大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

大阪ガールズコレクション:9『北区梅田 茶屋町・2』

2020-08-17 08:02:49 | カントリーロード

大阪ガールズコレクション:9

『北区梅田 茶屋町・2』 

 

 

 大阪駅で下りて改札に向かう。

 

 エスカレーターに乗ると、二段前の人のスマホが見える。

 小さい画面なんだけど、チラリと見えたネットニュースの表題に時めいた。

―― 梅田北ヤード再開発現場で1500体の人骨発見! ――

 なんと、いま下っているエスカレーターから直線距離で百メートルも離れていないところに1500人分の人骨が発見されたというのだ。

 茶屋町に向かうついでに覗いていこうと思った。

 北出口に出たところでスマホで確認。

 

 なるほど、大坂七墓と言って、今の大阪市に七つの大きなお墓があって、江戸時代は『七墓巡り』なんてオリエンテーリングみたいなこともやっていたらしい。

 ラッキー!

 スクロールすると、ちょうど三十分後に現説(現地説明会)が行われるらしい。

 ちょうど青になった横断歩道を渡って発掘現場に向かった。

 ただの遺跡なら言説の参加者の大半は年配の人が多いんだけど、人骨1500体は、ミーハーでも興味をそそられるので、現場にはけっこう若い人も多く、すでに三百人余りが言説の開始を待っていた。

 フェンス越しに墓穴と思われる穴が窺えた。

 洗濯機の洗濯槽くらいの穴が百ほど、方形の大きな穴が三つほど窺えるけど、平場なので穴の中までは見えない。

 これまで、二度ほど発掘された古墳の現説に行った。

 古墳と言うのは様々な副葬品があって、葬られている人骨よりも、そっちの方が面白い。

 人骨なんて、素人がパッと見てもよく分からない、男だか女だか若者だかお年寄りだか、そういうことは専門家が何カ月も何年も調べて、素人は、その結果を見て「へー」とか「ホー」とか感心できるもので、現説では、やっぱり副葬品だ。

 勾玉、管玉、銅鏡、土器や埴輪のいろいろ、武器や武具といったものにロマンを感じる。

 もともとが、親の公認の元にお出かけしたいための口実だったから、そういう見かけの面白さに引かれるんだ。

 ところが、三十分後に始まった現説。

「江戸期の集合墓地と思われます。一つ一つの墓穴に葬られているものから、数体、数十体まとまって葬られているものまで様々ですが、副葬品はほとんどありません。茶碗とか土人形とか日用品てきなものが散見される程度で、被葬者は庶民階級の人たちだったと思われます。大坂には『七墓巡り』というのが……」

 スマホで調べた内容を補強するような説明が続く。

 え、これは? え? なんで? なんだ?

 発掘作業をしていた人たちにいくつもの?のマークが立ち上がる。

 見学者にも聞こえたので、みんな、そっちの方にゾロゾロ向かいだした。

 

 それは、洗濯槽ほどの個人用の墓穴で、座棺で葬られ、座った姿勢でクシャっとなった人骨がきれいに残っている。

 人骨そのものは、他の墓と変わりが無いのだけど、副葬品が膝の間に収まっていて、その副葬品が……。

 なんとスマホなのだ!?

「ちょ……」

「ありえない」

「なんで……」

 様々な驚きやら当惑の声が上がる。わたしは、その人たちの中で一番驚いていたと思う。

「これって、警察呼んだ方が……」

 ということで、急きょ大阪府警のパトカーと鑑識の車がやってくることになった。

 そして、あくる日のニュースで報道された。

―― 人骨は、やはり江戸末期のもので、推定年齢十五六歳の女性、多少の副葬品があったが、現在鑑定中 ――

 副葬品がスマホだったとは書かれていない。ありえないことだもの、発表なんてできないよね。

 でも、わたしは見てしまった。

 あのスマホは、穂乃花が行方不明になった時に持っていたのと同じだ。

『東梅田コミュニティー会館』の角を曲がって、穂乃花が行ってしまったのは、いったいどこだったんだろう……。

 

 

 

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ポナの季節・6『女子高生の感動は24時間②』

2020-08-17 06:01:53 | 小説6

・6
『女子高生の感動は24時間②』
         

 ポナとは:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとった新子が自分で付けたあだ名


「…………………………お早う」
 
 上の空の返事はポナが奈菜の前の席に掛けるまで返ってこなかった。


「なに、ボンヤリしてんのよ?」
「感動噛みしめてんの……」
 どうやら奈菜は、夢見る夢子さんになっているようだ。
「静かに……昨日の感動を噛みしめてんの」
「昨日……ああ、大ニイの『ひとなみ』か」

 ポナは、奈菜が無事に学校に戻ったので、もう関心は無い。鞄から第二朝食のサンドイッチを出してパクつきだした。奈菜もなにやら取り出した。

「ん……あ、昨日の写真か」

 奈菜は、ポナの大ニイが撮ってくれた「完璧に目標を補足」を酔ったように見つめだした。

「あたしって、こんなに美少女だったんだ」

 ブフッ!

 ポナは、あやうく吹き出すところだった。

 確かに奈菜は苦労知らずのお嬢さんで、まあAKBの書類選考ぐらいは通りそうなほどにはイケてる。でも、この情緒不安定のボンヤリじゃね……そう思いながら、右手にサンドイッチ左手にスマホになって、奈菜と同じ写真を見た。確かに写真の奈菜は普段の五割増しぐらいに美人に撮れている。それは後ろで大口開けて笑っているポナが引き立て役になっているせいでもある。

「自衛隊って、キビキビしてていいよね。女性隊員なんかもいたし」
「ん、それが?」
「あたしもなってみたいな……」
「奈菜、あんた、束縛されんのがやだって家出して横浜でガールズバーの客引きまでやってたんでしょうが。自衛隊なんか、学校や家の百倍くらい束縛の世界なんだぞ」
「それぐらい縛られて、人間は光りだすんだと思うの」
「マゾに鞍替えか!?」

 で、朝礼と一時間目の授業は終わってしまった。

「ねえ、今からだったら、防衛大学の受験間に合うわよね。A幹ていって、一番お兄さんの階級には近道みたい」
「奈菜、授業中になに調べてんのよ?」

 奈菜は自衛隊員の裏を知らない。

「ポナ、オレのズボン破れてないかな?」
 小学生のとき、大ニイが、そう言ってお尻を向けてきたことがある。
「どこが?」
「股の付け根の方」
「うん……?」
 ポチといっしょに覗きこんだところ、一発かまされた。ポチは悲鳴をあげて逃げ出した。ポナは危うく気絶するところだった。

「実家にも近いし、もう防大しかないわね!」
 三時間目の終わりには、奈菜の目は国防少女のそれになっていた。だが、奈菜の発想や飛躍は家出にしろ自衛隊にしろ、自宅から一時間ほどの範囲に限られているようだ。

 昼休みに、防大の膨大な知識で頭を一杯にして、その分授業はさっぱり聞いていない奈菜は、放課後防衛省の広報まで防大の資料をとりにいくと言いだした。当然「だから、ついてきて」の決まり文句付きで。

「あの、海上自衛隊って、泳げないと話にならないんだけど」
 ポナの何気ない一言は、一瞬で奈菜の半日の夢を崩してしまった。ポナは慌ててフォローに回った。
「あ、陸上自衛隊もあるし」
「泥水の中、匍匐前進なんてドロンコはやだ」
「じゃ、航空自衛隊?」
「あたし、高所恐怖症なの」

 もう、勝手にしやがれのポナであった。奈菜は、まだ未練たらしく写真を、ため息つきつつ眺めている。

「……そうだ、こんなにイケてるんだもん。女優さんになろうか!?」

 ブフッ!!

 ポナは、デザート代わりの掛けそばを吹きだしてしまった。
「でも、いきなりは無理よね……」
 少し現実的な思考になってきた。
「そうだ、演劇部に入ろう!」
「うちの学校演劇部ないし……」
「ん……だったら作ればいいのよ!」

 今までの奈菜のプランの中では、一番現実的だった。

「黒木華さんだって、秋野暢子さんだって、高校演劇の出身なんだから! そう、坂東はるかや仲まどかは、もろ乃木坂の出身よ!」
 さすがに知識は豊富なようで、でも、ポナは秋野暢子は知らなかった。
「東京で名門演劇部って言えば、乃木坂学院。ポナ、あんたの友だち乃木坂だったわよね!?」
 物覚えもいい、二三度名前を出しただけの高畑みなみのことを覚えていた。
 基本的には気のいいポナは、すぐにみなみにメールを打ってみた。
 返事は残念なものだった。

――演劇部は、この三月に廃部になってるよ――

 

 

 ※ ポナの家族構成と主な知り合い


父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子

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かの世界この世界:43『え、マジか!?』

2020-08-17 05:45:36 | 小説5

かの世界この世界:43     

『え、マジか!?』  

 

 

 ああ、なんでも使ってくれ

 

 グリが鷹揚に返事をすると、小さな敬礼を返してこちらのゲペックカステンを開けた。

「なんだこりゃ、この二号でお菓子屋でもやるつもりなのかい?」

「シュタインドルフのヴァイゼンハオスの慰問を兼ねているんだ。ツ-ルはノルデンハーフェンで補給してもらうことになっている」

「ヴァイゼンハオス……戦災孤児たちのだな」

「ああ、仰々しい慰問じゃ、シスターたちもかえって困るだろうからな」

「なるほど、いや、停めてすまなかった。ツールは他の奴から借りるわ」

「せっかくだ、キャンディーなら一袋進呈するよ」

「いや、孤児の取り分をいただくわけにはいかないだろう」

「乗員用のがある。ブリ伍長、ポケットのを軍曹に渡せ」

「え? あ、イエスマム」

 一瞬あっけにとられたが、素直に軍曹にくれてやる。

「じゃ、行ってくれ。停めてすまなかったな」

 軍曹たちはキャンディーを口に放り込み、我々は前進を再開した。

 

 ムヘンブルグの北には荒川ほどの川があり、川を渡って、そのまま北進すればノルデンハーフェンに至って船旅になる。

 

 城塞の北方も必ずしも平穏ではないが、街道を走っている分には安全であろう。

 ところが、橋を渡ったところで我々の二号は左に曲がったではないか。

「グリ、どこへ行くんだ?」

「軍曹にも言ったじゃないか、我々はシュタインドルフのヴァイゼンハオスに寄っていくんだ」

「え、マジか!?」

 ブリが目を剥く。

 シュタインドルフは九十度方角が違う。道中の安全も保障されてはいない。

「方便とは言え、口にしたことです。向かわねばなりません」

 

 ハッチから身を乗り出して見える空は、この道中を暗示するかのように曇り始めていた……。

 

☆ ステータス

 HP:500 MP:500 属性:剣士=テル 弓兵=ケイト

 持ち物:ポーション・15 マップ:2 金の針:5 所持金:5000ギル

 装備:剣士の装備レベル5(トールソード) 弓兵の装備レベル5(トールボウ)

 

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリ(ブリュンヒルデ) 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘

 グリ(タングリス)   トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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