大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・108『戦いすんで・3』

2019-12-05 09:24:18 | 小説

魔法少女マヂカ・108  

 
『戦いすんで・3』語り手:マヂカ 

 

 

 ポーーーン ポーーーン

 

 千駄木女学院は正門から入って左側がテニスコートで、ボールを打つ軽快な音が響いている。

「あ、ブリンダだ」

 今日のブリンダは、テニス部員に混じって元気にラケットを振っている。ネットを挟んで四人でやっているのでダブルスなんだろう。

 セミプロのテニスプレイヤーとしてスパイしたこともあるわたしから見ても、ブリンダのプレーはなかなかのものだ。調理研の四人も惚れ惚れと見ている。特務師団隊員の自覚が持てて、初めて見るブリンダは彼女らの目には、かなりの高得点に映っている様子だ。

 ラブ・フォーティー! マッチ ウォン バイ ブリンダ!

 審判の子が興奮気味に試合の終了を宣言。あまりの興奮に、ブリンダのペアの名前を忘れている。ブリンダは、笑顔で指摘すると、審判は慌てて訂正。わたしたちには気づいていたようで、ラケットを振って近づいてきた。

「やあ、わざわざどうも。よく来てくれた、キャフェテリアにでも行こう。ガーゴ、あと頼んだよ!」

 ブリンダが声をかけると、日焼けしたテニス部員が白い歯を見せて頷いた。

「えと……友里、清美、ノンコに、そちらがカオスのサマンサ・レーガンだね」

 ラケットで指しながら、全員の名前を当てる。

「さすが、アメリカの魔法少女!」

 ノンコが感心すると、チチチと指を振るブリンダ。

「戦う仲間としては当然さ。オレの方がポリ高に赴くべきだったんだが、ご覧の通りテニス部の指導をしてやる約束があったもんでな。しかし、きちんと意識を持って任務に付けるのは嬉しいよ。これからは、待機中やオフの時にも友として付き合ってくれ。そちらのスパイ君もな」

「テヘ、こちらこそね」

 サムもブリッコでカマシテいる。

 

「ブリンダ先輩、用意は出来ています。こちらのお席に」

 キャフェテリアに着くと、制服の女子が待ち受けていて窓際のテーブルを示した。

「ああ、ありがとう。何もないが、千駄木名物のチーズケーキとダージリンを用意した。くつろいでくれ」

 厨房の方から、別の女子がケーキとお茶をワゴンに載せてサービスしてくれる。

「学校もすごいけど、ブリンダさんもすごい。みんなブリンダさんのことリスペクトしてるのが、よく分かる!」

「さん付けはよしてくれよ、友里。君たちがマヂカに接するようにしてくれればいいから」

「は、はい、いえ、うん」

「「「アハハ」」」

「竜神戦では、駆けつけるのが遅れて、ごめんなさい。なんか、余裕なさそうだったから、本当に申し訳なくて」

 清美が、率先して頭を下げて、みんなも、それに倣う。

「いやいや、気にしないでくれ。結果的に、敵を排除できたんだから、ノープロブレムさ。アハハハハ」

 ブリンダは、どこまでも上機嫌で鷹揚だ。

 

 ニ十分ほど歓談して、千駄木女学院を後にした。

 

「あ、ごめん、忘れ物した。先に行ってて」

 正門を出たところで、忘れ物に気づいた……ふりをして、校内に戻った。

 ブリンダは、テニスコート脇のベンチでひっくり返っている。いま、飛び立ったんだろう、十数羽のカラスが西の空に消えていく。

「ウ……マヂカ!?」

「アハハ、こんなことだろうと思った」

「い、いや、ちょっとな、ベンチの温もりを楽しんでいたところだ」

「やっぱ、堪えてんでしょ。ほんと、ごめん。でも、あの子たちもオンオフが無くなるから、いいチームワークがとれると思うわ」

「ハハ、そうだな。これからも、よろしく頼むよ」

「エキストラは、ガーゴイルが手配したのね」

「あ、あいつも、カラスの仲間が増えたみたいだ」

「日暮里の駅から、カラスたちに見張らせて、わたしらが到着したら、ササッとお芝居したのね」

「ち、ちが……おもてなしの精神だ。それに、カラス以外にもな」

「ああ、給仕に出てくれたのは、公園の河童」

「企業秘密だ」

「よし、今日は、特別にマッサージしてやろう」

「お、おまえがか!?」

「ああ、せめてもの気持ちだ」

「す、すまん……ouch! o ouch !

 

 暮れなずんで、下校時間が迫るまで戦友のマッサージをして明日に備える魔法少女であった。

 

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乃木坂学院高校演劇部物語・56『……忠クンがいた』

2019-12-05 06:35:17 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・56   
『……忠クンがいた』 


 
「いつまで、つっ立ってんだ」

 先生にそう言われて、わたしは座卓の長い方の端っこに座った。つまり、床の間を背にした先生からは右、三時の方向。
で、先生の正面、十二時の方向に座卓を挟んで……忠クンがいた。
「……うっす」
「ども……」
 たがいにぎこちない挨拶をする。
「ハハ……青春とは照れくさいもんだな」
 そう言いながら、先生は右のお尻を上げた。カマされてはたまらないので、思わずのけ反った。
「あのなあ、まどか。人を、そんな屁こき大王みたいに見るんじゃねえよ。俺はリモコン取ろうと思っただけなんだから」
 忠クンが笑いをこらえている。
「あのなあ、忠友。こういう状況で笑いをこらえるのは、かえって失礼だぞ」
 で、忠クンが笑い出し、先生もわたしもいっしょになって爆笑になった。
「あ、これ、父から預かってきました。どうぞお納めください、本年もいろいろお世話になりました、来年もどうぞ宜しく。とのことでした。また、今日は兄が伺うことになっていましたが、折悪しく……」
「いいって、いいって、そんな裃(かみしも)着たみたいな挨拶。それより、せっかくの剣菱の角樽なんだ、三人でぐっと。おい、婆さん……!」
「あの……わたしたち未成年ですから」
「あ……そうだっけ。惜しいなあ……剣菱って、赤穂浪士が討ち入りの前にも飲んだって縁起のいい……」
「あと五年待っていただければ。ね、忠クン」
「オレは、あと四年だよ」
「あ、ごめん。今年の誕生日忘れてた……」
「いいよ、こないだのコンクールまでは疎遠だったし、まどかも、そのころ忙しかっただろうし」
「ハハ、そうやって、誕生日の祝いっこしてるうちが華なんだぜ。この歳になっちまうと、カミサンの歳も怪しくなっちまう」
「女の歳なんて、六十超えたら怪しいままでいいんですよ。いらっしゃい、お二人さん」
 奥さんが、お茶とヨウカンを持ってきてくださった。
「なんだい、羊羹かい。この子たち若いんだからさ、ポテチにコーラとかさ」
「忠君もまどかちゃんも甘い物好きなんですよ。まどかちゃんは炭酸だめだし。ね」
「よく覚えてますね」
「二人とも赤ちゃんのころから、うちがかかりつけだから……あなた、なにしようってんですか?」
「いや、この二人に昨日録画したの見せてやろうと思ってさ……」
「もう、昨日あんなに教えたじゃありませんか……」
「ひとの体ってのは変わらないけど、こういうのは、どうしてこうも買い換えのたんびに……」
 医者らしく愚痴りながら、先生はリモコンをいじるが、ラチがあかない。
「もう……こうやるんですよ」
 奥さんは、リモコンをひったくり、チョイチョイと操作した。
「……なんだ、なんにも映らないじゃないか」
「レコーダーは立ち上がるのに時間がかかるんですよ」
 先生はつまらなさそうに、ヨウカンを口に運んだ。
 
 それが合図だったかのように、大画面テレビに……はるかちゃんが映った!
 
 スタジオの中を物珍しげに歩くはるかちゃん。急にライトが点いて驚く。その一瞬の姿がアップになる。画面の端にレフ板、上の方には大きな毛虫みたいなマイクがチラリと映った。
 その度に、はるかちゃんは小さな歓声をあげる。わたしが知っているはるかちゃんなんだけど、そうじゃなかった……って、分かんないよね。
 はるかちゃんは、どちらかというと大人しい感じの子だったのよね。
 それが、控えめではあるけども、こんな表情で驚くはるかちゃんを見るのは初めてだ。
――はるかちゃん、ちょっとその本抱えてくれる?
――はい……これでいいですか?
――はるかちゃん、カメラの方向いてくれる?
――はい……やだ、ほんとに撮ってるんですか!?
 はるかちゃんが驚いて、持っていた本で顔を隠す。すぐにカメラがロングになり、はるかちゃんの全身像。そして、別のカメラの横からバストアップに切り替わる。
 カワユイ……だけじゃない。なんての……せいそ(清楚……こんな字だっけ)
 
 こんなはるかちゃんを見るのは初めてだ。
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Regenerate・1≪始動の時≫

2019-12-05 06:27:38 | 小説・2
Regenerate・1
≪始動の時≫  


 
 
 例えて言えば、バグが急に回復したようだった。

 入国審査が済んだあと、エントランスに移って詩織は急に目眩がした。
 初めて来た曾祖母の母国の土を踏んだ興奮だったかもしれない。治ったと思った立ちくらみがぶりかえしたのかもしれない。

 ほんの一瞬、この周りにいる人たちが分からなかった。でも、すぐに思い出した。みんな飛行機のエコノミーでいっしょだった人たちだ。
 母親に連れられたブロンドの子と目が合って、にっこり笑って小さく手を振ってやった。
「ハハ、あの子もボケてる」
 たしかシンディーと言った女の子は、眠そうに目をこすりながらキョトンとしていた。
 四か国語のアナウンスの二か国語を理解して、詩織は待ち人を探した。自分と同じカンザスの人間なので、感じというか、カンザスオーラで分かると思っていた。

 曾祖母の母国とは言え外国だ。五分もすると、いささか不安になり、スマホを出して電話しようかと思った。
 
 が、その必要はなかった。
 
 自分と同じようにスマホを握って、カンザスオーラむき出しのギンガムチェックがキョロキョロしているのが分かった。
{ハーイ、ドロシー! ドロシー・オブライエンでしょ}
{あー、詩織! 髪切ったのね。てっきりロングヘアーだと思って}
{日本は梅雨だって聞いてたから、切ってきちゃった。あなたは写真通りね。ギンガムチェックにGパン。絵にかいたようなカンザスね}
{ようこそ、エメラルドの国へ。ここ関東だから東の魔女がいるかもよ}
「ね、あのゲートから、こっちは日本なんだから、日本語でいかない? これから毎日喋るんだから」
「んだすな、日本語でいくか。あたしちょこっと訛ってっけど、堪忍してねえ」
「ハハ、それ東北弁でしょ? ずいぶんむつかしい日本語使うのね」
「したっけ、あたし、最初に来たんが八戸だもんで、東京さ来て通じねんで、困ったよー。こっでも、だいぶましになったべ……なったでしょ?」
「でも、ドロシーの空気って基本的にカンザスだよ。あたし、とってもなつかしい」
「ハハ、カンザスもアメリカの東北みてえなもんだす」
「いっそ、苗字がゲイルだったら、かんぺきにカンザスなのにね」
「ハハ、そこまではね。んでも詩織、あんだ、日系ても四世だべ。日本語うめーすな」
「うち、家の中じゃ日本語だから。ひいばあちゃん、日本語しか分からないから」
「そっか。そんだけ喋れりゃ、ノープロブレムだしょ」
「あ、電車の駅、あっち……」
「あ、レンタカー借りでだったから」
「ごめんね、面倒かけさせて」
「なんもなんも」

 その時、混雑している出国ゲートで、詩織は危険なオーラを感じた。
 詩織は相手を刺激しないよう、走らず、しかし早足で、そいつに近づくと、アジア系の男を羽交い絞めにし、あっという間に上着を脱がせた。あたりは騒然となったが、序の口だった。
 詩織が上着を、ゲートポールに巻き付け、すごい勢いで窓ガラスに投げつけると、厚さ5ミリのガラスを突き破って、上着付きのゲートポールは建物の外で爆発した。
 その間も、男を足で踏みつけにして叫んだ。
「まだ体に爆発物を巻いてる。ポリスを呼んで!」
 スマホが起爆装置になっているのが分かったので、片手でスマホをへし折った。

 詩織が始動した……。
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永遠女子高生・19・《京橋高校2年渡良瀬野乃・10・たこ焼きキャッチ!》

2019-12-05 06:05:58 | 時かける少女
永遠女子高生・19
《渡良瀬野乃・10・たこ焼きキャッチ!》          


 
 
 
「わたしと秀はいとこ同士なんだよ」

 野乃は3個目のたこ焼きを落としそうになった。

「知らなかったのね?」
「一之宮先輩と里中さんって、とってもしっくりしてるやないですか。話してても一緒に歩いてても、すごく自然で、なんていうか……友だち以上いう感じが滲み出てますでしょ」
「ハハハ、そりゃ赤ちゃんの頃からいっしょだもの。あ、あたしと秀って、どっちも東京言葉でしょ?」
「ええ、すごく自然な標準語」
「東京弁よ、下町のね。気を付けていないとアサシシンブンとかになっちゃう。中学に入ったころに秀もわたしも大阪に引っ越してきたの」
「いっしょにですか?」
「うん、親同士が兄弟で工場やってんの。秀は工場を継ぐ覚悟。でね、仕事の関係で絵とか彫刻とかの勉強してるんだ」
「仕事でですか?」
「うん、3Dプリンター」
「あ、なんだかフロンティアテクノロジーって感じですね!」
「もう当たり前の技術よ。これにどんな付加価値を付けるかが勝負。そのために秀はアートの鬼にならなきゃならないの」
「鬼に……」
「鬼になるのに大事なことはね、モチベーションてか、創作意欲。ゴッホみたいにたぎるものがなければ続かないものなの」
「あ、それ分かります!」
 野乃はお父さんの仕事を思い出した。
 大学で舞台美術を教えているお父さんは「もっと湧いてくるもんがあったら、教えるんとちごて、自分で第一線に立つんやけどなあ」と言っている。
「とにかく、渡良瀬さんは、そういうモチベーションを上げさせるだけの魅力があるのよ」
「そ、そうなんですか……」
 野乃は耳まで赤くして照れ、照れながら5つ目のたこ焼きを取り落してしまった。「「あ!!」」とあやめと野乃が揃った。
「ホ!……ハグ!」
 野乃は回転レシーブのように、落下するたこ焼きを床スレスレのところで口に収めた。
 たこ焼き屋のおばちゃんと居合わせたお客さんがあやめといっしょに拍手した。
「秀が魅力に感じてるのは、そういうイキイキした渡良瀬さん。あのペアの少女像は傑作よ。ぜひ、協力してあげて!」
「は、はい!」

 野乃は、その場で秀一に電話した。電話の向こうで、秀一が飛び上がらんほどに喜んでいるのが分かった。

 そして、野乃のたこ焼きキャッチを――これはいける!――と、膝を打った商店会の会長がいた。
 
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小悪魔マユの魔法日記・115『レコード大賞・1』

2019-12-05 06:00:17 | 小説5
小悪魔マユの魔法日記・115
『レコード大賞・1』    



 本年度のレコード大賞新人賞は、もう一組ございます!

 会場の新国立劇場は意外のささやきが、さざ波のように広がった。

 今年の新人賞は、AKRとオモクロがノミネートされ、その通りに、たった今発表が行われたところである。それが、異例にも、もう一組の発表になったわけである。会場のざわめきも無理はない。

「例年、新人賞を受けた人たちのなかから、一組の最優秀新人賞が選ばれますが、今年は、審査員一同の意向により見送ることとなりました。その代わりと申してはなんですが、もう一組の新人賞を選ぶことになりました。それでは発表いたします……」
 司会の堺利彦が、審査結果の封を切る間にドラムロールが鳴り、会場は暖かい緊張感につつまれた。
「本年度、三番目の新人賞は、この秋に、彗星の如く現れ、居並ぶライバルと見事に肩ををならべ、新曲『東京タワー』で、躍り出た「神楽坂24」のみなさんです!」
 リーダーの桃畑加奈子を先頭に、メンバー二十四人と、プロデューサーの別所がステージに上がった。審査員席では、審査員の仁和明宏が暖かく拍手をしている。
 仁科香奈のアバターの中でマユは気づいていた。

――仁和さんが押してくれたんだ。

「わたしたちは、この秋にオモクロのユニット『オモクロ・E残グミ』として発足いたしました。その陰では、オモクロの上杉プロディユーサーや、別所プロディユーサー、そして関係のみなさんの暖かい励ましがあり、この晩秋に『神楽坂24』として発足したばかりです。そんなところで、AKRさんや、オモクロさんと肩を並べて新人賞をいただけるなんて、嬉しい前に怖ろしいような気がします……」
 
 ここで、加奈子の胸には、オモクロの発足メンバーとしてがんばり、やっと軌道に乗りかけた頃、吉良ルリ子や安藤美紀、美川エルたちに乗っ取られるようにして、『E残グミ』として事実上の二軍落ち、そして父、高峯純一との和解、アイドルグループの第三極としての『神楽坂24』の再出発。そして、今回の思いもしない新人賞……まるで戦い疲れて、帰国し、大統領から勲章をもらった兵士のような気持ちだった。実際初期の『おもしろクローバー』のころから、脱落していった仲間も少なくはない。
 観客席で、娘の晴れ姿を見ている往年の名俳優高峯純一の胸には、終戦後、負傷兵として復員し、俳優の道を真っ当できなかった父、また自身撮影中の事故で、父同様に道半ばで俳優を辞めなければならなかった自分の想いが重なった。
 俳優としての嫉妬心から、娘の芸能活動を素直に応援してやれず、それどころか、生き霊に成り果て、その邪魔をした醜い自分。しかし、娘の桃畑加奈子は、『神楽坂24』の芸術顧問の席を用意してくれた。

「それでは、新人賞『神楽坂24』のみなさんに歌っていただきます。作詞:高峯純一、作曲:塩田隆一『東京タワー』です!」

《東京タワー》

 キミと登った東京タワー スカイツリーもいいけれど キミとボクには程よい高さだよ
 二人そろって 高所恐怖症 二人に程よい距離だった
 神谷町駅徒歩7分 見上げた姿は333メーター 赤白姿のストライプ
 ボクの心もストライプ 告白しようか止めようか

 太陽背にした東京タワー 焦らすねボクの心を 神谷町から7分に高まるテンションさ
 キミはスキップ、一歩先 それがとても遠く愛おしく
 やっと踏んだキミの影 はじけた笑顔眩しくて 赤白姿のストライプ
 ボクをせかせてストライプ やっと追いつき照れ笑い

 ああ 東京タワー ああ 東京タワー ああ ああ 東京タワー

 そう、元の詞は加奈子だけれど、詞の構想を膨らませてくれたのは「お父さんだよ」と、作詞の名誉を与えてくれた。歌う加奈子の目にも、父、高峯純一の目にも光るものがあった。

――どう、天使が、ちょっと手を出せば、こんなにみんながハッピーになったじゃん!

 美川エルのアバターに入っているオチコボレ天使・雅部利恵の思念が飛び込んできた。

――あのね、あんたのお節介の修正にどれだけ小悪魔のわたしが苦労したか……!

 仁科香奈のアバターに入っているオチコボレ小悪魔・マユの思念が飛んだ。
 二人の思念は、劇場の中でスパークしたが、みんな演出効果だと思って不思議には思わなかった。仁和明宏一人を除いて。

 そして、いよいよレコード大賞の発表の時が迫ってきた……。
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