大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

明神男坂のぼりたい06〔明日香のファッション〕

2021-12-10 05:27:53 | 小説6

06〔明日香のファッション〕  


      


 あたしはファッションには凝らない方

 ただ、オンとオフの区別はつけている。

 学校行くときは完全な制服。家帰ったらラフというか、お気楽がコンセプトの気まま服。

 まあ、ルーズにならなくて体を締め付けないものね。

 上は薄手のセーターで、外出するときはスタジャンぽいもの。

 たいていは、近所のアキバで間に合わせる。 

 アキバには一駅向こうの御徒町まで居れるとユニクロが三軒あるので、そこでウロウロ。

 でも、ユニクロで買うことってそんなにはない、けっこう高いしね。

 実際はアキバのあちこち回って探す。普通のお店で似たようなのが安くてあるしね。

 
 履き物は、近所はサンダル。冬用と夏用があって、冬用は足の甲のとこにカバーが付いてるの。夏はヒモとかベルトだけの。じゃまくさい時はお母さんのサンダルをそのままひっかけたりする。

 ちょっと遠いとこはスニーカー。学校行くときはローファーに決めてる。買うのは、やっぱアキバ。

 最近はネットで買ったりもするんだけど、ポチッとやるだけで買えてしまうので、要注意。夜のスマホは魔法が掛かってるからね、うっかりポチって、朝になったら大後悔ってことがあるから、夜にはポチらないようにしてる。

 

 明日から稽古が始まるんで、制服をチェック。

 

 制服は気に入ってる。

 男子は詰め襟に似てるけど、襟が低くて、角が丸い。そんで色が紺色。右の袖にイニシャルのGをかたどった刺繍でボタンは平べったい金ボタン。

 女子は、一見男子と同じ色のセーラー服。前開きなんで着やすいし、リボンをしなかったり短かくしたりすると、前のジッパーが見えてしもてかっこ悪い。そして袖にGのイニシャル。

 スカートは普通のプリーツみたいなんだけど、裾の下に黒で学校のイニシャルが入っいて、簡単には改造できない。

 ヘタに短くすると、イニシャルが見えなくなってしまうからね。

 さすが東京都。長年制服の改造に悩まされてきたので考えてある。

 その制服を、明日に備えてチェック……OK……と思ったら。

 あっちゃー、ローファーがいかれてた。右足の底がつま先の方から剥がれかかってる。

 

 で、アキバのABCマートまで買いに行く。

 

 着くまでに台詞が半分通せた。でも、信号やら車に気を取られて詰まってしまう。

 まだ覚え方がハンパな証拠。帰りに残り半分賭けてみようと思う。

 

 せっかくアキバまで来たので、アキバの街をウロウロキョロキョロ。

 

 ラジオ会館と駿河屋の間の道を抜けたところで、胸がチクリ。 

 関根先輩と美保先輩が、ラブラブでアトレから出てくるのが目に入ってしまった。

 昨日に続いて二日連続の遭遇。
 
 もう悪夢!

 昨日も、神田明神に行って、二人でお祈りして、おみくじひいて二人揃って大吉、マクドでかる~く「映画でも観にいかこうか?」「うん」「中味も聞かないで、うん?」「うん。学といっしょだったらどんな映画でも……」「バカだなあ」

 ウググ

 もう、その時の情景まで映画の予告編みたいに頭に浮かんで、パニック寸前。

 帰りは、案の定台詞の稽古忘れてしまう。

 

「明日香、滝川んちで新年会やるけど、付いてくるか?」

 

 帰るとお父さんに勧められた。滝川さんは、お父さんの数少ないお友だち。あたしらガキンチョでもオモロイオッサン。二つ返事でOK。

 宴会では、フランス人とのハーフのニイチャンや二十歳過ぎのベッピンさんのお話で耳学問。オッサン、オバハンは記憶には残ってない。

 まあ、この人たちのことはおいおいと。

 明日から、稽古が始まりますのですのよ!

 イタ! 
 
 舌噛んでしまった(;'∀')。

 

※ 主な登場人物

  •  鈴木 明日香       明神男坂下に住む高校一年生
  •  東風 爽子        明日香の学校の先生 国語 演劇部顧問
  •  香里奈          部活の仲間
  •  お父さん
  •  お母さん
  •  関根先輩         中学の先輩
  •  美保先輩         田辺美保

 

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ライトノベルベスト『高安ファンタジー・2』

2021-12-10 05:20:58 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト 

高安ファンタジー・2(高安女子高生物語外伝) 




 この四月から、亮介ニイチャンと同じ通学電車になった。

 と、書くと偶然みたいやけど、じつはあたしが高校に行くようになって、電車の時刻表見たりして、亮介ニイチャン(以下カレ)と同じ電車に乗れるように工夫した(^_^;)。

 最初は、同じ車両に乗ってるだけで幸せやったけど、だんだん近寄るようになって、話が出来るようになった。

 きっかけは……。

 電車は、高安仕立ての準急。

 運がええと座れるけど、まあ、通勤のオッチャンやオネエチャンらにはかないません。つり革に掴まって乗り換えの鶴橋まで立ってる。

 横に立ってるのに、カレは気ぃつかへん。うちから声かけるなんてとてもでけへん。え、東の窓ではあんなに大胆やったのにて? あれはたまたまの偶然でああなっただけ。いくら河内の女の子でも、ピカピカの一年生にそんな度胸はありません。

 その日も、いつものように気づかれんまま、鶴橋駅が近なってきた。

 今日もあかんな……そう思たとき。

 ガックンと、電車が急停車した。うちらは進行方向に将棋倒し。隣のカレが、つり革掴みそこのうて、手が滑って、あたしの胸をかすった。

「アッ……!」

 思わず声が出てしもた。

「ごめん!」

「あ、いいえ」

「あ……自分は?」

 と、カレが気ぃついた。

 そこから去年の東の窓の話やら、子どもの頃の話をするようになった。

 やったー! 

 と思たけど、そこからが進展せえへん。しょ-もない話の十数分。それがうちの高校生活の全てやった。しかし、きっかけはイケテル。うちの胸がもう五ミリ小さかったら、カレの手ぇとは接触せえへんかった。

 そうこうしてるうちに、進展もないまま、連休になった。

 もうじき夏服になるんで、八尾まで夏用の服やらインナーを買いに行ったんよ。

 夏は上着無しのブラウスだけ。まあ、学校は冷房効いてるんで、たいていの子はチョッキを着たり脱いだりして調整してる。

 で、ブラウスの下はキャミを着てブラが見えへんように工夫。それでも若干は透けて見えるんで、あんまりダサイのはいややし、かといって色物は禁止やし……。

 そない思て、適当なもんがないかと、ワゴンやらショーケースを見てた。

「あんた、ええ胸してるねえ」

 気いついたら、店のオバチャンがうちの胸を見てた。この店は中学のころから来てる店やけど、こんなオバチャンおったかなあ、と、思た。

「あんたの胸は、一万人に一人ぐらいの福胸や。カタチ大きさに気品がある。ええ運が回ってくる運勢やな」

 この言葉だけやったら適当に聞き逃してたけど、次の言葉に驚いた。

「あんたの運は、東の窓から開けて、胸が勝負やなあ!」

「え、ほんま!?」

 になった。

「惜しいことに、インナーが、その運を押さえ込んでる。あんた、いま好きな男の人いてるやろ。きっかけはオバチャンが言うたとおりやと思うけど」

 これは、このオバチャンは霊能力者かなんかかと思た。

「この開運ブラにしとくとええわ。あんた高校生やろ? 大人やったらショーツとのセットにしたげるけど、あんたには、まだ早い。ブラだけにしとき」

 それは、とても淡い水色のフロントホックのブラやった。オバチャンの勢いで試着までしてしもた。カタチのええ胸が、いっそうかわいい張りになって、なをかつ清楚な雰囲気。うちは迷わんと、それを買うた。

 本屋さんで、新刊の『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』を買うて、さっきの店の前を通ると、張り紙。

――都合により、四月末日をもって閉店いたしました。店主敬白――

 その日は、五月三日やった。どういうこっちゃろ……?

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