大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

となりの宇宙人・13『地雷は不発?』

2019-12-29 06:41:17 | 小説4
となりの宇宙人・13  
『地雷は不発?』          
 
 
 
 
 鈴木聖也は、あたし(渡辺愛華)のとなりの家に住んでいる幼馴染(?)の亡命宇宙人。  
 秋のある日、駅で暴漢に襲われ、学校では食堂の工事現場の鉄骨に潰されそうになるけど、聖也が時間を止めて救けてくれた。  
 犯人は、なんと、これまた幼馴染(?)の吉永紗耶香。紗耶香も宇宙人で、聖也を抹殺するために、あたしを殺そうとした。  
 あたしは聖也の命の素になる宇宙エネルギーを、聖也に合うように変換できるから。   
 そのために殺されそうになり、救けられもしたんだって……でも、それだけ?
   ヨッコは良い子だけどめんどくさい女だ。
 
 たとえば中学の頃からやっている茶道部。  
 茶道部って部活の間ずっと正座のしっぱなし、きっとこの数年間で、ヨッコはあたしの一生分くらい正座している。 「正座してると足がむくむんだよ……」そう言って体育の時間なんか、ヘタレ眉でハーパンから出た脚をさすっている。  
 それなら、さっさと茶道部なんか辞めちゃえばいいのに、これが辞めない。
 どうやら、こう考えている。
 もし茶道部を辞めても脚が細くならければ、むくんだ脚は天然ということになる。文句をたれながら茶道部にいれば、足のむくみは部活のせいにできる。
 むろん口に出して言うわけじゃない。言えば「バカだなあ」と言って、会話も脚の問題も次のステップに踏み出せる。
 ヨッコの脚は普通だ。自分の脚って、上から見ているせいで太く感じるもんなの。言っても慰めとしかとらない。
 
「藤原(ヨッコの苗字)も今帰り?」  
 
 聖也はヨッコの下校時間に合わせて下足室に下りていった。
「あ、うん……鈴木君、いま?」
「うん、図書館でネットやってたら遅くなっちまった。あ、ちょっと待って提出物あったんだ」
 聖也はプリントを出し、カバンを置いて、二階の職員室に向かった。
「鈴木君、カバ……」
 五十秒で聖也はもどってきた。ヨッコといっしょだった茶道部員は先に帰ってしまった。
「あ、ごめん。カバンオキッパだった。見てくれてたんだね」
「あ……」
 
 こうして聖也はヨッコと二人で下校することに成功した。
 
「カバン見てくれたお礼」
 駅前まで行くと、ハンバーガー屋を指さした。
「あ、あたし」
「二人で食べたらポイントカードがちょうど一杯になるんだ」
「そ、そうなんだ」  
 
 サービスセットだったけど、ヨッコは父親以外の男と食事するのは初めてだった。
 
 学校の駅を出ると、電車は急カーブにさしかかる。憧れの聖也といっしょのヨッコは、それを忘れていた。
 
「あ!」  
 
 抱きとめた右手がヨッコの胸に触れた。
「あ、ごめん」
「あ、いえ、その……」
 聖也は見かけによらないバカな話でヨッコの緊張をほぐし、降車駅に着くころにはヨッコも笑顔にもどった。
 コロコロ笑いながら改札を出た。
 ロータリーを横に見ながら信号を渡れば別々の道になる。
 
「あ、赤信号」 「ラッキー」 「え?」 「やっと決心………………ヨッコ、オレたち付き合わないか」
 
 信号機がピヨピヨ……その倍の速度で心臓が高鳴った。
 
「あ……友だちとしてなら」
「え、オレたち、もう前から友だちではあるだろ?」
「だから……それ以上は」
 
 そのあとを言うのも聞くのも横断歩道は短すぎた。
 
「アハハ、だからヨッコはそういう子なの」
「だってさ……」
 回覧板を受け取りながら聖也は凹んでいる。
「よしよし」
「なにがよしよし?」
「な~んでも」
  お隣りのドアを閉めながら、幸せ半分寂しさ半分の愛華であった。
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Regenerate(再生)・25≪詩織のパニック!パニック!パニック!≫

2019-12-29 06:35:09 | 小説・2
Regenerate(再生)・25
≪詩織のパニック!パニック!パニック!≫
       


 

 この三日、日本と、その周辺で特異な現象がおこった。

 防空識別圏に入ってきた中国の戦闘機に自衛隊のスクランブルがかかった。
 中国軍機は自衛隊機の40メートルにまで接近。非常に危険な事態になったが、直後信じられないことが起こった。亜音速で飛ぶ日中二機の戦闘機の間に、若い女性が割り込んできたのである。女性はライダースーツのようなものを着て、二機の戦闘機を揶揄するように、飛び回った。中国戦闘機のキャノピーに貼りつき、ピースサインをし、キャノピーの側面にニコニコシールを貼っていった。女性の顔は、パイロットが密かにファンになっている中国の女優にそっくりだった。パニックになった中国戦闘機はダッチロールのあと失速し、あわや海面にぶつかりそうなところで姿勢を取り戻した。
 自衛隊機は基地に戻るまで付きまとわれた。中国軍機同様、キャノピーに顔が付きそうになるまで接近。その顔はAKBの選抜メンバーのそれにころころと変わっていった。そして信じられないことに亜音速で、AKBの歌を20曲も歌いながら踊って見せた。その様子は日中双方とも映像が残されたが、両国とも公表はひかえた。

 スカイツリーの順番待ちをしている人たちの間に、突如女の子が降ってきた。女の子は空中で数回転すると、ネコのような身軽さで着地……したかと思うと5人に分身、ももクロのヒット曲3曲を披露して姿を消した。これはたくさんの人たちが目撃。数十分の間に動画サイトに投稿され、一日中大騒ぎになった。

 首都高で、居眠り運転していたセダンが、急に減速。後続のトレーラーは急ブレーキをかけたが、運転席とトレーラーの部分がへの字に曲がるジャックナイフ現象を起こし、防護柵を突き破って、真下の一般道に落下しそうになった。
 しかし、トレーラーは、一般道に激突する3メートル手前で止まった。ウンちゃんは気づかなかったが、一般道を走っていた車や通行人は信じられないものを目撃した。
 なんと鉄腕アトムが、落ちるトレーラーを持ち上げて、高架にもどしている。これもたくさんの人に目撃され、動画サイトを賑わせた。

 そして、昨日は30分間二回、東京中のスマホが使えなくなった。ともに通勤通学のラッシュ時だったので、この日はスマホによる事故が半減した。

 東京湾にゴジラが出現し、遅れて出現した戦艦大和が46サンチ砲の集中砲火を浴びせた。数十万人の人が目撃したが、これは映像には撮れなかった。大半の人は映画会社の壮大なCMだろうと思った。

「みんな詩織がやったことだな……」

 ラボで、ため息ついて、教授が呟いた。

「んだす、あたしは動力サーキットがブロックして動けなかったども、メモリーに幸子アンドロイドが映っているだす」
 ドロシーは、4日前、寮で起こったことをモニターに映して、ため息をついた。
「おそらく、この幸子アンドロイドが、詩織の秘密をバラシて、詩織はパニックになってしまったんだろう」
「早く話しでおくべきだったすか……」
「いや、我々が話しても結果は同じだよ。詩織の覚醒は、もうほとんど100%だが、それを支えるだけの自我が戻ってこない」
「したらば、なにしたらええんだすか?」
「わたしに考えがある。完全ではないが、これにかけてみるしかないだろう……」

 教授は、コンピューターのキーをいくつか押した……。
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乃木坂学院高校演劇部物語・80『乃木坂さん』

2019-12-29 06:23:52 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・80   
『乃木坂さん』  

 

 バルコニーに面したところに椅子とテーブル……その上には、良い香りの紅茶が注がれたティーカップがあった。

「いい香り……」
「春のゴーストブレンド」
 ヒラヒラと、桜の花びらがカップの中に落ちてきた。
「あら……」
「僕の演出」
「フフフ……気が利いてる」
 長閑に二人で笑った。
「お名前とか聞いていいですか。わたし……」
「仲まどか君だよね……僕の名前は勘弁して」
「どうしてですか……?」
 彼は、一見無造作に置かれた椅子たちに目をやった。
「僕は、たくさんの仲間達の代表だと思っている。あの椅子、みんな仲間が座っているんだ。数が足りないから、立ってるやつもいる」
「え……あなたのことしか分からない」
「そう、こんなにはっきり分かり合えるなんてめったにないんだ……みんな羨ましがってる。ここにいるのは、みんな戦争で死んだ人達。僕もそうだけどね」
「そうなんだ……」
「とりあえずは、乃木坂でいいよ。この成りだから、ここの生徒だったってことは隠しようがないからね」
「じゃ、乃木坂さん」
「ハハ、みんな笑ってる。喜んでくれてるよ」
「……こ、こんにちは。みなさん」
 わたしは、空席の椅子たちに向かって挨拶した……なんの反応もない。
「構わなくっていいって、でも挨拶してくれて嬉しそうだよ、みんな。僕たちはね、年に二三回『戦没者の霊』で一括りにして呼ばれる。あれって、切ないんだよ。みんな生きてたころは、それぞれ名前のある個人だったんだからさ。だから、たとえ乃木坂でも固有名詞で呼ばれるのはとても嬉しい」
 乃木坂さんは、とても嬉しそうに言った。こんな嬉しそうな人の顔って初めて見た。
 それまでは、一人牢獄に何年も、とてつもない孤独と切なさの中に閉じこめられやっと笑顔になった……そんな感じがした。
 爛漫な春の風情と、花びら一つ入った紅茶の香りが、それを際だたせる。
 その切なさが、ぐっと胸にきて、鼻の奥がツンとしてきた。
 わたしは思わずくり返した。
「乃木坂さん……乃木坂さん! 乃木坂さん!!」
 くり返した分だけさらに胸が熱くなってくる。
「ありがとう……なんだよ。君が泣くことないだろ」
「エヘヘ、人の名前呼んで、こんなに喜んでもらったの初めてだから!」
「いい人だまどか君は」
「あの……焼き芋落っことしそうになったとき、受け止めて窓辺に置いてくれたの乃木坂さん?」
「え……」
「ほら、携帯出そうとして、ポケットに手を入れたら勢いでスカートのホック取れちゃって脱げそうになっちゃってさ」
「そ、そりゃ……そうだけど、花柄の下着なんか見えなかったからね」
「え……見えちゃったんだ!」
 恥ずかしいより、笑っちゃった。幽霊さんでも赤くなるんだ……!
「ぼ、僕は、まだ運のいいほうなんだ」
「え、花柄のこと……?」
「ち、違うよ。ぼくはね、まだきちんとした人間の形してるだろ?」
「うん、言わなきゃ幽霊だって分からない」
「人によってはね、人間の姿で幽霊になれないほど痛めつけられた人もいるんだよ」
「それって……ゾンビみたいな?」
「アハハ、そんなの幽霊の僕が見ても怖いよ。そんなんじゃないんだ……あまりに激しい空襲の火で焼かれるとね、骨どころか魂まで焼けてしまうんだ」
「それって……」
「幽霊になってもね、キューピーのお人形ぐらいに縮んじゃって……目も鼻も口も無くなって、幽霊同士でも意思の疎通が難しくなって……むろん焼き芋を受け止めることなんかできない……」
 乃木坂さんは、遠くを見る目になった。
「乃木坂さんは、そういう人を知ってるんだね……それも、ごく近しい人……でしょ」
「……勘もいいんだ、君は」
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