大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

となりの宇宙人・9『宇宙人と同じ本を借りた』

2019-12-25 06:22:51 | 小説4
となりの宇宙人・8
『宇宙人と同じ本を借りた』     

 
 
 鈴木聖也は、あたし(渡辺愛華)のとなりの家に住んでいる幼馴染(?)の亡命宇宙人。
 秋のある日、駅で暴漢に襲われ、学校では食堂の工事現場の鉄骨に潰されそうになるけど、聖也が時間を止めて救けてくれた。
 犯人は、なんと、これまた幼馴染(?)の吉永紗耶香。紗耶香も宇宙人で、聖也を抹殺するために、あたしを殺そうとした。
 あたしは聖也の命の素になる宇宙エネルギーを、聖也に合うように変換できるから。
 そのために殺されそうになり、救けられもしたんだって……でも、それだけ?


「なによ、制服なんか着て?」
 
 朝一のお母さんの言葉はボケていた。

「なにって、学校よ」
 ボケたお母さんには付き合っていられないので、そのまま玄関へ。
「今日は土曜日だよ」
「え……?」
 ローファーを右足だけ履いてフリーズしてしまった。
「やだ愛華、まだ金曜かとか思ってたの?」
「そか、土曜日だったんだ……」
「やあね、ボケるには七十年ほど早いわよ」
「ああ、損した!」

 土曜と分かれば、制服なんてウザったいものは着ていられない。さっさと部屋着に着替える。

「しかし、またなんでボケちゃったのよ、こんなの初めてじゃない……朝ごはん食べなおす?」
「うん、休日バージョンで」
 ウィークデイはトーストにチーズ乗っけたのに季節のジュースだけ、お母さんはコーンスープとベーコンエッグとサラダを作ってくれた。
「家族三人で朝ごはんなんて、久しぶりだな……」
 お父さんは、そう言うと、ベランダ越しの空を見上げた。
「UFOでも飛んでる?」
「いや、雨が降るんじゃないかと思って」
 親二人がかりで娘をおちょくる。
 あたしが今日を金曜と間違えたのは、聖也が日にちをずらしたからだ。どうも、となりに宇宙人が住んでいるというのは迷惑だ。

 朝ごはんを食べなおすと少し余裕が出てきた。夏休みの初日みたいにウキウキしてきた。

 そうだ、夏休みにできなかったアレをしに行こう!
 で、あたしは十時になるのを待って図書館に出かけた。
「うーん、新刊本が入れ替わってるなあ……」
 夏休みは、これで挫折した。
 いっぱい本を読もうと図書館に来て、新刊本をあれこれつまみ読みしているうちにくたびれ「また明日にしよう」を数回くりかえして挫折した。

「ハハ、土壇場で選びきれないんだ」

 気づくと、すぐ横で宇宙人がニヤニヤしている。
「ん、いつからそこに?」
「たった今、入ってすぐ愛華が目についた」
「フフ、かわいいから?」
「新刊コーナーを猿みたいにグルグル回ってるのが可愛いと言えるなら」
「なによ!?」
「迷ってるんなら、ルールを決めればいい」
「ルール?」
「うん、例えば、もう一周コーナーを回って、最初に目についた本にするとか」
「なんか占いみたい。ま、他のコーナーも見て回るわ」
「よけい決められなくなるよ」
「大きなお世話」

 あたしは文芸書の書架に行った……シャクだけど聖也が言った通り、迷いが大きくなっただけで、諦めの気持ちになる。

 シャクだなあ……諦めるのヤだから、けっきょく聖也が言ったルールになる。
 でも聖也が言ったマンマは嫌なんで、新刊コーナーを二周することにする。大した違いはないんだけど。
「……これだ!」
 二周回って目についたのは『星の王子さま』。なんとも古い本を手にしたものだけど、『星の王子さま』は著作権が切れてから、たくさんの新訳が出ている、きっと最新訳だろうと、真新しい本を手に持ってカウンターへ。

「奇遇だな、オレも『星の王子さま』。オレのは、四十年前のだけどな。ずっと探してて、やっと予約ができたんだ……」
 そうやって、聖也が差し出した『星の王子さま』は、あたしが借りた新刊本とソックリだった。
「ん……いっしょだね?」
「……愛華のは復刻版だ」
 聖也は、復刻最新刊が出ているとは知らず、四十年前のヨレヨレを、わざわざ予約して借りたんだ。ちょっといい気味。

 でも帰り道に思った。なんで聖也と同じ本を読まなきゃならないんだ……!?
 
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Regenerate(再生)・21≪神経戦・1≫

2019-12-25 06:14:03 | 小説・2
Regenerate(再生)・21
≪神経戦・1≫
        


「あんたたち、お盆だってのに国に帰らないの?」

 廊下を掃除しながら、もう80に手が届こうかという寮母の素子さんが言った。
 詩織とドロシーは教授のラボにいくために部屋に鍵をかけているところだった。
「いやー、貧乏学生だで、バイトに勢ださねばなんねのす」 
 ドロシーが頭を掻きながら応える。
「詩織ちゃんも?」
「あたしは、こないだ来たばかりだから。それに家族とはスカイプでいつも連絡とりあってるし」
「スカイプ?」
「あ、パソコンのテレビ電話みたいなの」
「テレビ電話じゃ高くつくでしょ?」
「あ、スカイプってタダだから」
「え、テレビ電話してタダ!?」

「詩織、親切だすな」
「かな……?」
 地下鉄のカーブの揺れをうまくいなしながら、二人の会話は続いた。
「素子さんに、スカイプがなじょしてタダでできんのか説明しでも分がんないべ」
「いいの、親切にコミニケーションすることで、人間関係の円滑化がはかれるんだから。それにうちの家族紹介したら盛り上がったじゃん」
 詩織は、あれからスカイプでカンザスの家族と素子さんを引き合わせて、盛り上がった。妹の詩歩は素子さんのきっぷのいい東京弁を喜んで聞いていた。東京弁は標準語とは違う、文字で現せないところに小気味よく水が流れるような気持ちよさがある。
「そんたなもんかな……」
「サイボーグでも分かるでしょ、元は人間だったんだから」
「ん……微妙に傷つくすな、今の言い回し」

 新宿の事件以来、ベラスコは鳴りを潜めている。なんといっても幸子サイボーグ以下100体近くが破壊された。そのあとはさながらテロの痕のようであったが、警察は不審に思った。死体の半分近くが一見死体のようでありながら、はみ出した骨格や内臓は人間……いや、生き物のそれでさえなく、機械としか言いようのないものだったからだ。しかも、その死体もどきは、二日の間に全て警察の保管施設から消えてしまっていた。

 ベラスコたちは、詩織たちが気が付かないくらい、わずかずつ行動しはじめていた。それが分かるのは、もう数日が必要だった。

 夏の盛りは、もう間もなくである……。
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乃木坂学院高校演劇部物語・76『男子生徒の姿』

2019-12-25 06:06:42 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・76   




『男子生徒の姿』


「「「うわー」」」

 三人そろって歓声をあげた。
 一瞬、談話室が『英国王のスピーチ』の時代のようになった。
 秩序と気品と知性、品格、そしてちょっとしたウィットに満ちた空間に。
 でも、そのシャンデリアは数回点滅して切れてしまった。
「やっぱ、ボロ」
 夏鈴がニベもなく言った。
 最後に点滅したとき……それが見えた。

 一瞬、ピアノに半身を預けるようにして立っている男子生徒の姿が。
「あ……」
「どうかした?」
「え、ああ……ううん」
「へんなの。まどか、閉めるよ」
 夏鈴が、クシャミ一つして、里沙が電気を落としドアを閉じた。

 すると、微かに聞こえた……タイトルは思い出せない。だけど、優しく、懐かしいメロディーが。
 あの子が、あの男子生徒が唄っている……切れ切れに聞こえる歌。歌詞は文語調でよく分からない。里沙と夏鈴には言わなかった。
 言っても信じてもらえないだろう……二人に聞こえている様子がないもの。
 
 それに、あの男子生徒の制服は今のじゃない。
……玄関のロビーに色あせて飾ってある旧制中学時代のそれだったから。

 わたしは、頭の中で、そのメロディーを忘れないように反芻(はんすう)した。
「まどか、どこ行くのよ!?」
「え……」
 わたしは、正門から同窓会館に戻ろうとしている自分に……初めて気がついた。
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