続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『狂気について瞑想する人物』

2016-12-03 06:56:43 | 美術ノート

 『狂気について瞑想する人物』

 狂気について瞑想するということは、この人物は狂気ではないということである。しかし、頬はこけ、何かを凝視する眼差しの先は無空ではないか。タバコを持つ手の人差し指の緊張は、あたかも何かを確信したかのようである。

 男は呼吸を止め、身を乗り出し、確かに何かを考え集中の態である。
『狂気』という実態も、つかみどころもない対象に向き合うことの鬼気迫る迫真。男の前には白いテーブル(または箱)があるが、それに目を落している風でもないが、前に置かれているということは、その物を内包しているともいえる。ただこの白い物に(テーブルもしくは箱)は、意味を感じる条件を持たない。

 つまり彼の向いている方向には何もない。
 何もない(無空/虚無)世界を凝視、瞑想している、あたかも在るがごとくに。

『狂気とは狂気を瞑想する人物の中に潜んでいる』
 狂気は他者との関連性の欠如の中に、内なる自分との会話を膨らませていくものなのかもしれない。


(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)


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