大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

ライトノベル・魔法少女マヂカ・116『みんなでアルバイト・3』

2019-12-28 13:28:15 | 小説

魔法少女マヂカ・116  

 
『みんなでアルバイト・3』語り手:マヂカ 

 

 

 建物と建物の間に屋根と囲いがしてあって、ちょっとしたトンネルになっている。

 トンネルの中は手前半分が剥き出しのコンパネで、向こう半分がピンクに塗られ、境目には『国境』と書かれた張り紙。国境を跨るように自販機があって、定価の半額ぐらいの値段でジュースやお茶を売っている。

 突き当りはピンクのドアで、丸眼鏡のおじさんはインタホンに向かって声をかけた。

「バイトの子たちを連れて来たぞ」

「ハ~イ、いま開けま~す」

 アニメ声の返事があって、ドアが自動で開くと、直ぐにピンクの壁。左に折れて右に曲がると控室のようなスペースに、テーブルとロッカー。

 一体ここはなんなのだ?

「お待たせなのニャ~」

 ネコミミのメイドさんが入ってきた!

「みなさんの世話をするミケニャンなのニャ。とりあえず、書類に必要事項を書いて欲しいのニャ」

 ミケニャンが書類を配ろうとするのを制止して聞いた。

「あの、いったいなんのバイトなんですか?」

「あら、錬金術師のテツゾウさんからは聞いてニャイのかニャ?」

 ミケニャンは丸眼鏡のおじさんを見て小首をかしげた。

「どうも、ここの説明は苦手でな。重子はおらんのか?」

「国境を超えたら、そっちの名前は禁止なのニャ。もう一度ニャ、錬金術師のテツゾウさん」

「あ、えと……バジーナ・ミカエル・フォン・クゼルンシュタイン三世?」

「もう、錬金術師のテツゾウさんは何度まちがえたら覚えるニャ? バジーナ・ミカエル・フォン・クルゼンシュタイン三世(⋈◍>◡<◍)。✧♡ニャ」

「めんどくさい」

「ん?」

「バジーナ・ミカエル・フォン・クルゼンシュタイン三世」

「ん~、語尾にリスペクトの響きが無いニャ」

 いったい、ここはなんなのだ?

 パンパカパンパンパ~~~~~~~~~ン(^^♪

 みんなの腰が引けたところに、ファンファーレが鳴って、ベルばらのマリーアントワネットみたいなのが現れた!

「父上、いつになったら、妖精の国のしきたりに慣れてくださるのかしら」

「だから、重子……」

「「バジーナ・ミカエル・フォン・クルゼンシュタイン三世(⋈◍>◡<◍)。✧♡ニャー!!」」

「とにかく、あとは頼んだぞ!」

 そそくさと、丸眼鏡、いや、錬金術師のテツゾウさんは帰って行ってしまった。

「ようこそ、わが妖精のキャピタル、ツマゴメへ。これより、そなたたちのイニシエーションの義を執り行うとしようぞ! ミケニャン、この者たちのために、現世の言葉を指し許すぞ」

 バジーナ・ミカエル・フォン・クルゼンシュタイン三世(⋈◍>◡<◍)。✧♡がセーラームーンのような決めポーズで右手を掲げると、天井からタペストリーが下りてきた。

 アキバ メイド系飲食店連合会規則……という表題から始まって、就業規則めいたものが、活字にして一万字はあろうかという量で書かれている。

 ミケニャンはネコミミカチューシャを取って眼鏡をかけると、擦れたチーママみたく喋り始めた。

「えと、うちは『メイド喫茶ツマゴメ』っての。ツマゴメで分かると思うんだけど、妻籠電気店の裏を拡張して作った店なんだけど、今は、完全こっちがメイン。見りゃわかっでしょ。求人とか出す時は電気店の方が通りがいいんで、そーしてるわけ。でもてえ、うちの重子」

 ポカン!

「イテ! もとい、バジーナ・ミカエル・フォン・クルゼンシュタイン三世(⋈◍>◡<◍)。✧♡はアキバ メイド系飲食店連合会の会長も務めていてえ、まあ、アキバのメイドとお店の面倒をまとめてみてるわけ。でもって、あんたたちは、年末年始に手が足りていない加盟店のヘルプに出てもらうワケ。就業規則とか待遇とかは、ここに書いてあるし、あんたらに渡した書類にもあっから目ぇ通しといて。じゃ、さっそく割り当てとか決めたいんでえ」

「あ、あのう……」

 どうなるかと、面白がって見ていると、友里が手を挙げた。

「あん? なに?」

「あ、えと……メイド喫茶のバイトだなんて聞いてないんですけど」

「そら、知らねーな。てか、あんたらに断られっと、年末年始のアキバのメイド系は立ち行かないのよ。ま、乗り掛かった舟と思って務めてね」

 友里は、それ以上は言えずに座ってしまう。他の六人は程度の差はあるが、面白そうに聞いている。

「というわけで、明日からよろしくニャ(^▽^)/」

 パンパカパンパンパ~~~~~~~~~ン(^^♪

 ミケニャンが元に戻って、バジーナ・ミカエル・フォン・クルゼンシュタイン三世(⋈◍>◡<◍)。✧♡がにこやかにご退出になり、我々のアルバイトが始まった。

 今年も、余すところ四日となった。

 

 

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となりの宇宙人・12『地雷を踏んでしまったのかも』

2019-12-28 06:16:19 | 小説4
となりの宇宙人・12
『地雷を踏んでしまったのかも』             




 話があるの

 聖也の斜め後ろに寄り添って声をかけた。
 
 この時間帯は、上り下りの電車から七校の高校生が降りてきて改札に集中する。待ち伏せして声をかけるのに都合がいいが、変に立ち止まったり横に並んだりすると目立ってしまう。人の流れにのったまま話さなきゃならない、星野駅で降りる高校生は近隣三つの中学校の卒業生ばかり、下手に目立ってしまえば、すぐに噂になる。
 聖也も分かっているようで、駅前のロータリーを過ぎ、大通りの信号を渡ったところで横に並んだ。
「話って?」
「ヨッコが聖也のこと好きなんだ」
「え!?」
「声おおきい、このままスポーツ公園に行って」

 少年サッカーをやっていた。

 7番の選手がフリーキックしようとしている、ラグビーの五郎丸みたくシュートの前のおまじない。それが効いたのか、ボールはそのままゴールに吸い込まれ一点を先取。選手も野次馬の観客も温かい歓声をあげる。グラウンドを見てさえいれば、話していても不自然じゃない。あたしは、そこまで気を使っている。
「ヨッコの記憶って聖也が作ったバーチャルじゃん。そのバーチャルで恋するなんてかわいそうだよ」
「うん……」
「聖也は、この三月に地球にきたばっかで、うちの高校にきたのはほんの先週。リアルには口もきいたことないと思うよ、ヨッコとは」
「……だよな」
「なんとかしてやって」
「ヨッコの記憶を書き換える」
 3番の選手がロングシュートした。
「ばか」
「そうだよな、あの距離じゃ……とられた」
「ばかは聖也の方よ、スマホのアプリじゃないんだよ人の心は」
「じゃ、どうすりゃ……」
「…………」
 言葉が無かった。バーチャルな記憶で恋をさせてしまう理不尽さが頭にきていただけで、どうするということまでは考えていなかった。
 飛び込んできたボールをキーパーが阻止、送球相手に悩んでいるようで二三度ボールを構えてはフィールドを見まわしている。
「わかった、とりあえず自然な形でヨッコに会ってみるよ」
 フェンスを突き飛ばすようにして身を起こすと、聖也は駅の方角に歩きはじめた。
「どこに行くのよ?」
「学校、ヨッコ、この時間はまだ部活だろから」
 え!?
 ひょっとして、あたしは地雷を踏んでしまったのかもしれない……。


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Regenerate(再生)・24≪詩織の秘密・2≫

2019-12-28 06:07:52 | 小説・2
Regenerate(再生)・24
≪詩織の秘密・2≫   



 
「ブランコしない? じっとしてると、なんだか落ち着かない」

 詩織は幸子アンドロイドといっしょにブランコに移った。ブランコの上は大きな木が枝を張り、適度な木陰をつくっている。幸子アンドロイドは、ブランコを大きく揺らし、詩織の揺れにシンクロさせながら話し始めた。
「あたしたち、目的はいっしょなのよ。それは分かる?」
「世界の順調な成長発展を助ける……でも、現状認識が真逆」
「あたしたちベラスコは、歴史に介入して、世界をあるべき姿に導こうと思っている。ソ連の崩壊まではいっしょだったのに」
「あたしたちM機関は、崩壊させて良かったと思っている。あとは多少の混乱があっても、人間が自分たちの力でなんとかしていくわ」
「ベラスコは、もっと介入しなければと思っている。アラブの混乱、中国の覇権主義と、そのあとにやってくる大崩壊。食い止めるのは、アメリカでさえ無理。あたしたちが介入して、修正を加えながら今世紀中に世界の安定を図らなきゃ、人類は大変な危機に陥る。その見通しが違うだけ。世界の発展を願うのは同じだから、ベラスコとM機関は、また手を結べる可能性があると思うの……」

 シンクロしていたブランコの揺れが合わなくなってきた。

「それは、どちらかがどちらかに飲み込まれることにしかならない……悪いけど」
「……そう……やっぱね……もう一つ、あなたに……言っておかなきゃならないことがあるの」
「……なに?」
「……詩織、あなたもサイボーグなのよ……」
「え……?」
「生身の人間が幸子に擬態したり、ハイジャックの犯人を捕まえたりできると思うの?」

 ブランコの揺れは小さくなっていった。

「加藤詩織は、66年前に米軍のジープに跳ねられて、ほとんど死にかけた。現に戸籍上は死んだことになっている。ほら……」
 幸子アンドロイドは、目の前に詩織の戸籍謄本を映してみせた。加藤詩織、死亡により除籍と斜めの線が引かれていた。
「じゃ、あたしは……」
「脳だけが取り出され冷凍保存され、アメリカに送られた。詩織の脳を生かす義体が開発されるのに、60年かかった。そして脳を移植し起動させるのに6年。詩織はドロシーとは違って戦闘用に特化されている。で、その能力はまだ完全には始動していない。これから、M機関にも、あたしたちにも分からない力が始動しはじめる」
「うそ……あたし、カンザスに家族いるもん。妹の詩歩もお婆ちゃん、ひいばあちゃんも、家族みんな」
「それは、M機関が作ったバーチャルな家族」

 蝉達の鳴き声がカットアウトした。

「ひいばあちゃんこそが、詩織そのもの……M機関は、詩織の能力が完全に覚醒するまでは人間であると思い込ませるために作ったバーチャル。あたしたちがプログラムを破壊したけどね……今すぐ答えをくれとは言わないわ。ゆっくり考えて結論が出たら呼んで。あなたのことは分かったから、いつでも連絡受けられるから。じゃ……」

 幸子アンドロイドは、ゆっくり歩いて公園を出て行った、彼女の乗っていたブランコが小さく揺れ続けた。

 蝉の抜け殻が一つ、ぽとりと墜ちてきた。
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乃木坂学院高校演劇部物語・79『埴生の宿』

2019-12-28 05:58:51 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・79   
『埴生の宿』  


 

 稽古が始まって十日ほどがたった。台詞もほとんど入って、ダンドリは分かってきた。

 でも、最初読んだとき面白かったお芝居も、やってみると難しさだけが際だってくる。
 だって、この芝居、新派、新劇、歌舞伎、狂言、吉本などなど、ありとあらゆる芝居のエッセンスのテンコ盛り。そもそも最初から、歌舞伎風の口上で始まっちゃう。

――東西東西(とざい、とーざいー……てな感じで言います)一段高うはございますが、口上なもって申し上げます。まずは御見物いずれも様に御尊顔を拝したてまつり、恐悦至極に存じたてまつります……てな感じで、かみまくり(ほんとに舌噛んじゃった)
 動画サイトで、それらしいのを見たりして研究中。前途多難のキザシ。
 そこへもってきて、あの気配……だんだん強くなってきて、このままじゃ稽古になんない! と思い始めた明くる日の昼休み。三人で、明日は潤香先輩のお見舞いしようって、中庭で相談ぶっていた。
 すると、聞こえてきた……あの『埴生の宿』
「ね、聞こえない!?」
 あんまりはっきり聞こえるんで、思わず口に出てしまった。
「え、なにが……?」
 わたしは無意識に立ち上がった。
「まどか……」
「どうしたの……」

 二人の声が遠くなっていく……気がついたら、談話室の前にいた。
 
「……埴生の宿も、わが宿。玉の装い、羨まじ……♪」
 その人は、旧制中学の制服を着て、ピアノを弾きながら唄っていた。
 窓の外は桜が満開。小鳥のさえずりなんか聞こえて、春爛漫の雰囲気……そよと風が春の香りを運んできた。
 春の香りは、桜の花びらになって頬を撫でていく……何枚目かの花びらが、左目のあたりをサワって感じで通っていって、わたしは我に返った。
「……おお、わが窓よ~楽しとも、たのもしや♪」
 その人も、ちょうど唄いきり、ゆっくりと笑顔を向けてきた。
「ごめんね、こんな誘い方をして」
「あなたは……」
「あけすけに言えば……幽霊……かな」
 あんまりのどか長閑な言いように、予想した怖さは、どこかへいっちゃって、暖かい笑いがこみあげてくる。
「……フフフ」
「よかった。怖がらせずに話しができそうだ」
「さっきまでは、怖かったんです」
「うん、だから昼間にお招きしたんだ。僕の趣味で春にしたけど、よかったかな」
「はい、わたしも、この時期が大好き」
「君は、僕の気配が分かる。このままじゃ脅かして、稽古を台無しにしてしまいそうだから、僕の方から挨拶しておこうと思って」
「でも。とても幽霊さんには見えません」
「ハハ、それはよかった」
「ノブちゃんみたいな幽霊さんもいますから」
「そうだね、ちょっと漫画みたいな幽霊さんだけど、あんな感じ」
「怨めしや~、なんてやるんですか?」
「めったにいないよそんな人。まあ、掛けて話そうよ」
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