
『風景の魅惑』
額縁(フレーム)と壁に立てかけられた猟銃、それきりである。
猟銃が立て掛けられている壁は黒みがかった赤、鮮血が時間を経て酸化したような彩色であり、猟銃=死を連想させる設定である。
一方フレームは不可能な立ち位置で、現世の法則に逸脱している。猟銃の方は壁に影を投影させているが、フレームの影は…微妙な設定であるけれど背景(壁)にあるというより消えている。つまりバックは虚空、深淵、奈落とも思える闇である。時空の果て、想像を絶する未知の世界。
だからこそ、「魅惑の風景」なのである。
探し求め、希求しても絶対に見えない世界。この地上(現世)でない世界に逝った人を夢想する。
♪あなたのいる場所からわたしが見えますか?~♪
♪会いたい~♪
わたくしの感じないちがった空間に
いままでここにあった現象がうつる (宮沢賢治『オホーツク挽歌』より)
亡くなった人を恋う、見えない世界に惹かれ、寂しさの果ての風景を人は心に抱くことがある。
尽きない追慕、それが『風景の魅惑』である。
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