大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

大阪ガールズコレクション:8『北区梅田 茶屋町・1』

2020-08-15 08:46:54 | カントリーロード

大阪ガールズコレクション:8

『北区梅田 茶屋町・1』 

 

 

 梅田に凌雲閣があったことを知ったのは五年前だ。

 

 高校生になったばかりで、ちょっとウキウキしていた。

 中学生の頃は、基本的に自宅と中学校の往復だけで小学生とほとんど変わらない。

 たまに梅田や京橋に出かけても、せいぜい自宅付近では買えない本を買いに大型書店に行く程度。穂乃花もわたしも門限が六時だったしね。

 高校になると履物もスニーカーからローファーに変わった。

 ローファーには羽根が付いている。

 ほんとだよ。

 門限も八時になったし、きちんと言っておけば十時くらいまで許してもらえたから、たまにコンサートとかライブにも行ける。コンサートやライブにローファーで行くわけにはいかないけどね。ローファーを履くような半分大人の高校生なら、私服で、ちょっとなら遠出してもいいという感じ。

 まあ、チケット高いから、コンサートやライブにしょっちゅう行くわけにもいかないけどね。

 穂乃花も、そんなに発展的な子でもなかったし。

 でも、高校に入って獲得した『自由』を満喫したかった。

 知恵を絞って『ソーシャルスタディーズ同好会』を作った。

 日本語で言えば『社会科同好会』で、なんともモッサリしてるので英語読みにしただけ。

 ネットと新聞とかで面白いことがあったら、そこまで行ってみるという同好会。

 大阪城の抜け穴 蒲生にあった大阪国技館 空堀商店街に偲ばれる大坂城の外堀 哲学の道に西田幾多郎を偲ぶ 大正空港と呼ばれた八尾空港 中之島の軍艦最上のマスト 三ノ宮メリケン波止場に見る阪神大震災の爪痕 等々お出かけする口実には事欠かなかった。

 

「大阪にも凌雲閣があったの知ってるか?」

 

 同好会を応援してくれている中谷先生がパソコンの画面を見せてくれた。

「あ、ほんまや!」

 穂乃花の目が輝いた。

 わたしには同好会はお出かけの口実だったけど、穂乃花は、ちょっと積極的だった。新発見をしたところを確認することに生きがいを感じ始めていたんだ。

 二人とも浅草の凌雲閣を知っていた。浅草十二階とも言われたレンガ造りの塔にはエレベーターも付いていて、関東大震災で壊れるまでは、東京の名所だった。

 研究して知ったわけではない。サクラ大戦のゲームの中に出てくるんだ。

 その凌雲閣が梅田にあったというので出かけてみた。

 東京の十二階には及ばない九階建て。むろん令和の時代には残っていない。昭和の初めに解体された。

 今は『東梅田コミュニティー会館』と呼ばれている元東梅田小学校のあたりに在って、その門のあたりに石碑が残っている。

「ああ、なるほど、ここだったんだねえ(^▽^)/」

 そう感動して写真を撮るだけ。小さな三脚を持って行って、石碑とかを背景に自分たちの写真も撮る。通行人やご近所の人に頼んで撮ってもらうこともある。大人たちは、そういうわたしたちを微笑ましく見てくれて「今どき感心ねえ」とか褒められたりすることもあって、ちょっと得意だったよ。

 でも好事魔多しっていうんだろうか。

 写真を取ってくれた小母さんが、あっちにも石碑があるわよ。

 穂乃花は「ちょっと見てくるわ」と言って、三脚を畳んでいるわたしを置いて角を曲がった。

 

 …………それっきり穂乃花は帰ってこなかった。

 

 それから五年がたって、わたしは久々に茶屋町に出向いた……。

 

 つづく

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ポナの季節・4『奈菜の五月病』

2020-08-15 06:04:38 | 小説6

・4
『奈菜の五月病』
         


 ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account の頭文字をとった新子が自分で付けたあだ名)

 

 奈菜は、取調室で一人ふくれっ面で座っていた。

 姿はAKBモドキの客引き姿で、うっすらとメイクしている。

「どうしたのよ、奈菜?」
 とりあえずポナは一言言った。特に気の利いた言葉じゃないけど、無言よりはマシ。
「なんで、ポナが来るのよ?」
「うちのアネキがここの生活安全課。奈菜、うちの人が来るの嫌なそうなんで、あたしが動員されたってわけ」
「……ごめん。世話かけるね」
「どうして、横浜のガールズバーなんかに居るのよ……」
「……」

 奈菜は、机の上の冷めたお茶を見ながら無言だ。積極的な無言では無く、言いたいことがまとまらないで困った顔……この困った顔が変に頑なな表情に見えて損をしている。付き合い始めたころから、ポナは、それに気づいていた。

「お茶冷めてるね、淹れなおしてもらってくるよ」
「いいのお茶なんか。ポナが居たら、なにか考えがまとまりそう」
「じゃ、あたしの淹れたてだから、マゼマゼしよう」
 ポナは、机の上に一滴もこぼすことなく、二つの湯呑を均等にお茶で満たした。
「すごい、才能だね……」
「んなもんじゃないわよ。うち兄妹が多いじゃない。自然と子供のころから付いた習慣」
「そっか……あたしなんか、一人っ子で、親の言うままにここまできちゃったじゃない。学校も小学校からずっと持ち上がり……なんか、これでいいのかなあって……」
「十五やそこらで、思い詰めることないよ。人生って、どこででんぐり返しあるか分かんないよ」
 この会話で動機が分かった。一人っ子の五月病だ。

 そこに姉の寺沢優奈巡査部長が入ってきた。

「いま、お父さんが来られたから。下で事情説明させてもらってるわ。まあ、初めてだしガラ受けも揃ったし、お父さんといっしょに帰っていいわよ」
「あたし、ポナ……新子といっしょに帰ります」
「でも、一応規則だから、署の敷地出るまでは、お父さんといっしょにいてね」
 それだけ言うと優奈は出て行った。妹の表情を見ただけで、おおよその話は分かった様子だった。
「ああ見えて、優奈ねえちゃん、高校の頃はワルで、地元の警察じゃ今の奈菜みたく世話になってた」
「え、あの女性警官の日本代表みたいな人が!?」
「うん、うちは、他にも変態して大人になったのがゴロゴロ……」

 そうやって、世間話をしているうちに、奈菜のお父さんが入ってきた。

「さ、奈菜。お父さんと帰ろう」
「警察の玄関までね」

「敷地を出るとこまでだ」

「チ」

「舌打ちするな」

「あとはポナといっしょに帰るから」
 親子の会話は、それだけだった。
「寺沢新子さんでしたね。こういうやつなんで、どうかよろしく」
「こういう奴ってなによ」
「言葉のあやだよ。さ、いこうか」

 この親子は、超えなければならないところを超えずに避けてきた親子だと、ポナは思った。

 警察の敷地を出ると、奈菜の父は娘をポナにあっさりと預けた。まあ、今はこうするしか手がないんだろうけど、なんとも割り切れない気持ちのポナだった。

 電車に乗ると、達幸兄貴からメールが入っていた。

――明日、横須賀に入港。一般公開につき来るべし、友だちも連れて来い――

 海上自衛隊の長男の達幸からだった。

 我が兄姉ながら連携が取れ過ぎと、ため息のポナだった。


※ ポナの家族構成と主な知り合い


 父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
 母     寺沢豊子(49歳)   五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
 長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
 次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員
 長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
 次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
 三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
  ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。

  高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
  支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子

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かの世界この世界:41『二号戦車』

2020-08-15 05:48:36 | 小説5

かの世界この世界:41     

『二号戦車』  

 

 

 冗談のように見えたのは、数時間前まで乗っていたラーテのせいだろう。

 

 ラーテは1000トンもある超重戦車だったが、目の前の石畳で停車したのは10トンもない軽戦車だ。

 呆気に取られて、気づくのに数秒を要したが、それは二号F型だ。

 ほら、『ガルパン』の劇場版で、幼いころの西住姉妹が乗っていたやつ。

 大きさは宅配便のトラックほど。いや、高さは2メートルを切るから、宅配便のトラックよりも低いかもしれない。

 

 カチャ

 

 キューポラのハッチを開けて出てきたのはタングリスの相棒のグニ(タングニョースト)だ。

「よかった、まだ出発されていなくて。どうぞ、この二号戦車を使ってください、操縦はタングリスがやります」

「やっぱり、ここを出ると顔が指すか」

「城塞は元帥のコントロールが行き届いているが、外へ出るとなると……」

「ムヘンポートに向かうのだぞ」

「念のためだ」

「……そうか」

 グニとグリの会話から、ムヘンそのものから出るまでは気が抜けないことが分かる。

「いいじゃないか、二号は三人乗りだが、ブリとケイトは小柄だから、なんとかなるだろう」

「国境警備仕様なので四人乗りになっています、ムヘンポートまでですのでご辛抱ください」

「識別番号が城塞警備のままだが」

「城門を出れば切り替わる。前線への補給に化けて行くつもりだ。軽戦車で窮屈ですが、ご辛抱ください」

 わたしに向かって敬礼すると、戦車の鍵をグリに渡し、回れ右……したところへ、買い出しの二人が帰って来た。

 

「おう、タングニョースト、見送りに来てくれたのか!」

「ちっこい戦車! キュークツそう!」

 

 リュックいっぱいの戦利品を揺すりあげて胸を張るブリとケイト。

 どう見ても、これから遠足に出かける小学生のノリだ。

「あいにくですが、乗るのはわたしたちですよ」

「え……冗談だよな?」

「冗談なのは、二人のリュックだ。おやつは三百円までって言ったろがー」

「三百円以内だよ! みんなタダでいいって言うんだけど、ちゃんと三百円は渡してきたぞ。ケイトの分は建て替えてっから、あとでくれ」

「それは、後ほどの補給でわたしが持って参りましょう、安心してお預けください」

「「それってオアズケだあ!!」」

「文句言うな」

 しぶしぶリュックを差し出す二人。ポケットに忍ばせた分は大目に見てやる。

「あ……っと、そのツインテール、狭い車内では危険ですね」

「あ、そっか。なら、解いて短くしてもいいぞ🎵」

「解くのは事を成し遂げてからです。わたしが、なんとかしましょう」

 グニは、あっという間にブリのツインテールを五センチほどのお下げにまとめてしまった。

 

 プータレる二人をグニと二人で摘まみ上げるようにして二号の中に放り込む。

 

 ブルン……ブルルルルルル

 

 ブリが手際よくイグニッションを入れ、二号は本営の外を半周して城塞の北門を目指した。

 

 

☆ ステータス

 HP:500 MP:500 属性:剣士=テル 弓兵=ケイト

 持ち物:ポーション・15 マップ:2 金の針:5 所持金:5000ギル

 装備:剣士の装備レベル5(トールソード) 弓兵の装備レベル5(トールボウ)

 

☆ 主な登場人物

  テル(寺井光子)   二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリ         ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘

 タングリス      トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 二宮冴子  二年生  不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生  セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生  ポニテの『かの世部』副部長 

 

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