大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・004『修学旅行・4・湾岸線』

2020-08-21 14:13:04 | 小説4

004

『修学旅行・4・湾岸線』    

 

 

 正面ロータリーで同級生三人(ダッシュ、彦、未来)を拾うとアナログのトヨタは湾岸線を北に向かった。

 

「警察とか追いかけてこないのかなあ?」

 未来が、少し期待したような口ぶりで背後や上空を気にする。

「だいじょうぶなのよさ。非は向こうにあゆんだかや、まあ、マークはしゃえてゆだろうけど」

「しかし、アナログってのは面白いけど、二層走れねえのは気分悪いな」

 ※:二十三世紀の車はパルスエンジンで浮遊走行し、道路は二層構造になっている。アナログ車はタイヤで接地走行するので、地上である一層しか走れない。

「地球に着いたら絶対アナログって言ってたのは誰だ」

「そりゃ俺だけどさ、走るんなら鈴鹿とか富士スピードウェイとか筑波だろ」

「鈴鹿以外は閉鎖されてるぞ」

「そうなのか?」

「ダッシュは遅れてるう」

「古典サーキットは維持費がたいへんだからな、技術継承のためだけなら筑波でも十分だった。文化財的価値を勘案すると、日本じゃ鈴鹿ということになる」

「まあ、とにかくさ、Gとか加速感とか慣性の法則とか路面をタイヤが噛むのを感じてみたかったということさ。この滑らかさじゃパルス車と変わんねえし」

「贅沢言わない、せっかくの修学旅行なんだから楽しむことに関して口を動かしてよ」

「いちおう、アキバに向かってゆのよさ」

「お、しょっぱながアキバか! ちょっち検索しなきゃな」

「あ、インタは反則ぅ」

 ※:インタ=インタフェイスのこと、地球では埋め込み型が多いが、火星では様々な理由からウェアラブルや携帯式になっているものがほとんど。ちなみに、修学旅行中の四人は古典的な『旅の栞』の携帯を義務づけられ、緊急時以外のインタは禁止されている(ダッシュのように守っていない者も多い)

「あんな黄表紙本みたいなの持ち歩けねえ」

「黄表紙本はないでしょ、モデルは『るるぶ』なのよ。編集にはわたしも入ってんだからね」

「え、そうなのか?」

「『るるぶ』と黄表紙を一緒にする神経も分からん、黄表紙は江戸時代で『るるぶ』は昭和・平成だぞ」

「ああ、オレ歴史は苦手だし(*ノωノ)、どっちもアナログの紙媒体だし」

「んなんじゃ、期末テスト、また欠点とるよ~」

「ダッシュ、卒業だけはいっしょにしような」

「うっせ! 修学旅行中は、そうゆう話は無しだろおがあ!」

「すまん、ダッシュの言うこと聞いてると、つい意識が現実にもどされてなあ」

「彦も、ナニゲにきついじゃん(;'∀')」

「テルがぜったい、卒業させてやゆかや!」

「あ、そーゆうのいいから」

「小父さんから、ぜったい卒業しゃしぇてって言われてゆのよさ。下宿人としては、大家の頼み、おりょしょかにはできないのよさ」

「あ、あれ、レインボーブリッジじゃねえのか!? ほら、歴史とか国語とかに出てきた!」

「ああ、あれがあ……」

「ダッシュでも教科書に出てくること憶えてんだ」

「ああ、あの名作『ゴジラ』の印象は強烈だったからな」

 ダッシュは、ほかの生徒のように人類の敵『ゴジラ』が印象に残ったのではない。ゴジラの侵入から都民を守るため、警察や自衛隊はレインボーブリッジの通行を停めようとして、総理も頷くが、橋の管理や交通規制の権限が分散・混乱しているために「レインボーブリッジの通行は止められません!」と言われ、ゴジラ対策が後手後手に回る。

 そのアホラシサが、ダッシュにはいちばん印象に残ったのだ。

 こういう感性が、直接褒められることはないにせよ、彦、未来、テルたちから愛されているところなのだろう。

 トヨタのアナログ車はアキバまで二キロの湾岸線を北東に走っている。

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大阪ガールズコレクション:10『グーグルアース・馬場町・1』

2020-08-21 08:14:37 | カントリーロード

大阪ガールズコレクション:10

『グーグルアース・馬場町・1』  

 

 

 定額給付金の十万円でパソコンを買い替えた。

 

 今までは、Windows7の古いノーパソで、Yahoo!やグーグルのウィンドウを三つも開けると熱を持ってビックリするくらいの音で冷却ファンが鳴りだすと言う代物だった。Windows7のサービスも終わったので、この際にと買い換えた。

「中古のゲームパソコンがいいですよ」

 図書室のパソコンで調べていたら、司書の岩波さんが教えてくれた。

「CPもグラフィックボードにも余裕があって、動画見たりグーグルアースとかに便利ですよ(o^―^o)」

 十五歳も年下の司書さんは、あっという間にスマホを操って、オークションサイトで条件に合うゲームパソコンを見つけてくれた。

「一世代前だけど、グラボ(グラフィックボードの略らしい)も1060だし、その気になったらVRもできますよ」

 で、その場で自分のスマホを取り出して、岩波さんのアドバイスのもとに中古ゲームパソコンを買った。

 

 グーグルアースがサクサク動くのが嬉しくて、青春時代……と言っても、大人しめだったわたしは、ほとんど家と学校の往復だけ。それでも、就職してから二度の引っ越しをしているので、昔住んでいたと言うだけで懐かしい。

 通学に使っていた地下鉄都島駅を出してみた。橙色の人形をドラッグして駅のある交差点に下ろしてみる。

 とたんに平面だった地図は霧がかかったように白くなったかと思うと、次の瞬間には交差点の真ん中の写真になる。

 たった二十年だから、交差点の様子に大きな変化はない。

 交差点の真ん中からは、北と南の出入り口が等しく見える。正確には〇号出口とかいうんだろうけど、友だちや身内では「北の出口」とか「南の方」とか言っていたので、そうとしか言えない。

 そうだ、桜町商店街に同級の子が居て、お喋りが停まらない時は南の出口から出て、わざわざ大回りして帰ったっけ。美容院の子で……名前が出てこない。歳かな? 学年が変わったら疎遠になったんだっけ?

 ま、いいや。

 マウスを右から左に動かすと、景色がグルンと回る。

 前のノーパソは、ここで時間がかかった。景色が真っ白になって、モザイクが現れて、それがだんだん細かくなって、普通の写真になるのに数十秒。それが、ほんとうに交差点でパンしたみたいに景色が回る。感動する。

 あ……このアングルには憶えがる!

 そうだ、間島先輩のあとを付けて、わざわざ天六で同じ電車に乗り換えて、ストーカーみたいに付いて行ったんだ。

 封印していた記憶が蘇る。

 地下鉄の路線をたどってみようと思ったけど、やめた。

 間島先輩のあれこれを思い出して、かえって辛くなる。

 ま、グーグルアースだったら、いつでも行けるもんね。

 

 ゲームパソコンに慣れたころ、岩波さんがプレゼントをくれた。

 VRを買い替えたので、型落ちの、でも、わたしにとってはドラえもんの道具みたいなものだった!

 

 

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ポナの季節・10『朝から調子が悪い』

2020-08-21 05:42:15 | 小説6

・10
『朝から調子が悪い』
        


 ポナとは:みそっかすの英訳 (Person Of No Account の頭文字をとった新子が自分で付けたあだ名)


 朝から調子が悪い。

 どうも、昨日の四時間目に八重桜と授業でもめて、そのあと保健室へ行ったときから、ずっと悪かったようだ。
 でも、ポナは元来が丈夫な性質なので、このくらいと思って普通にランチとラーメンというポナの「ララランチ」を昼食でガッツリ食べて、放課後は奈菜と振りそぼる小雨の中を「春雨じゃ、濡れていこう」なんて気障を通したのが裏目に出たようだ。

 目が覚めると、熱っぽくて、いったんは起きたんだけど、測ると七度九分も熱がある。

「こりゃあ、ダメだ」と再び布団に潜り込む。

「ポナ、どうかした?」

 昨日から三連休の優里が覗いたが「アハハ、鬼の霍乱か」で済まされて、それでおしまい。
 同居の家族は減ったけど、元来が七人家族のミソッカス。ただの風邪ぐらいなら放っておかれる。
――ごめん、風邪で行けない。一人で楽しんできて――
 浅草の三社祭をいしょに観に行く約束をしていたみなみに、詫びのメールを入れる。

 ポチが、ポナの不調に気づいて枕元まで来てくれる。

 ポチは、ポナが生まれた時に、長男の達幸が拾ってきた雑種の子犬だった。ミソッカスのポナには家の中で、ただ一人積極的に仲良くしてくれる双子の兄妹のようなものだ。
「お前だけだね、ポチ……」
 そう言うと、ポチは優しげに、ホッペを舐めてくれた。

 ポチとポナは片仮名で書くと、とても似ている。ポナとはPerson Of No Account の頭文字をとったものだけど、ポチと似ているので、とても気に入っている。
「ポチ、ごはんよ」
 お母さんが、そう言うと、ポチはポナの顔とお母さんの声がした方を交互に見る。
「……ごはん食べてきな」
 そう言ってやると、ポチはようやく部屋を出て行った。出ていくときに名残惜しそうに振り返ったとき、ポナは不覚にも涙が出そうになった。そのあとポチは部屋の外まで戻って来たが入ってこない。
「ポチ、あんたも歳なんだから、一緒に居て風邪うつっちゃだめだからね」
 母の不人情な声がした。

 うつらうつらしていると、お祖父ちゃんの夢を見た。

 お祖父ちゃんとは同居じゃなかったけど、生きていたころは毎日のように家にきてはポナを可愛がってくれた。あまり可愛がるので、ポチが嫉妬して、お祖父ちゃんに吠えまくった。するとお祖父ちゃんはポチもいっしょに抱っこしてあやしてくれた。

 夢は、お祖父ちゃんに肩車してもらって三社祭を見てる夢だった。

 お祖父ちゃんは混雑の中、巧みに人垣をかき分けて前の方に連れて行ってくれる。足許にはポチがまとわりついて、お祖父ちゃんは、やってくる神輿をいちいち説明してくれた。ポナはとても幸せな気持ちだった。神輿がみんな通り過ぎると、お祖父ちゃんはポナを肩から下ろし、しゃがんでポナと同じ目の高さになって、こう言った。

「新子、悪いが家までは送ってやれない。ここでお別れだ。なあに心配することはない。お家に帰る。そう思えば瞬間で家に帰れる。そういう魔法がかけてある。じゃ、ポチ。新子をよろしくな」
「ワン!」とポチは返事した。
「お祖父ちゃーん!」
 幼いポナは、お祖父ちゃんを追いかけたが、お祖父ちゃんは、人波の中、振り返り振り返りしながら姿が消えた。
「お祖父ちゃん……」

 泣きながらお祖父ちゃんを呼ぶ声で目が覚めた。枕が涙で濡れていた……。


※ ポナの家族構成と主な知り合い


父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子



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かの世界この世界:47『シリンダー融合体との激戦!』

2020-08-21 05:26:42 | 小説5

かの世界この世界:47     

『シリンダー融合体との激戦!』    

 

 

 連携して戦うのは初めてだ。

 

 でも、四人はベテランのパーティーのように展開した。

 弓を得物とするケイトは後方から矢を射かける。

 グリは戦車兵のはずなのが、いつのまにか五メートルはあろうかという鞭を構えて融合体の右翼にまわっている。

 ブリはヘリコプターのようにツィンテールを旋回させて左翼でホバリング。

 わたしは、ソードを右手にダガーを左手に構えて二刀流。

 

 合図があったわけではない。

 

 四人とも、無意識に全員の態勢が整うのを待っていた。

 そして、ほんのコンマ二秒で占位し終えると、一斉に融合体に跳びかかった。

 トリャー! 

 ブリは一声を放つとツィンテールを高速回転させながら融合体の周囲を飛んで蹴散らしていく。

 セイ! セイ! 

 掛け声も勇ましく、一振りで数十個のシリンダーを叩き潰すグリ。

 …………! …………!  

 意外に無言で攻め立てているのはケイトだ。

 矢筒には数本の矢が入っているだけなのだが、それはいくら撃っても減りはしない。ただ、ツィンテールや鞭に比べて速度が遅い。一矢放つのに一秒ちょっとかかっている。幾千幾万あるか分からないシリンダーと対峙するには心もとない。

 トーー! ヤーー!

 古典的な掛け声で迫るのはわたしだ。

 恥ずかしながら、一度の剣戟で倒せるのは数体のシリンダーに過ぎない。うかうか融合体の傍にいては圧倒的なシリンダーに食いつかれ、雪ダルマならぬシリンダルマになって圧殺されてしまう。せいぜい三度の攻撃で離脱せざるを得ない。

 トヤーー!! セヤーー!!

 力を強めながら再度、再々度攻撃を加える!

 攻撃に気を取られているうちに、背中や足、頭にシリンダーは食らいついてくる。

 シリンダー一つ一つの威力はしれているが、度重なるとバカにならない、一分とたたないうちにHPゲージは半分を割るほどになってしまう。

 ブリとグリは、ツィンテールと鞭の違いはあるが、高速で旋回するので旋回半径に入ったシリンダーは粗方が蹴散らされる。

 しかし、ほんの僅かが、旋回の間隙から突き進んで、あるものは打撃を与え、あるものは食らいつく。そして、しだいに動きを鈍らせていくではないか!

 ウオーーー!

 渾身の吶喊でシリンダルマになりかけた二人に接近、二撃、三撃加えて離脱。

 すまん!

 瞬間の感謝を口にし、再び攻撃に向かう二人!

 アナライズすると、融合体のHPバーは七十パーセントのところで増減を繰り返している。

 周囲を窺うと、融合体は我々との戦闘をこなしながらも、強力な引力でシリンダーを取り込んでいる。

 かたや、我々はHP残量は四十パーセントほど。

 我々のHPは確実に減っていくが、融合体は増減が拮抗して、ブレながらも七十パーセントを維持している。

 このままではじり貧だ!

 ブチ!

 そう思った時、グリの鞭が手元の所で千切れて明後日の方角に飛んでしまった!

 残り一本の鞭で戦闘を継続するも、シリンダーの威力が勝っていて、十秒もたたないうちに融合体に取り込まれそうになる。

 

 トギャーーーー!!!

 グォーーーーー!!!

 

 期せずして、ブリと共に救援に向かう。

 ビシバシ! バリバリ! 

 叩き、引き剥がして、グリを救助し、一気に数百メートル離脱する。

 

「だめだ、HPが……」

 

 グリのHPは二目盛り残すのみだ。それも、点滅を繰り返し、放置していれば数秒で消えてしまうだろう。

「に、逃げてください……」

「しっかりしろ!」

 最後の一目盛りが消えた……その刹那、グリのHPバーがエメラルドグリーンに底光りして、次の瞬間にはゲージに満杯のグリーンに復活した!

「こ、これは?」

 目を転ずると、中空に両手を広げて十字の姿勢になったケイトがグリーンに光ながら浮遊している。

  ケアルフラーーーーッシュ!

 ケイトにはヒーラーの素養があったのだった!

 ステータスが上がった。

 

☆ ステータス

 HP:1000 MP:800 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・20 マップ:3 金の針:5 所持金:8000ギル

 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)

 

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリ(ブリュンヒルデ) 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘

 グリ(タングリス)   トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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