をこっそり落とした。確かに、はるかちゃんのお母さんの声はデカイ。
「で、奥のオジサンが、このお店のオーナーシェフの滝川さん」
チョンマゲが少しズームアップした。
「タキさんて呼んでくれてええからな。まどかちゃん……ちょっと横顔見せてくれる?」
「え、あ、はい……」
わたしってば、素直に横を向いた。横顔にはあんまし自信が無い。
「……ううん……ライザミネリよりも、ジュディーガーランドやな」
――やっぱ、そうでしょ――はるかちゃんの声がした。
「だれですか、そのジュディーなんとかってのは?」
「ちょっともめてたの。まどかちゃんの写メ見せたら、タキさんがジュディーガーランドに似てるって。ああ、昔のアメリカの女優さん『オズの魔法使い』なんかに出てるって」
映画……滝川……一瞬で、この二つの言葉が一つになった。
「滝川さんて、門土社のネットマガジンで『押しつけ映画評』……やってません?」
「よう知ってんなあ、マイナーなマガジンやのに」
わたしは、はるかちゃんに――映画を観なさいよ――と、言われてから、ネットでいろいろ検索してて、この滝川さんの『押しつけ映画評』に出くわした。いまロードショーに掛かって大評判のアメリカ映画を、『冷めたハンバーガーをチンして、ベッピンさんのオケツでペッタンコにしたような』と小気味よくこき下ろしていたので、印象に残っていた。ちなみにネットで予告編を観ると、いや、予告編を観ただけでその通りだった。
て、感じで、はるかちゃんのドアップが、モニターに大写しになった!
「ウフフ……」
「アハハ……」
て、感じで、なかなか言葉 にならない。
今日は、パソコンを使ったビデオチャットの開局式!
ビデオチャットは、クリスマスイブの夜に、はるかちゃんと約束した。
だけど、これって、カメラ買ってきて付けたらすぐにできるというものではなかった。
わたしには、訳分かんないダウンロードとかいろいろあって、結局昨日でバイトが終わった兄貴に二時間あまりかけてやってもらった。
で、ウフフとアハハになったわけ。
「あー、あー、こちらJO MADOKA聞こえますかどうぞ」
「こちら、JO HARUKA感度良好です。どうぞ」
「なんだか、そっち賑やかそうじゃないのよ」
はるかちゃんの周りに人の気配……まわりのロケーションも、なんだか違う。
「こっちはね……」
ガサガサと音がして、カメラがロングになった。
なんだか、こぢんまりしたレストランみたい。右側のカウンター席で手を振っているのは、はるかちゃんのお母さんだ。
で、カウンターの中には、チョンマゲにオヒゲの怪しきオッサンがシェフのナリしてニヤついている。
「こっちがね、お母さん!」
「おひさぁ。元気してるまどかちゃん!?」
「はあい、絶好調でーす!」
「ばか、そんなデカイ声出さなくても聞こえてるって」
兄貴が割り込んできた。
「あ、健一君?」
「あ、どうもご無沙汰してます。今ボリュ-ム落としますんで」
「いいわよ、このままで。賑やかなほうがいいわよ」
「そっすか、じゃあ、このまんまで……」
「ちょっと見ないうちにイケメンに磨きがかかったわね」
「どもっす」
兄貴は、ボリュ-ムの出力をこっそり落とした。確かに、はるかちゃんのお母さんの声はデカイ。
「で、奥のオジサンが、このお店のオーナーシェフの滝川さん」
チョンマゲが少しズームアップした。
「タキさんて呼んでくれてええからな。まどかちゃん……ちょっと横顔見せてくれる?」
「え、あ、はい……」
わたしってば、素直に横を向いた。横顔にはあんまし自信が無い。
「……ううん……ライザミネリよりも、ジュディーガーランドやな」
――やっぱ、そうでしょ――はるかちゃんの声がした。
「だれですか、そのジュディーなんとかってのは?」
「ちょっともめてたの。まどかちゃんの写メ見せたら、タキさんがジュディーガーランドに似てるって。ああ、昔のアメリカの女優さん『オズの魔法使い』なんかに出てるって」
映画……滝川……一瞬で、この二つの言葉が一つになった。
「滝川さんて、門土社のネットマガジンで『押しつけ映画評』……やってません?」
「よう知ってんなあ、マイナーなマガジンやのに」
わたしは、はるかちゃんに――映画を観なさいよ――と、言われてから、ネットでいろいろ検索してて、この滝川さんの『押しつけ映画評』に出くわした。いまロードショーに掛かって大評判のアメリカ映画を、『冷めたハンバーガーをチンして、ベッピンさんのオケツでペッタンコにしたような』と小気味よくこき下ろしていたので、印象に残っていた。ちなみにネットで予告編を観ると、いや、予告編を観ただけでその通りだった。
「本業はレストランなんですか?」
「そや、映画評論なんか、ハイリスクローリターンやさかいなあ。いちおうパスタ屋やけど、和洋中なんでもありや」
「あ、あの、すみません。ぼく、まどかの兄で健一と言います!」
兄貴が割り込んできた。
「あの、あのですね。お見かけしたところ、かなりのベテランのように……」
お見うけして、兄貴は、恋人同士がヨリを戻すには、どのような店で、どんなシュチュェーションがいいか真剣に聞き出した。もっとも――友だちが悩んでるんで――と見栄を張っていたけど、タキさんどころか、はるかちゃんにも、お母さんにもお見通しのようだった。
延々十五分、兄貴に占領されて、順番が回ってきた。
はるかちゃんのパソコンには携帯型のルーターってのが付いていて、どこにでも持ち運んで使えるらしい。
「そや、映画評論なんか、ハイリスクローリターンやさかいなあ。いちおうパスタ屋やけど、和洋中なんでもありや」
「あ、あの、すみません。ぼく、まどかの兄で健一と言います!」
兄貴が割り込んできた。
「あの、あのですね。お見かけしたところ、かなりのベテランのように……」
お見うけして、兄貴は、恋人同士がヨリを戻すには、どのような店で、どんなシュチュェーションがいいか真剣に聞き出した。もっとも――友だちが悩んでるんで――と見栄を張っていたけど、タキさんどころか、はるかちゃんにも、お母さんにもお見通しのようだった。
延々十五分、兄貴に占領されて、順番が回ってきた。
はるかちゃんのパソコンには携帯型のルーターってのが付いていて、どこにでも持ち運んで使えるらしい。