大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

大阪ガールズコレクション:5『……うん、そうしよう 都島区桜町商店街』

2020-08-05 13:25:20 | カントリーロード

大阪ガールズコレクション:5

『……うん、そうしよう 都島区桜町商店街』  谷町線】都島駅始発電車の時刻は? | Osaka-Subway.com

 

 

 おお 大阪にもトシマ区があるんだ。

 

 思わず笑いそうになった。

 ちょっとブルーな気持ちで『次は天神橋筋六丁目 天神橋筋六丁目 谷町線 阪急線はお乗り換えです……』のアナウンスを聞いていた。

 扉の脇に立っていた大学生風の二人が、路線図を見て天六の次の駅を「としま」と読んだのだ。

 景気づけに天六で降りようと思っていたけど、この二人が『都島』の正しい読み方を知ったら、どんな顔をするだろうかと、そのまま我が町である都島までは下りないことにした。

 都島駅が間近になって車内放送が『次は都島(みやこじま)……』と告げるんだけど、さっきの大学生二人は反応しない。

 おそらく、彼らの関心は次はどこへ行くとか昼ご飯とかの観光客のそれ移ってしまって大阪の『トシマ』には興味を失ったんだ。

 駅に着いて降りる時に「ほんとうはミヤコジマって読むんですよ」とか言ってやりたい気もしたけど、やりません。行儀よく道を開けてくれた二人に微かな会釈をしてホームに降りる。わたしの会釈に反応はない。同じドアから五人も降りたんだから気が付かない……というより、見についた東京のマナーで道を開けただけだから、わたしの会釈など気が付かないだろう。

 やっぱり天六で降りておけばよかった。

 天六には、うちの商店街が失った活気が、まだ十分すぎるくらい残っている。

 商店街の賑わいの中、人の流れを見ながらお茶でもしようと思っていた。今日で最後の運動部みたいなバッグをコインロッカーにぶち込んでね。商店街の賑わいは元気をくれるから。

 

 我が街は、都島の駅を上がって表通りを東へ二分、ポキッとわき道に入った『桜町商店街』。

 名こそ、隣の天六商店街と同じだけど、規模がね。天六は南北2.6キロもある日本一の商店街。我が桜町商店街は、おおよそ100メートル。天六の1/26しかない。半分ほどは閉めたままなので、1/50といったところだろうか。

 うちは、戦後すぐからの『百合美容室』……だった。

 今でも看板は掛けてるけど営業はしていない。

 アーケードに入ると、子どもたちのさんざめきが聞こえる。

 スーパー横の駐車場に保育所の仮園舎があるんだ。近所の保育所が全面改築されるので、それまでの仮園舎。

 え?

――保育助手募集――

 胸が高鳴った。思わず、そのまま入り口のインタホンを押すところだ。

 時給千円で、園内の掃除や給食の手伝い、保母さんのお手伝い。

 でもね、やっぱわたしは美容師にならなくちゃ。

 首を90度曲げると、我が家の『百合美容室』の看板が見える。

 二代目のお婆ちゃんに万一の事があったら、叔母ちゃんたちとお母さんとで分割相続。

 25坪の店舗兼住宅、分割なんかできない。売ったお金を分けるしかない。そうなったら百合美容室はお終いだ。

 やっぱ、美容師になろう。

 今日で最後と思った美容学校のバッグを揺すりあげる。

 叔母ちゃんたちも「ユッコが四代目になるんやったら、相続放棄してもええねんよ」と言ってくれてる。

 お母さんと折り合いの悪い叔母さんたちだけど、わたしのことは可愛がってくれた。

 

 ……うん、そうしよう。

 

 家までの残り50メートルほどをスキップした。

 

 ※ 桜町商店街は架空の商店街です 

 

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ライトノベルベスト・高校奇譚 〔左足の裏が痒い……〕

2020-08-05 06:11:33 | ライトノベルベスト

ライトノベルベスト・高校奇譚 
左足の裏が痒い……〕
        


 

 左足の裏が痒くて目が覚めた。

 覚めたと言っても、頭は半分寝ている。無意識に手を伸ばし膝を曲げて、手を伸ばす。
 掻こうと思った左足の裏は、膝から下ごと無くなっていた。

「あ、まただ……」

 そう呟いて、あたしは再びまどろんだ……。

 目覚ましが鳴って、本格的に目が覚める。
 お布団をけ飛ばして、最初にするのは、パジャマの下だけ脱いで左足の義足を付けること。
 少し動かしてみて、筋電センサーがきちんと機能しているのを確かめる。

――よし、感度良好――

 そして、再びパジャマの下を穿いて、お手洗いと洗顔、歯磨き。
 それから部屋に戻って、制服に着替える。そして、念入りにブラッシング……したいとこだけど、時間がないので手櫛で二三回。自慢じゃないけど髪質がいいので、特にトリートメントしなくても、まあまあ、これで決まる。
 むろん、セミロングのままにしておくのなら、これでは気が済まない。キュッとひっつめにしてゴムで束ねた後、紺碧に白い紙ヒコーキをあしらったシュシュをかける。
 これで、標準的なフェリペ女学院の生徒の出来上がり。

 お父さんが出かける気配がして苦笑、直ぐにお母さんの声。

「早くしなさい、遅刻するわよ!」
 遅刻なんかしたことないけど、お母さんの決まり文句。あたしと声が似ているのもシャクに障る。
「はーい、いまいくとこ!」
 ちょっと反抗的な感じで言ってしまう。実際ダイニングに降りようとしていたんだから。

 お父さんが、ほんの少し前まで居た気配。お父さんの席に折りたたんだ新聞が置いてある。

「まだ、そこに新聞置くクセ治らないのね」
「え……」
 洗濯物を、洗濯機に入れながらお母さん。
「そういうあたしも、お父さんが出かける気配がするんだけどね」
 と言いながら、ホットミルクでトーストとスクランブルエッグを流し込む。
「また、そんな食べ方して。少しは女の子らしく……」
「していたら、本当に遅刻しちゃう」
「それなら、もう五分早起きしなさい!」
「こういう朝のドタバタが、年頃の女の子らしいんじゃん」
「もう、減らず口を……」
「言ってるうちが、花なの。ねえ、一度トーストくわえたまま、駅まで走ってみようか!?」
「なにそれ?」
「よくテレビドラマとかでやってんじゃん。現実には、そんな人見たことないけど」

 これだけの会話の間に食事を済ませ、トイレに直行。入れてから出す。健康のリズム。

 消臭剤では消しきれないお父さんのニオイがしない。ガキンチョの頃から嗅ぎ慣れたニオイ。
 これで、現実を思い知る。
 お父さんは、もういない……三か月前の事故で、お父さんは、あたしを庇って死んでしまった。
 あたしは、左足の膝から下を失った。
 最近、ようやくトイレで泣かなくなった。

「よし、大丈夫」

 本当は学校で禁止されてんだけど、セミグロスのリップ付けて出発準備OK!
「いってきまーす!」
「ちゃんと前向いて歩くのよ、せっかく助かった命なんだから」
 少しトゲのある言い方でお母さん。
 あのスガタカタチでパートに出かける。あたしによく似たハイティーンのボディで。

 あの事故で、お母さんはかろうじて脳だけが無事で、全身、義体に入れ替わった。オペレーターが入力ミスをして、お母さんの義体は十八歳。
 一応文句は言ったけど、本人は案外気に入っている。区別のため、お母さんはボブにしているけど、時々街中で、あたしと間違われる。

 駅のホームに立つと、急ぎ足できたせいか、また左足の裏がむず痒くなる。
 この義足は、保険の汎用品なので、痒みは感じないはずなんだけど……。

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かの世界の片隅へ:31『無辺街道の眠り姫・2』

2020-08-05 06:00:57 | 小説5

かの世界この世界:31     

『無辺街道の眠り姫・2』  

 

 

 寝た子を起こすな……。

 

 言った時は遅かった。

 ケイトがツインテールのお尻を爪先でツンツン。

 

 プギャーーー! 

 

 アニメ調の悲鳴を上げて、ツインテールは地上五メートルくらいに跳び上がった。

「な、なにやつ!? 気配を消して機嫌よく昼寝をしておるところを!」

「あんた飛べるんだあ!」

 羽もないのにホバリングしているのに感心。ケイトは見かけによらず乱暴な反応をするツインテールにビビっている。

「我は主神オーディンの娘にして無辺街道を統べるブリュンヒルデなるぞ! 狼藉は許さぬぞ!」

「あ……えと……起こして悪かった。な、ケイトも謝れ」

「あ、ご、ごめん」

 自分でチョッカイ出しておきながら、ちょっとそっけない。

「わたしは剣士のミキ、こっちは妹分のケイト。なんだかメッチャクチャ可愛いお人形が横になっていたんで、ついケイトがツンツンしたんだよ。なにせ田舎剣士のことなんで、キチンとした礼も知らぬ。キミの可愛さゆえの事、この通りだ」

 ケイトの頭を押さえて、いっしょに詫びる。

「そ、そうか。我の稚けなき可愛さのあまりであったか。それならば無下に責めるのも無体というものであろう……」

 ツインテールは、わずかに機嫌を直して地上に下りてきた。

「む、頭が高い……蹲踞せよ」

「そんきょ?」

「畏まって、頭を下げろってことよ」

 異世界ものアニメでやっているように、片膝ついて畏まる……が、それでも、こちらが少し高い。

「むむ……」

 ツインテールはキョロキョロすると、傍らの人の頭ほどの石を見つけて、その上に立った。

「近う寄れ」

 四五歳の子どもがツッパラかっているのはなんともおかしいんだけど、こじらせたくないのと、ここまでの無辺街道が退屈だったので、合わせてみることにする。

「して、そなたたちは、何ゆえ物々しく武装して我が無辺街道を通るのじゃ?」

「話せば長いことになりますが、我らは並行世界からの旅人でございます。魔物を討伐して、この世界と共に我らの世界の安寧をはかろうと旅をしております」

「そうか、そなたたちも崇高なる使命を帯びておる勇者なのだな。ここで出会うたのもオーディンの賜物であろう。もう日も傾きはじめる。ここらで一夜のキャンプにするが良いであろう」

「はあ、しかし、歩き始めて、まだ五時間ほど。今少し距離を稼ぎとうございますので……」

 すると、ツインテールが空を指さす。つられて見上げると、俄かに空は夕闇の茜色に染まった。

「あ、いつの間に?」

「慣れぬ旅に、時間の感覚も狂ったのであろう。ゆるりと休め」

 ケイトは素直に茜の空を信じたが、わたしは「御免」とことわって立ち上がる。すると、茜の空は、ここを中心とする半径百メートルほどで、その先は、まだまだ昼下がりの日差しだ。

「こ、ここの夕暮れはまばらにやってくるのだ!」

「ならば、日差しを拾いながら進んでまいります。行くぞ、ケイト」

「う、うん」

 よっこら立ち上がって回れ右して歩き出すと、ブーーンと音をさせてツインテールが回り込んできた。

「な、ならば、わたしも連れていけ!」

「いや、二人で行きます」

「この異世界、ブリュンヒルデを供とすれば無敵であるぞ! 奥つ城まで顔パス同然じゃ!」

「まっとうに行きます」

「つれないことを申すな」

「けっこうです」

「そこをなんとか」

「いささかウザったい」

「ウザったいくらいが旅の無聊の慰めにもなろうというものじゃ、なあ、どうじゃ、どうじゃ、どうじゃあ(^_^;)」

「あのね……」

「プギャーー! なにをいたす!?」

 ツインテールを掴むと、傍らの灌木の枝にチョウチョ結びにしてやった。こいつは地上にいる限りは大したことは無いと見きったからだ。

「さ、行くぞ」

「いいの、ほっといて?」

「いいわけないだろ! ほどけ! 連れてけ! 連れて行けよ!」

「テル、ちょっと可哀そう」

「仏心を出すな」

「連れてけ! 連れて行ってよ! 誰かに連れて行ってもらわなきゃ、オーディンの戒めで無辺街道の外には出れないんだよー!」

「なんだか、訳ありっぽいよ」

「かまうな」

「プギャー! かまえ! かまえよ!」

 かまってらんないので、ケイトの手を引いてズンズン進んで半ば駆けるようにして街道まで戻った。

 プギャー! プギャー! プギャアアアアアアアアアアア!!

 数百メートル離れてもツインテールの叫び声が付いてくる。戒めが解けるわけもなく、どうやら、街道に居る限りは耳から離れないようだ。

「これは、たまらん!」

 もう、ガンガンと耳鳴りのようになってきて、たまらず戒めの灌木まで戻った。

 涎と涙でグチャグチャになった姿は、まるで、こちらが幼児虐待をしたような気分にさせられて、しかたなく解いてやる。

「きっと戻ってきてくれると思った! じゃ、これからはよろしくな!」

「よろしくするかどうかは、お前次第だ」

「まあ、役に立つから、な!」

「行くぞ」

「合点! それから、わたしのことはブリュンヒルデって呼べ、ブリュンヒルデ!」

「ブリュンヒルデ……びみょうに長いかも」

 ケイトが困った顔をする。

「大きくなったら呼んでやる。それまではブリだ」

「ブ、ブリ……(;'∀')」

「行くぞ、ブリ!」

 

 三人の旅になって、無辺街道は、まだ道半ばであった……。

 

☆ ステータス

 HP:200 MP:100 属性:剣士=テル 弓兵=ケイト

 持ち物:ポーション・5 マップ:1 金の針:2 所持金:1000ギル

 装備:剣士の装備レベル1 弓兵の装備レベル1

 

☆ 主な登場人物

  

  テル(寺井光子)   二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトと変えられる

 ブリ         ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘

 二宮冴子  二年生  不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生  セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生  ポニテの『かの世部』副部長 

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