大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・250『ナガト ハッケン!』

2021-12-20 14:15:51 | 小説

魔法少女マヂカ・250

『ナガト ハッケン!語り手:ノンコ      

 

 

 英語が喋られへんから、どうなるのかってビビった。

 

 あたしは魔法少女と言うても、準がつく。

 元々は、ポリコウ(日暮里高校)のふつうの女生徒。

 いや……ちょっと劣等生(^_^;)

 こないだのテストでは調理研のみんなに助けてもろて、なんとか落第せんで済んだとこ。

 マヂカがポリコウに来て(気が付いたら同級生)、いつのまにか染まってしもて、準魔法少女になってしまった!

 自衛隊の特務師団というのに入れられて、身分的には特別職の公務員? よう分からへんけど。

 

 何の因果か、ほとんど百年前の大正時代で冒険の真っ最中。

 ここでは、京都の神社の娘という設定になってて、いつの間にか言葉も京都弁になってしもて直らへん(^_^;)。

 どないしょ(^_^;)

 まあ、暗示にかかりやすいというか、影響を受けやすい。

 それで、今回の任務ではイギリスの巡洋艦の水兵になって、対水上監視の接眼鏡に齧りついてる。

 首からぶら下げたメガホン、これは翻訳機になってて、日本語で「長門発見!」と叫ぶと、英語に変換される。

 

―― ノンコ、あと一分! ――

 

 マヂカから思念通信が入る。

―― 了解 ――

 返事して右舷一時の方向に遊園地の据え付け望遠鏡みたいな接眼鏡を向ける。あらかじめ出現の方角が分かってるからラクチン。

―― ハイドボール用意 ――

―― 了解 ――

 おお、霧子の思念が入ってきた。

 いよいよや。

―― テー! ――

 頭の中にブリンダの号令がして、それに応える霧子の息遣いを感じると、右舷二時の方角にカスミがたなびく。

 霧子がハイドボールを破裂させたんや!

 さすが魔法少女のマジックアイテム。

 まるで、自然現象みたいなカスミが右舷方向に広がっていく。

―― ガサゴソ ガサゴソ ――

 今度は衣擦れの音がする。

 いよいよ、ブリンダとマヂカが二人で戦艦長門に化けて、本物の戦艦長門を最大戦速で日本に向かわせる。

―― ヘーンシン! ――

 号令が響く。

 この瞬間、カスミの中に本物と偽物二隻の長門。カスミの外にあたしの巡洋艦。

 うっかりしてると、二隻の長門が見えてしまうかもしれへん。

 打ち合わせでは、本物の長門は少し東に進路をとるんで、グズグズしてるとカスミの中から出てしもて、見つかってしまう。

 大丈夫やろか……

 み、見えた!

 カスミの中に、小さく、でも黒々としたガチ長門の姿が浮かんできた。

「ナガト ハッケン!」

 メガホンに日本語で叫んだら、これがうちの声か?

 でもはっきりと英語になってて、ブリッジの艦長やら航海長やらが一斉に双眼鏡を向ける。

 ああ、なんとか無事に任務終了や!

 

 え?

 

 問題が一つ。

 あたしは、この先どないしたらええのん?

 どないしょ、どうやって巡洋艦から撤収すんのんか、ぜんぜん決めてへんかったやんか(;'∀')!

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査
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明神男坂のぼりたい16〔明日香のナイショ話〕

2021-12-20 08:52:08 | 小説6

16〔明日香のナイショ話〕    


       

 

 実は、辞めようかと思い始めてる。

 演劇部。

 一週間先には、芸文祭。ドコモ文化ホールいう400人も入る本格的なホール。N駅で降りて徒歩30秒。条件はいい。

 交通の便はいいし、演劇ファンの中にも名は知れているし。

 だけど、観にくるお客さんが少ない……らしい。

 あたしは一年だから去年のことは、よく分からない。

 

「まあ、80人も入ったら御の字かなあ」

 稽古の休憩中に美咲先輩が他人事みたいに言う。

「そんなに少ないんですか!?」

「そうよ。コンクールだって、予選ショボかったでしょ」

「だけど、本選はけっこう入ってたじゃないですか」

「アスカ、あんた東京にいくら演劇部あるか知ってる?」

「連盟の加盟校は230校です……たしか」

「そうね、けっこうな数だけど、うちの予選は、観客席ガラガラだったじゃん」

「え、100人くらい入ってなかったですか?」

「30ちょっとよ」

「うそ、もっと入ってたでしょ?」

「観客席って、半分も入ったら一杯に見えるものなのよ。うちのお父さん役者だから、そのへんの感覚は、あたしも鋭いよ」

 美咲先輩のお父さんが役者だっていうのは、初めて聞いた。

 びっくりしたけど、顔には出さないようにした。

 それから、美咲先輩は、いろいろ言ったけど、要は、三年なったら演劇部辞めるつもりなんだ。

 

 それで分かった。元々冷めてるんだ。

 

 盲腸だって、すぐに治るの分かってて、お鉢回してきたんだ。

 馬場先輩に言われた「あこがれ」が稽古場の空気清浄機に吸われて消えてしまいそう。

「今は、目の前の芝居やることだけです!」

 そう言って、まだ休憩時間だけど、一人で稽古始めた。

「えらい、熱入ってきたじゃんか!」

「午後の稽古で、化けそうだなあ」

 東風先生も小山内先生も誉めてくれた。一人美咲先輩には見透かされてるような気がした。

――明るさは滅びの徴(しるし)であろうか、人も家も暗いうちは滅びはせぬ――

 太宰治の名文が、頭をよぎった。親が作家だと、いらんこと覚えてしまう。

 三年の先輩たちは、気楽そうに道具の用意してる。

 あたしは情熱ありげに一人稽古。

 このままいったら、四月には演劇部は、あたし一人でやっていかなくっちゃならない。

 それが怖い。

 芝居は好き。

 だから、こないだ梅田はるかさんに会ってもドキドキだった。馬場先輩にも「アスカには憧れの輝きが目にある」言われた。

 だけど、ドラマやラノベみたいなわけにはいかない。

 新入生勧誘して、クラブのテンション一人で上げて、秋のコンクールまで持っていかなくっちゃならない。

 正直、そこまでのモチベーションはない。

 それにしても、忌々しい美咲先輩。こんな時に言わなくってもいいじゃん!

 

 稽古終わって帰り道。

 男坂の上で立ち止まってしまう。

 

 四歳くらいの女の子が、坂の下から見上げている。

 ドキッとした。

 坂の真ん中あたりに時空の裂けめとかができて、四歳の明日香が12年後のあたしを見ている。

 明神男坂上りたい……

 あの時の想いが口をつく。

 ニコ(^▽^)/

 女の子が手を振って、反射的に胸の所で手を振り返す。

 タタタ

 女の子が坂を駆けあがって来る。

 あ、危ない!

 三つ目の踊り場で転げ落ちてしまう!

 タタタタタタ

 駆け下りる! 女の子は、勘違いして勢いを増して、幼女とは思えない速さで駆け上がって来る!

 危ない!

 手を伸ばしたあたしの方が踏み外してしまった。

 ドチャ! フグッ!

 石神井の池でジャンプし損ねたカエルみたくズッコケた。

 

「……大丈夫、明日香ちゃん?」

 

 顔を上げるとだんご屋のおばちゃん。

「あ、だいじょうぶ……です」

 振り返ると、坂の上、瞬間、上りきった女の子のリボンが揺れて見えなくなる。

 おばちゃんがカバンを拾ってくれる。

 きちんと締めてなかったので、中身のあれこれがぶちまけられている。

「あら、キーホルダー壊れちゃったわね」

「あ」

 それは、だんご屋さんが操業記念に作ったのをもらって、ずっとカバンに付けていたやつ。

「こんど、新しいのあげるわね」

「あ、ありがとう」

「あら、あれ、部活の台本じゃないの?」

「え?」 

 見下ろした坂の下で、バラバラになった台本が散らばっていた。

「イタ」

 取りに下りようとしたら、足が痛む。

「うちには内緒にしといてください」

「うん、分かったよ」

 そういうとおばちゃんは、坂を下りて台本のページを集めてくれる。

「すびばぜん……」

 そこまで言ったら、涙と鼻水が溢れてしまった。

 

 

※ 主な登場人物

  •  鈴木 明日香       明神男坂下に住む高校一年生
  •  東風 爽子        明日香の学校の先生 国語 演劇部顧問
  •  香里奈          部活の仲間
  •  お父さん
  •  お母さん
  •  関根先輩         中学の先輩
  •  美保先輩         田辺美保
  •  馬場先輩         イケメンの美術部
  •  佐渡くん         不登校ぎみの同級生

 

 

 

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ライトノベルベスト『メゾン ナナソ・4』

2021-12-20 06:33:53 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト 

『メゾン ナナソ・4』   




 今日も奈菜さんはいなかった。

 中村さんの部屋で待たせてもらおうかと思って、中村さんの部屋のドアをあけると「空室」と張り紙があった。

 仕方ない、今日は諦めよう。

 そう思っていると隣の部屋から声がした。

 女同士の話声で、なんだかやりこめられているほうが奈菜さんの声のような気がした。

 これは助け船を出した方がいいと思って、加藤たか子と書かれたドアをノックした。

 トントン

 だれ!?

 若干のやり取りがあったあと、加藤さんは話し相手が多い方が楽しいと判断したらしく、ボクを招じ入れ、自分と奈菜さんの間に座らせた。話の内容から、加藤さんは、某都立高校の先生であると分かった。

「……と言うわけで、今日はストなのよ」

 なんで、学校の先生が平日に病気でもないのに出勤していないのかと、それとなく聞いたら。中教審答申に反対し、おまけになんだか忘れた理由で、都立高校のほとんどでストをうっているらしい。それを知らずに奈菜さんが「あら、加藤先生、今日は学校お休みですか?」と声を掛けたのが発端らしい。

 話題……というか演説の内容は中教審から女性の自立というところに話が移っているようだ。

「奈菜さんみたいに管理人やってるのは悪いとは思わないけど、若いんだから、もっと社会に出てからでもいいと思うの。アパートなんて住人で自治会こさえて自主運営。管理人さんは、家賃に見合ったアパートの管理さえしていればいいのよ。伯母さんの後釜に収まるのは、奈菜さん、若すぎる」

「そりゃ、職業婦人も悪くはないと思うんですけど……」

 奈菜さんは、軽くいなそうと思った。

「その婦人という意識と言葉がいけません。分かるわよね、キミ?」

「え、ああ、婦人の婦のツクリがまずいって考え方ですよね」

 ボクも現役のころに、組合の女の先生から聞かされていたので頭に染みついていた。

「そうよ、あれは女偏に帚(ほうき)と書いて、女が家庭で非人間的に縛られていたときの、女性蔑視のシンボル。看護婦、婦人警官、みんな廃止すべし!」

 ボクは、このことについてかねがね思っていた疑問や不満をぶちまけてみたい衝動にかられた。

「加藤先生の説は間違っています」

 正面から切り込んだ。

「どこが間違いなのよ。女と帚をくっつけて、それを女の代名詞に使うなんて、封建制度まる出しじゃないの!?」

「いわゆるホウキは、女偏に竹冠のない『帚』ですが、これは、いわゆるホウキではなくて、古代中国で巫女が神事に使う宝器であるものの名前が由来になっています。箒と似てるんで混同されただけです。第一「婦」の字を無くしたら青鞜社のころから連綿と続いてきた『婦人解放運動』の言葉が使えなくなります。大東亜戦争をアメリカにむりやり太平洋戦争と言わされたようなもんです」

「え、日本人が呼び換えたもんじゃないの?」

「米語の『パシフィック ウォー』を和訳したものをGHQが強制したものです。もし、戦時中の日本人に『太平洋戦争』と言っても通じません。それに、太平洋戦争って言ったら、その前から起こっていた中国との戦争がすっぽり抜け落ちてしまいます」

「そ、そうなの?」

「『婦』にもどりますけど、看護婦、婦人警官を無くしたら、日本語が貧弱になります」

「どうしてよ!?」

 加藤先生は、一歩踏み出してきた。

「看護婦は言葉だけで性別が分かります。かりに性別のない『看護師』というような言葉を作ったら、いちいち「女性看護師」てな具合になって、言葉のリズムを崩してしまいます」

「リズムくらいなんだってのよ。女性の地位向上の方が、よっぽど大切だわよ!」

「じゃ、お手伝いさんはどうなんですか? 地位が向上しましたか? BGをOLって呼び換えたけど、やってることは、やっぱ腰掛のお茶くみじゃないですか」

「そんないっぺんに変わりはしないわよ。まず、象徴である言葉から変える。それから中身よ」

「じゃ、先生という言葉はどうなんです。戦前の呼び方そのものじゃないですか。公的な呼称の教育職公務員では長すぎますし。それに……」

 ボクたちの激論は二時間続いた。奈菜さんは、いつの間にかいなくなっていた。

「ごめん、あの先生、どうにも苦手でね」

 管理人室で改めて奈菜さんから、お茶をもらった。どこかで飲んだお茶だと思ったら、中村さんが残していったお茶だそうだ。

 その後分かったことだけど、加藤先生は期限付き常勤講師で、その後勤務校が替わったので、メゾンナナソを出て行った。

 またひとつ空室が増えた。
 

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