大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・169『ツンの名は詰子』

2020-08-13 12:45:39 | 小説

魔法少女マヂカ・169

『ツンの名は詰子』語り手:マヂカ    

 

 

 久々に姉妹で出かけている。

 

 お盆前の昼下がり、姉妹揃って日暮里駅へユルユルと歩いていると、通行人や昼食を終えて職場に戻る男たちが額や首筋の汗を拭いながらもチラ見していく。まあ、美女と美少女の二人連れ、それも揃って日傘をさして、胸から上は輪郭だけの影になって、シルエットで窺える美しさを確かめてみたいとガン見に近い眼差しになる。予期せぬ美女との邂逅に眼福と思うか、余計の熱を発して、ことによっては熱中症に陥ってしまうか。

 並の姉妹だったら、緊張のあまり目を伏せたり人目の少ない裏通りに迂回の道を選ぶかもしれない。

 しかし、そこは魔法少女のわたしと、地獄の番犬ケルベロスが擬態した偽りの美女と美少女。そんな世間の目は屁でもない。

 それに、音声を発せずにアレコレ話をしているので、それらしく反応している余裕もなかったりする。

『同じ日暮里高校でよかったのかなあ、夏休みだから、もう少し検討できたんじゃないかと思ったりする』

『余裕があれば他の選択肢もあったけどね、ついこないだまでは西郷さんの猟犬だったんだよ。実際に学校に通い始めたら、慣れないことばかりで、どんな失敗があるかもしれない。同じ学校で様子を見てやるのがいいんじゃないの?』

『猟犬だったからこその従順さが問題だと思うのよ、これからは人の子として暮らしていくわけだから、多少は混乱することがあっても自分で慣れたり解決していく力を身に着けさせなきゃならないんじゃないかなあ』

『それは、高校を出てからでいいだろ、取りあえずは慣れさせることだ。それに、もう決めてしまったことだよ』

 そうなんだ、姉妹二人で夏休み中の学校に行って、末の妹という設定になったツンの転入の相談に行っていたのだ。

 調理研の優等生である渡辺真智香の妹で、お堅い探偵事務所勤務の渡辺綾香も二人の姉且つ保護者とあっては問題の有るはずもなく、あとは本人の意思を確認の上週明けに転入試験を受けさせる運びになる。

 本人を同行させてもと思ったが、まだまだ世間のアレコレに慣れさせなければならず、姉二人が決めることなら不満なんてあるはずもないと猟犬らしい明るさに「じゃ、行ってくるね」と、真夏の太陽に急かされるように出かけた次第。

『ま、学年は一個下だし、部活とかは調理研以外を選ばせれば、ツンの自主の心も育んでやれるんじゃないか』

『しかし、名前は、もうちょっと考えてやってもよかったんじゃない?』

『いいじゃないの、渡辺詰子(わたなべ つんこ)。個性的だし、インパクトもあるし、印象が明るい』

『先生に聞かれるまで考えてなかったでしょ、とっさに、マンマの詰子』

『メールで確認したらツンも喜んでたじゃないか(^_^;)』

『あの子は、人間になれるってだけで嬉しいのよ。まあ、薩摩おごじょだから乗り切ってはくれるだろうけど』

『真智香もこだわるなア』

『あ、あたりまえでしょ、妹なんだから!』

『なんか初々しいお姉ちゃんブリだなあ(o^―^o)』

『茶化すなあ!』

『アハハハ』

 はた目には無言だけども、駅に着くまで成りたての姉二人は気をもんでいたのだ。あとは帰りに大塚駅の近所で晩ご飯の材料を買って家に帰ればミッションコンプリート。

 

「お姉ちゃん、そっち上り!」

 

 改札を抜けて大塚とは逆の上りのホームを目指すので、声に出して呼び止める。

「うん、ちょっとね、上野公園に用がある。真智香も付いて来て」

「上野公園?」

「あ、ひょっとして……」

 思い当たることはあったが、わざわざ確かめることではないと思っていたが、さすがは地獄の番犬、確認せずにはおれないのだろう。

 美人姉妹は上野公園を目指した。

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ポナの季節・2《それぞれの制服》

2020-08-13 06:30:07 | 小説6

・2
《それぞれの制服》
         


 女子高生の制服は「女」であることを隠すようにできている。

 それは伝統的な乃木坂学院のセーラー服でも、一見斬新な世田谷女学院でもいっしょだ。女であることを感じさせる部分がゆったりとできている。だから多少サイズの違うみなみが、姉の優里の制服も着られる。

 姉の制服を持って訪れたみなみの部屋は点けっぱなしのパソコンからお気に入りの作業音楽が流れている。

「乃木坂はね、このリボンの結び目のとこの『N』のイニシャルがいいんだよねえ♡」
 制服を広げたみなみは、惚れ惚れするように、そう言った。
「でもさ、そのイニシャルとったら普通のセーラー服じゃん」
 ポナは、とんがりコーンを齧りながら、親友の気楽さで遠慮がない。
「それがね、スカートのここんとこにね……」
 みなみは、そう言ってスカートの前のヒダを広げた。
「ん……?」
「ここよ、ここ。真ん中から三つ目のヒダにね、エンジの刺繍でNogizakaって入ってんだよ。ほら、そこはかとなくカッコいいでしょ」
「ええ……ああ、これ。優里姉ちゃんがずっと着てたけど、気が付かなかった」
「ポナ、そういうとこ鈍感だからね」
「あ、それはちがうよ。優里姉ちゃんは、あたしよりファッション感覚いいしさ。サイズも四年おいたらピッタリの体型だからね、いつもおさがり。で、じっくり観察なんかしたことないもん。でも、でもさ、高校の制服ぐらいは違うの着たいから、世田谷に行ったんだぞ。あら、みんな食べちゃった」
「世田谷女学院て、どーよ?」
 みなみは気前よく新しいとんがりコーンを開けながら聞いてきた。
「う~ん。中身は変わらないと思うよ。ほら、これがうちの学校……あ、新しいのが来てる」
 スマホの写真を呼び出してスクロールすると、友だちの奈菜から送られた写真が追加されている。
「あ、いいじゃん!


 世田谷女学院は冬服は丈の短い上着にギンガムチェックのスカート。上着の要所要所にもギンガムチェック。夏服は白のブラウスに同様のギンガムチェック。中間服だけが上から下までギンガムチェックのワンピで、襟や袖口のホワイトが効いている。ポナは、この中間服が一番のオキニだ。

「でも、アップにすると、乃木坂の子と変わんないね」
「そりゃそうよ。偏差値も同じくらいだし、まだ入学して一か月もたたないからね、中身は未だに中坊だよ」
「ねえ、この子イケてんじゃん。完璧なオールディーズって感じ。笑顔もいいな!」

 パソコンの作業音楽が軽快なオールディーズになった。

 すると、ポナも気づかなかったけど、その子、支倉奈菜には珍しい笑顔。完璧なオールディーズな感じで、悔しいけど自分よりイケてると初めて感じた。
 ポナは、パッと見の雰囲気じゃなくて、相手の性格とか人柄で距離が決まってくる。
 支倉奈菜は数少ないポナの友だちだけど、写メから受けるような明るさはない。どちらかというと控えめな大人しい子で、ボーっとしていることが多く、配られたプリントを後ろにまわすのを忘れたり、先生の説明をきちんと聞いていないことがある。ポナは席が近いことで、放っておけなくなって、あれこれ面倒を見ているうちに友達になってしまった感じ。そんな奈菜が笑顔で写っているのがとても嬉しかった。

 で、今日学校へ来てみると、その支倉奈菜が来ていなかった……。

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ぜっさん・08『あーーーーーーハズかったあ!!』

2020-08-13 06:15:40 | 小説3

・08
『あーーーーーハズかったあ!!』  


 

 

 わたしたちの府立日本橋高校は日本橋にある。

 最寄りの駅は、地下鉄日本橋駅。あたりまえっちゃあたりまえ。
 西のアキバと言われる日本橋……意外なことに、あまり行かない。

 なぜって……日本橋の繁華街は日本橋にはないから。

「でも暑いねえ……」
「ごめんね、この道しか分からへんから」
 地図を見ている瑠美奈が申し訳なさそうに言う。
 わたしと瑠美奈は学校から堺筋に出て南に歩いている。もう500メートルは歩いているんだけど、日本橋の賑わいはツーブロックほど向こうのようだ。

「あ……」

 瑠美奈が立ち止まった。
「どうかした?」
「あ、いや…………その……」
 なんだかモゾモゾしている。
「ん……?」
「ちょ、ちょっとね」
……おトイレいきたいとか?
「ちゃ、ちゃうよ! いこか」
 瑠美奈は不機嫌そうに、サカサカと歩き出した……で、不幸なできごとがおこった。

 うっわーーーーーーー!!!!

 少し前を歩いていた瑠美奈のスカートが派手にまくれ上がってしまった。
 地下鉄だかビルだかの排気口が歩道の上にあって、瑠美奈は、まともにその上を通過中だったのだ。形の良い太ももの付け根のとこまで見えて、パステルピンクの下着が食い込んでいる。
「瑠美奈!」
 わたしは、瑠美奈の手を取って脇道に駆け込んだ。

「あーーーーーーハズかったあ!!」

 脇道の脇道に入ったところで立ち止まった。二人ともどっと汗が溢れる。
「あ……道わからんようになった」
 二つ角を曲がったように思っていたんだけど、元の表通りには戻れない。どうも慌てふためいていたようだ。
「えと、ええと……?」
 地図と景色を見比べるけど、初めての通りなので見当がつかない。
 居並ぶ店の看板を見て手がかりを探す。

「あ、敷島さんと加藤さん!」

 びっくりして振り返ると、可愛いメイドさんがプラカードを持って立っていた……。
 


主な登場人物

 敷島絶子    日本橋高校二年生 あだ名はぜっさん
 加藤瑠美奈   日本橋高校二年生 演劇部次期部長
 牧野卓司    広島水瀬高校二年生
 藤吉大樹    クラスの男子 大樹ではなく藤吉(とうきち)と呼ばれる
 妻鹿先生    絶子たちの担任

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かの世界この世界:39『トール元帥』

2020-08-13 06:07:24 | 小説5

かの世界この世界:39     

『トール元帥』  

 

 

 広いのか狭いのか、高いのか低いのか、真っ暗なので見当が付かない。

 踏みしめる足の裏の感触が硬質なのと、外よりもヒンヤリした空気なので石造り……でも、足の裏に床の凹凸や石材の継ぎ目は感じない。石材だとしたら、相当にカッチリ作られた建造物だろう。

 タングリスが運転手みたく先頭になっている電車ごっこの縄は微かに発光していて、前に居るケイトの緊張した輪郭が仄かにうかがえる。その前に居るはずのブリの姿は気配でしかない。

 数十秒……いや、数分も歩いただろうか、前方の景色がウッスラと浮かび上がる。

 太い二本の柱が立っている。

 タンクローリーのタンクの部分を垂直に立てたほどの太さがあって、エンタシスになっていて、下の方がわずかに細い。

 なにかの結界だろうか……柱の上部に二本桁を渡せば神社の鳥居のようになる。神社の鳥居も聖と俗を隔てる結界ではある。

「姫騎士ブリュンヒルデ様をお連れいたしました」

 立ち止まったかと思うと、タングリスがハキハキと告げる。

 

 ビックリした!

 

 二本の柱がズズズと交差しながら動いてこっちを向く。向いたこっち側は土台が張りだしていて、蹴倒されそうになる。

 ひっくり返らずに済んだのは、タングリスとブリが平然と立っていたからだ。ケイトは小さく悲鳴を上げて私の胸に倒れ込んできた。

 瞬時の混乱のあと、二本の柱が巨大なブーツだと知れた。

 ブーツだけが立っているわけではなく、その上には胴体が付いていて、胴体の上には白髭の首が乗っかっている。

 白髭が振動して声が降ってきた。

「逃げてこられたか、ブリュンヒルデ姫」

「失礼な奴だな。超重戦車ラーテを寄越したのはトール元帥ではないか」

 小さな体をそっくり返らせるだけではなく、ツインテールを逆立てて物申すブリは、いささか滑稽だ。

 滑稽ではあるが、二日間の付き合いでブリが大真面目であることが分かる。ケイトも、そんなブリを畏敬のまなざしで見ている。これで、わたしの後ろに隠れるようでなければいいんだけども。

「わたしは必要なことをしたまでのこと。わたしの行為と姫の意識は別のものでありましょう」

「元帥、元帥がぶっきらぼうであることは百も承知だが、百年ぶりに会ったのだ、少しは懐かしがってもいいのではないか」

「懐かしがるのは、姫が結果を出された時です。まず、姫のお気持ちのほどをお聞かせ下され」

「両方だ。来る日も来る日もシリンダーと草むらばかりの無辺にも飽き飽きしたし、ヴァルハラに行って父と対決したい気持ちもある」

「相変わらず、両論併記の姫君。このトールの前でならともかく、皇帝陛下を前になされては皇族にあるまじき二股者とそしられまするぞ」

「ウソは言えぬ。ブリュンヒルデは、あるがままの自分で父上にまみえる。それで再びご勘気を被り無辺の地に送り返されようと構わぬ。無為に過ごすよりも百万倍もましだ!」

「はてさて……いたしかたありますまい。タングリスをお付けいたします。ヴァルハラへは姫と、そこな旅人とで向かわれませ」

「爺は付いてこぬのか?」

「わたしが、この地を離れては姫が脱獄したことが知られてしまいます。姫は、あくまでも刑期二百年の囚人であるのですぞ」

「分かった」

「ならば、これよりは平の勇者ブリとしてお生きなされ。ブリ以下の『ュンヒルデ』はお預かりする」

 ブンと音がすると、ブリのツインテールから光るものが飛び出して元帥の拳に握られてしまった。

「待て! 我が名は……」

「名を申されよ」

「我が名は、ブリ……」

「それでは、タングリスと、そこな旅人とともにヴァルハラを目指されよ。頼んだぞタングリス」

「ハ、命に代えても!」

「よし――旅人テル。そなたには話がある――」

「は?」

 わたしの心に語り掛けてきたようで、三人はわたしを残して先に進んでいった。

「連れのケイト、本来の姿は男であるな」

「それは……」

「話さずともよい。ヴァルハラに着けば明らかになろうが、それは、そなたが思うていることとは違う。正しいと思われることは疑うてみよ」

 抽象的な言い回しだったが、私自身が忘れかけていることを、瞬間思い出させてくれた。

「それと、そなたの剣を抜いてみせよ」

「はい」

 ソードを抜いてトール元帥に示した。

「ペギーのショップで購った汎用品だな……祝福を与えよう」

 上空で一閃するものがあった。元帥が手をかざしたようだ。

 

 シュラン……!

 

 剣が光を帯びた。

「トールソードにグレードアップしてやったぞ。ステータスも少し上げておいてやる。せめてものはなむけだ。姫を頼んだぞ」

 礼を口にする前に元帥の気配が消えてしまった……。

 

☆ ステータス

 HP:500 MP:500 属性:剣士=テル 弓兵=ケイト

 持ち物:ポーション・15 マップ:2 金の針:5 所持金:5000ギル

 装備:剣士の装備レベル5(トールソード) 弓兵の装備レベル5(トールボウ)

 

☆ 主な登場人物

  テル(寺井光子)   二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリ         ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘

 タングリス      トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 二宮冴子  二年生  不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生  セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生  ポニテの『かの世部』副部長 

 

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