大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・168『綾香ネエが迎えに来てくれた』

2020-08-07 14:27:03 | 小説

魔法少女マヂカ・168

『綾香ネエが迎えに来てくれた』語り手:マヂカ    

 

 

 ……男の人なんですかぁ。

 

 ツンは一発で見抜いてしまった。

 我が姉、綾香の笑顔は引きつってしまう。

「アハハ、今日からツンの上のお姉ちゃんになる渡辺綾香だよ……探偵事務所なんかに勤めてるから男勝りって言われるけど、それは、お仕事の上の話だからねぇ。ご近所ではぁ、とても妹思いのお姉さんでぇ、ご近所の評判も良くってねぇ、見合い話とかお断りするのが大変だったりするのよ~(^▽^)」

「あ、すみません、思ったことが、すぐに口に出るもので(^_^;)」

「ま、まあ、とりあえず家に帰ろうよ」

「そ、そうだな」

「はい」

 なんとか、綾香ネエが転がしてきた車に収まる。見送りに出てきた巫女たちが鳥居の下で笑って手を振ってくれている。

 神田明神に帰還の挨拶と報告をすると「ご苦労であった、報告などは後日でいい、今は一刻も早く家に帰って休んでくれ」ということで、お母さんが迎えに来ていた友里を見送って、続いてやってきた綾香ネエの車に収まったところだ。

「すみません、余計なことを言ってしまったようで(;'∀')」

「しかし、よく分かったわね、わたしもこの頃は、本当に生まれついてからのお姉ちゃんという感じだったんだぞ。どうして分かった?」

「いえ、その、ニオイというか……」

「え、え、臭うかぁ? この頃はずっとこのナリで、おそらくDNAレベルで擬態してるんだがなあ、マヂカ、ちょっと臭い嗅いでみてよ」

「え、あ、うん。いや、わざわざ嗅がなくったって、二十代前半のフェロモン出しっぱなしだって」

「いや、あの……ご主人様の猟犬はみんな兄妹たちで、ずっとご主人様のところで、よその犬さんと暮らしたこともなかったので、男の犬さんには、とても敏感というか、猟犬の性というか(;'∀')(;^_^A」

「そ、そうか、そうなのね、ま、まあ、今日からは姉妹だから、ま、よろしくね……アハハ」

「お姉ちゃん、赤信号!」

「あ、いけない!」

 キーーーー!

「うわ!」

 ドテ!

「あ、大丈夫、ツン!?」

「大丈夫です、綾香姉さんが、手を伸ばして支えてくれましたから」

「え、いつの間に? てか、後部座席に手を伸ばしたの!?」

「あ、こんな風に……」

 ツンが指を動かすと、目の前にバーチャル画面が現れて、ブレーキが踏まれた五秒余りがリピートされる。

 確かに、コンマ1/10秒綾香ネエの手が後部座席に伸びてツンのオデコを支えている横で助手席のヘッドレストに顔をめり込ませているわたしの横顔が分かった。

「こんな技があったのか!」

「猟犬でしたので、記録をとるように躾けられていて……ハンティングレコーダーです」

「ま、これからはうちらの妹だから控えてね」

「はい」

「まあ、一度だけ、真実を見せてやるね」

「あ、マヂカ、待て!」

 綾香ネエの制止を無視して、ツンのモニターに綾香ネエの真実の姿を出してやる。

 ウッ!!!

 ツンは固まったまま気絶した。

「マヂカ、おまえなあ……」

 目の前にライオンほどの大きさの三頭の化け物犬ケルベロスが現れては、無理も無いか……。

 

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ぜっさん・02『フルネームを言うと』

2020-08-07 06:31:32 | 小説3

・02
『フルネームを言うと』     


 

 ちょっと残念だった。

 広島に来たからには、お好み焼きを食べなくちゃ!
 そう思い定めて、昨日に続き二回目のお好み焼き。
「慣れなんだろうけど、ああバラケてしもたらねえ……」
 瑠美奈は小割にしたお好み焼きをコテに載せてはボロボロとこぼしていた。わたしはハナから諦めて小皿に載せてお箸で食べている。

 大阪のお好み焼きはボウルの中でかき混ぜてから鉄板に広げるので、小割にして口に運んでもバラケルことがない。
 広島焼は、クレ-プみたいに生地を広げ、その上に具材を重ねていく。具材同士はくっ付いていないので、コテに載せた時にどうしてもバラケテしまう。
「運よく口まで運べても、バラケテたら頼んないしなあ」
「わたしは、具材にオボロ昆布使うところがねえ……ま、昨日と今日の二回食べただけで広島焼全部を批判するのもなんだけどね……」
 幕間交流でうっかり広島水瀬高校の芝居を批判してしまったので、少し慎重な物言いになってしまう。それに今齧っているアイスキャンディーは美味しいので、お好み焼きへの不満も和らいでいる。
「水瀬高校のミスター高校生どないすんの?」
 一足先にアイスキャンディーを食べ終わった瑠美奈が話題を変えてくる。

 フードセンターに足を向けたところで声を掛けられたのだ。

「さっきの発言、とても面白かったです。よかったら、もう少しお話しできませんか」
 とても爽やかな言い回しだったけど「発言」と言ったところに含むものを感じた、不規則発言とか問題発言とか、あんまりいい意味で使わないでしょ。
「あ、えと……今から昼食に行くので、戻ってきてからじゃダメですか?」
 そうは答えたけど、正直あのミスター高校生と話すのは気が重い。

 あの時停電にさえならなければ……。

 会場に戻ったら午後の部が始まる直前だった。

 急いでシートに戻ったのでミスター高校生には会わずに済んだ。

 で、そのまま午後の上演を観て夕方の交流会と審査発表になった。水瀬高校で失敗しているので、わたしは一切発言しないことに決めて、文字通り目をつぶっていた。審査発表の前に後ろの席の人が帰るのだろう、数人がゴソゴソする気配がした。

「あ、敷島さんじゃないですか!?」
 後ろからミスター高校生の声が降って来た。
「あ、ミスター……」
「水瀬高校二年の……牧野卓司です」
 そう言いながら、ミスターは「ヨイショ」っとシートを跨いで、わたしの隣に越してきた。
「あ、あの……」
「隣いいですよね?」
「はい、なんぼでも!」
 瑠美奈が、こんな(^0^)顔をしてミスターを招じ入れた。やっぱ広島は関西圏なんでノリカタは大阪と同じなんだろうかと思って深呼吸。

「そりゃあ残念!」

 審査発表が思いのほか延びてしまったので、宿の都合でミスターと話している時間が無くなってしまった。明日は8時半の新幹線に乗らなければならない。まだ知り合って半日、話したのは10分も無い。つまり気心が知れるところまではいっていない。こんな状況でメアドの交換などはしたくない。

「じゃ、手紙とか出していいですか?」

 ミスターは笑顔のまま意外な提案をしてきた。
「て、手紙ですか?」
「ハハ、いきなり住所とか聞いたりしませんよ。学校の演劇部宛てに出しますから」
 そう言いながらミスターはスマホをメモ機能にした。
「えと、東京の中央区ですよね……」
「あ、大阪の日本橋です」
「え?」
「あ、ぜっさん、日本橋(ニホンバシ)て発音するからや、うちらは日本橋(ニッポンバシ)や!」

 大笑いになって、フルネームを言うと、また驚かれた。

 わたしは敷島絶子。絶子と書いて(たえこ)と読む。でも一見してゼツコなので、通称ぜっさん。

 なにを隠そう、隣で大口開けて笑っている河内女の加藤瑠美奈がつけたあだ名なのです。
  


 主な登場人物

 敷島絶子    日本橋高校二年生 あだ名はぜっさん
 加藤瑠美奈   日本橋高校二年生 演劇部次期部長
 牧野卓司    広島水瀬高校二年生

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かの世界この世界:33『ツインテールの戒め』

2020-08-07 06:20:46 | 小説5

かの世界この世界:33     

『ツインテールの戒め』  

 

 

 無辺街道の真ん中、五十坪ほどの空き地でキャンプを張った。

 

 ブリが魔法でテントを出してくれたので、夜露に濡れることもなく眠りにつけた。

 すこし微睡んだが、テントの隙間からこぼれる月光が頬に差し掛かったためか目が覚めてしまった。

 傍らではケイトが女を捨てたような姿で寝息を立てている。

「あられもない……」

 おっぴらげた脚を閉じてやり、右を下にした姿勢に変えてやる。これなら多少はましになるだろう。

 キリ キリキリ キリ……

「ひどい歯ぎしりだなあ」

 頬から顎をマッサージしてやって歯ぎしりを止める。

 PU~~~~~~~

 こんどはオナラだ。

「ほんと、まるで男だ……って、本来は男だったよな……なんだか忘れかけてる……名前は? ケイト……いや、ケントだったか……字は? 思い出せない……記録しておいた方がいいな」

 右手を目の高さにもってきてウィンドを開く。

「ケイトは……」

 記録しようとしたら、テントの外でカサリと音がする。

「なんだ?」

 後ろで寝ているはずのブリに目をやると、姿がない。

 起きたのか?

 テントの外に出ると、月を仰いでシルエットになっているブリ。

 

「ブリも眠れないのか?」

 

 声を掛けると、小さな肩がピクリとした。

「テルか……ケイトは?」

「ああ、素敵な寝相で眠って……」

 たったいま、ケイトについて大事なことをメモしようとしていた……だが思い出せない。

 まあいい、いまはブリだ。

「テルにだけは伝えておきたいことがあるのや」

「なんだ、改まって?」

「ツインテールを解いてくえないか」

「じぶんで解けばいいだろ、リボンの端を引っ張ればいいだけのことだ」

「自分れは解けない、こえは主神オーディーンの戒めらのら。たのむ……」

「そか、分かった」

 ブリの後ろに迫り、胸の高さにある頭のリボンを解いてやる。

 

 ガキ!! 

 イテ!!

 

 いきなり顎に衝撃が来て目から星が出る。

「お、おまえ……!?」

 後姿のブリは、わたしと背丈が変わらなくなっていた。急に伸びた勢いでブリの頭がわたしの顎を直撃したのだ。

 ブロンドのロンゲをサワサワとなびかせつつ振り向いたブリ。

「な、なんちゅう美少女……」

「これが本来の姿だ。主神オーディーンはツィンテールの戒めで、わたしを無辺街道に閉じ込めたのだ」

「オーディーンの怒りに触れるようなことをしたのか?」

「ああ、詳しくは言えないが、そういうことだ。ここまでの無辺街道は、わたしのための牢獄。これから先の無辺街道は、そのわたしを見張る獄卒たちのテリトリー。ここから先、わたしの力は限定的になる。それを承知で旅立ってほしいんだ」

「それは、遠まわしに――自分のことは自分でやれ――ということだな」

「むろん、わたしも全力は尽くす。ただ、ここを超えればお尋ね者の脱獄囚だから」

「……その脱獄の手伝いをする覚悟も持てということか」

「いやなら、わたしを置いて二人だけで旅立て。そのことを、テルにだけは伝えておきたかったのでな」

「わかった。これもなにかの縁だ、よろしく頼むよ」

 握手しようと手を出すと、ブリは一瞬ためらった。

「どうした?」

「もう一つ……とりあえずの目的地をヴァルハラに定めてはもらえないだろうか」

「ブァルハラ……主神オーディーンの居城だな」

「ああ、そうだ」

「……わかった、いいだろう」

 詳しくは聞かなかった、言える範囲なのだろうが、ブリは正直に話してくれた。それを持って了として、あらためて握手した。

「ありがとう、それでは、改めてツインテールにしてくれ、オーディーンの戒めを解いては旅ができないからな」

「わかった、後ろを向け」

 

 艶やかなブロンドを愛しむように櫛けずってやって二つのリボンを結んでやる。

 音もなく背が縮んでいく……が、元の四五歳の背丈ではなかった。十二三歳の中一くらいの少女になった。

「オーディーンほどではないけど、テルにも立派な魔力があるようだな」

「そうなのか?」

「この背丈に縮んだだけで済んでいる」

「わたしの力なのか?」

「ああ、なんというか……前に進む力とでも言うか」

「そ、そうか……」

 ケイトと三人並んだら、いい組み合わせになりそうだ……そう感じて月を見上げた。

 

☆ ステータス

 HP:200 MP:100 属性:剣士=テル 弓兵=ケイト

 持ち物:ポーション・5 マップ:1 金の針:2 所持金:1000ギル

 装備:剣士の装備レベル1 弓兵の装備レベル1

 

☆ 主な登場人物

  

  テル(寺井光子)   二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトと変えられる

 ブリ         ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘

 二宮冴子  二年生  不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生  セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生  ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

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