魔法少女マヂカ・168
……男の人なんですかぁ。
ツンは一発で見抜いてしまった。
我が姉、綾香の笑顔は引きつってしまう。
「アハハ、今日からツンの上のお姉ちゃんになる渡辺綾香だよ……探偵事務所なんかに勤めてるから男勝りって言われるけど、それは、お仕事の上の話だからねぇ。ご近所ではぁ、とても妹思いのお姉さんでぇ、ご近所の評判も良くってねぇ、見合い話とかお断りするのが大変だったりするのよ~(^▽^)」
「あ、すみません、思ったことが、すぐに口に出るもので(^_^;)」
「ま、まあ、とりあえず家に帰ろうよ」
「そ、そうだな」
「はい」
なんとか、綾香ネエが転がしてきた車に収まる。見送りに出てきた巫女たちが鳥居の下で笑って手を振ってくれている。
神田明神に帰還の挨拶と報告をすると「ご苦労であった、報告などは後日でいい、今は一刻も早く家に帰って休んでくれ」ということで、お母さんが迎えに来ていた友里を見送って、続いてやってきた綾香ネエの車に収まったところだ。
「すみません、余計なことを言ってしまったようで(;'∀')」
「しかし、よく分かったわね、わたしもこの頃は、本当に生まれついてからのお姉ちゃんという感じだったんだぞ。どうして分かった?」
「いえ、その、ニオイというか……」
「え、え、臭うかぁ? この頃はずっとこのナリで、おそらくDNAレベルで擬態してるんだがなあ、マヂカ、ちょっと臭い嗅いでみてよ」
「え、あ、うん。いや、わざわざ嗅がなくったって、二十代前半のフェロモン出しっぱなしだって」
「いや、あの……ご主人様の猟犬はみんな兄妹たちで、ずっとご主人様のところで、よその犬さんと暮らしたこともなかったので、男の犬さんには、とても敏感というか、猟犬の性というか(;'∀')(;^_^A」
「そ、そうか、そうなのね、ま、まあ、今日からは姉妹だから、ま、よろしくね……アハハ」
「お姉ちゃん、赤信号!」
「あ、いけない!」
キーーーー!
「うわ!」
ドテ!
「あ、大丈夫、ツン!?」
「大丈夫です、綾香姉さんが、手を伸ばして支えてくれましたから」
「え、いつの間に? てか、後部座席に手を伸ばしたの!?」
「あ、こんな風に……」
ツンが指を動かすと、目の前にバーチャル画面が現れて、ブレーキが踏まれた五秒余りがリピートされる。
確かに、コンマ1/10秒綾香ネエの手が後部座席に伸びてツンのオデコを支えている横で助手席のヘッドレストに顔をめり込ませているわたしの横顔が分かった。
「こんな技があったのか!」
「猟犬でしたので、記録をとるように躾けられていて……ハンティングレコーダーです」
「ま、これからはうちらの妹だから控えてね」
「はい」
「まあ、一度だけ、真実を見せてやるね」
「あ、マヂカ、待て!」
綾香ネエの制止を無視して、ツンのモニターに綾香ネエの真実の姿を出してやる。
ウッ!!!
ツンは固まったまま気絶した。
「マヂカ、おまえなあ……」
目の前にライオンほどの大きさの三頭の化け物犬ケルベロスが現れては、無理も無いか……。