大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・100『持久走はいやだ!』

2019-12-04 11:39:58 | ノベル

せやさかい・100

『持久走はいやだ!』 

 

 

 『小悪魔マユの魔法日記』は、投稿サイトに載ってるだけ。

 文庫とかの紙本にもなってないし、ぜんぜんメジャーやない。わたしが個人的に好きで、部活の雑談で、ちょこっと触れただけ。それで留美ちゃんの記憶に留まってて、登場人物の浅野拓美が助けてくれた。

 不思議な話やけど、無事に音楽のテストも終わったんで、結果オーライ。

 

 今日は頼子さんの機嫌が悪い。

 

 キャットフードの食べ方が悪いと言ってはダミアを叱り、紅茶の香りが立っていないと呟いてはため息をつき、暑すぎるからとセーターを脱いでは髪の毛を逆立てる。

「髪の毛は静電気のせいだから!」

「「あ、そうですか」」

 たいていは機嫌のええ人なんで、わたしも留美ちゃんも戸惑う。

「……お婆様のことですか?」

「それは、まだ十日あるからいいの」

「じゃあ?」

「持久走よ!」

「「あ、ああ」」

 気持ちは分かる。グラウンドの200メートルトラックをひたすら走り続けるんやけど、朝礼台の上から先生が睨んでるんでサボりようがない。ないんやけど、走ってれば怒られへんし、特にタイムにうるさいわけでもない。ま、最初は寒いけど、直に暖まってくるし、個人のミスが得点につながるような球技よりは気楽やと思う。

「知ってる? 昔は学校の外走ってたんだよ」

「え、外走ってたんですか?」

「うん、学校の近所だけだけどね。一周か、せいぜい二周だよ。なんの代わり映えもしないグラウンドを十何周なんてさ、モルモットが輪っかの中をグルグル走ってるようなもんじゃない、つまんないよ」

「はあ、せやけど、頼子さん三年生やから、一二年の時も走ってはったんとちゃいますのん?」

「うん、だから頼んだのよ、三年になったら外を走らせてくださいって」

「「は、はあ……」」

 外の方がおもしろいのは分からんでもないねんけど、そないにプンスカせなあかんほどのことやねんやろか……と思うと生返事になってしまう。

「ハハ、分かんないよね……わたし、約束したんだよ」

 そう言って、頼子さんはコタツの上に二通の手紙を出した……。

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乃木坂学院高校演劇部物語・55『マクベスの首・2』

2019-12-04 06:30:54 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・55   
『マクベスの首・2』  


 
 
『ハムレット』もすごかった。

 どこがって……やたらに人が死んじゃうんだもんね。ただホレーショっておじさんが都合良く生き延びちゃうのには、若干の抵抗。
 あれだけの波瀾万丈のドラマの中で、親友のハムレットがメチャクチャやって、一族死に絶えちゃって、なんだか自分一人だけ語り部みたく生き延びて……残りの人生虚しくないの? って、わたしがひねくれてんのかなあ。

『ロミオとジュリエット』は、なんだか我が身と引き比べちゃったりして、興味津々。
 ストーリーや登場人物は、よく分かんないけど、発見が二つあった。
 忘れもしない、第二幕第一場「キャピュレット家の庭」チョ-有名な愛の語らいの場!
 なにがすごいって、一回読んでみるといいわよ。
 ロミオが庭、ジュリエットがバルコニー……すごいと思わない? 
 並の作家なら、同じ平場で愛を語らせちゃうんだろうけど、これを互いに見えるけど手の届かないところに持ってきて、キスどころか、指一本触れさせないんだもんね。ミザンセーヌが最高! おそらく世界最高のラブシーンだと思う。
 それに、もっとすごいのは、あれだけのラブシーンで「I love you!」が一言も無いの。
 わたし気になって、ここだけ二回読んだんだけど、無い……「do you love me?」「Love me!」はあるんだけどね、「愛は勝ち取るものなんだ!」って、スタンスがすごいと思うのよ。
 この場面は、互いに「愛してる! んでもって結婚しよう!」ってことだけなんだけど、字数にして六千字も使ってんのね。このわたしのことを書いてる作者なら、章一つでそんくらい。才能が違う……なんて言ったら、どこで仕返しされるか分からない。なんたって、第五章じゃ主役のわたしを焼き殺しかけた人だもんね。
 それから、タマゲタのは、ジュリエットに出会ったとき、ロミオにはすでに恋人が居たんだ!……知らなかったでしょ? ロザラインって子で、二回ほど台詞の中にしか出てこないんだけどね。

 明らかに、ロミオは二股かけてんのよね!!

 わたしはロザラインに同情したわ。シェークスピアってオッサンもたいがいよ!
 なんて妄想してるうちに薮医院が近くなってきた。
 
 説明するわね。
 わたしが生まれる一年ほど前に、お父さんとお母さんは大げんかをした。
 バブルの後、工場の経営が今イチだったってこともあるんだけど、どうやらお父さん浮気もしてたみたい。
 で、お母さんは、ほんのガキンチョの兄貴連れて、家をおん出ちゃったわけ。
 そこを間に入って、元の鞘に収めたのが薮先生。お陰でわたしは一応無事に生まれることができたわけ。兄貴のアンニュイなとこもこのへんの幼児体験に原因あり……と見てるんだけど、まあ、それは置いといて。恩義に感じたじいちゃんが、盆暮れのつけとどけをお父さんにやらせてたんだ。
 でも十七年もたっちゃうと、もう時候の挨拶ってか年中行事。薮先生も、お父さんの顔見てもつまんないんで、今年は兄貴をご指名。どうやらクリスマスの香里さんへのフライングが耳に入ったみたい(このへんが、下町のいいとこでも、怖いとこでもある)なんだ。
 で、恋人同士来いってことらしいんだけど、兄貴嫌がっちゃって……兄貴は香里さんが嫌がってるって言ってた。ただ目的語が抜けてるんで、兄貴が、まだ嫌われてんのか、薮先生とこへ行くのを嫌がってるのかは分からない。
 で、わたしが代理ってわけ。むろん三千円のギャラ付き。

「こんちは……」

――二十八日~新年三日まで休診――の張り紙をしたドアを開ける。
「まどかか、そのまんま上がってきな」
 と、奥で先生の声。まあ一時間程度の「お話」は覚悟していた。ギャラもらってんだもんね。
「失礼しま~す」
 殊勝げに、待合室を抜けて、奥の座敷へ。
「あ……!?」
 しばらく、声が出なかった。
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永遠女子高生・18・《京橋高校2年渡良瀬野乃・9・わたしと秀は……》

2019-12-04 06:10:06 | 時かける少女
永遠女子高生・18
《渡良瀬野乃・9・わたしと秀は……》          



 勝負はついていた。

 勝負と思うこと自体がおこがましい。
 秀一先輩の彼女は若草色のワンピースがとても似合う里中あやめであり、自分はただのゲテモノ。
 秀一先輩は、そのゲテモノをモデルにオモシロイ作品を作ろうと思っただけで、野乃を好きとかいう気持なんかじゃない。
 この一週間の「女磨き」が、とてもバカらしくみじめに思えてきた。

 愛華の誘いも断って、一人で下校することにした。

 ハハハ……。

 この期に及んでモデルさん歩きが身についているのが笑えてくる。
「渡良瀬さん……」
 春風に呼び止められた気がして、振り返ると……一番会いたくない里中あやめが、野乃に続いて校門を出たところだった。
「あ、あの……」
「秀のモデル……だめかな?」
「え……」
 なんで里中さんが言うんだろう。ちょっと混乱した。

 野乃の答えがないので、あやめは数歩距離を詰めてきた。

「歩きながら話していいかしら」
「は……はい」
 あやめは、一筋遠回りの商店街に野乃を誘った。
「ごめんね、遠回りで」
「通学路だと、人に話を聞かれますもんね」
「あ、そこまで考えてなかった。ハハハ、単に商店街が好きなの」
 そう言いながら、予定していたようにたこ焼き屋に入った。
「おばちゃん、いつもの二っつ」
 注文しながら冷蔵庫からビクビタを二つ取り出し、一つを野乃の前に置いた。
「どうぞ、パチモンの栄養ドリンクみたいだけど、いけるわよ」
「あたしも好きです」
「そうなんだ、じゃ、乾杯!」
 あやめは、喉を波打たせ、意外なほどグビグビと飲む。その姿が、また美しいと野乃は思ってしまう。
「はい、いつものん二丁」
 おばちゃんが、たこ焼きを二皿置いていく。
「ここ、300円で8個もあるの。お得感でしょ」
「ほんま、普通は6個ですのにね」
「秀とときどき来るの」
「あ、そなんですね」
「うん……?」
 あやめは、野乃の表情が陰ったのをいぶかしんだ。
「秀、渡良瀬さんに……変なことしたとか言ったとか?」
「いいえ、そんなことは」
「じゃ、モデルになってやってくれないかな。秀、あなたのを高校で一番の作品にしたいみたいなの」
 ウダウダするのは性格に合わないので、深呼吸して野乃は聞いた。
「里中さんは、その……一之宮先輩の彼女なんですよね」
 あやめは目を点にしてフリーズした。

「わたしと秀は……」

 もう夫婦で、子供まで居る。と言われても驚かない野乃ではあったが……。
 
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小悪魔マユの魔法日記・114『三つ葉のクローバー・3』

2019-12-04 06:02:29 | 小説5
小悪魔マユの魔法日記・114
『三つ葉のクローバー・3 爆笑記者会見』     


 
 みんなが拍手で迎えてくれた。

 事務所の前からスタジオまで、メンバーやスタッフの人たちが笑顔で並んでいる。事務所前には、たかが研究生上がりの新メンバーの復帰とは思えないほどのマスコミの人たちも集まって、事務所のビルに入るのも一苦労だった。

「潤、おかえり! 復帰おめでとう!」

 リーダーのクララが花束と激励の言葉をかけてくれた。そして、いっそう高まるみんなの拍手。
「さあ、ちょっと忙しいが、今から記者会見だ。潤、スタジオへ」
 黒羽ディレクターが、スタジオのドアを開けた。スタジオには、各社を代表する芸能記者やレポーター。最後尾の何台ものカメラが、驚く潤にレンズを向けた。
「みなさん、ほんとうにありがとうございました……」
 復帰の挨拶と会見は、ほんの十分ほどで終わった。潤は、ちょっと拍子抜けがした。
「では、ここから、AKRから枝分かれする新ユニットの発表をさせていただきます」
 黒羽が宣言すると、「おかえり、潤!」の横断幕がハラリとめくれて、新しいものが現れた。

『新ユニット 三つ葉のクローバー結成発表!!』

「さあ、知井子、萌、前へ! あ、潤はそのままで」
 立ちかけた潤が、黒羽の言葉でずっこけ、みんなが笑った。
「わたし……居ていいんですか?」
「潤もメンバーの一人だよ」
「え、うそ……!」
「改めて紹介します。三つ葉のクローバー、小野寺潤、桜井知井子、矢頭萌、の、三人です。ちなみに、このユニットにはセンターもリーダーもいません。名前の順番は、単なるアイウエオ順です。デビュー曲は決まっていますが、まだ発表はいたしません。なんせメンバーの潤など、たった今、知ったばかりですから」
 潤が顔を赤くし、みんなが暖かく笑った。
「この子達は、AKRでも、とびきり優秀……というわけでもありません」
 また、スタジオは笑いに満ちた。
「AKRを、お花畑に例えれば、この三人は、ありふれた三つ葉のクローバーです。でも、三つ葉のクローバーというのは、人から注目されることもなく、路ばたで踏みつけにさえされます。そうやって傷ついたところから……むつかしい言葉では成長点といいますが、そこから、新しい四枚目の葉っぱが生まれて四つ葉のクロ-バーになります。そういう可能性を秘めた意味をこめて『三つ葉のクローバー』というユニット名にしました。この三人は、経験の浅い者や、ドンクサイ者たちです」
 みたび、スタジオは笑いにつつまれる。
「しかし、その分、他の者たちよりも苦労はしております。挫折も経験しております。心身共に。なあ潤」
「あ、はい。一時は心臓止まりかけました」
 またも、笑いがおこった。
「で、でも、マユ先輩なんかが、一生懸命助けて……あ、マユ先輩。帰ってからのお楽しみって、このことだったんですね!?」
「三人に、それぞれハンドルネームを与えます。マユちゃんよろしく」
 リーダーのクララが、マユを指名した。マユは色紙を持って前に出てきた。
「潤ちゃんは『希望』奇跡の復活はAKRの希望、知井子は『信仰』……友情というAKRの信仰、萌は『愛情』ファンのみなさんや、仲間への愛情」
 マユ(の姿をした拓美。このことはクララと潤しか知らない。光会長、黒羽、仁和はうっすら感づいている)は、色紙を三人に渡した。思いの外ヘタクソナ字であった。
「なお、色紙を書いたのは、会長の光ミツル先生です」
「いや、なかなか味わいのある字だ!」
 ヘタッピーと思っていた記者がお世辞を言ったので、今度は大爆笑になった。

「みなさん、今、新しいニュースが入ってきました」

 光会長が、よく通る声で言った。
 
「AKRが、レコード大賞にノミネートされました!」
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