大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・172『秘密基地の宿題会』

2020-08-29 14:46:01 | 小説

魔法少女マヂカ・172

『秘密基地の宿題会』語り手:マヂカ    

 

 

 毎年、夏休みが残り僅かになって来るとジタバタする。

 

 ジタバタには二種類あって、一杯残してしまった宿題をどう片付けようかと冷や汗を流すジタバタ。

 もう一つは、夏の思い出にどこかに行きたい、何かをしたいというジタバタ。

 

 思い出ジタバタは、夏がいよいよ断末魔ということに関係がある。

 あれほど恨めしく感じられた蝉の声も途絶え、通り雨の後、ふと涼しいと感じたりすると、あの身を焼くようだった夏の暑さが懐かしく思われる。

 夏の終わりというのは、なんだか夏に人格を感じてしまって――夏が、なんとか元気なうちにやっておきたい、行っておきたい――と思ってしまうから。

「そりゃ日本人の感傷だよ」

 アメリカ魔法少女のブリンダはニベもない。

「軽井沢が、あんなに開けたのは、明治のころに外国人が避暑にいったからなんだぞ。人類にとって夏と言うのは災厄なんだよ、ちょっとマシになったからと言って懐かしがるのは間違ってると思うぞ」

「だってえ(;゚Д゚)」

「「「おまえは、さっさと宿題やっつけろ!」」」

 ノンコ以外の声が揃う。

 大塚台公園の特務師団基地で夏休みの宿題合宿をやっている。

 少しづつ残っていた宿題はノンコを除いて全員が終了。ブリンダは美術の課題が残っていたのだが、それもねじり鉢巻きで宿題に取り組むノンコをモデルにして水彩で十分前には描き終えている。

 そこで、無駄話に興じていると、夏の終わりにつての感覚が日本とアメリカでは違うという話になったのだ。

「じゃ、ブリンダは、屋内でジッとしてるのがいいって言うの?」

「どこかへ行ってみるとか、なにかやってみるというのは賛成だぞ」

「「「え、そうなんだ」」」

「だったら、どっか行こうよ」

「「「ノンコは宿題!」」」

「みんながイジメるううう(´;ω;`)ウゥゥ」

 コンコン

 その時、ブリーフィングルームのドアがノックされて、テディ―が入ってきた。

「みなさん、お茶の時間です」

「あ、もうそんな時間なんだ」

「よし、休憩だあ!」

 異世界人のサムが宣言したのはノンコへの優しさだったのかもしれない。

 秘密基地で宿題をやっているのは効率を図るためなので、ハンガー以外では一番殺風景なブリーフィングルームでやっている。お茶はくつろぎの時間なので休憩室に移動する。

 自分のスコーンとティーカップを持ってテーブルに着く、ノンコが甲斐甲斐しくティーポットを持ってみんなにサービス。友里が息抜きにモニターのスイッチを入れ、清美といっしょに動画を選んでいる。

「「あ」」

 スクロールする百合の手が止まって、みんなの視線がモニターに向けられる。

 モニターには、いよいよ解体が始まる原宿駅の旧駅舎の様子が映し出されていた……。

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ぜっさん・13『二通の手紙』

2020-08-29 05:56:37 | 小説3

・13
『二通の手紙』     


 

 ぜっさん!

 なんか気まずいことだなと思った。
 言葉の響きで気分が分かるほどに瑠美奈とは親友になった……ということなんだけど。
「かんにん、野暮用でいっしょに帰られへん。ごめんな」
 頭が「かんにん」で、尻尾が「ごめん」。 この過剰な言い回しは、瑠美奈が、かなり困っていることの現れだ。

 多分、演劇部のこと。

「いいよいいよ、たまには一人で歩かなきゃ、道おぼえないもんね」
 昨日の天王寺公園でのことがあったので、明るく答えておく。
「ほんま、ごめん……あ、せや。ぜっさん宛てに手紙きてたよ」
 学校宛てに、わたしへの手紙?
 受け取った封筒で分かった。広島で一緒になった牧野卓司だ。
 ほら、高校演劇の全国大会で言い寄って来たミスター高校生。

「ありがとう」

 まさか廊下で読むわけにもいかず、とりあえずは通学カバンに入れておく。
「……よっこいしょっと」
 掛け声かけて通学カバンを肩にかける。今日は辞書2冊を持って帰るので、けっこうな重さなのだ。
「声だけ聞いたら、お婆ちゃんみたいやで!」
 追い越しざまに藤吉が余計なことを言う。
「ヘソ噛んで死ね!」
 江戸前で返すが、大阪ではインパクトが弱い。藤吉はヘラヘラしたまま階段を下りて行った。

「さてと……」

 いちいち掛け声がかかるのは、夏の疲れだろうか。
「あれ……」
 下足のロッカーを開けると、萌黄色(もえぎいろ)の封筒が入っている。
「え、なんで……」
 疑問が先に立つ。だってロッカーには鍵をかけてある。手紙が入っていると気持ちが悪いよ。
「それね……」
 毒島さんが寄り添ってきた。
 相変わらず学校では暗いけど、バイトが決まってからは微妙に距離が近くなってきた……ような気がする。

 敷島絶子さまへ……と、宛名があり、裏には、長谷川要とある……はせがわかなめ?

 名前もさることながら、こんなのが入っていたことが気持ち悪い。
「ロッカーの下に2ミリほどの隙間があるの……鍵かけていても、その隙間からなら入れられるわ」
「あ、そ、そうなんだ」
 妙に狼狽えてしまって、その手紙も通学カバンにしまって、そそくさと下足室を出てしまった。

 後ろで、毒島さんが、なにか言いかけたみたいなんだけど、息出でそのまま下足室を出てしまった。

 台風の影響で思わぬ雨脚になっていた。この雨が無ければ、毒島さんの知恵を借りていたかもしれない……。



 

 主な登場人物

 敷島絶子    日本橋高校二年生 あだ名はぜっさん
 加藤瑠美奈   日本橋高校二年生 演劇部次期部長
 牧野卓司    広島水瀬高校二年生
 藤吉大樹    クラスの男子 大樹ではなく藤吉(とうきち)と呼ばれる
 妻鹿先生    絶子たちの担任
 毒島恵子    日本橋高校二年生でメイド喫茶ホワイトピナフォーの神メイド

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ポナの季節・18『昨日のポナは最悪だった』

2020-08-29 05:46:15 | 小説6

・18
『昨日のポナは最悪だった』
        


 ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとった新子が自分で付けたあだ名


 昨日のポナは記事にも話にもならないほどミゼラブルだった。

 最初はドラマチックで楽しげな朝の始まりだった。
 いつものように、ポチを連れ薮医院の前を通って大川の河川敷にボール遊びにいくところだった。

 そこにみなみのメールが入った。

――寺沢先生って、ポナの兄貴じゃん! 話ししたら遊びにきていいって。今からいく!――
――え、ほんと!?――

 チイニイが乃木坂の講師になったことは知っている。それが、こともあろうにみなみのクラスを持っている。で、お気楽みなみは、チイニイとお友だちみたくなって、これからうちに来るというのだ。

――あたし、大川にポチ連れてお散歩だよ――
――じゃ、ちょっと調整する――

 みなみは積極的な子だ、授業うけてピンときて、話をしたら親友の兄貴だということが分かり、チイニイも調子いいから、昔の感覚で「遊びに来いよ」になったんだろう。でも、みなみはバランス感覚もいいから、ポナと一緒じゃないと、ちょっと薄情な気がしたんだろう。

「なんだポナ、日曜もポチのしごきか?」
 医者の不養生のいいわけに、藪先生がウォーキングしているところに出くわした。
「ポチの健康維持にはちょうどいいんです。明日から平常通りの学校だし、今日が最後なんです」

 最後と言って、ポナは自分でもドキンとした。

 犬は暑さに弱いので、夏休みは老犬ポチには無理だ。冬休みもダメだろう。でも普段の休みならやってこられる。でも、きちんと時間を決めて散歩できるのは今日限り、それを端折って「最後」と言ってしまった。
 天気予報でも、そろそろ梅雨とか真夏日とか言い始めてる。だから無意識に……そこまで理由を考えて、ポナは思考を停止した。あまり暗いことは考えたくなかったし、ちょうど大川の土手に着いたところだったし。
「さあ、ポチいくよ!」
 土手の上から河川敷に投げると、ポチは十六歳とは思えない素早さでボールを追いかけ、ポナが河川敷に着いたころには、ボールを咥えてもどってきた。
「調子いいじゃん、ようし、今日は二十回目標でやってみよう!」

 ポナの周囲は、この十年で少しずつ変わっていった。

 四人もいた兄姉が、大ニイの防大受験から始まり、チイニイと大ネエが家を出て、去年の春からはチイネエも大学進学といっしょに家を出た。家にいるのは両親とポチだけである。立場はもうミソッカスじゃないけど、ポナはどこか寂しい。ミソッカスもやだったけど、ミソッカスでなくなることも寂しく。チイネエが家を出るころに、辞書を引いてPerson Of No Account という言葉を知った。頭文字をとればPONA=ポナだ。字がポチに似ているのも気に入った。SNSのハンドルネームに使ったのが最初で、三月も自分で使っていると、周囲もポナと呼ぶようになった。

「ようし、これで最後。いくぞポチ!」

 力が入りすぎ、河川敷のコンクリートで大きくバウンドして、ボールは川に落ちてしまった。
「ポチ、いいよ!」
 と叫んだ時には、ポチは川に飛び込んでいた。川の流れは意外に速く、二呼吸するほどの間に岸からかなり離れた。

 ポチが溺れた。

「ポチ!」

 叫ぶと同時にポナは、大川に飛び込んだ。
 岸を蹴った時に右足に違和感があった。ポチの傍まで泳ぐと、脚がつって泳げなくなってしまった。痛さのために声も出なかった。
 ポチは、力を振り絞って岸に向かって吠えた。犬語ではあるが救助を求めていることは、誰にでも分かった。

 そして……気が付いたのは救急車の中だった。

 救急隊員の他に、チイニイとみなみがいっしょだった。チイニイがびしょ濡れなところを見ると、どうやら助けてくれたのはチイニイのようだ。ポチも毛布にくるまれてみなみが抱っこしてくれている。

――ああ、助かった……――

 そう思うと再びポナは意識を失った。


 

※ ポナの家族構成と主な知り合い


父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長候補

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かの世界この世界:55『女神の子たち』

2020-08-29 05:28:18 | 小説5

かの世界この世界:55     

『女神の子たち』          

 

 

 ユグドラシルはご存知ですか?

 

 朝食が終わって、子どもたちが後片付けや掃除に取り掛かる時間、院長先生が穏やかに聞いた。

「はい、世界の時間を司っているという伝説の木ですね」

「子どものころに、おとぎ話で聞いたような」

「伝説でもおとぎ話でもなく、ユグドラシルは存在します。この世界とは、ほんの少しだけズレた亜空間に存在するので、世界樹とはいえ、普段は目に見えません。先の聖戦での無理がたたってユグドラシルは枯れてしまいそうになりました。ユグドラシルは三人の女神によって守られているのですが、女神たちはユグドラシルの回復に全力を注がねばならず、子どもたちの世話が出来なくなってしまいました。それで、十年前にわたしが預かることになったのです」

「女神の子ども?」

「はい、女神にはそれぞれ一人の子どもが居て、女神たちの希望なのです。その希望にかまけていられないほどに、世界樹の再生は大変な仕事だったのです。そして、一段落したいま、子どもたちの力が必要になってきたのです」

「子どもが働くんですか?」

「よくは分かりません、後継ぎが必要な段階になったのか、はたまた、子どもたちが女神の力を十二分に発揮するためのブースターになるのか。言えるのは、子どもたちの帰還を喜ばない者たちがいるということです。孤児院に居る限り手出しは出来ませんが、一歩シュタインドルフを出てしまえば守り切れるものではありません」

「それで、わたしたちに」

 グリの声には困惑の響きがあった。

 ブリュンヒルデの供をするだけで一杯なのだ。子どもの世話、それも、どこにあるか分からない世界樹の根元の国にまで届けることは余計なことだ。

「お気持ちは分かります、でも、余計なことに見えて、この仕事はブリュンヒルデ姫さまのおためにもなることなのです」

「姫さまの……」

「創世記二十四章、獄を出でし子らは……」

「あれが姫様の事だと……」

「山羊たちを供として父に見参せんと……試練の子たちと……川を渡りて……共に手を……」

 わたしには分からない神話世界の話のようだ。瞬間視線を落としたグニだったが、顔を上げるとキッパリと言った。

「分かりました。それで、その子らとは……?」

 

 そのタイミングで掃除を終えた子どもたちが入ってきた。

 

 終わりました、院長先生!

 

「ご苦労さま、じゃ、勉強の時間まで遊んでらっしゃい、あ、三人は残って」

 三人だけで通じるようだ。ロキとフレイとフレアが顔を見合わせながら、こちらを向いた。

 三人は連れていけないぞ~(^_^;)

 子どもたちなりに戸惑っていると、庭に通じるドアを開けて、グニとブリとケイトが入ってきた。

「いいことを思いついたわ!」

 明るく言ったブリだったが、わたしたちの様子に戸惑ってしまった。

 

 なにかあった……?

 

☆ ステータス

 HP:2000 MP:1000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・25 マップ:3 金の針:5 所持金:8000ギル

 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)

 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)

 

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリ(ブリュンヒルデ) 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘

 グリ(タングリス)   トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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