大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・161『リボンとかネクタイとか・2』

2020-08-02 13:54:22 | ノベル

せやさかい・161

『リボンとかネクタイとか・2』頼子        

 

 

 ネクタイ・リボンの話の続きから。

 

 なぜ、我々の聖真理愛女学院の制服にはリボンが無いのかという疑問。

 ググっても分からない。かと言ってソフィアに聞くのは降参するみたいなので、ペヤングの超大盛焼きそばを食べようとしているジョン・スミスに聞いてみた。

「あ、それはですね。聖真理愛女学院はミッションスクールなので、日ごろの学校生活の中でもキリスト教の精神を大事にします」

「キリスト教の精神を大事にすると、どうしてネクタイやリボンが無くなるわけ?」

「それは、キリスト者は、神にのみ服従するからですよ」

「神に服従すると、リボンとかネクタイが無くなるわけ?」

「はい」

「どうして?」

「それはご自身でお考え下さい。女王陛下から、安易に答えを与えないように申し付かっております」

「ペヤングの超大盛って、諜報部員の『適正体重保持義務』に反する恐れがあるんじゃないかしら」

「わたしの身長と筋肉量から見ると、この超大盛でレギュラーの量なんですよ、殿下」

「ん……待って」

 横に置いてあるマウスとの高さに違和感を感じた。ちょっとしゃがんでみる……。

「あ、普通の超大盛よりもブットイ!?」

 ゴミ箱を覗こうとしたら、ジョン・スミスが浮足立つんだけど、一瞬早くゴミ箱に入っている焼きそばのフタを取り上げる。

「な、な、なんと!?」

 パッケージに書いてあったのは『ペヤング ソースやきそば 超超超大盛 GIGAMAX』

 おまけにマヨネーズマックスバージョンで、その熱量は2174キロカロリー!!

「禁断のギガマックス……ジョン・スミス、あなた……」

「こ、これは……女王陛下には、どうぞご内聞に(;゚Д゚)」

「あなたの答え次第ね……」

「いたしかたありません……」

 

 ジョン・スミスの弱みを握って聞きだした答えはこうだ。

 ネクタイやリボンは『人を縛ることの象徴』で、貴族制のヨーロッパで国王や貴族の主人に仕えるために――わたしはあなた様に縛られます――という意味があるんだそうよ。

 縛られると言ってもSMじゃないのは分かるわよね。

 キリスト者を縛るのは三位一体の『点にまします我らが神』以外には無いわけで、世俗の権力に縛られる象徴であるネクタイやリボンはしないというわけ。

「なるほどねえ……」

 そのネクタイを形式化して引っ張られたらすぐにとれてしまうようにしたのは、言ってみれば、権力からの解放を指向するとも言える。想像力を膨らませれば、自由への指向と言えるかもしれない……というのはジョン・スミスの解説。

 わたしは、ますます夏目銀之助君への興味が湧いた。

 折も、八月の第一週で、学校もようやく遅い夏休みに突入。

 ジョン・スミスから召し上げたカップ焼きそばのあれこれをお土産に如来寺の部室に向かった。

 

 

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大阪ガールズコレクション:2『お早う! 城東区鴫野』

2020-08-02 06:04:47 | カントリーロード

大阪ガールズコレクション:2

『お早う! 城東区鴫野』  「鴫野」の画像検索結果  

 

 

 鴫野……………

 読めます?

 カモノと違います、シギノって読みます。

 

 漢字で書いたら『鴫野』と『鴨野』。微妙なんで間違われても仕方ないんやけど、担任に間違われたら凹みます。

 担任は堺の出身、ビミョーやけど、まあしゃあないか。

 

 わたくし小林幸子と申します。

 チョーベテランの演歌歌手と同じ名前なんですけど、あたしらの世代はたいてい知らん歌手やから、まあええんですけど。

 中一の時に近所のサクちゃんの家で大晦日。紅白とか観てから初詣行こうということになってた。

 そんで、紅白のオオトリで件の演歌歌手がスゴイ衣装で現れた。

 サクちゃんのお母さんやらお婆ちゃんは喜んでたけど。子どもらはみんな「なにーこれ!!」やった。

「わ、幸ちゃんと同姓同名や!」

 そして、サクちゃんも健介も健介のイトコもその友達もみんな笑いよった。かないません。

 

 へえ、小林幸子と同姓同名なんや。

 

 鴫野をカモノと読んだ担任が喜んだのは、さらに凹みました。

 担任は歌手の小林幸子さんに偏見は無くて、笑ったりせえへんけど、それでも凹みます。

 

「行ってきまーす!」

 

 元気に声かけて家を出る。

 家の前はキャンパス地のアーケード。アーケードは20メートル置きくらいに開放されてて空が見える。

 その四角い空が晴れてると元気になります。あいにくの曇り空。

 乾物屋のお爺ちゃんが「お早う幸ちゃん」「お早うございます!」と元気に挨拶。

 お爺ちゃんは高校に行くようになってから、あたしを尊敬の目ぇで見てくれます。

 それは制服のお蔭。

 あたしは天王寺区にある女子高。制服は90年間モデルチェンジしてないんで、お爺ちゃんは――あのお嬢さま学校か!――という数十年前の印象があるんで、尊敬してもらえる。なんせ、中学までは家族が呼ぶようにに「サチ」て呼ばれてた。

 ほんの100メートルほどの商店街を抜けて右に曲がってJR鴫野駅。

 当たり前やったら5分もかかれへん。

 せやけど、あたしは7分かけます。

 

 なんでか言うと、山本精肉店に寄るから。

 山本精肉店はサクちゃんの家。

 サクちゃんは一個下の中三で、お店の商品のお肉やらハムの新鮮さを宣伝してるような元気娘。

「お早う、いっつもごめんねえ」

 一週間に一回くらいは謝るサクちゃん。

「あ……また?」

 そう聞くと、サクちゃんは小さく頷く。おっちゃんおばちゃんは「「お早う」」と、いつでもレギュラーで返事してくれながら開店準備。

「健介お早う!」

 勝手に二階に上がって襖越しに声だけ掛けます。

 たいてい「おう」とか「ああ」とかの二音節の返事が返ってきます。

 今日は返事なし。

「サクちゃん泣かしたらあかんぞ!」

 寝返りの気配。まあええ。とりあえず生きとる。

 健介は二学期から学校に行かへんようになった。

 

 朝に一回だけ声かけていく。せやから、駅まで二分余計にかかる。

 

 正月のことを思い出した。

「小林幸子いややったら、苗字変えたらええねん」

 鳥居を出たとこで言われた。

「なに、それ?」

「山本幸子とか」

「え? ええ!?」

「わ、例えや例え! ああ、ナシや! いまのんナシや!」

 

 あのときの「いまのんナシや!」もっかい言うくらいになれよなあ!

 

 そんなん思てたら、いつもの電車に乗り遅れてしまいました。

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かの世界この世界:28『ペギーの店・2』

2020-08-02 05:53:40 | 小説5

かの世界この世界:28     

『ペギーの店・2』     

 

 

 

 テルキは剣士レベル1、ケイトは遠距離攻撃の弓兵レベル1がいいでしょ。

 

 エフェクトが満開の花火のようになって、それがチラチラと煌めきながら消えていくまでの十秒ほどで、ペギーさんは属性と装備を決めてしまった。

「あ、えと、装備はともかく、どうしてIDネームまで知ってるんですか?」

「ビミョーに間違えてるし……」

「そのナリでケントはないでしょ、女の子らしくケイト。装備は、これよ……」

 ペギーさんが指を振ると、目の前にトルソーに着せた装備一式が現れた。

 

 わたしのは、チュニックに皮鎧。ベルトにはタガーが挟まれ、ソ-ドはレイピアのように細身だけど実用本位で、鞘も柄も鉄地剥き出しの鈍色だ。ミニのアーマースカートが付いていなければ、男性用と言われても分からない。

 ケント、いやケイトのは、チュニックに胴着。ベルトにタガーは同じだけど、斜めに掛けた短弓は心もち太めだ。わたしのソード同様実用本位で木地のままだ。

 

「お察しの通りの実用本位だけど、初期装備としては強力なものよ。レベル10までは十分だと思う」

「えと、ちょっと贅沢すぎる気がしないでもないんですけど」

「うん、レベル8の装備とスペック的には変わらないんだけどね、今日は、あんたたちで仕舞みたいだし……ま、サービスだと思ってくれていいわよ」

「「ありがとうございます」」

「実は、今日のタームは女子限定なんだよ。そんなナリはしてるけど男子がやってくるのには意味があると思うのよ」

「これは、クラスの女子に……」

「言われたんだろうけど、その女子たちも気づいていない力が働いているように思うんだよ。一応の属性は決めてあげたけど、フラグの立ち方次第では変わるかもしれない。ま、峠の万屋(よろずや)の素人判断だけど、ペギーさんの参考意見ってことで。そうだ、サービスで金の針を一本ずつ付けてあげる」

 ダガーの横に鞘に入った金の糸が現れた。

「金の糸ということは、石化魔法を使うモンスターが現れるんですか!?」

 石化魔法は、制限時間以内に解かないと、直ぐに粉々の砂に劣化してゲームオーバーになってしまう。

「ああ、まあ、使い方は色々さ。あけすけに言えば売れ残りなんだけどね、ケイトの女子化と同じく、なんか意味のあることじゃないかと……思ってみたい峠の万屋さ。ま、気を付けて行っといで」

「「はい、ありがとうございます」」

 

 ケイトと揃って頭を下げて、上げた時には店ごと消えてしまっていた。

 

「あ……」

「えと……」

「お代、まだ払ってなかったよね」

「帰りに通りかかったら、払おうか」

「だね、じゃ、行くか!」

 

 路傍の道標には――たちまち海岸へ10マイル――の文字が浮かび上がっていた。

 

 HP:200 MP:100 属性:剣士(テルキ) 弓兵(ケイト)

 持ち物:ポーション・5 マップ:1 金の針:2 所持金:1000ギル

 装備:剣士の装備レベル1 弓兵の装備レベル1

 

 

☆ 主な登場人物

  寺井光子  二年生 今度の世界では小早川照姫

 小山内健人 小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトと変えられる

  二宮冴子  二年生、不幸な事故で光子に殺される。回避しようとすれば光子の命が無い。

  中臣美空  三年生、セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生、ポニテの『かの世部』副部長 

  

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