大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

ライトノベル・せやさかい・106『女王陛下の来日 二日目』

2019-12-20 14:04:32 | ノベル

せやさかい・106

『女王陛下の来日 二日目』 

 

 

 あくる日、皇居に向かう馬車の中に頼子さんは居た。

 

 むろん一人じゃなくて、ヤマセンブルグ公国女王であるお婆様といっしょ。

 大使館から皇居に至る沿道には、昨日の中継を見てファンになった大勢の人達がヤマセンブルグの国旗を打ち振ってる。急きょ警備の警察官が増員されたけど、こないだの御即位で、警察も沿道の人たちも慣れているので、穏やかに進んだ。

 相変わらず、頼子さんは制服姿で、お婆さまとは向かい合って座ってる。

 似てる!

 カメラがアップになって二人の向かい合う顔を大写しにした時に感じた。

 横顔の輪郭がソックリなだけとちごて、気品のある笑顔が、めっちゃ似てる!

 八割は女性やと思われる沿道の人らも同じやねんやろなあ、リポーターのマイクが――かわいい! そっくり! 素敵!――という称賛の声を拾ってる。

 皇居の車寄せに着くと、両陛下がお迎えになり、女王と握手される。頼子さんはお婆様に続いてご挨拶。ほら、陛下の手を取って片方の膝を引いて腰を落とす優雅なご挨拶。制服のプリーツスカートが扇を逆さに開いたみたいに広がって、めっちゃ美しい。

 そして、カメラが僅かに引かれて、次にご挨拶される方がフレームに入って来る。

 なんと、学習院の制服をお召しになった愛子さま!

 セーラー服同士の握手! いや、もうセント・セーラー服やんか!

 取材のカメラマンの人らも同じと見えて、しきりにフラッシュ!

 

 学校でも評判になったんは当たり前で、日ごろは崩し気味に着てるチョイ悪女子も。きちんと制服を着てた。

 百の説教よりも、頼子さんの制服姿は効き目があるみたい。

 

 その夜の晩餐会の頼子さん。

 淡いピンクのドレスに真珠のネックレス。ティアラこそ付けてないけど、雰囲気はあっぱれヤマセンブルグの王女様!

 この二日、セーラー服で人気をさらった頼子さんやけど、このゴージャスなドレスにも圧倒されますう!

 テイ兄ちゃんの視線が微妙にズレてる。リビングのテレビは80インチあるんで、ちょっと視線が違うと分かってしまうんよね。

 テイ兄ちゃんは、あきらかに頼子さんの胸を見てる!

 確かに、ドレスは胸を強調する。制服やったら気ぃつかへんけど、やっぱ、頼子さんはすごいわ!

 コホン。

 兄貴の視線に気いついたコトハちゃんが咳払い。アタフタと視線を外して……わたしの胸見るんやない!

 宮中晩さん会が終わったころ、メールが入ってきた。

――明日、おばあちゃんが大阪に来る!――

 頼子さんからで、むろん、おばあちゃんいうのんは女王陛下。

 追伸で、こう書いたった。

 

――学校を訪問して、帰りに部活に寄るって言い出した!――

 

 一大事やあああああああああああああ!!

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ライトノベル・となりの宇宙人・4『ドッカーン!!』

2019-12-20 06:08:48 | 小説4
となりの宇宙人・4
『ドッカーン!!』            



 
 時間が停まっているのは30秒だけだ。

 あたしは、まず、頭から数センチに迫っている鉄骨から逃れた。
 鉄骨が飛んでいく方向には、仁科高校の創立者の銅像と庭石が並んでいる。あれに鉄骨が激突すれば、破片が飛んでくる。直撃でなくてもただではすまない。
 瞬間、食堂か図書館のどちらに逃げるか悩んだけど、わずかに近いので、校舎に戻った。
 廊下や階段に同じように図書館に行こうとしていたクラスメートが数人フリーズしていた。みんな一様に鉄骨が飛び出してきた衝撃音に驚いた顔。いつもポーカーフェイスでしっかり者の荻野目瑠璃が思いっきり目と口を開けて驚いているのが新鮮に感じた。
「意外とかわいい」
 身を隠す場所を探しながら、そんな場違いなことを思った。
「あそこがいい!」
 廊下の掃除用具入れを見つけ、その陰に回ろうとした。
「「エ……!」」
 同時に声が出た。
 みんなフリーズしている中に、吉永紗耶香だけが動いている。紗耶香もあたしが動いていることに驚いている様子。
 でも、それ以上考える前に衝撃がやってきた。

 ドッカーン!!

 時間が動き、静止していた鉄骨がミサイルのように突進、銅像や庭石を粉々に破砕した。
 そして、学校中がパニックになった。
 大きな怪我をした者こそいなかったが、飛んできた破片で怪我をした生徒が何人かいて大騒ぎ。
「みんな、自分の身体を確かめて、少しでもおかしかったら、動かないで、その場に居て! いま救急車呼ぶから!」
 瑠璃が、元来のしっかり者にもどって仕切り始めた。
「あたし救急車の誘導するね!」
 紗耶香が反応して、正門の方に駆けだした。いまさっきの「エ……!」という表情はない。

 あたしの勘違い……?

 事故のため、昼からの授業はカットになった。
――事故……時間が停まって……二度も命にかかわることが……なんで、あたしが……思い違い……でも……偶然……――
 帰りの電車の中で事件と事故のことが頭の中でグルグル回った。

「大変だったね」

 改札を出ると、すぐ横で声がした。
「いつの間に……てか、まだ授業中でしょ?」
「電車の中からいっしょ。今は学校どころじゃない。歩きながら話そう」
 となりの宇宙人鈴木聖也は、まるで幼馴染のような気軽さで、あたしの横を歩き出した。
「まるで幼馴染……」
「幼馴染だよ。セイちゃんとマナちゃん」
「でも、キミは宇宙人でしょ」
「今日の二件の事件は、みんなボクを狙ってのことなんだ」
「え……でも、朝も昼も、危うかったのは、あたしよ」
「狙われて、むざむざやられる宇宙人じゃない。ボクの弱点は愛華だ」
「あ、あたしが?」
「そんな目で見んな。愛華は宇宙エネルギーを変換して、ボクに注入できる唯一の地球人なんだ。偶然とか好き好んで幼馴染の設定にしているわけじゃない」
「ちゅ……注入!?」
 あたしは、思わず身を引いた。
「へんな声出すな、普段は20メートル以内に居るだけで、ワイヤレスで注入……伝導できる、だから隣に住んでる。愛華は充電器みたいなもの。だから愛華を始末すれば、ボクは48時間で地球におられなくなる……」
「なんだか声が小さくなってきたわよ」
「あ、エネルギーが……」

 聖也は、あたしの肩を掴んで、いきなりキスをした!

「ウ、ウ……………なにすんのよ(涙)!?」
「緊急急速充電、今日は二回も時間を停めてがんばったから、消耗が激しいんだ」
 そう言うと、聖也は、駆け足で横断歩道を渡っていってしまった。

 ああ、あたしのファーストキスだったのに!
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ライトノベル・青春アリバイト物語・6《完全アンダースタディー》

2019-12-20 05:57:55 | 小説6
アリバイト物語・6
《完全アンダースタディー》 



 
 気が付いたら病院だった。

 撃たれて川に落ちるシーンで怪我をしていた。専門のスタントではなかったので、2メートルの高さでも素人には堪える。
 転落する途中で体を捻ってしまい、頭と胸を下にして落ちてしまった。

「肋骨にヒビがはいったけど、それだけ。今夜一晩様子見て、なんともなかったら、そのまま仕事していいから」
 ドクターは、あっさり言った。
「すまなかった。あそこまでやるつもりは無かったんだけど……なんてか、なりゆきでね。おかげでスタントでは出ない、いい絵が撮れたよ」
 監督は、タブレットで、転落シーンを見せてくれた。銃撃シーンと繋がれていて、まるでハリウッドのアクション映画のような出来だった。
「本当は、その場に倒れるってだけの設定だったんだけどね。ちょっと八重ちゃんに奮起してもらいたくって」
「意地悪からじゃないんですね?」
「う~ん、難しいな。意地悪って言えばその通りなんだけど、裏腹かな。八重ちゃんには、ここでふんばってもらいたいって気持ちもある。で、ヒロちゃんがワリ喰っちゃった。ごめんな」

 当の八重は来なかった。マネージャー(裕子より偉い……たぶん兄貴の裕一)から見舞いの花束がきただけである。これも、マネージャーの気配りなんだろうと裕子は思った。一つ勉強した思いで、特に八重に思うことは無かった。夕方になって真一が見舞いにきた。
「元気そうでなによりだった。見ててヤバイって思ったもん」
「え、ロケ見てたの?」
「うん、わりに近くで。成り行きが分かってなかったら、裕子だってわからないくらい八重に似てたもん。スタッフが騒いで救急車が来た時には、オレまでうろたえちゃった……」
「なにか言いたげね?」
「裕子は軽くバイトって言ってたけど、もうバイトの域じゃねえよ。好きなんだな、あの仕事。がんばれよな」
 真一は、裕子への想いを押し殺しながら、できるだけ明るく喋って帰っていった。

――アリバイのつもりだったんだけどなあ……――

 あくる日、少し胸に痛みが残ったけど、裕子は時間通りに八重を迎えに行った。本当は早く行って、寝坊助の八重を起こすところからやらなければならなかったのだけど、病院で最後の検査が終わるまで出られなかったのである。
「昨日は……ごめんね……」
 八重は蚊の鳴くような声で謝った。それに時間にはちゃんと起きていてくれていた。
「いいんです。八重さんがやる気になってくれたら!」
 気まぐれ八重だけど、裕子は嬉しかった。
 ほんのちょっとした垣根なんだ。心から接していれば相手も分かってくれるんだ! やっと八重と心が通じた気になった。八重にも、その気持ちが伝わったのだろう。タクシーを降りて局のエントランスまでいく八重の足取りは軽かった。

 グエ!

 そして、軽い気持ちで階段を一段飛ばしで駆けあがっていく途中、厚底ブーツの足をぐねってしまった……。

「ヒロちゃん、台詞入ってるんだろ。アンダーで入ってよ」

 なんと、足の捻挫で動けなくなった八重の代わりにアンダースタディー(代役)で入ることになってしまった!
 
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Regenerate(再生)・16≪幸子の過去を理解する≫

2019-12-20 05:49:52 | 小説・2
Regenerate(再生)・16
≪幸子の過去を理解する≫
         


 

 幸子の妹の驚く顔を見て全てを理解した。        

 そして、一瞬のうちに教授のラボにテレポートした。
「どうやら理解ができたようだね」
 教授は、突然目の前に現れた幸子姿の詩織を見て理解した。

「妹の良子に会いました。まだ幻と思ってくれる時間のうちに戻ってきました……」
「賢明な対応だったね……どうやら、その感じなら、幸子に関しては全てが理解できたのかな」
「はい、幸子は日航123便に乗っていて死にかけたんです……いいえ、公には亡くなったことにされました。だって、当時の医療技術では助からない……いえ、生きていることさえ理解してもらえないくらい損傷していましたから。救助活動に紛れて、幸子の体で唯一無事だった脳だけが、密かに持ち去られました」
「持ち去ったのは?」
「M機関です。得難い適合者だったようです。M機関は30年かけて、幸子をサイボーグにしました。そして復帰したとたんに、幸子は渋谷の事件に巻き込まれ、ベラスコに存在を知られてしまい、溶鉱炉で再生したばかりの自分を処分したんです」
「よく、そこまで理解したね。ご苦労だった。もう幸子の擬態は解除してもいいんじゃないかな」
「そうですね……だけど」
 解除しかけた擬態をもどして、詩織は聞いた。
「教授は、このことをご存じだったんじゃないですか?」

「……ああ、知っていたよ。しかし、このことは詩織君自身で確認しなければ本当の理解にならないし、幸子に擬態したときの能力を十分に発揮することもできないんだ。だから、あえて君自身で追体験してもらったんだ」
「そんなに幸子の能力は高かったんですか?」
「ああ、完全に覚醒する前に、自己処分しなくちゃならなくなったがね」
「わたしが、幸子に代わって働かなきゃならいということですか?」
「君の擬態は完全だよ。姿かたちだけでなく、その記憶も能力も引き継いでいる。幸子以外への擬態、戦闘能力、テレポーション能力も身につけた」
「ハイジャック事件ですね」
「ああ、偶然だったが、いい訓練になった。ベラスコたちも幸子の存在を確信しただろう。彼らも、そう無茶な動きはとれなくなったと思う」
「……なぜ、幸子がサイボーグ化されるのに30年もかかったんですか」
「それは……まだ知るのは早い。だが安心してもらいたい。戦うのは君一人じゃない」
「あだしと力あわせるべ!」

 そのときラボに入ってきたドロシーが、運動会の競技でいっしょになったような無邪気さで言った……。
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乃木坂学院高校演劇部物語・71『二人だけの誕生会』

2019-12-20 05:40:39 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・71   
『二人だけの誕生会』 

 

 

 マリ先生のビックリには慣れっこになっていたけど、今回ほどタマゲタことはない。

「わたし、先生辞めたから」
 ゲソの塩焼きを摘まんで、テレビゲーム一つ投げ出したくらいの気楽さで言った。

 TAKEYONAで、忠クンが精一杯の二人だけの誕生会をひらいてくれた。
 そして、観葉植物を隔てたカウンター席で高橋さんと先生がいっしょに居たのを発見シテシマッタ!
 で……思わず声をかけてしまった。
 噂では、二乃丸高校で厳しいクラブ指導をしていると聞いていた。嬉しさ半分、寂しさ半分というところだった。
 それが、先生自体を辞めてしまうという爆弾発言……それもゲソの塩焼き摘まみながら。
 高橋さんが、そのあとを続けた。
 バリトンのいい声だったので、ショックがくるのに少し時間がかかった。しかし飲みかけのジンフィーズにむせかえるには十分すぎるほどのショックだった。

「マリ先生ね、来月から、ボクの商売敵になるんだって……コンクールで審査したよしみで思いとどまらせてくれないかな」
「だめよ、たとえお日さまが西から昇っても、わたしの決心は変わらないんだから」
 先生は、ハイボールの氷を小気味よくかみ砕いた。
「先生……」
 あとは言葉にならなかった。
「先生……」
 忠クンは、わたしとは違うニュアンスでそう言った。糸の切れた凧が、同じ方向に飛んでいくジェット機を見て、お仲間と思ってしまったみたい。
 その後は、凧とジェット機が意気投合。ハイボ-ルとジンフィーズの乾杯は三度もくり返された。
 しかし、反戦芝居を作演出したマリ先生と、自衛隊に入りたいという忠クンが、どうしてこうなるかなあ……と、さすがは新進気鋭の俳優。高橋さんがこう言った。
「これが、日本人の原風景なんだろうなあ……」
 わたしには、むつかしい感想でした。


 はるかちゃんはモニターの中で、ポテチの袋を抱えながら大笑いした。
「そんなに笑わないでよね。こっちはタマゲテ、ため息つくしかなかったんだからね」
「ごめんごめん。インスピレーションで突然決めちゃうのは、まどかちゃんの専売特許だと思っていたんだけどね。居るのよねえ、こういう人……」
「もう、分かんないよ。マリ先生も忠クンも」
「でも、貴崎先生とは、しばらく会ってなかったんでしょ?」
「うん……火事で病院に運ばれて以来かな。家には一回来たみたい。わたしがインフルエンザでひっくりかえっているときに」
「そういうとこは筋通す人っぽいもんね……貴崎先生って」
「でも、わたしにはナイショだったんだよ。気持ちと状況の整理がついたら、わたしにも話すって。で、それっきり。お父さんもお母さんも、ジジババも言わないんだもんね。柳井のオイチャンに教えてもらったの。知らないふりしてること条件で」
「でもさ、きっと、その間にいろいろあったんだよ……わたしも、そうだったから分かるなあ」
「テレビに出たこと?」
「それは現在進行形だけどさ……大阪にきてからの半年がさ……わたし、秀美さんのこと許せるなんて、これっぱかしも思ってなかったもん」
「ああ、東京のお母さんだもんね。でもさ……」
「……うん?」
「はるかちゃん、ポテチおいしそうに食べるわね(……)のとこ、全部ポテチ食べてる間なんだもんね」
「こんど、わたしポテチのコマーシャルに出るの。なんだかズルズルって感じだけど。ロケは東京、それで引き受けちゃった。自費じゃしょっちゅう行くってわけにもいかないし。日程とか分かったら教えるわね……わたしの知らないところで話しが進んでくみたいだけど、プロディユーサーの白羽さんはいい人だし、マッイイカぐらいのノリでね。立ち止まっても何も進まないしね」
「たいへんだね、はるかちゃんも激変で……ところで例のお願いは?」
「あ、ごめん、ごめん。そっちのビッグニュースで忘れるとこだった。これが今夜のHARUKA放送局の大ニュース。ジャジャーン!」

 はるかちゃんが、USBメモリーを見せた。

「この中に、作品入ってるからね。今から送りまーす。題して『I WANT YOU!』とにかく……ま、読んでみて!」
 覚えてる? 元日のビデオチャットで、はるかちゃんにお願いしたこと。
 女子三人、照明や道具に凝らない芝居。はるかちゃんが演った『すみれの花さくころ』を紹介してくれたんだけど、わたしたちタヨリナ三人組。少しは力も付いてきて。もうタヨリナなんて呼ばせない!
 でも。歌がね……六曲も入ってるんで、涙を呑んで却下。
 で、わたしたちにできる、そんな都合のいい芝居を頼んじゃった。はるかちゃんとこのコーチの先生が、言ってくれたそう。
「そんな演劇部にこそ、救済の手をさしのべならあかん!」
 そんな……って言葉に少しひっかかたけど、よろしく頼んじゃった。
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