大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・163『模擬法事 手の焼ける話』

2020-08-14 12:47:35 | ノベル

せやさかい・163

『模擬法事 手の焼ける話』    

 

 

 なるほどなあ……

 

 スマホを見ながらテイ兄ちゃんが感心してる。

「え、なにが?」

 エロマンガ先生から目を上げてテイ兄ちゃんの手元を覗く。

「ほら、見てみい」

 画面にはコロナの字ぃを組み立てたら『君』という漢字になって、今はコロナでバラバラやけど、今度会う時は『君』だよとうまいこと書いてある。

 だいたい、こういう標語めいたものはお寺の掲示板とかに書いてある。

☆・仏は私の中にいる……一瞬「え?」やけど、なるほど『私』という漢字に隠れて『仏』という漢字が隠れてる。

☆・ボーっと生きていてもいいんだよ……学校の先生も見習ってほしい、二言目には「ボーっとすんな!」やさかい。

☆・隣のレジは早い……「隣の芝生」の言い換えやけど、今日日の家に芝生は無いから、この方がよう分かる。

☆・墓参り合掌した手で蚊を殺す……ウンコしてお尻拭いた手でカレーを作る。面白いけど人には言えません。

「なんや、標語に興味あるんか?」

「ボンさんて、こんなシャレみたいなことばっかし、考えてるのん?」

「うん、檀家周りとかしたら、お経の後に話しせなあかんやろ」

 そう言えば、本堂で法事とかがあったら、締めくくりに、そういう話をしてたなあ……たいてい面白ないけど。

「ネタを仕込んどかんと恥かくよってになあ」

「なるほど、せやからコロナネタなんかええねんね」

「うん、これは、さっそく使わしてもらおう」

「あ、パクリや」

「こういうのは、持ちつ持たれつやねん」

「せや、いっかい文芸部のみんなに聞いてもろたら? みんな言葉の感覚はええさかい、ええモニターになるで!」

 

 というので、次の部活で、さっそくやってみた。

 

 で、いちばんウケたのは『ウンコしてお尻拭いた手でカレーを作る』でありました。

 ちょっと説明するね。

 テイ兄ちゃんが思てたほど、みんなの熱は上がらへん。みんな行儀はええから「なるほど」とか「うまいですね」とかは言うんやけど、国語の授業の感想の感じ。で、ちょっと空気を温めようと思って披露したら、みんな腹を抱えたというわけ。

「ほんなら、モグモグタイムにしよか」

 テイ兄ちゃんは、思いついておばちゃんが作ったパンを持ってきた。

 これが、なんとカレーパン。

 いやいや、みんな死ぬほど笑いました。

 収まってカレーパン食べてる間も標語のフレーズが浮かんで、むせたり涙目になったり。面白かった。

 一年坊主の夏目君は十三歳で文学者を気取ってるとこがあって、こんな下卑たギャグで笑えるかっちゅうとこがあるねんけど、キュッと結んだ唇が震えとった。可愛いやっちゃ(^▽^)/

 頼子さんは、もう涙目になって笑ってる。

「こんどお祖母ちゃんに話してやろう!」

 ちなみにお祖母ちゃんはヤマセンブルグの女王様。日本の評判は落とさんとってほしいです。

「もう慣れました」

 留美ちゃんもニコニコ。

 去年の今頃やったら真っ赤な顔して俯いてたと思う(夏目君の反応に似てたと懐かしく思う)。

「お兄さん」

「は、はひ」

 頼子さんに声をかけられて、テイ兄ちゃんは声がひっくり返る。

「わたし、お盆とかの法事って経験がないんです。どんな風にやるか見せてもらえません」

「それは、お安い御用です!」

 みんなで本堂の外陣に周って、模擬法事を体験する。

「え、マスクするんですか?」

「今は、コロナでしょ、本山からの指示でこんな風にやるんですわ」

 なんと、コロナバージョンでやってくれるらしい。

 懐から小さなアルコール消毒のスプレーを出して、シュッシュッとスプレー、そして燭台のロウソクに火を点けようとしてマッチを擦る……。

 ボ!!

「「「キャーーー!」」」

 なんと、マッチを擦ると、テイ兄ちゃんの手ぇが燃え出した!

「しょ、消火器!」

 頼子さんが叫ぶんやけど、咄嗟には誰も動かれへん。

「あ、あ、大丈夫、アルコールが燃えてるだけやから(;^_^A」

「いや、でも!」

 頼子さん本堂の縁側から消火器を持ってくる。

 テイ兄ちゃんは手をハタハタ振って、なんとか消し止める。

 みなさん、アルコール消毒した直後にマッチを擦ったらあかんという教訓でした。

 

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ポナの季節・3《親友……になりかけ奈菜の行方》

2020-08-14 06:08:38 | 小説6

・3
《親友……になりかけ奈菜の行方》
         

 ポナとは:みそっかすの英訳 (Person Of No Account の頭文字をとった新子が自分で付けたあだ名)


 ポナは、五回のメールと三回の電話をした。

 しかし奈菜からは、なんの返事も無かった。

 配られたプリントなどが溜まっていたので、ポチのお散歩にかこつけて、奈菜の家まで行ってみた。
「ごめんなさいね、連休の半ばから風邪こじらしちゃって。今朝も制服には着替えたんだけど、やっぱり本調子じゃなくて……週明けには元気になると思うから、またよろしくね」
 奈菜のお母さんは笑顔で言ったが、ポナはひっかかった。

 風邪であるのは担任からも聞いていた。今週いっぱい休むようなら家庭訪問するとも。

 で、担任が入ってややこしくなる前に、ポナだけでなんとかしようと思ったのでる。
 母親の言葉にあっさり引き下がったポナだが、怪しさは決定的であった。
 ポナは衣替えしたばかりの中間服でポチを連れている。世田谷女学院の中間服は、一見制服には見えないギンガムチェックのワンピだ。校章は外していったが、奈菜が同じ制服を朝に着ていたら気づいて一言ありそうなものである。母親がポナの服を見る目は私服に対するそれであった。
 それに、話しの要所要所で目線が逃げる。女性警官をやっている上の姉・優奈から「人間、嘘を言う時には目線が逃げるものよ」と聞かされている。ポナは、いったんあっさり引き下がって、五分ほどしてから、再び奈菜の家のインタホンを押した。

「すみません、一つ忘れてました。月曜は体力測定で、授業はありません」
「え、ああ……担任の先生からも聞いているわ、ありがとう(;゚Д゚)」
 母親が、ドアを閉めようとした瞬間に核心をついた。
「おばさん、奈菜、家にはいないんでしょ?」

 瞬間母親は笑顔で否定しようとしたが、すぐに表情が崩れた。

「六日前から……」
 そう言って母親は泣き崩れた。
「六日も前から……なんで、ほっといたんですか!」

 奈菜の父親は隣接県の公務員で、社会福祉課長に昇進したばかり、立場上娘の家出を公表することはためらわれた。また両親ともに奈菜は、まだまだ子供で、すぐに帰ってくるだろうとタカをくくっていたのだ。で、そうしているうちに六日がたってしまい。今度は逆の意味で公表しずらくなり、母親は、昨日こっそりと探偵事務所に捜索を依頼したようだ。
「そんなバカな、奈菜はまだ十五歳の高校生で、立派な十五の女なんですよ!」
 ポナは、なんだか矛盾したことを口走ったが、ポナの頭の中では一つの考えにまとまっている。

 十五の女の子は体は一人前だが、頭の中は、まだまだ子どもである。だからとても心配だと。

「すぐに捜索願をだしてください!」
 そう言って、ポチを引きずるようにして、家に帰り、遅番で、まだ警察署にいる上の姉優奈に電話した。
「あ、新子。友だちの支倉奈菜のことでしょ?」
「うん、でもどうして?」
「いま、通報があったの、横浜のガールズバーで、よく似た子が働いてるって。詳しくは言えないけど、新子も署まで来てくれる?」

 不思議さと安心を胸に、姉の警察署に向かうポナだった。


※ ポナの家族構成

 父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師

 母     寺沢豊子(49歳)   五人の子どもを育てた、しっかり母さん。

 長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉

 次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員

 長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官

 次女    寺沢優里(20歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ

 三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
 

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かの世界この世界:40『噴水の縁に腰掛ける』

2020-08-14 06:08:16 | 小説5

かの世界この世界:40     

『噴水の縁に腰掛ける』  

 

 

 あれだけ寄って来た子どもたちが見向きもしない。

 無辺街道で出くわしてから、ずっと『ブリ』と呼んでいるが、それは、ただの短縮形、あるいは愛称だ。

 正しくはブリュンヒルデで、厳密にはブリュンヒルデ姫。呼びかける時は『殿下』あるいは『ユアハイネス』を付けなければならない。

 囚われの身であることを考慮しても、最低『様』を付けなければならないだろう。

 トール元帥から『ュンヒルデ』を取られてしまったのは、ヴァルハラに着くまでの心得くらいに思っていたのだが、本営を出てからのムヘンブルグの人たちは一向に関心を示さない。

「たいした力なのだなあ、トール元帥は」

「これなら、ブァルハラに着くまで誰にも気づかれなくて済むね🎵」

 ケイトは、早くも目的を果たしたかのように気楽になっている。

「ムヘンブルグを出るとわかりません」

 タングリスは、おだやかに言っているし、ずっとポーカーフェイスだ。

 

 で、肝心のブリは、なにやらキョロキョロ。ツインテールが揺れているのまでが触覚かレーダーアンテナになって探っているように見えてくる。

「ちょっと買い物をしてくるぞ」

「買い物?」

「勇者の旅立ちには必要なものがあるのだ」

「あまり荷物にならないように願います」

「分かっておるわ」

 タングリスの忠告をテキトーに聞いてバザールの方へ駆けていく。まるで、これから遠足にいく小学生のようだ。

「テル、わたしも行きたい!」

「いいけど、お金持ってないだろが」

「勇者の旅立ちへの喜捨は功徳があるとされています。弓はもって行ってください、ケイトが勇者である証ですから」

「うん、分かった! おーい、ブリ! わたしも行くぞーーー!」

 

 わたしとタングリスは、バザール手前の広場で待つことにした。

 

 広場は、心持ち周囲よりも小高くなっていて、バザールやら居住区が小間物屋さんの陳列棚のように見える。

 折しも、秋の日差しが傾き、穏やかなオレンジ色に陳列棚を染め始めている。

「しっかり味わってください。こんな、世界の平和が約束されたような穏やかさは、当分は味わえませんからね」

「ああ、そうさせてもらうよ」

 二人で噴水の縁に腰掛ける。

 

 キャラキャラキャラ……

 

 居住区に隣接する警備隊屯所の方角から、石畳をこすりながら近づいてくる音が響いてきた。

 

☆ ステータス

 HP:500 MP:500 属性:剣士=テル 弓兵=ケイト

 持ち物:ポーション・15 マップ:2 金の針:5 所持金:5000ギル

 装備:剣士の装備レベル5(トールソード) 弓兵の装備レベル5(トールボウ)

 

☆ 主な登場人物

  テル(寺井光子)   二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリ         ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘

 タングリス      トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 二宮冴子  二年生  不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生  セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生  ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

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